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7章 戦いの道
238話 理解の形
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フェリシアに、再び呼び出された。いつものごとく、カミラとメアリも一緒だ。もう、話の内容は分かりきっている。だが、ちゃんと聞くことは大事だからな。
俺は、フェリシアに敵対している家については、ほとんど何も知らないと言って良い。正直、貴族としてはまずいのだろう。ブラック家の親類であるチャコール家ですら、知らなかったくらいなのだから。
まずは、フェリシアを通して知っていくところからだろうな。その後に、調べる必要も出てくるはずだ。間違いなく、今後にとって重要な考えになるだろう。
どの家がどんな産業や文化を抱えているかを知って、その上で取引などを行う。絶対に訪れる未来だろうからな。
まあ、目の前の問題を乗り越えることをおろそかにはできない。まずは、最後の家をどうするかを考えてからだな。できれば、並行したいところではあるが。俺の頭でどこまでできるかが問題だ。
フェリシアは一礼をしてから、ゆっくりと語りだす。威風が漂う感覚があるな。
「さて、皆様。最後の敵は、シアン家になりましたわね」
「どんな相手なんだ? それ次第で、対応が変わってくるよな」
「そうね。今度こそ、退屈じゃなければいいけど」
「メアリは、どんな相手でも頑張るよ!」
さて、厄介な相手でなければ良いものだが。ただ、俺がいれば、大抵の相手には勝てるはずだ。少なくとも、ゲリラ戦でなければ。俺が困るのは、巻き込んではいけない相手がいる状況だからな。かつて、学校もどきが盗賊に襲われた時のような。
それがなければ、全力で魔法を叩きつけるだけで倒せる相手の方が、明確に多い。なにせ、俺はフィリスにも勝てるほどなんだ。万の軍を文字通り全滅させられる、最強格の魔法使いに。
だから、干渉のタイミングを間違えなければ、どうにかなるはずなんだ。ただ、フェリシアにも功績が必要だというのは、理解できる。
全部俺が解決してしまえば、フェリシアの実力が疑われるからな。だからこそ、彼女は前に出るのだろう。貴族というのは、面倒なものだ。
「シアン家の当主、エトランゼ・アスク・シアンは四属性ですわ」
四属性使いとなると、かなり強いことになるな。大抵、三属性使いとは比べ物にならないほどだ。だからこそ、これまでのようにはいかないかもな。
ただ、俺なら勝てる。五属性使いにすら、それも圧倒的な上澄みにすら勝てるのが、俺なのだから。
とはいえ、俺が最初から出るのは、難しいのだろうな。最悪の場合は、フェリシアがなんと言おうが手を出すつもりではあるが。
「ふーん。少しは、マシな相手なのかもね」
「前のメアリより、強いのかなあ?」
「レックスさんにとっても、カミラさんにとっても、見る価値のある相手だと思いますわよ」
楽しそうに笑っている。それなのに、獰猛な獣のような気配を感じる。これは、戦うつもりなんだろうな。心配ではあるものの、必要なことだとは理解できる。
だが、それでも言っておくべきことはあるよな。きっと、無駄に終わるとしても。
「それほどに強いのか? なら、俺が出ようか?」
「あたしもってことは、武器を使うのね。剣かしら?」
「槍を使う女傑として、知られておりますわ」
なるほどな。剣と魔法の融合が、俺とカミラの目指す先だ。だから、見る価値があると。実際、どうなのだろうな。興味は確かにある。だが、フェリシアが素早く倒してくれる方が嬉しいんだよな。
よく見る時間があるということは、長引いているということ。つまり、苦戦しているということなのだから。俺は、フェリシアの安全が一番大事なんだ。
「ふーん。まあ、悪くはないんじゃない? それで? フェリシア、あんたは戦いたいんでしょ?」
「ええ。わたくしは、レックスさんのパートナーに相応しいわたくしで居るべきですもの」
穏やかに微笑んでいる。俺としては、本音では止めたい。だが、きっとダメだ。自分の目標を否定されたら、誰だって傷つく。
それに何より、フェリシアが個人で危険な敵と戦う可能性だってある。その時に、立ち向かう手段を持っているかどうか。とても大切なことなのだから。フェリシアの成長を、邪魔したりできない。
ただ、例外はある。フェリシアが死にそうな時は、なりふりなど構わない。もちろん、カミラやメアリが同じ状況だろうと。
「無理はしないでほしいんだがな。プライドのために命を犠牲にするのは、無駄じゃないか?」
「それが、貴族というものですわ。ただ、わたくしは犠牲になるつもりなどありません」
胸を張って語っている。きっと、勝算はあるのだろう。無策で突っ込むような人間じゃないのは、よく知っているつもりだ。
なら、信じたい。フェリシアなら、勝ってくれると。新しい未来を、紡いでくれると。
