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9章 価値ある戦い
320話 魔法使いの力
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俺に懸賞金をかけた黒幕がベージュ家だと判明したので、今は戦うための準備をしているところだ。ルースに頼んで転移のマーキングは済ませておいたから、後は仕掛けるタイミングを待つだけではある。
そのあたりは、主にミーアの動き次第になるな。戦うための口実を用意してくれるとのことなので、その宣言待ちだ。
俺がなんと言ってベージュ家に攻撃しても、どうしても反発があるだろう。ブラック家は、評判が悪い。それが改善しないことには、大きな動きはやりづらいんだよな。
やはり、人望の価値が分かるというものだ。あの人が言うのだから正しいと思わせれば、取れる手段が一気に広がる。
まあ、今からブラック家の評価を上げていくしかないのだが。とはいえ、時間がかかるからな。当面は、ミーアに頼ることになるかもな。あるいは、ラナとか。どちらも、慕われている存在だからな。
俺の味方で居てくれる人にも、まあ心当たりはある。だからといって、それだけで押し切れるほどの派閥を用意できてはいない。それに、俺に表立って味方しづらいだろう友人もいる。
結局のところ、ブラック家の方針は専守防衛にならざるを得ない。誰かの依頼で、大手を振って戦う以外には。まあ、俺の性に合っていると言えば合っているのだが。
それでミーアの通信を待っていると、その反応があった。
「さて、レックス君。こっちの準備は整ったわ! 後は、レックス君に任せるだけよ!」
これで、ようやく決着をつける準備が整った。今まで、何度も手出しされ続けてきたからな。その分の借りは、返させてもらおう。
いくらなんでも、懸賞金までかけてくる相手を見逃すことはできない。それで甘い顔をしていたら、今度は別の人間が同じようなことをするだけだ。だからこそ、舐められたままではいられない。
完全にヤクザか何かの理論ではあるが、相手がそういう動きをしてきたのだからな。同じやり方で返すだけのこと。
ここで妥協してしまえば、ブラック家の仲間や民衆に被害が出るだけだ。だからこそ、徹底的にやる必要がある。俺にケンカを売ったら、相応に痛い目を見るのだと思い知らせないといけない。それこそが、みんなを守ることにつながるだろう。
「一応聞いておくが、どんな大義名分があるんだ?」
「王家に反乱を企てている証拠を見つけたの! だから、反逆罪よ!」
それはまた、大変だな。なんとしても、倒さなければならない。ミーアやリーナにも危険が及ぶのなら、もはや遠慮する理由は完全に無くなった。もとから存在しなかったかもしれないが。
必ず、ベージュ家を叩き潰す必要がある。そうでなければ、俺達に平穏は訪れないだろう。
「それなら、確かに逃がしてはいけないか。ミーアの身にも危険が及びそうだし、確実に仕留めないとな」
「ありがとう、レックス君! だから、即応できるレックス君に任せたってことにしておくわね!」
転移の情報は、どの程度知られているんだろうな。それによっては、警戒されてもおかしくないと思うが。その気になれば、いつでも好きな人を暗殺できると認識されかねないのだし。
一応、制限はあるにはある。魔力を侵食させた場所じゃないと転移できないとか。まあ、便利さに比べたら、無いような制限ではあるのだが。
最悪の場合は、俺が転移して殺したと冤罪をなすりつけられかねないところなんだよな。まあ、それにどう対処するのかという話ではあるが。こちらで打てる手が、かなり少なくなりそうだ。
まあ、まずは目の前の敵について考えないとな。戦場で余計な考え事をするのは、良くない。
「分かった。なら、後はこっちでどうにかするよ。何人かは、連れて行くか」
「そうね! 手伝ってくれた人には、こっちで褒美を検討しているわ!」
そうなると、王家の褒美を必要としている人を連れて行くとか? いや、やめておこう。戦いに余計なものを紛れ込ませたら、勝てる戦いも勝てなくなってしまう。
「なるほどな。人員の選定には、気を付けないとな」
「好きにしてくれて良いわ! 口実なんて、私がどうにかするもの!」
「分かった。任せておいてくれ」
「じゃあ、必ず無事に帰ってきてね! そして、みんなでお茶会をしましょうね! 約束よ!」
結局、元の予定通りに、カミラとメアリに手伝ってもらうことに決めた。ふたりが褒美をもらうことで問題が起こるようには思えなかったからな。褒美目当てに人員を変えるのは、あまり好ましくないだろうという判断だ。
ということで、カミラとメアリのもとへと向かう。
「カミラ、メアリ、準備は良いか? 今回は、俺達の手で終わらせようと思う」
「ま、ブラック家の問題だものね。あたしたちでどうにかするのが、筋ってもんでしょ」
「お兄様の敵は、みんなやっつけちゃうんだから! メアリに任せて!」
