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4章 信じ続ける誓い
114話 捨てきれないもの
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メアリとジャンの様子を見ることには成功したし、もう帰っても良いかもしれない。とはいえ、まだ時間に余裕はあるんだよな。さて、どうしたものか。
父と母を無視したら、心象は悪くなりそうな気もする。それは、あまり好ましいとは言えないよな。ただ、時間がなくて仕方がない、みたいな状況なら、一応言い訳はできる。
まあ、時間が余っているのなら、会った方が無難か。それなら、まずは母の方から探しに行くとするかな。
そう考えていると、足音が後ろから聞こえてくる。念の為に警戒しながら振り向くと、母が来ていた。探す手間が省けたな。
「レックスちゃん、ここに居ましたのね。探しましたわよ」
「どうしたんだ、母さん。急に探しにくるなんて」
俺を訪ねてくるのだから、何か用があるのだろう。まあ、母の方なら、あまり警戒はしなくていいか? 美容魔法を作ったから、エルフの血を奪う事件は防げるだろうし。
他には、原作で印象的な事件は、特にないんだよな。普通の人と言えば間違っているが、極端な悪事は起こしていなかったはずだからな。
いや、エルフを大勢殺して血を浴びるのは大事件なのだが。ただ、それ以外には無いというだけで。
だから、今のところは、そこまで警戒していない。大事にされているのは実感しているし、俺を殺すデメリットも、当人的には大きいだろうからな。
「もう、可愛い息子に会いたいと思って、おかしいのかしら?」
「ああ、様子を気にしてくれたのか。ありがとう、母さん」
まあ、久しぶりに帰ってきたのなら、おかしなところがないかを気にするくらいはするか。一応、可愛い息子だと思っている様子だし。
もしかしたら、妙な愛情を持つ可能性も、あるにはある。ただ、それを警戒するのは、優先順位が低い。もっと直接的な脅威は、たくさんあるのだから。
「当然ですわよ。レックスちゃんは、誰よりも大切な子なんですもの」
表情からは、本気を感じる。だから、安心はできるはずだ。まあ、カミラやメアリ、ジャンのことをどう思っているのかという問題はあるにしろ。
誰よりも大切だと思われるのは、確かにありがたい。だが、他の人と極端な優劣をつけられても、それはそれで面倒なんだよな。
まあ、自意識過剰かもしれないが。大事なことではあるのだが、母と他の人の関係よりも、俺と他の人の関係の方が重要だ。
あまり、気にしすぎても仕方がない。どうせ、アストラ学園に居るうちは、家族に対して大きな干渉はできないのだから。
「それで、顔を見る以外には、何か用事はないの?」
「もちろん、ありますわ。レックスちゃん、例の魔法を、かけていただけませんこと?」
ああ、それを忘れていたな。美容のために大勢のエルフを殺すまでやる人間なのだから、当たり前じゃないか。
これは、致命的な失敗をするところだったな。母の美容への考えを無視するのは、危険すぎる。これからは、自分から積極的に、美容魔法を使っていかないとな。
「ああ、良いよ。母さんも、できるだけキレイで居たいよね」
「それもありますわ。ですが、大切な親子のスキンシップですもの」
「あまりベタベタするのは、勘弁してほしいんだけど」
実際、かなり困る。相手のいろいろな部分に触れる必要があるからな。危険なところは、一応避けてはいるのだが。エスカレートすると、大変なことになりかねない。
というか、俺にだって性欲はあるからな。母とはいえ、実感は薄い。本当に疲れてしまいそうだ。実際に母と思っている相手と触れ合うのと、どっちが楽だろうな。
母は、なんだかんだで美人だからな。周囲に幼い人間が多い中で、数少ない大人だ。だからといって、性的な目で見ていい相手ではない。難しい問題だ。
