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8章 導かれる未来

263話 敵の動き

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 カイトの依頼を受けて、商隊の護衛として同道することになった。まあ、やることは単純だ。荷物と商隊を守って、犯人の情報を探る。基本的にはジュリア達が戦って、俺は闇の魔力を敵に侵食させれば良い。後は、魔力を探って敵を追いかけるだけだ。

 商隊には単なる護衛として紹介されており、俺の立場は明らかになっていない。情報がどこから漏れるか分からない以上、妥当な判断だよな。

 ということで、商隊の動きに合わせながら、敵を待っていた。すると、山道に入ったあたりで、刃物を持った男3人と、杖を持った男1人が目の前に現れた。状況からするに、待ち伏せされていたのだろう。

 この感じだと、アードラ商会の内部にもスパイが混ざり込んでいそうな気がするが。まあ、そこはカイトの仕事だよな。俺は、盗賊がどこをアジトにしているか、誰が糸を引いているのかを調べるだけだ。

 そんなことを考えていると、盗賊たちはニヤつきながら話しかけてきた。

「よう。そこにあるもの、全部よこしな。別に良いぜ、断っても。殺して奪うだけだからな」

 最初から殺すつもりだろうに、よく言う。まあ、盗賊などそんなものだろう。問題は、杖を持った男の実力だよな。まあ、みんなに贈ったネックレスがあれば対処できる範囲だとは思うが。

「お前達、任せたぞ。こっちは、予定通りに動く」
「もちろんだよ。じゃあ、さっさと倒そうか! 収束剣ブレイブブレイド!」
「お任せください! すぐに終わらせますね! 獄炎インフェルノフレイム!」
「ご褒美は譲らない。だから、邪魔。雷炎槍ブラッドジャベリン

 ジュリアは魔力を収束させた剣を叩きつけ、シュテルはフェリシアのように火柱を放ち、サラは炎と雷を一直線に放つ。敵は避けるものの、ほうほうの体といった様子だ。とりあえず、死んでいないようで安心した。

「なんだ、こいつら! ただの商人じゃないのかよ! おい、どうにかできないのか!?」

 剣を持った方の盗賊が騒いでいる。杖を持った方につかみかかり、前後に揺すっている。俺達が殺す気だったら、大きな隙だっただろうな。今まで、楽に殺せる敵ばかりを相手にしてきたのだろう。それにしても、動揺し過ぎだと思うが。

 まあ、敵はジュリア達に集中しているようなので、こっそりと闇の魔力を侵食させておいた。

「訳の分からない魔法を撃ってくる! こんなやつ、勝てるかよ! 逃げるぞ!」

 その言葉と同時に、杖を持ったやつは駆け出していく。それを見て、残りの3人も散り散りとなって逃げ出していった。

「おい、追わなくて良いのか!? あんた達なら、殺せるだろ!?」

 商人は焦っている様子だが、計画通りなんだよな。さて、どうしたものか。今回優先すべきは、根っこを抑えること。そうなると、追跡した方が良いよな。時計をダメにするくらいは許可されていたのだし。

「話が伝わっていないのか? まあ良い。目的地に着いたら、お別れだ」
「帰りはどうすれば良いんだよ!?」

 にらみながら言われるが、予定通りなんだよな。カイトからも話が入っていたはずなのだが。実際に襲われるだなんて思っていなかったのだろうか。何度も事件が起こっているだろうに。

 死なれたら寝覚めが悪いとはいえ、所詮は今回限りの付き合いだ。多少嫌われたところで、知ったことではない。どうせ、俺が誰なのかも知らないのだから。

「そこまで面倒を見る気はないかな。こっちには、こっちの仕事があるから」
「というか、商品は売り終えるんですよね? 奪うもの、特に無いじゃないですか」
「俺の命を狙ってきたのかもしれないだろ!」

 つかみかかってきそうな勢いだが、流石にそこまではしてこない。まあ、ジュリア達の実力を見ているだろうからな。手を出したりするのは、怖いのだろう。

 というか、状況を考えたら積み荷が原因と分かるはずなのだが。どう説明したら、納得してもらえるだろうか。完全に、理屈じゃなくて感情で判断している様子だからな。

「知らない。それより、後で抱っこ。今回は、我慢しない」

 サラは相手のことを見もせずに、こちらに擦り着いてくる。その様子を見た商人は、顔を真っ赤にして叫びだす。

「この薄情者! だったら、もう良いよ! 好きにしろ!」

 そのまま動き出し、残りの商隊はあちらとこちらを見た後、トボトボと着いていく。これなら、着いていっても無駄だろうな。

 なら、もうここからは自由に行動できる。そう考えよう。

「……ふむ。むしろ都合が良いか? 闇の魔力は、侵食させてある。後は動きを確認するだけだ」
「へー、足跡、全部別の場所に向かってるね。どこかで合流するのかな?」

 ということで、魔力を追跡していく。動く方向をまとめていると、あることが分かった。

「感覚だと、うち3人は集まるらしいな。あと一人は、明らかに別の場所に向かっている」

 おそらくは、魔法使いと残りの盗賊で分かれている。そうなると、魔法使いの方が気になるところではある。黒幕に近いだろうからな。ただ、残りの盗賊だって、完全に無視はできないんだよな。そもそも盗賊なのだから。放っておいたら、被害が出るのは間違いない。

「じゃあ、どっちを追いかける? 転移すれば、それで良いでしょ?」
「どっちも確認すれば良い。転移した先に魔力を侵食させておけば、後で調査できるからな」
「それはつまり、二手に分かれた両方の拠点を探るということですね」
「ああ、そういうことだ。ふむ。片方は集まったみたいだな。行くぞ」

 ということで、相手がぎりぎり見える程度の位置に転移する。相手の動きと座標を確認しておいたので、空中や壁の中に転移する心配はない。そうなったところで、闇の魔力があれば体は守られるだろうが。

 着いた場所を見回していくと、ボロボロになった砦のようなものだった。

「ふーん、いかにもな盗賊の拠点って感じだね。どうする? 制圧する?」
「今のところは、もう片方の動きを追いたい。そっちが問題の根っこな気がするからな」

 盗賊が動いたところで、魔力で追跡できるからな。それに、この砦に闇の魔力を侵食させておけば、相手が居ないときでも転移できる。なら、根本に対処したいところだ。

「なら、追いかける。ラナ様にも報告しないと」

 ということで、動きが止まった魔法使いの方に転移する。そこには、豪華な城のようなものがあった。

「ふむ、見た感じ、貴族の屋敷か? ここは、スマルト領だったよな?」
「うん、そう聞いているよ。なら、領主が元凶なのかな」

 もう少し情報を集めないと確定はしないだろうが、可能性は高いよな。ここに魔力を侵食させておけば、近くの人に話を聞いても良い。とにかく、拠点は分かった。それだけで、重要な情報と言えるだろう。

「とりあえず、今の成果はこれで良いだろう。貴族となると、そう簡単には殺せない」

 勝手に殺せば、色々な問題が起こることは目に見えているからな。下手したら、ブラック家が乗っ取りを企んだとか思われるはずだ。

「なら、断罪するだけの条件を整える必要がありますね」
「そういうことだ。どこまでできるのかは、今後の働き次第だな」
「じゃあ、ご褒美たくさん。それだけで、力を尽くす」

 さて、次に向けて準備を進めないとな。誰が犯人なのかを確定させて、そいつを罪人にする。そこまで進めて、ようやく問題が解決したと言えるだろう。

 改めて、しっかりやらないとな。
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