上 下
28 / 185
第二章 ギルド要請冒険者

#26 合同魔法

しおりを挟む
「じゃあ、燃やしますよ?」
 魔力を練り始めたフェーリエの肩を、ユースが掴んで制止した。
「どうしたんですか?」
「あれは、キング……じゃないのか?」
 下を伺う剣士の視線の先を見ると、蠢くスライムに中に、一際大きい個体がいた。
「あれは……キング、だねぇ。スライムのキングは初めて見るよ」
 顎に手を当てて物珍しそうにキングを眺める師匠。ここで他にどんなキングを見たのか。と聞けば、きっと殴られるだろう。
(……王冠、被せたいなぁ)
 前世でよく遊んだゲームを思い出す。あのゲームでは雑魚だったが、この世界でこの大量のスライムが相手では、普通のヒトには勝ち目が見えないだろう。
「師匠、合同魔法を打ちますか?」
 合同魔法は、同じ魔法を複数の魔法使いが同時に発動させることで、威力を向上させるものだ。たいていの魔法使いは息が合わないため、無駄に魔力を消費する。
「それが一番早いだろうねぇ」
 六歳の頃から一緒にいる二人には、造作も無いことだったが。
 広範囲を燃やすイメージ。持続して、燃焼させる。魔力使用量は50。簡単に二人でそう言い合い、魔法の準備をする。
 スライム達はまだこちらに気付いていない。
「いくぞ!」
「了解!」
 二人の魔力が炎を生み出す。崖下は炎の海となった。
「うわぁ……圧巻」
「魔法は、凄いモノだな」
 炎が爆ぜる音が大きい。あまりにも明るすぎて、思わず目を細めてしまう。
「スライムは油分を多く含んでるとは言っても、これは燃えすぎだな……」
 若干やり過ぎた感が否めない。崖下を四つん這いになって眺めるフェーリエは、苦笑いを浮かべた。
(キングと言っても、倒し方は変わらないんだなぁ。進化したりとかしないのかな?)
 フェーリエがそう思ったとき、三人のもとに崖下から勢いよく何かが迫ってきた。
「ぐぇっ!?」
 四つん這いになっていたフェーリエはとっさに動けなかった。しかし、マントの上から襟首を師匠に掴まれて逃れることが出来た。……情けない声を出してしまったが。
 襟首を掴まれ、尻餅をついたままのフェーリエは、傍に立っている二人とともに見てしまった。
「……なんで……燃えてないの!?」
 崖下から伸びてきたそれは、スライムの一部。腕もしくは触手のようなモノだった。
「なんて破壊力だ……」
 剣士が重々しく頷く。
 先程までフェーリエ達がいた場所は、地面が深く抉られていた。
「あちらさんは、やる気満々のようだね」
 さすがの師匠も、冷や汗を流している。それはそうだ。あれほど強く地面を抉ったあれが、まだ、フェーリエ達を狙ってきているのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

処理中です...