一属性使いと四属性使いなんて、本来は勝負自体が成立しない差だというのにな。恐ろしいことだ。だが、頼もしい。
「メアリなら、たぶん勝てるよ? 五属性だもん!」
「あたしは、どうかしらね。でも、今回は譲ってあげるわ。その分は、バカ弟に付き合ってもらうから」
「いいなー! ねえねえ、メアリにも付き合ってよ!」
「おふたりとも、ありがとうございます。それで、レックスさん。応援してくださいますわよね?」
小首をかしげながら、問いかけられる。フェリシアが勝ってくれるのなら、それで十分だ。俺が怖いのは、負けてしまうことなのだから。いや、違うな。犠牲になってしまうことだ。
だから、俺の気持ちなんて、決まりきっている。
「応援はする。だが、限度はあるからな。ネックレスは、絶対に外さないでくれよ」
「もちろんですわ。わたくしだって、レックスさんを悲しませたくはありませんもの」
にこやかに言う。そっと、自分の胸に手を当てながら。そう言ってくれるのなら、大丈夫なはずだ。フェリシアは、俺にウソをついたりしない。少なくとも、騙す目的では。信じているからな。
「分かっているのなら、良い。必ず、勝ってくれよ」
「ええ。わたくしは、レックスさんと並び立つ存在。それを、証明してみせますわ」
「メアリだって、お兄様の隣に居たいよ!」
「まあ、良いんじゃない? ブラック家の外にも味方がいる。悪くないわ」
「それは、確かに……。でも、お兄様は渡さないからね!」
「ええ、受けて立ちますわ。わたくしは、堂々と戦いましょう。そして、誰が一番なのかを示しましょう」
まっすぐな目で、こちらを見ている。3人の争いが大きくならないのなら、多少の口喧嘩くらいは問題ない。流石に、妨害し合うなんて未来はないはずだからな。
それにしても、余裕を感じる態度だ。正妻の余裕という言葉が浮かんだが、気のせいなのかどうなのか。
「結果なんて、見えてると思うけどね。ま、好きにすれば良いわ」
「メアリが、お兄様の一番になるんだから!」
「ふふっ。わたくしは、理解したのです。レックスさんに何をすれば、好意を稼げるのか。何を望むのか、ね」
俺の望みは、みんなが幸せであることだ。好意は、何をしたら稼げるのだろうな。ただ、フェリシアは俺の中でも大きい存在なのは確かだ。実際、最大の理解者だと思っている。
あるいは、俺自身ですら理解していない何かを、理解しているのかもな。それなら、きっと大丈夫なはずだ。致命的な未来は、訪れないだろう。
「だから、堂々と戦うと? あたし達の足を引っ張らないように?」
「ずるい! メアリだって、お兄様に好きになってもらうんだから!」
「ね、レックスさん。わたくしは、あなたを支えて差し上げますわよ?」
ニッコリと笑うフェリシアからは、引き込まれそうな魅力を感じた。
俺は、フェリシアに敵対している家については、ほとんど何も知らないと言って良い。正直、貴族としてはまずいのだろう。ブラック家の親類であるチャコール家ですら、知らなかったくらいなのだから。
まずは、フェリシアを通して知っていくところからだろうな。その後に、調べる必要も出てくるはずだ。間違いなく、今後にとって重要な考えになるだろう。
どの家がどんな産業や文化を抱えているかを知って、その上で取引などを行う。絶対に訪れる未来だろうからな。
まあ、目の前の問題を乗り越えることをおろそかにはできない。まずは、最後の家をどうするかを考えてからだな。できれば、並行したいところではあるが。俺の頭でどこまでできるかが問題だ。
フェリシアは一礼をしてから、ゆっくりと語りだす。威風が漂う感覚があるな。
「さて、皆様。最後の敵は、シアン家になりましたわね」
「どんな相手なんだ? それ次第で、対応が変わってくるよな」
「そうね。今度こそ、退屈じゃなければいいけど」
「メアリは、どんな相手でも頑張るよ!」
さて、厄介な相手でなければ良いものだが。ただ、俺がいれば、大抵の相手には勝てるはずだ。少なくとも、ゲリラ戦でなければ。俺が困るのは、巻き込んではいけない相手がいる状況だからな。かつて、学校もどきが盗賊に襲われた時のような。
それがなければ、全力で魔法を叩きつけるだけで倒せる相手の方が、明確に多い。なにせ、俺はフィリスにも勝てるほどなんだ。万の軍を文字通り全滅させられる、最強格の魔法使いに。
だから、干渉のタイミングを間違えなければ、どうにかなるはずなんだ。ただ、フェリシアにも功績が必要だというのは、理解できる。
全部俺が解決してしまえば、フェリシアの実力が疑われるからな。だからこそ、彼女は前に出るのだろう。貴族というのは、面倒なものだ。
「シアン家の当主、エトランゼ・アスク・シアンは四属性ですわ」
四属性使いとなると、かなり強いことになるな。大抵、三属性使いとは比べ物にならないほどだ。だからこそ、これまでのようにはいかないかもな。
ただ、俺なら勝てる。五属性使いにすら、それも圧倒的な上澄みにすら勝てるのが、俺なのだから。
