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第二章 ギルド要請冒険者
#27 変質
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「なんで燃えないのよぉ~!!」
ルナが叫びながら走る。追いかけてくる触手に、ルナは炎の魔法を当て続けているが、触手は燃えるどころか怯みさえしていない。
(変質しているのか?キングは何もかも想定外だ……)
ユースは魔法が使えない。炎の魔法が使えないのならば、何が効くのだろうか。勿論、物理攻撃は効かないだろう。
腰の剣を握りながら、ユースは考える。自分は完全にお荷物だ。
木々の間を走り抜け、冷や汗を流すユースの目の前に、回り込んだスライムの触手が立ちはだかる。
(っ……一か八か!)
効かないだろうが、しないよりかはましだ。ユースは剣を抜き、触手を斬る。
本来ならば、斬撃は通らず弾かれる。しかし、ユースの剣は弾かれることなく、スパッと触手を切り取ってしまった。
触手は怯むように後退し、切られた一部を残して崖下へ戻っていった。
「何だったんでしょう?」
駆け寄ってきたルナは、肩を上下させながら尋ねてきた。しかし、その後ろにいるアンジェリカは、全く息を切らしていなかった。同じ魔法使いで、この違いは何だろう。
「これぐらいで息を切らすとは……修行が足りなかったか?」
「いえいえ。全然足りてます!大丈夫です!慌てすぎてこけたとかそう言うのじゃないですから!」
(こけたのか……)
慌てて自身の師匠言い募るルナをよく見れば、マントに泥がついている。
「それにしても、スライムに物理攻撃が効くとはねぇ」
ルナをからかうことをやめたアンジェリカは、地面に落ちたスライムを眺めて言った。
「キングになって効くようになったんでしょうか?」
「アホ。それじゃ退化してるようなもんだろ」
ぶっきらぼうに弟子に吐き捨てる。言っていることは正しい。スライムが手強いのは、ひとえに物理攻撃が効かないからだ。それがなくなっては、スライムは簡単に倒されてしまう。
「剣士さん!!」
「っ……!」
後ろからの攻撃にとっさに剣を縦にして防ぐ。
「う、ウルフ型のスライム……?」
ルナが戸惑いの言葉を浮かべる。その言葉のように、不定型なスライムではなく、ハッキリと四つ足で立つ、ウルフの形をしたスライムがそこにはいた。
「さっきの切れ端がない。そいつが変化した奴だな」
「大きい……キングほどじゃないけど、十分大きい」
ルナが戸惑いの声を出す。
「何が起こってるのやら……とりあえず、後々の為に試してみるか」
そういったルナの師匠は、袋(恐らく魔法袋)から身の丈以上の斧を取り出す。
「ほいっ!!」
軽いかけ声とともに、アンジェリカは側面からスライムに切り込む。
スライムは木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。
(……なんて威力だ)
ダークエルフは妖精族の中では身体能力は高い。しかしこれは……。
「うっわぁ身体強化魔法掛けた師匠はエゲついなぁ」
なるほど、魔法か。エゲついの意味は分からないが、あれほどの効能を出せるのは素晴らしいことだ。
「……手応え無し、か」
「「え?」」
アンジェリカの呟きに、二人は小さく声を出す。
その言葉の通り、スライムはしっかりとこちらに走り寄って来ていた。
斧で斬りつけたはずなのに、吹き飛んだだけだったのだ。切れていなかったのだ。
ルナが叫びながら走る。追いかけてくる触手に、ルナは炎の魔法を当て続けているが、触手は燃えるどころか怯みさえしていない。
(変質しているのか?キングは何もかも想定外だ……)
ユースは魔法が使えない。炎の魔法が使えないのならば、何が効くのだろうか。勿論、物理攻撃は効かないだろう。
腰の剣を握りながら、ユースは考える。自分は完全にお荷物だ。
木々の間を走り抜け、冷や汗を流すユースの目の前に、回り込んだスライムの触手が立ちはだかる。
(っ……一か八か!)
効かないだろうが、しないよりかはましだ。ユースは剣を抜き、触手を斬る。
本来ならば、斬撃は通らず弾かれる。しかし、ユースの剣は弾かれることなく、スパッと触手を切り取ってしまった。
触手は怯むように後退し、切られた一部を残して崖下へ戻っていった。
「何だったんでしょう?」
駆け寄ってきたルナは、肩を上下させながら尋ねてきた。しかし、その後ろにいるアンジェリカは、全く息を切らしていなかった。同じ魔法使いで、この違いは何だろう。
「これぐらいで息を切らすとは……修行が足りなかったか?」
「いえいえ。全然足りてます!大丈夫です!慌てすぎてこけたとかそう言うのじゃないですから!」
(こけたのか……)
慌てて自身の師匠言い募るルナをよく見れば、マントに泥がついている。
「それにしても、スライムに物理攻撃が効くとはねぇ」
ルナをからかうことをやめたアンジェリカは、地面に落ちたスライムを眺めて言った。
「キングになって効くようになったんでしょうか?」
「アホ。それじゃ退化してるようなもんだろ」
ぶっきらぼうに弟子に吐き捨てる。言っていることは正しい。スライムが手強いのは、ひとえに物理攻撃が効かないからだ。それがなくなっては、スライムは簡単に倒されてしまう。
「剣士さん!!」
「っ……!」
後ろからの攻撃にとっさに剣を縦にして防ぐ。
「う、ウルフ型のスライム……?」
ルナが戸惑いの言葉を浮かべる。その言葉のように、不定型なスライムではなく、ハッキリと四つ足で立つ、ウルフの形をしたスライムがそこにはいた。
「さっきの切れ端がない。そいつが変化した奴だな」
「大きい……キングほどじゃないけど、十分大きい」
ルナが戸惑いの声を出す。
「何が起こってるのやら……とりあえず、後々の為に試してみるか」
そういったルナの師匠は、袋(恐らく魔法袋)から身の丈以上の斧を取り出す。
「ほいっ!!」
軽いかけ声とともに、アンジェリカは側面からスライムに切り込む。
スライムは木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされた。
(……なんて威力だ)
ダークエルフは妖精族の中では身体能力は高い。しかしこれは……。
「うっわぁ身体強化魔法掛けた師匠はエゲついなぁ」
なるほど、魔法か。エゲついの意味は分からないが、あれほどの効能を出せるのは素晴らしいことだ。
「……手応え無し、か」
「「え?」」
アンジェリカの呟きに、二人は小さく声を出す。
その言葉の通り、スライムはしっかりとこちらに走り寄って来ていた。
斧で斬りつけたはずなのに、吹き飛んだだけだったのだ。切れていなかったのだ。
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