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第一章 覆面ズが出来るまで

#4 魔法袋

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「承諾を得れて良かったですね」
 そうフェーリエに声を掛けたのは、手のひらサイズの小さな小人、精霊のアウラだ。
「ほんと、よかったぁ」
 この世界での精霊は、女神の使者であり、信仰の対象である。フェーリエは、皐月の記憶が戻ったばかりの頃に、そうと知らずに契約した。精霊がヒトと契約することは実例がなく、ばれない方が身のためだった。このことを知っているのはクラヴィス屋敷に居る者と、魔法の師匠だけである。
 フェーリエがソファーでごろごろしていると、ノックと渋く張りのある声が聞こえた。
「お嬢様、奥様の冒険道具をお持ちしました」
 フェーリエが扉を開けると、小さな箱を抱えた執事のセバスチャンがそこに立っていた。
「わざわざセバスチャンが持ってきてくれたの?」
「はい。旦那様にとっても大事なものですので」
 柔らかく笑うセバスチャンから箱を受け取り、早速開封する。箱の中には、小さな袋しかなかった。
「?軽いと思ってたけど袋だけ?」
「フェーリエ様、これは魔法袋です。きっとこの中に色々と入ってるんですよ」
「アウラ様の言うとおりです。正直に申し上げますと、旦那様も含め、皆、魔力が足りず何も取り出せなかったのです」
 魔法袋、それは持ち主の魔力量で収納出来る量が変わる魔法道具だ。空間魔法であるため、これを作れる者は少ない。取り出すには、使用者と同等以上の魔力が必要になると言う、厄介な性質を持っている。
「誰も出せないって、さすがハーフエルフだなぁお母様は」
 その母に負けず劣らずの魔力を持っているクォーターのフェーリエである。
 袋に手を入れ、中にあるものを次々と机に広げていく。
「マントと、杖。ブーツに……魔石?」
「沢山有りますね。有事の際に使えそうです」
 魔石は魔物が保有しており、魔力が込められている。それを材料に多くの魔法道具は造られているが、単純に魔力補給もすることが出来る。変換効率は悪いが。
「このマント、顔が見えずらくなる魔法が掛かっているようですよ」
「なんでそんなピンポイントな……」
「奥様は目立ちたがり屋だったとか……」
 セバスチャンがほほほと笑いながら解説をする。身ばれは防ぎ、なおかつ存在は主張する。ということのようだ。
「ま、私も身ばれは避けたいし、有意義に使わせてもらうわ」
「では早速、ギルドにいかなくてはいけませんね」
 肩に乗ったアウラの提案に賛同し、フェーリエは立ち上がる。
「じゃあ、着替えましょうか。ありがとう、セバスチャン」
「いえいえ。どうか、無茶だけはなさらないでくださいね」
「私そんなに信頼無い?」
 口を尖らせたフェーリエに笑いかけ、セバスチャンは部屋を出て行った。
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