見た感じ、やる気は十分みたいだ。なら、問題なさそうだな。一応、ガチガチに防衛を備えられた場合でもどうにかなる戦力だと、ミルラとジャンに聞いているからな。
とりあえずは、普通に突っ込んでいけばいいだろう。
「転移で攻め込む訳だから、備えられている可能性は低い。だが、気を付けてくれよ」
「ええ。つまんない戦いでケガなんかしてちゃ、バカらしいもの」
「お兄様には、心配かけたりしないの。メアリだって、強いんだから!」
「さて、行くか。どんな対応をしてくるものかな」
ということで、転移して目的地にたどり着く。ベージュ家の門の前には、大勢の兵がいた。ぱっと見で、1000人くらいは居そうな感じだな。
普通に考えれば、かなり多いような気がするのだが。それとも、貴族だと普通なのだろうか。いずれにせよ、感じる魔力からして、さしたる脅威ではなさそうではあるが。
「ふむ、やけに警備が多いな。どうする? 隠れてみるか?」
「メアリに任せて! あれくらいなら、メアリひとりで十分!」
「分かった。なら、メアリの力を見せてくれ」
「はいはい。あたしを巻き込まないようにしなさいよね」
「じゃあ、行くの! 雷炎岩竜巻!」
元気よくメアリが杖を前に構えると、そこから竜巻が現れた。岩が風に飛ばされており、電気や炎も舞い踊っている。その竜巻が何個もあり、それらが意思を持つかのように動いて、兵たちのもとへと向かっていった。
「なんだ、この竜巻は! どうなっている!」
「に、逃げなきゃ! あ、来るな! 来ないでくれ!」
「お前達、護衛の仕事を放棄する……がはっ!」
「なんなんだよ! これが、魔法だとでもいうのか!?」
あるものは岩で潰され、あるものは電気や炎で焦がし尽くされ、あるものは竜巻によって全身を引き裂かれていた。
総じて、敵はろくに抵抗もできないまま死んでいる様子だ。まあ、五属性というのは、個人で戦場の流れを変えるレベルの存在だからな。妥当なところではある。
「順調だな。俺と姉さんは、討ち漏らしに気をつけておくか」
「ま、退屈な仕事になりそうね。でも、良いわ。まだ本命は残っているもの」
「そうだな。建物ごと壊されたら、後で大変そうだ」
ということで、俺達は剣で残りを切り捨てていく。近くでメアリの竜巻が暴れ狂っているので、少しひやりとする場面もあった。
そんなメアリは、とても楽しそうに魔法を使っている。
「あはは! みんな、潰れちゃえ!」
「可愛いメアリも、戦いでは鬼神のごとしだな。意外な一面というか」
「あんた、目が曇ってるんじゃないの? ま、良いわ。ちょうど、これで最後みたいね」
「じゃあ、このまま侵入するか。当主だけは、逃がす訳にはいかない」
一通りの敵は倒されて、後は家の中にいる存在を倒すだけになった。さて、いよいよベージュ家の当主とご対面だな。果たして、どんなやつなのやら。
そのあたりは、主にミーアの動き次第になるな。戦うための口実を用意してくれるとのことなので、その宣言待ちだ。
俺がなんと言ってベージュ家に攻撃しても、どうしても反発があるだろう。ブラック家は、評判が悪い。それが改善しないことには、大きな動きはやりづらいんだよな。
やはり、人望の価値が分かるというものだ。あの人が言うのだから正しいと思わせれば、取れる手段が一気に広がる。
まあ、今からブラック家の評価を上げていくしかないのだが。とはいえ、時間がかかるからな。当面は、ミーアに頼ることになるかもな。あるいは、ラナとか。どちらも、慕われている存在だからな。
俺の味方で居てくれる人にも、まあ心当たりはある。だからといって、それだけで押し切れるほどの派閥を用意できてはいない。それに、俺に表立って味方しづらいだろう友人もいる。
結局のところ、ブラック家の方針は専守防衛にならざるを得ない。誰かの依頼で、大手を振って戦う以外には。まあ、俺の性に合っていると言えば合っているのだが。
それでミーアの通信を待っていると、その反応があった。
「さて、レックス君。こっちの準備は整ったわ! 後は、レックス君に任せるだけよ!」
これで、ようやく決着をつける準備が整った。今まで、何度も手出しされ続けてきたからな。その分の借りは、返させてもらおう。
いくらなんでも、懸賞金までかけてくる相手を見逃すことはできない。それで甘い顔をしていたら、今度は別の人間が同じようなことをするだけだ。だからこそ、舐められたままではいられない。
完全にヤクザか何かの理論ではあるが、相手がそういう動きをしてきたのだからな。同じやり方で返すだけのこと。
ここで妥協してしまえば、ブラック家の仲間や民衆に被害が出るだけだ。だからこそ、徹底的にやる必要がある。俺にケンカを売ったら、相応に痛い目を見るのだと思い知らせないといけない。それこそが、みんなを守ることにつながるだろう。
「一応聞いておくが、どんな大義名分があるんだ?」
「王家に反乱を企てている証拠を見つけたの! だから、反逆罪よ!」
