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1章 レックスの道
36話 兄との決別
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俺がさんざん悩まされてきた黒幕は、兄のオリバーだった。予想していたとはいえ、悲しいな。
まあ、もう和解する意思はないのだが。相手の方が反省したところで、もはや関係を築くつもりはない。
「結局、当主になった俺を支えるというのは、ウソだったわけだな」
「当たり前だろう! 貴様さえ居なければ、俺は当主になれたんだ!」
実際の所はどうなのだろうな。だが、オリバーが『デスティニーブラッド』に居なかった理由は想像がついた。きっと、原作ではレックスに敵対して殺されたのだろうな。
そうなると、ここで倒すのは問題ない行動。むしろ、殺した方が良いのかもしれない。まあ、原作なんて、とっくに当てにならなくなっているが。
「そんなことのために、カミラ姉さんやフェリシアを襲ったのか?」
「ふざけるな! そんなことだと!? 俺がどれだけ、当主を目指して努力してきたことか!」
ふざけるなと言いたいのは俺の方だ。カミラもフェリシアも、ウェスも、傷ついて良いような人じゃなかった。それを、つまらない欲望のために殺そうとするのだから。許せるはずがない。
結局のところ、オリバーはブラック家の人間でしかなかったということだ。なら、俺の敵であることは間違いない。
いや、そもそも、親しい人の敵は俺の敵だ。だから、泣いて謝ろうとも和解はしないよ。せめて、冷静さを失ってもらおうか。できるだけ、楽に倒せるように。
「努力は悪事の免罪符にならない。そんなことも、教えてもらえなかったのか?」
「同じ親だろうが! 見下しやがって!」
まあ、俺には前世があるからな。オリバーとは違う。それに、我欲のために人を傷つける人間を、見下さない理由なんて無いからな。
オリバー、お前が当主になったところで、誰が喜ぶのだろうな? 俺には、喜んでくれる人間が何人も居るぞ。
「見下されるのも当然だろうが。お前の味方は、どこに居るんだ?」
「ここに居る傭兵たちが、見えないのか! 俺の味方だぞ!」
周りに大勢の人間が居るのだが、まだ襲ってこない。というか、まとめて攻撃されたところで問題ないのだがな。俺の防御を貫くには、数を集めただけでは無駄だからな。
というか、金で雇われた傭兵を味方というなんて、可哀想なものだ。金の切れ目が縁の切れ目になるだけだろうに。
まあ、誰かを味方にする経験などなかったのだろうな。今の行動を思うと、慕われる理由がないのだから。
「哀れなものだな。いっそ同情するよ」
「やはり、あのメイドを殺しておけば……。カミラや、フェリシアも! そうすれば、お前の苦しむ顔が見られただろうに!」
本当に、不愉快だ。できもしない事とはいえ、腹が立つ。もはや、お前に未来はないよ。王家にケンカを売ったのだから。俺の勝ち負けがどうであれ、死ぬのは決まった未来だ。
「家を発展させることではなく、自分の欲望を優先する。だからお前は当主の器じゃないんだよ」
「黙れ! ただ運良く、闇魔法に目覚めただけの人間が!」
そうかもな。だが、オリバーが当主の器でないことは疑いようがない。だって、周囲と協力することではなく、他者をおとしめることで成り上がろうとするのだから。
根本的な問題として、配下から慕われない人間が、どうやって家を運営するつもりなのか。全員に好かれる必要はないにしろ、腹心くらいは欲しいだろうに。
「お前は誰からも慕われていない。そもそもの問題が、理解できていないんだな」
「ならば、貴様は慕われているとでもいうのか!?」
「その答えは、お前が一番わかっているだろうに。だから、俺の周囲の人間を襲ったんだろ?」
俺が当主になるうえで、味方になる人間と判断していたのだろうからな。だから、邪魔だったはずなんだ。
つまり、俺を支持する人間の存在を認識していたということなのだろう。
「うるさい! 貴様さえ居なければ! 貴様さえ……! お前たち! やれ!」
図星だったみたいだ。オリバーは俺に攻撃を仕掛けさせようとする。そこに対して魔法を放つと、襲いかかってきた奴らは吹き飛んでいく。それを確認して、傭兵たちは散り散りになっていった。
「どうした? 傭兵たちが逃げていくぞ? 味方だったんじゃなかったのか?」
「殺してやる! 俺に歯向かったことを後悔しながら死ね! 雷炎刃!」
雷と炎、風の刃が飛んでくる。だが、俺の防御にはなんの影響も与えない。以前、俺の闇魔法を確認した時に、分かっていたことだろうに。俺の闇魔法に興味があるふりをしたのは、俺の戦力を確認したかったからなのだろう?
