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第二章 ギルド要請冒険者
#17 種族
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「ここが魔物の住処か。なるほど、これほど近いと被害も増えるな」
村からほど近い場所の森の中。ユースが淡々と呟く。
「冷静に言ってる暇じゃ無いですよ!」
フェーリエは、傍らの剣士に向かって叫ぶ。二人は絶賛ボアの亜種に囲まれていた。
「キングとその群れを簡単に倒したのに、焦る必要があるのか?」
「それは……ないですけど」
あの時はあの時だ。今は見通しの悪い森の中、爆発魔法は使えない。
「状況が違いすぎますよ!」
叫ぶフェーリエを無視し、ユースは剣を抜く。
「半分ずつですよ!半分ずつ!」
膨れながらも、剣士に数の指定をし、魔力を練る。魔物が剣士に襲い掛かり、戦闘が開始した。
(ひとまず、索敵魔法ね……数は8。動きは素早くないし、多少の誤差は大丈夫か)
しゃがんだフェーリエは、地面に手を当てる。索敵した魔物の位置に、地面を鋭く盛り上がらせた『ロックランス』を発動させる。
突きでた岩が、魔物の腹部や頭に刺さり、ほとんどの魔物が息絶えた。
「おっと、一匹逃しちゃったぁ。師匠が見てたら殺されてたなぁ」
魔法を免れた魔物がフェーリエに突進してくる。取りこぼすなどたるんでると、きついお叱りを受けるだろう。
目の前の魔物が岩に貫かれるのを見ながら、フェーリエは苦笑いを浮かべた。
(さて、頼れる相方さんはっと……)
ユースは襲ってくる魔物を1体1体確実に倒していた。統率をとられてまとまって襲われても、対処できそうな余裕がある。
(魔法を使っている気配はないし、通常であの身体能力か……強いなぁ)
彼は獣人族の血を引いているのかもしれない。
獣人族は身体能力が高く、強靱な肉体を持っている者が多い。反対に妖精族は魔法適性が高く、魔力量が多い。このどちらの種族も、再生能力が高く、寿命が長いのが特徴だ。だが人間族だけは何にも特化しておらず、寿命も低い。しかし、その人間族に奴隷とされる獣人族は多い。
それ故、種族間での確執は高く、混血は迫害の対象となる。かく言うフェーリエは妖精族エルフのクオーターだ。彼がもしそうなのだとしたら、素性を隠す理由になるだろう。
誰だって、探られたくない事があるものだ。
「なんだ、もう終わっていたのか」
剣を鞘に収めながら、ユースが呟く。倒した魔物を風魔法で集め、一人思案していたフェーリエは、じっと剣士を見つめてしまう。
「……どうしたんだ?」
仮面に隠された顔からは表情は伺えない。灰色に近い銀色も、染め粉で染めているのだろうか。ならばもとの髪は綺麗な銀だろう。見てみた衝動があるが、ぐっと堪え、フェーリエは剣士に笑顔を向ける。
「私の勝ちですね」
剣士はどうでも良いと言うような顔をしたように見えた。剣士には自分の動向がどう見えるのだろうか。
(私みたいに、顔を隠しててもなんとなく表情が分かってると良いなぁ)
剣士は案外わかりやすいヒトのようだ。いつか、お互いをもう少し知る日が来るのだろうか。成り行きで組んだパーティーだが、これはこれで楽しかったりする。
村からほど近い場所の森の中。ユースが淡々と呟く。
「冷静に言ってる暇じゃ無いですよ!」
フェーリエは、傍らの剣士に向かって叫ぶ。二人は絶賛ボアの亜種に囲まれていた。
「キングとその群れを簡単に倒したのに、焦る必要があるのか?」
「それは……ないですけど」
あの時はあの時だ。今は見通しの悪い森の中、爆発魔法は使えない。
「状況が違いすぎますよ!」
叫ぶフェーリエを無視し、ユースは剣を抜く。
「半分ずつですよ!半分ずつ!」
膨れながらも、剣士に数の指定をし、魔力を練る。魔物が剣士に襲い掛かり、戦闘が開始した。
(ひとまず、索敵魔法ね……数は8。動きは素早くないし、多少の誤差は大丈夫か)
しゃがんだフェーリエは、地面に手を当てる。索敵した魔物の位置に、地面を鋭く盛り上がらせた『ロックランス』を発動させる。
突きでた岩が、魔物の腹部や頭に刺さり、ほとんどの魔物が息絶えた。
「おっと、一匹逃しちゃったぁ。師匠が見てたら殺されてたなぁ」
魔法を免れた魔物がフェーリエに突進してくる。取りこぼすなどたるんでると、きついお叱りを受けるだろう。
目の前の魔物が岩に貫かれるのを見ながら、フェーリエは苦笑いを浮かべた。
(さて、頼れる相方さんはっと……)
ユースは襲ってくる魔物を1体1体確実に倒していた。統率をとられてまとまって襲われても、対処できそうな余裕がある。
(魔法を使っている気配はないし、通常であの身体能力か……強いなぁ)
彼は獣人族の血を引いているのかもしれない。
獣人族は身体能力が高く、強靱な肉体を持っている者が多い。反対に妖精族は魔法適性が高く、魔力量が多い。このどちらの種族も、再生能力が高く、寿命が長いのが特徴だ。だが人間族だけは何にも特化しておらず、寿命も低い。しかし、その人間族に奴隷とされる獣人族は多い。
それ故、種族間での確執は高く、混血は迫害の対象となる。かく言うフェーリエは妖精族エルフのクオーターだ。彼がもしそうなのだとしたら、素性を隠す理由になるだろう。
誰だって、探られたくない事があるものだ。
「なんだ、もう終わっていたのか」
剣を鞘に収めながら、ユースが呟く。倒した魔物を風魔法で集め、一人思案していたフェーリエは、じっと剣士を見つめてしまう。
「……どうしたんだ?」
仮面に隠された顔からは表情は伺えない。灰色に近い銀色も、染め粉で染めているのだろうか。ならばもとの髪は綺麗な銀だろう。見てみた衝動があるが、ぐっと堪え、フェーリエは剣士に笑顔を向ける。
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剣士はどうでも良いと言うような顔をしたように見えた。剣士には自分の動向がどう見えるのだろうか。
(私みたいに、顔を隠しててもなんとなく表情が分かってると良いなぁ)
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