「もう、反抗期ですの? わたくしは、こんなにレックスちゃんを愛しておりますのに」
「というか、一緒にお風呂に入る歳でもないし……」
「あら、良いことを聞きましたわね。レックスちゃんが一日居る時は、一緒に入りますわよ」
「余計なこと言っちゃったな……」
本気で本音だ。体の年齢でも、10代前半。もう、母とは別に入る年齢だろう。転生前のことを考えたら、あり得ないレベル。
なんというか、頭を抱えたいくらいだ。だからといって、嫌がっている姿を見せるのは、良い手段とは言えない。恥ずかしがっていると思われるくらいならともかく。嫌っていると思われたら、大問題だからな。
「もう、照れていますのね。いつまで経っても、私とレックスちゃんは親子ですのに」
「いいでしょ、別に。それより、部屋に向かおうよ。施術、するでしょ?」
「もちろんですわよ。じっくりたっぷり、ふれあいますわよ」
ということで、母の部屋へ行く。中に入ると、母は服を脱いだ上で、ベッドで横になっていた。ブレスレットだけ、付けたまま。
ああ、愛されているのだと実感できてしまう。ブレスレットは、俺が贈ったものだからな。大切にされていると、今の行動だけで分かるんだ。
「レックスちゃん、遠慮なんてしなくていいわ。好きに、触ってくださいな」
「仕方ないなあ。まあ、美容魔法には必要なことだからね」
「恥ずかしがらずとも、良いですのに。あなたになら、全てをさらけ出せますわ」
「絶対に何か間違っているよ……」
「そんなこと、ありませんわよ。正しい親子の形ですわ」
ということで、危ない場所に触れなくて済むように、慎重に魔法をかけていく。できることなら、手を触れずに魔法を使えるようになりたいものだ。
攻撃魔法より、かなり繊細な扱いが必要な魔法だから、遠隔操作は難しい。それだけの話が、俺に苦労を運んでくるのだ。
しばらくして、全身に魔法をかけた。明らかに肌の調子が良くなっているから、成功だ。
「これで終わりだよ、母さん」
「やはり、レックスちゃんの魔法は素晴らしいですわね。また帰ってくるまで受けられないと思うと、悲しいですわ」
それで美容に困って、エルフに手を出されたら困る。なら、対策が必要だよな。何ができるだろうか。
「そっか。俺が居ないと、この魔法は使えないからね。……あ、良いことを思いついた」
「レックスちゃんのことですから、きっと素晴らしい考えなのでしょうね」
「母さん、渡したブレスレットを貸してくれる? ちょっと、試したいことがあるんだ」
「もちろんですわ。レックスちゃんなら、何をしても良いんですのよ。もし、失敗しても。美しさを、失ったとしても。あなたなら」
おいおい、美しさと天秤にかけられるとか、ウソだとしても、とんでもないぞ。でも、希望が出てきたかもしれない。
ここまで愛されているのなら、いざという時に、敵にならないでいてくれるかもしれない。そんな考えが浮かんでくる。
今のまま進んでいけば、あるいは。なら、全力で母のために、力を尽くすべきだろうな。できるだけ、相手の愛情を深められるように。
「そんなリスクのあること、やらないって……。まあ、任せてよ」
ということで、ブレスレットに魔法を込めていく。ついでに、治癒の魔法も。防御魔法はもとから込められているし、悪事を働かれると、厄介ではある。
それでも、信じたい心がある。愛されているのは実感できるから、敵にならないでほしいと思ってしまう。この感情は、正しいのかどうなのか。
「とりあえず、これで、ブレスレットを付けている限りは、最低限の美容魔法が発動するはずだよ」
「ありがとう、レックスちゃん。でも、これからも、わたくしに美容魔法をかけてくださいましね」
スキンシップとして、ということなのだろうな。なら、これからも頑張るとするか。それで敵が減るのなら、安いものだろう。
「母さんが望む限りは、そうするつもりだよ」
「大事な親子の時間を、これからも続けていきますわよ。ねえ、レックスちゃん」
