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第二章 ギルド要請冒険者
#48 署名活動三夜目
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「とうとうここで最後ですね」
最後の区域で、ルナの声が響く。
「今日はまだ元気なんだな」
「正直、怖いですよ!ここに居たくないんですよ!でも背に腹は代えられない!居なきゃ依頼が終わらない!」
ルナは叫ぶ。恐怖を紛らわせる為に。
(叫べているだけ今日は大丈夫そうだな)
ルナの傍らに浮かんでいる精霊に目を向けると、ユースと同じように、安堵した様な表情を浮かべていた。
『ここはちょっと僕の墓から近いから悪霊が多くてねぇ。精霊様よろしくお願いしますね』
高速で飛び回る何かを見ながら、ウルティムがアウラに頼む。アウラは素直に悪霊に向けて光を放つ。何度見ても、優しい光は心を温かくさせる。
『そう言えば、いつから僕がリッチだと疑ってたんだい?』
ウルティムはルナに問いかける。ユースは全く疑っていなかったため、ルナの見解を聞いておきたい。ユースは静かに二人の会話を見守った。
「あれっ?て思ったのは、丘のお墓に近づいたとき、ですね」
『かなり最初じゃないか』
最初の怯えっぷりを覚えているユースは、疑える余力があったことに驚いた。
「依代だと思ったんですけど、探知魔法に貴方が引っ掛かったので、かなり恐怖でした。幽霊じゃないの!?って余計怯えましたねぇ」
『だからその探知魔法ってなんだい?』
「リッチじゃないかって思ったのは、貴方が話しかけてきた時です。邪気を放っているのに理性があったので、少なくとも悪霊ではないと思いましたよ。あと、変質した魔力を感じたので」
ルナはことごとく探知魔法についての質問を無視している。
「アウラの存在を知っても、取り乱さない。逆に、利用できると算段をつけている貴方を見て、信仰が薄いな、と思いましたけど。まぁ後で戦争の話を出してきたので、そういう時代だったのかなって」
『あの頃から信仰を凄かったよ。ただ、僕は女神様を信じられなかったから……』
戦争で罪無き命が奪われる事を、救ってくれない女神様を信じられない。ウルティムはそう呟いた。
「まぁ、神と言えども、決して万能ではない、と言うことでしょう」
ルナの言葉に、ユースとウルティムはぎょっとしたような顔をする。アウラは、あーあ、と困った顔だ。
何故そんな顔をされなければならないのか。そんなルナの顔を見て、ユースは頭が痛くなる。
「いいか、女神様は絶対の存在だ。その言葉は女神様を貶す言葉と捉えられかねない」
ユースの言葉に、ルナはあっ、と声を漏らす。教会関連に聞かれていれば、ただ事ではなかっただろう。
「軽率でしたね。以後気をつけます」
「そうしたほうが良い」
『女神様を信じられないと言った僕が言うのも何だけど、宗教って怖い集まりだからね?気をつけた方が良いよ』
ユースは、ウルティムの発言も十分危険だと思ったが、口をつぐんだ。リッチ……魔物の時点でもう駄目だ。
『はい、これ。署名終わったから、作業しても良いよ』
「はや!……じゃあ、そう言うことで」
あまりの早さに驚いたルナだったが、こちらを一瞥して、また昨日のような動作をしに行った。
(危機感がないな……)
精霊と契約している時点で気付くべきだったのだろうか。規格外の魔力量。独特な魔法。精霊と契約する剛胆。そのどれもが何かしらの機関に捕まりそうな状態だ。ユースは痛む頭を押さえた。
最後の区域で、ルナの声が響く。
「今日はまだ元気なんだな」
「正直、怖いですよ!ここに居たくないんですよ!でも背に腹は代えられない!居なきゃ依頼が終わらない!」
ルナは叫ぶ。恐怖を紛らわせる為に。
(叫べているだけ今日は大丈夫そうだな)
ルナの傍らに浮かんでいる精霊に目を向けると、ユースと同じように、安堵した様な表情を浮かべていた。
『ここはちょっと僕の墓から近いから悪霊が多くてねぇ。精霊様よろしくお願いしますね』
高速で飛び回る何かを見ながら、ウルティムがアウラに頼む。アウラは素直に悪霊に向けて光を放つ。何度見ても、優しい光は心を温かくさせる。
『そう言えば、いつから僕がリッチだと疑ってたんだい?』
ウルティムはルナに問いかける。ユースは全く疑っていなかったため、ルナの見解を聞いておきたい。ユースは静かに二人の会話を見守った。
「あれっ?て思ったのは、丘のお墓に近づいたとき、ですね」
『かなり最初じゃないか』
最初の怯えっぷりを覚えているユースは、疑える余力があったことに驚いた。
「依代だと思ったんですけど、探知魔法に貴方が引っ掛かったので、かなり恐怖でした。幽霊じゃないの!?って余計怯えましたねぇ」
『だからその探知魔法ってなんだい?』
「リッチじゃないかって思ったのは、貴方が話しかけてきた時です。邪気を放っているのに理性があったので、少なくとも悪霊ではないと思いましたよ。あと、変質した魔力を感じたので」
ルナはことごとく探知魔法についての質問を無視している。
「アウラの存在を知っても、取り乱さない。逆に、利用できると算段をつけている貴方を見て、信仰が薄いな、と思いましたけど。まぁ後で戦争の話を出してきたので、そういう時代だったのかなって」
『あの頃から信仰を凄かったよ。ただ、僕は女神様を信じられなかったから……』
戦争で罪無き命が奪われる事を、救ってくれない女神様を信じられない。ウルティムはそう呟いた。
「まぁ、神と言えども、決して万能ではない、と言うことでしょう」
ルナの言葉に、ユースとウルティムはぎょっとしたような顔をする。アウラは、あーあ、と困った顔だ。
何故そんな顔をされなければならないのか。そんなルナの顔を見て、ユースは頭が痛くなる。
「いいか、女神様は絶対の存在だ。その言葉は女神様を貶す言葉と捉えられかねない」
ユースの言葉に、ルナはあっ、と声を漏らす。教会関連に聞かれていれば、ただ事ではなかっただろう。
「軽率でしたね。以後気をつけます」
「そうしたほうが良い」
『女神様を信じられないと言った僕が言うのも何だけど、宗教って怖い集まりだからね?気をつけた方が良いよ』
ユースは、ウルティムの発言も十分危険だと思ったが、口をつぐんだ。リッチ……魔物の時点でもう駄目だ。
『はい、これ。署名終わったから、作業しても良いよ』
「はや!……じゃあ、そう言うことで」
あまりの早さに驚いたルナだったが、こちらを一瞥して、また昨日のような動作をしに行った。
(危機感がないな……)
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