「その程度か。フェリシアの足元にも及ばないな」
「たかが一属性に、この俺が劣るだと!?」
属性だけでものを考えるから、ダメなんだよな。だって、自分の限界を越えるだけの努力をこなしてこなかったのだから。フェリシアもカミラも、一属性にもかかわらず、三属性を倒すことができる実力を身に着けたぞ?
転じて、オリバーはどうだ。三属性であるにもかかわらず、それにふさわしい威力を出せていない。自分が当主になるために、努力してきたとは思えないな。
「所詮お前は、闇魔法を持ったところで、ただの魔法使いに負ける存在だよ」
「知ったような口を!」
オリバーはさらに攻撃を仕掛けてくるが、俺の防御を貫くことはできない。もう問答をしていく理由もない。片付けるとするか。
「スキだらけだぞ。……これで、終わりだな」
「殺してみろよ! この臆病者が! お前が俺を殺さないなら、俺はお前の親しい人間を殺しつくしてやる!」
「それ以上さえずるな。……もう、寝てろ」
魔力をぶつけて、オリバーを気絶させていく。ようやく終わったのだと、少し安心感があった。
「さて、父さんに引き渡すか。それしかないからな」
今から王家にオリバーを渡すことは難しい。俺の魔力を侵食させていないからな。俺だけなら、王宮に転移できる。ウェスをマーカー代わりにして。だが、他の人間は運べない。
ということで、父のもとにオリバーを連れて行く。
「よくやった、レックス。王家から、ブラック家の何者かが王宮の襲撃を計画したと聞いた。オリバーが、その犯人なんだな?」
「うん。わざわざ俺に罪を着せようとしたらしいよ」
「愚かなことだ。せめて、ブラック家の役に立てれば良いものを。レックスが死ねば、この家の損失ではないか」
「俺が当主になるのが、この家にとって最も良い道なのに! なぜ分かってくださらないのです!」
「話は終わりだ。最後の時間を、牢で楽しんでいることだな」
そうして、オリバーは牢へと連れて行かれていく。王女姉妹やウェス達も心配させているだろうし、王宮に向かわないとな。
まあ、もう和解する意思はないのだが。相手の方が反省したところで、もはや関係を築くつもりはない。
「結局、当主になった俺を支えるというのは、ウソだったわけだな」
「当たり前だろう! 貴様さえ居なければ、俺は当主になれたんだ!」
実際の所はどうなのだろうな。だが、オリバーが『デスティニーブラッド』に居なかった理由は想像がついた。きっと、原作ではレックスに敵対して殺されたのだろうな。
そうなると、ここで倒すのは問題ない行動。むしろ、殺した方が良いのかもしれない。まあ、原作なんて、とっくに当てにならなくなっているが。
「そんなことのために、カミラ姉さんやフェリシアを襲ったのか?」
「ふざけるな! そんなことだと!? 俺がどれだけ、当主を目指して努力してきたことか!」
ふざけるなと言いたいのは俺の方だ。カミラもフェリシアも、ウェスも、傷ついて良いような人じゃなかった。それを、つまらない欲望のために殺そうとするのだから。許せるはずがない。
結局のところ、オリバーはブラック家の人間でしかなかったということだ。なら、俺の敵であることは間違いない。
いや、そもそも、親しい人の敵は俺の敵だ。だから、泣いて謝ろうとも和解はしないよ。せめて、冷静さを失ってもらおうか。できるだけ、楽に倒せるように。
「努力は悪事の免罪符にならない。そんなことも、教えてもらえなかったのか?」
「同じ親だろうが! 見下しやがって!」
まあ、俺には前世があるからな。オリバーとは違う。それに、我欲のために人を傷つける人間を、見下さない理由なんて無いからな。
オリバー、お前が当主になったところで、誰が喜ぶのだろうな? 俺には、喜んでくれる人間が何人も居るぞ。
「見下されるのも当然だろうが。お前の味方は、どこに居るんだ?」
「ここに居る傭兵たちが、見えないのか! 俺の味方だぞ!」
周りに大勢の人間が居るのだが、まだ襲ってこない。というか、まとめて攻撃されたところで問題ないのだがな。俺の防御を貫くには、数を集めただけでは無駄だからな。
というか、金で雇われた傭兵を味方というなんて、可哀想なものだ。金の切れ目が縁の切れ目になるだけだろうに。