いつか、この人も殺す時が来るのだろうか。そう考えると、胸が苦しくなる。できれば、ずっと味方で居てほしい。そう願ってしまう。今の感情が間違いでないことを、祈るばかりだ。
父と母を無視したら、心象は悪くなりそうな気もする。それは、あまり好ましいとは言えないよな。ただ、時間がなくて仕方がない、みたいな状況なら、一応言い訳はできる。
まあ、時間が余っているのなら、会った方が無難か。それなら、まずは母の方から探しに行くとするかな。
そう考えていると、足音が後ろから聞こえてくる。念の為に警戒しながら振り向くと、母が来ていた。探す手間が省けたな。
「レックスちゃん、ここに居ましたのね。探しましたわよ」
「どうしたんだ、母さん。急に探しにくるなんて」
俺を訪ねてくるのだから、何か用があるのだろう。まあ、母の方なら、あまり警戒はしなくていいか? 美容魔法を作ったから、エルフの血を奪う事件は防げるだろうし。
他には、原作で印象的な事件は、特にないんだよな。普通の人と言えば間違っているが、極端な悪事は起こしていなかったはずだからな。
いや、エルフを大勢殺して血を浴びるのは大事件なのだが。ただ、それ以外には無いというだけで。
だから、今のところは、そこまで警戒していない。大事にされているのは実感しているし、俺を殺すデメリットも、当人的には大きいだろうからな。
「もう、可愛い息子に会いたいと思って、おかしいのかしら?」
「ああ、様子を気にしてくれたのか。ありがとう、母さん」
まあ、久しぶりに帰ってきたのなら、おかしなところがないかを気にするくらいはするか。一応、可愛い息子だと思っている様子だし。
もしかしたら、妙な愛情を持つ可能性も、あるにはある。ただ、それを警戒するのは、優先順位が低い。もっと直接的な脅威は、たくさんあるのだから。
「当然ですわよ。レックスちゃんは、誰よりも大切な子なんですもの」
表情からは、本気を感じる。だから、安心はできるはずだ。まあ、カミラやメアリ、ジャンのことをどう思っているのかという問題はあるにしろ。
誰よりも大切だと思われるのは、確かにありがたい。だが、他の人と極端な優劣をつけられても、それはそれで面倒なんだよな。
まあ、自意識過剰かもしれないが。大事なことではあるのだが、母と他の人の関係よりも、俺と他の人の関係の方が重要だ。
あまり、気にしすぎても仕方がない。どうせ、アストラ学園に居るうちは、家族に対して大きな干渉はできないのだから。
「それで、顔を見る以外には、何か用事はないの?」
「もちろん、ありますわ。レックスちゃん、例の魔法を、かけていただけませんこと?」
ああ、それを忘れていたな。美容のために大勢のエルフを殺すまでやる人間なのだから、当たり前じゃないか。
これは、致命的な失敗をするところだったな。母の美容への考えを無視するのは、危険すぎる。これからは、自分から積極的に、美容魔法を使っていかないとな。
「ああ、良いよ。母さんも、できるだけキレイで居たいよね」
「それもありますわ。ですが、大切な親子のスキンシップですもの」
「あまりベタベタするのは、勘弁してほしいんだけど」
実際、かなり困る。相手のいろいろな部分に触れる必要があるからな。危険なところは、一応避けてはいるのだが。エスカレートすると、大変なことになりかねない。
というか、俺にだって性欲はあるからな。母とはいえ、実感は薄い。本当に疲れてしまいそうだ。実際に母と思っている相手と触れ合うのと、どっちが楽だろうな。
母は、なんだかんだで美人だからな。周囲に幼い人間が多い中で、数少ない大人だ。だからといって、性的な目で見ていい相手ではない。難しい問題だ。
「もう、反抗期ですの? わたくしは、こんなにレックスちゃんを愛しておりますのに」
「というか、一緒にお風呂に入る歳でもないし……」
「あら、良いことを聞きましたわね。レックスちゃんが一日居る時は、一緒に入りますわよ」
「余計なこと言っちゃったな……」
