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第二章 ギルド要請冒険者

#49 新たな関係

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「ノヴァさん。少し良いですか?」
 日が昇った後、フェーリエはノヴァを訪ねた。
「ええ、どうしたの?」
「えっと、丘に行くので、彼の手帳を持ってきていただけると」
 ウルティムの存在を知っている事に驚いた様子だったが、ノヴァは大人しくウルティムの手帳を持って屋敷を出てきた。
 フェーリエは無言でノヴァをつれ、丘に向かう。
 先に行っていたユースが、丘の上で待っていた。
「……ここで、何をするの?」
 ノヴァの不安そうな声には応えず、フェーリエは姿を現していない彼に呼びかけた。
「ウルティムさん。出てきてください。リッチなんだから日の光は弱点じゃないでしょう?大人しく話をしましょう」
 それでも姿を現さないウルティムに、フェーリエは追い打ちをかける。
「偽物の依代壊しますよぉー。無くても大丈夫なんですから」
 幽霊ではない彼には、依代は必要ない。が、この墓石が大事なものであることは分かっていた。
『……君は、何というか強引だね』
「ウルティム……」
 現れたウルティムを見たノヴァは、小さく彼の名前を呟く。
『それで、ノヴァを連れてきて何をするつもりなの?』
 諦めたような彼の声に、フェーリエは覚悟を決めて告げる。
「貴方に、私と契約して貰おうと思って。ノヴァさんはその見届け人になっていただこうかと」
『契約!?冗談だよね?僕はリッチだよ?魔物だよ?』
 信じられない、とウルティムは叫ぶ。彼は魔法使いだったのだ。その意味が理解出来ないはずはないのに。理解を拒んでいる。いや、理解した上で否定しているのだ。
「手記にも書いているのに、今更否定しないでください。これしか、道はないんです」
 フェーリエの言葉に、ウルティムはたじろぐ。それでも、彼は、首を横に振った。
 フェーリエは彼の頑なな態度に業を煮やした。しかし、急かすことはしない。合意ではない契約は、不利益しかもたらさないのだから。
「契約って、どういうこと?」
 何も言わなくなったウルティムに代わり、ノヴァがフェーリエに尋ねる。
「契約とは本来、そこそこ理性のある魔物を、魔力でもって服従させるものです。だからこそ、リッチである前に、魔法使いである彼が、契約の概念を理解していないはずがない」
 誰も何も言葉を発さなくなった。フェーリエは、そのまま続ける。彼の意思が傾くように。
「リッチの元が、かなり強力な魔法使いである理由を知っていますか?」
 首を振ったノヴァは、ウルティムに視線を向けた。
「魔力は生命力。つまり、肉体が死ねば、魔力は空になる。空となった器に、邪気が入ることで、魔物が生まれる。器が大きければ大きいほど、強力な魔物になる。彼のように……。もう邪気は、器を壊しかけている。ウルティムさん、これが最後の質問です。正直に答えてください」
 そこで一旦言葉を区切り、フェーリエはウルティムを見る。
「本当に、生きたくないですか?」
 フェーリエの真摯なまなざしに、ウルティムは一つ息を吐いた。
『本当に、君は強引だね。……答えはノーだよ。僕は生きたい。正確に言うならば、死んでいる今の状況をどうにかしたい。受けて立つよ、君の願いを』
 諦めきったそれではなく、まだまだ足掻く、そう言った心意気を感じる笑顔だった



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