まあ、誰かを味方にする経験などなかったのだろうな。今の行動を思うと、慕われる理由がないのだから。
「哀れなものだな。いっそ同情するよ」
「やはり、あのメイドを殺しておけば……。カミラや、フェリシアも! そうすれば、お前の苦しむ顔が見られただろうに!」
本当に、不愉快だ。できもしない事とはいえ、腹が立つ。もはや、お前に未来はないよ。王家にケンカを売ったのだから。俺の勝ち負けがどうであれ、死ぬのは決まった未来だ。
「家を発展させることではなく、自分の欲望を優先する。だからお前は当主の器じゃないんだよ」
「黙れ! ただ運良く、闇魔法に目覚めただけの人間が!」
そうかもな。だが、オリバーが当主の器でないことは疑いようがない。だって、周囲と協力することではなく、他者をおとしめることで成り上がろうとするのだから。
根本的な問題として、配下から慕われない人間が、どうやって家を運営するつもりなのか。全員に好かれる必要はないにしろ、腹心くらいは欲しいだろうに。
「お前は誰からも慕われていない。そもそもの問題が、理解できていないんだな」
「ならば、貴様は慕われているとでもいうのか!?」
「その答えは、お前が一番わかっているだろうに。だから、俺の周囲の人間を襲ったんだろ?」
俺が当主になるうえで、味方になる人間と判断していたのだろうからな。だから、邪魔だったはずなんだ。
つまり、俺を支持する人間の存在を認識していたということなのだろう。
「うるさい! 貴様さえ居なければ! 貴様さえ……! お前たち! やれ!」
図星だったみたいだ。オリバーは俺に攻撃を仕掛けさせようとする。そこに対して魔法を放つと、襲いかかってきた奴らは吹き飛んでいく。それを確認して、傭兵たちは散り散りになっていった。
「どうした? 傭兵たちが逃げていくぞ? 味方だったんじゃなかったのか?」
「殺してやる! 俺に歯向かったことを後悔しながら死ね! 雷炎刃!」
雷と炎、風の刃が飛んでくる。だが、俺の防御にはなんの影響も与えない。以前、俺の闇魔法を確認した時に、分かっていたことだろうに。俺の闇魔法に興味があるふりをしたのは、俺の戦力を確認したかったからなのだろう?
「その程度か。フェリシアの足元にも及ばないな」
「たかが一属性に、この俺が劣るだと!?」
属性だけでものを考えるから、ダメなんだよな。だって、自分の限界を越えるだけの努力をこなしてこなかったのだから。フェリシアもカミラも、一属性にもかかわらず、三属性を倒すことができる実力を身に着けたぞ?
転じて、オリバーはどうだ。三属性であるにもかかわらず、それにふさわしい威力を出せていない。自分が当主になるために、努力してきたとは思えないな。
「所詮お前は、闇魔法を持ったところで、ただの魔法使いに負ける存在だよ」
「知ったような口を!」
オリバーはさらに攻撃を仕掛けてくるが、俺の防御を貫くことはできない。もう問答をしていく理由もない。片付けるとするか。
「スキだらけだぞ。……これで、終わりだな」
「殺してみろよ! この臆病者が! お前が俺を殺さないなら、俺はお前の親しい人間を殺しつくしてやる!」
「それ以上さえずるな。……もう、寝てろ」
魔力をぶつけて、オリバーを気絶させていく。ようやく終わったのだと、少し安心感があった。
「さて、父さんに引き渡すか。それしかないからな」
今から王家にオリバーを渡すことは難しい。俺の魔力を侵食させていないからな。俺だけなら、王宮に転移できる。ウェスをマーカー代わりにして。だが、他の人間は運べない。
ということで、父のもとにオリバーを連れて行く。
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「うん。わざわざ俺に罪を着せようとしたらしいよ」
「愚かなことだ。せめて、ブラック家の役に立てれば良いものを。レックスが死ねば、この家の損失ではないか」
「俺が当主になるのが、この家にとって最も良い道なのに! なぜ分かってくださらないのです!」
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