本気で本音だ。体の年齢でも、10代前半。もう、母とは別に入る年齢だろう。転生前のことを考えたら、あり得ないレベル。
なんというか、頭を抱えたいくらいだ。だからといって、嫌がっている姿を見せるのは、良い手段とは言えない。恥ずかしがっていると思われるくらいならともかく。嫌っていると思われたら、大問題だからな。
「もう、照れていますのね。いつまで経っても、私とレックスちゃんは親子ですのに」
「いいでしょ、別に。それより、部屋に向かおうよ。施術、するでしょ?」
「もちろんですわよ。じっくりたっぷり、ふれあいますわよ」
ということで、母の部屋へ行く。中に入ると、母は服を脱いだ上で、ベッドで横になっていた。ブレスレットだけ、付けたまま。
ああ、愛されているのだと実感できてしまう。ブレスレットは、俺が贈ったものだからな。大切にされていると、今の行動だけで分かるんだ。
「レックスちゃん、遠慮なんてしなくていいわ。好きに、触ってくださいな」
「仕方ないなあ。まあ、美容魔法には必要なことだからね」
「恥ずかしがらずとも、良いですのに。あなたになら、全てをさらけ出せますわ」
「絶対に何か間違っているよ……」
「そんなこと、ありませんわよ。正しい親子の形ですわ」
ということで、危ない場所に触れなくて済むように、慎重に魔法をかけていく。できることなら、手を触れずに魔法を使えるようになりたいものだ。
攻撃魔法より、かなり繊細な扱いが必要な魔法だから、遠隔操作は難しい。それだけの話が、俺に苦労を運んでくるのだ。
しばらくして、全身に魔法をかけた。明らかに肌の調子が良くなっているから、成功だ。
「これで終わりだよ、母さん」
「やはり、レックスちゃんの魔法は素晴らしいですわね。また帰ってくるまで受けられないと思うと、悲しいですわ」
それで美容に困って、エルフに手を出されたら困る。なら、対策が必要だよな。何ができるだろうか。
「そっか。俺が居ないと、この魔法は使えないからね。……あ、良いことを思いついた」
「レックスちゃんのことですから、きっと素晴らしい考えなのでしょうね」
「母さん、渡したブレスレットを貸してくれる? ちょっと、試したいことがあるんだ」
「もちろんですわ。レックスちゃんなら、何をしても良いんですのよ。もし、失敗しても。美しさを、失ったとしても。あなたなら」
おいおい、美しさと天秤にかけられるとか、ウソだとしても、とんでもないぞ。でも、希望が出てきたかもしれない。
ここまで愛されているのなら、いざという時に、敵にならないでいてくれるかもしれない。そんな考えが浮かんでくる。
今のまま進んでいけば、あるいは。なら、全力で母のために、力を尽くすべきだろうな。できるだけ、相手の愛情を深められるように。
「そんなリスクのあること、やらないって……。まあ、任せてよ」
ということで、ブレスレットに魔法を込めていく。ついでに、治癒の魔法も。防御魔法はもとから込められているし、悪事を働かれると、厄介ではある。
それでも、信じたい心がある。愛されているのは実感できるから、敵にならないでほしいと思ってしまう。この感情は、正しいのかどうなのか。
「とりあえず、これで、ブレスレットを付けている限りは、最低限の美容魔法が発動するはずだよ」
「ありがとう、レックスちゃん。でも、これからも、わたくしに美容魔法をかけてくださいましね」
スキンシップとして、ということなのだろうな。なら、これからも頑張るとするか。それで敵が減るのなら、安いものだろう。
「母さんが望む限りは、そうするつもりだよ」
「大事な親子の時間を、これからも続けていきますわよ。ねえ、レックスちゃん」
いつか、この人も殺す時が来るのだろうか。そう考えると、胸が苦しくなる。できれば、ずっと味方で居てほしい。そう願ってしまう。今の感情が間違いでないことを、祈るばかりだ。
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