とはいえ、俺が最初から出るのは、難しいのだろうな。最悪の場合は、フェリシアがなんと言おうが手を出すつもりではあるが。
「ふーん。少しは、マシな相手なのかもね」
「前のメアリより、強いのかなあ?」
「レックスさんにとっても、カミラさんにとっても、見る価値のある相手だと思いますわよ」
楽しそうに笑っている。それなのに、獰猛な獣のような気配を感じる。これは、戦うつもりなんだろうな。心配ではあるものの、必要なことだとは理解できる。
だが、それでも言っておくべきことはあるよな。きっと、無駄に終わるとしても。
「それほどに強いのか? なら、俺が出ようか?」
「あたしもってことは、武器を使うのね。剣かしら?」
「槍を使う女傑として、知られておりますわ」
なるほどな。剣と魔法の融合が、俺とカミラの目指す先だ。だから、見る価値があると。実際、どうなのだろうな。興味は確かにある。だが、フェリシアが素早く倒してくれる方が嬉しいんだよな。
よく見る時間があるということは、長引いているということ。つまり、苦戦しているということなのだから。俺は、フェリシアの安全が一番大事なんだ。
「ふーん。まあ、悪くはないんじゃない? それで? フェリシア、あんたは戦いたいんでしょ?」
「ええ。わたくしは、レックスさんのパートナーに相応しいわたくしで居るべきですもの」
穏やかに微笑んでいる。俺としては、本音では止めたい。だが、きっとダメだ。自分の目標を否定されたら、誰だって傷つく。
それに何より、フェリシアが個人で危険な敵と戦う可能性だってある。その時に、立ち向かう手段を持っているかどうか。とても大切なことなのだから。フェリシアの成長を、邪魔したりできない。
ただ、例外はある。フェリシアが死にそうな時は、なりふりなど構わない。もちろん、カミラやメアリが同じ状況だろうと。
「無理はしないでほしいんだがな。プライドのために命を犠牲にするのは、無駄じゃないか?」
「それが、貴族というものですわ。ただ、わたくしは犠牲になるつもりなどありません」
胸を張って語っている。きっと、勝算はあるのだろう。無策で突っ込むような人間じゃないのは、よく知っているつもりだ。
なら、信じたい。フェリシアなら、勝ってくれると。新しい未来を、紡いでくれると。
一属性使いと四属性使いなんて、本来は勝負自体が成立しない差だというのにな。恐ろしいことだ。だが、頼もしい。
「メアリなら、たぶん勝てるよ? 五属性だもん!」
「あたしは、どうかしらね。でも、今回は譲ってあげるわ。その分は、バカ弟に付き合ってもらうから」
「いいなー! ねえねえ、メアリにも付き合ってよ!」
「おふたりとも、ありがとうございます。それで、レックスさん。応援してくださいますわよね?」
小首をかしげながら、問いかけられる。フェリシアが勝ってくれるのなら、それで十分だ。俺が怖いのは、負けてしまうことなのだから。いや、違うな。犠牲になってしまうことだ。
だから、俺の気持ちなんて、決まりきっている。
「応援はする。だが、限度はあるからな。ネックレスは、絶対に外さないでくれよ」
「もちろんですわ。わたくしだって、レックスさんを悲しませたくはありませんもの」
にこやかに言う。そっと、自分の胸に手を当てながら。そう言ってくれるのなら、大丈夫なはずだ。フェリシアは、俺にウソをついたりしない。少なくとも、騙す目的では。信じているからな。
「分かっているのなら、良い。必ず、勝ってくれよ」
「ええ。わたくしは、レックスさんと並び立つ存在。それを、証明してみせますわ」
「メアリだって、お兄様の隣に居たいよ!」
「まあ、良いんじゃない? ブラック家の外にも味方がいる。悪くないわ」
「それは、確かに……。でも、お兄様は渡さないからね!」
「ええ、受けて立ちますわ。わたくしは、堂々と戦いましょう。そして、誰が一番なのかを示しましょう」
まっすぐな目で、こちらを見ている。3人の争いが大きくならないのなら、多少の口喧嘩くらいは問題ない。流石に、妨害し合うなんて未来はないはずだからな。
それにしても、余裕を感じる態度だ。正妻の余裕という言葉が浮かんだが、気のせいなのかどうなのか。
「結果なんて、見えてると思うけどね。ま、好きにすれば良いわ」
「メアリが、お兄様の一番になるんだから!」
「ふふっ。わたくしは、理解したのです。レックスさんに何をすれば、好意を稼げるのか。何を望むのか、ね」
俺の望みは、みんなが幸せであることだ。好意は、何をしたら稼げるのだろうな。ただ、フェリシアは俺の中でも大きい存在なのは確かだ。実際、最大の理解者だと思っている。
あるいは、俺自身ですら理解していない何かを、理解しているのかもな。それなら、きっと大丈夫なはずだ。致命的な未来は、訪れないだろう。
「だから、堂々と戦うと? あたし達の足を引っ張らないように?」
「ずるい! メアリだって、お兄様に好きになってもらうんだから!」
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