それはまた、大変だな。なんとしても、倒さなければならない。ミーアやリーナにも危険が及ぶのなら、もはや遠慮する理由は完全に無くなった。もとから存在しなかったかもしれないが。
必ず、ベージュ家を叩き潰す必要がある。そうでなければ、俺達に平穏は訪れないだろう。
「それなら、確かに逃がしてはいけないか。ミーアの身にも危険が及びそうだし、確実に仕留めないとな」
「ありがとう、レックス君! だから、即応できるレックス君に任せたってことにしておくわね!」
転移の情報は、どの程度知られているんだろうな。それによっては、警戒されてもおかしくないと思うが。その気になれば、いつでも好きな人を暗殺できると認識されかねないのだし。
一応、制限はあるにはある。魔力を侵食させた場所じゃないと転移できないとか。まあ、便利さに比べたら、無いような制限ではあるのだが。
最悪の場合は、俺が転移して殺したと冤罪をなすりつけられかねないところなんだよな。まあ、それにどう対処するのかという話ではあるが。こちらで打てる手が、かなり少なくなりそうだ。
まあ、まずは目の前の敵について考えないとな。戦場で余計な考え事をするのは、良くない。
「分かった。なら、後はこっちでどうにかするよ。何人かは、連れて行くか」
「そうね! 手伝ってくれた人には、こっちで褒美を検討しているわ!」
そうなると、王家の褒美を必要としている人を連れて行くとか? いや、やめておこう。戦いに余計なものを紛れ込ませたら、勝てる戦いも勝てなくなってしまう。
「なるほどな。人員の選定には、気を付けないとな」
「好きにしてくれて良いわ! 口実なんて、私がどうにかするもの!」
「分かった。任せておいてくれ」
「じゃあ、必ず無事に帰ってきてね! そして、みんなでお茶会をしましょうね! 約束よ!」
結局、元の予定通りに、カミラとメアリに手伝ってもらうことに決めた。ふたりが褒美をもらうことで問題が起こるようには思えなかったからな。褒美目当てに人員を変えるのは、あまり好ましくないだろうという判断だ。
ということで、カミラとメアリのもとへと向かう。
「カミラ、メアリ、準備は良いか? 今回は、俺達の手で終わらせようと思う」
「ま、ブラック家の問題だものね。あたしたちでどうにかするのが、筋ってもんでしょ」
「お兄様の敵は、みんなやっつけちゃうんだから! メアリに任せて!」
見た感じ、やる気は十分みたいだ。なら、問題なさそうだな。一応、ガチガチに防衛を備えられた場合でもどうにかなる戦力だと、ミルラとジャンに聞いているからな。
とりあえずは、普通に突っ込んでいけばいいだろう。
「転移で攻め込む訳だから、備えられている可能性は低い。だが、気を付けてくれよ」
「ええ。つまんない戦いでケガなんかしてちゃ、バカらしいもの」
「お兄様には、心配かけたりしないの。メアリだって、強いんだから!」
「さて、行くか。どんな対応をしてくるものかな」
ということで、転移して目的地にたどり着く。ベージュ家の門の前には、大勢の兵がいた。ぱっと見で、1000人くらいは居そうな感じだな。
普通に考えれば、かなり多いような気がするのだが。それとも、貴族だと普通なのだろうか。いずれにせよ、感じる魔力からして、さしたる脅威ではなさそうではあるが。
「ふむ、やけに警備が多いな。どうする? 隠れてみるか?」
「メアリに任せて! あれくらいなら、メアリひとりで十分!」
「分かった。なら、メアリの力を見せてくれ」
「はいはい。あたしを巻き込まないようにしなさいよね」
「じゃあ、行くの! 雷炎岩竜巻!」
元気よくメアリが杖を前に構えると、そこから竜巻が現れた。岩が風に飛ばされており、電気や炎も舞い踊っている。その竜巻が何個もあり、それらが意思を持つかのように動いて、兵たちのもとへと向かっていった。
「なんだ、この竜巻は! どうなっている!」
「に、逃げなきゃ! あ、来るな! 来ないでくれ!」
「お前達、護衛の仕事を放棄する……がはっ!」
「なんなんだよ! これが、魔法だとでもいうのか!?」
あるものは岩で潰され、あるものは電気や炎で焦がし尽くされ、あるものは竜巻によって全身を引き裂かれていた。
総じて、敵はろくに抵抗もできないまま死んでいる様子だ。まあ、五属性というのは、個人で戦場の流れを変えるレベルの存在だからな。妥当なところではある。
「順調だな。俺と姉さんは、討ち漏らしに気をつけておくか」
「ま、退屈な仕事になりそうね。でも、良いわ。まだ本命は残っているもの」
「そうだな。建物ごと壊されたら、後で大変そうだ」
ということで、俺達は剣で残りを切り捨てていく。近くでメアリの竜巻が暴れ狂っているので、少しひやりとする場面もあった。
そんなメアリは、とても楽しそうに魔法を使っている。
「あはは! みんな、潰れちゃえ!」
「可愛いメアリも、戦いでは鬼神のごとしだな。意外な一面というか」
「あんた、目が曇ってるんじゃないの? ま、良いわ。ちょうど、これで最後みたいね」
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