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4章 フェイトオブデッドエンド

112話 覚悟と決意

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 今日はミナを家に誘っている。近衛騎士になるにあたって、これからどうするか。
 それと、俺が見た未来についての話を、間接的にでもできたらいいなと。
 サッドオブロンリネスの応用とか、最上級魔法のこととか。
 俺が生きるため、つまりみんなの世界を守るために必要なことかもしれないから。

「ミナを守るためには、いつもそばで控えていた方がいいのだろうか。ソニアさんは、近衛騎士団長なのにけっこう離れているよな」

 俺に剣術を教えたり、メルキオール学園の教師をしていたりとな。
 助かってはいるのだが、王のことは大丈夫なのだろうかと心配になる。
 まあ、俺1人じゃなくて、ディヴァリアだって皆に力を貸しているのだから、気にしすぎなくてもいいだろうが。

 俺だけなら、そもそもずっとそばに控えていたところで足りないだろうからな。
 だから、ミナの安全はある程度確保されている今の状況はありがたい。
 王族というか、王に決まっている存在である以上、命を狙われることだってあるだろうからな。
 ディヴァリアは俺より優秀だし、ミナだってしっかりしている。
 だから、きっと大丈夫なはずだ。今は、俺が帝国との戦争で生き抜くことを考えるべき。

「心配はいりません。わたくしには身を守る手段がたくさんありますから。それこそ無数に」

「サッドネスオブロンリネスも使えるのか? 監視以外の手段もあるのか?」

「ええ、ありますよ。映像を他者に送って、視界を混乱させるやり方がね」

 俺がシャーナさんに見せてもらったものと同じだ。
 つまり、俺の知っているミナも、映像のときのミナと同じような能力を持っているのか。
 まさか、最上級魔法も? それで、戦闘ができないなんて評価になるならおかしくないか?
 確かに心奏具はメインウェポンではあるが、最上級魔法なんて、原作でも一握りしか使えなかったはずだが。
 俺なんて下級魔法しか使えない有様だぞ。それでも、勇者だなんて呼ばれているのに。

「それは例えば、王都にあるサッドネスオブロンリネスで見た映像を、俺に送りつけるような?」

「ええ。正しいですよ。ルミリエにはよく使っていますね。あなたを支える時に」

 だから、ルミリエは的確に俺の敵を声で仕留めていくことができた。
 俺の敵の位置をしっかり見ながら、声を飛ばすことができていたんだな。
 それにしても、心奏具はメチャクチャだな。俺のエンドオブティアーズなんて、大きさを変えることしかできないのに。
 ディヴァリアのチェインオブマインドには隠れた能力があったようだし、俺にもなにかあるかもな。

 ミナだって、監視する以外にも使えるというのなら、相当幅が広いというか、ひとつの能力に収まっていないというか。
 サクラだって、上級魔法を混ぜるというのはかなりおかしい。
 俺の知っている心奏具なら、上級魔法を撃つだけで限界のはずなんだ。
 なぜ今まで気が付かなかった? もっと早く分かっていれば、いろいろと検証できたのに。

 あるいは、エンドオブティアーズがユリアのホープオブブレイブで切れないことが能力なのか?
 ホープオブブレイブが切り裂けていないのは、今のところエンドオブティアーズだけだ。
 だとすると、俺は心奏具が壊れる心配をしなくていいことになるが。

 まあ、検証もなく実戦で壊れない前提で動くべきではない。
 どうしてもという状況なら、一か八かという程度だろう。
 エンドオブティアーズは確かに強力な心奏具だが、全貌は明らかになっていない。

 あるいは、心奏具には2つの能力があるなんてこと、ありえるのか?
 俺のエンドオブティアーズなら、形を変えることと壊れないこと。
 サクラのプロミスオブボンドなら、上級魔法を使うことと組み合わせること。
 ミナのサッドネスオブロンリネスなら、情報を集めることと送ること。

 この仮説は合っているのか、間違っているのか。
 何にせよ、もっと深く心奏具を理解する必要がある。今より強くなる手がかりかもしれないんだからな。

「なら、俺に使ってみてくれないか? 惑う感じを確かめてみたい」

 似たような能力を食らった時に、対策ができるかもしれないからな。
 俺が今後死なないためにも、できることはすべてやるつもりで居たい。

「分かりました。いきますよ」

 急にどこかよく分からない場所しか見えなくなった。
 ミナが目の前にいるはずなのに、誰か知らない人が知らない建物で話しているのを見ている。
 こんな事を戦闘中にされては、全方位に攻撃する以外の対策は打てない。
 とんでもなく恐ろしい能力じゃないか。よくマリオ達は原作で対応できたな。
 今みたいな状況で、どうやって勝てというのか。あるいは、原作ではもっと弱かったのか?

 とてもじゃないが、ミナに勝てる気がしない。
 本当に、俺は知り合い達の中では弱いことがよく分かる。
 それでも、生きるために全力で頑張らなければ。みんなの命も懸かっているんだから。
 というか、ミナにも協力してもらうべきなのだろうか。どうしたら良い?

「これは……凄まじいな。俺では勝つ手段が思いつかないぞ」

「そう言っても、リオンならば本番で勝つ気がします。勇者の名にふさわしく」

 ずいぶんと期待が重いな。いくら何でも、誰が相手でも勝てるほどじゃない。
 今のミナのような力を前にして、俺1人で勝つことは無理がある。
 だから、みんなの力を借りなければならないのだろうが。
 悲しいな。結局、俺だけでは何もできないに等しいのだから。

「俺1人では無理だ。だから、ミナも協力してくれないか?」

「もちろんです。わたくしはリオンの為ならばどんなことでもします。ためらいなどしません」

「ありがとう。ミナの力があるなら、心強いよ」

「こちらこそ、ありがとう。リオンが頼ってくれるという事実が嬉しいです」

 ああ、ありがたいな。俺が頼ることを喜んでくれるなんて。
 信頼できる人に協力してもらうことは、とても力になってくれる。
 俺だけの力だけでは限界があるというのはよく分かった。だから。

「助かる。お前が一緒なら、きっと勝てるはずだ」

「ええ。わたくしだって、リオンと一緒ならば誰にだって勝てる」

「そうありたいものだ。みんなの未来のためにもな」

「大丈夫。わたくしだけでなく、シルクも、ルミリエも、ディヴァリアも、サクラも。みんなあなたに力を貸すはず」

 きっと、ミナの言う通りになるだろうな。そう信じられるからこそ、できれば巻き込みたくなかった。
 だが、絶望の未来を避けるために、力を借りるほか無い。胸が苦しい気もするが、我慢するしか無いな。

「俺も同じ考えだな。だからこそ、俺も頑張らなくては。大切なみんなのためにな」

「わたくしだって、同じくらい頑張るつもりです。守られるだけの姫ではないのですよ」

「ありがとう。そういえば、お前は最上級魔法を使えるのか?」

「ええ。それがどうかしましたか?」

「いや、単に気になっただけだ。俺は下級魔法しか使えないからな」

「ふふ。あなたの代わりに、強い魔法を使って差し上げます。あなたの隣で、ね」

 ミナは落ち着いた笑顔をみせてくれる。穏やかで、とても落ち着く。
 可愛らしい顔をしている、金髪碧眼のいかにもな王女のミナだが、オトナな雰囲気もあるよな。
 新しい側面を知ることもできて、何よりだ。
 これからもミナとまた会うために、何度でもこんな時間を過ごすためにも。
 みんなの力を借りて、帝国との戦争を生き延びてみせる。

 ミナが王になる姿を見るためにも、絶対に負けられないんだ。改めて覚悟を決めた。
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