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1章 勇者リオンの始まり

18話 戦いの決意

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 ミナは有翼連合の残党がいる拠点を見つけたようだ。
 ディヴァリアの運営している孤児院が襲われたことで、ミナが調査してくれたらしい。

「わたくしの心奏具ならば、発見することは容易でしたね。まさに赤子の手をひねるようでしょうか」

 ミナの心奏具、サッドネスオブロンリネスの力は単純だ。本体から飛ばした端末からの情報を、ミナが受け取ることができる。ただ、端末の数はまさに無数と言えるほど。

 だから、ミナがその気になれば、この国すべてを監視することもできるらしい。
 真に恐るべきは、心奏具の力というよりもむしろミナの頭脳だろうな。なにせ、この国すべてを監視できるほどの情報を処理できるのだから。

「ミナの力には何度も助けられているからな。よく分かる」

 実際、ミナの力の応用範囲はとても広い。探しものレベルから、孤児院に入れられる子供を見つけたり、密会の場所探しに使ったり。
 ミナの能力は、使いよう次第ではとんでもない監視体制を築ける。
 ただ、今のミナならば、きっと人を助ける使い方をしてくれるはず。俺とディヴァリアが孤児を探す手伝いをしてくれた時のように。

「わたくしの力を、王にふさわしいものと言ってくれたあなただからです。あの時わたくしは確かに救われた。かごの鳥が羽ばたくきっかけほどに」

 実際、この国では武力がもてはやされているが。俺はミナの知性にこそ希望を見た。
 ミナならば、サッドネスオブロンリネスを使いこなして、きっとこの国の問題を解決してくれる。だから、俺はミナに王になってほしいんだ。
 まあ、ミナが王になるためには、問題が山積しているのだが。

「俺がお前の力になれているのなら、嬉しい話だ。ミナが王になったならば、ディヴァリアたちも喜ぶだろうな」

 ディヴァリアだってミナのことは好きでいるはず。
 それに、ルミリエなんて王様になったミナをたたえる歌を歌いたいと言っていた。
 ミナならば、きっと最高の王になってくれる。みんな信じているんだ。

「そうであれば、嬉しいですね。まるで舞い上がるような心地を味わえるでしょう」

 本当に、ミナが王になる姿を見たいものだ。きっと、最高の瞬間になるはず。
 俺も、ディヴァリアも、みんなも。きっと喜んで協力するはずだ。ミナが王になるまでの道も、ミナが王になってからも。

「俺だってきっと舞い上がるような気分だろうな。今のままでは難しいだろうが」

「そうですね。ただ、わたくしは必ず王になってみせます。あなたの言葉に応えるために。あなたのくれた、砂糖菓子のような気持ちに誓って」

 砂糖菓子って、またずいぶんな印象だな。それほどに、俺の言葉はミナに大きな影響を与えたのだろう。
 ミナが王になってくれれば、間違いなく嬉しい。だが、もっと大切なことは、ミナ自身が幸せになることだ。
 王になるために、ミナが不幸になってしまうのであれば何の意味もない。

「無理はするなよ。ミナが傷ついている姿は見たくないからな」

「分かりました。それで、話を戻しますが。有翼連合の本拠地は、学園のすぐそば。まさしく学園襲撃は本命だったのでしょう」

 なるほどな。となると、学園を襲撃された時ほどの人数はいないと見ていいか?
 ミナならば、有翼連合の戦力もつまびらかにできるかもしれない。
 だから、俺が考察するよりも、まずミナに聞いてみたほうがいいか。

「それで、敵の戦力はどれほどのものなんだ?」

「そうですね。リーダーのような存在が1人います。ほかは、雑兵ぞうひょうと言っていいかと。まさに烏合うごうの衆です」

 だとすると、ありがたい限りだ。
 ミナが俺に説明している以上、俺が戦いに向かうのだろうからな。
 ディヴァリアが向かうのならば、有翼連合の全戦力でも時間稼ぎすらできないだろうが。本当に、ディヴァリアの力は底知れない。

 いったい本編ではどうやって倒されたのだろうな。あそこまでの力、数でどうにかなるとは思えないが。
 記憶がハッキリしていればな。ディヴァリアへの対策が思い浮かんだかもしれない。

「後は移動手段だな。普通に移動すればいいのか?」

「わたくしとルミリエが案内します。それならば、茶菓子をつまむより簡単に侵入できるでしょう」

 ミナとルミリエの心奏具を組み合わせると、恐ろしいことになるからな。まったくもって、敵ではなくてよかったと思える。
 確か原作ではルートごとに別々の敵だったような気がするが。
 現実であるならば、協力していてもおかしくはなかった。今のように。

 ミナのおかげで敵の本拠地までたどり着く算段ができた。なので、俺がどう動くかをディヴァリアと話し合うことにする。俺よりいい案を出してくれるだろうからな。

「ディヴァリア、有翼連合への攻撃、どうする予定だ?」

「私は参加しないよ。その間、シルクと孤児院を守っておくね。念のためではあるけれど」

 なるほど。2人がいるのならば安心だ。
 シルクが守ってディヴァリアが攻撃。考えただけで敵にしたくない。
 ディヴァリア1人でも、戦力としては絶望的ではあるが。シルクがいるのならば、人質などの手段すら取れない。
 心奏具の結界で守るもよし、回復魔法で治療するもよしのシルクだからな。

「なら、孤児院は大丈夫だな。それで、俺1人で向かうのか?」

「サクラにも手伝ってもらおうかなって。一応、敵のリーダーは心奏具を使えるみたいだからね」

 まあ、サクラならば嫌とは言わないか。
 孤児院を大切に思ってくれているのは分かる。それに、有翼連合のような存在を許すやつでもない。何より、俺達を友達として支えてくれるだろうから。
 そんなサクラを戦場に連れて行くことに罪悪感もあるが。とはいえ、俺1人では限界がある。それはどうしようもない。

「サクラがいるのなら、心強いな。それに、あいつとならばうまく連携できる」

「私は連携は苦手だからね。リオンと協力するより、私1人のほうが強いから」

 本当に悔しい話だ。
 俺はディヴァリアの足元にも及ばない。サクラと協力してすら、一方的に負けるだけだった。
 そして、あの時ディヴァリアは間違いなく手加減していたから。
 軍隊を文字通り全滅させるようなやつが、俺達程度に手こずるはずが無いのだから。

「残念なことだ。お前と協力するのは楽しいだろうに」

 間違いなく本音だ。
 戦い以外では、すでに協力していた事はあるのだが。ノエルを始めとする孤児院の子供達を集める事とかな。
 2人で共に何かをすることは幸せな時間だったから。ディヴァリアが外道である事実を忘れられるほどに。

「私も残念だけど、仕方ないよね。チェインオブマインドで全部終わっちゃうから」

 サクラから聞いたのだが、学園を襲った有翼連合の集団は跡形も残らなかったそうだ。
 それほどの威力をほこる心奏具を持っているのだから。ディヴァリアが1人のほうが戦いやすいのも当然だ。

「まあ、聖女様なんだから、あまり暴力的だと思われてもな。だから、安心して俺たちに任せておけ」

「うん、そうだね。2人なら信じられるから。きっとうまくやってくれるって」

 ディヴァリアから信じられると言われている。それだけで、俺はどんな敵でも倒せるとすら思えた。
 有翼連合は残党といえど、強敵なはず。だとしても、サクラも隣にいることと合わせて、絶対に勝てると信じられるから。

 やるぞ。やってみせる。
 ノエル達のため。ディヴァリアの期待に応えるため。
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