家に帰りたい狩りゲー転移

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7章

(1)アインザッツ

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「トゥアハ様、そろそろお時間です」

 リデルゴア城の寝室に、畏まった執事の声が落ちる。

 ベッドの上に全裸で横たわっていた大男は、大きなあくびを噛み殺しながら気だるげに起き上がった。乱れた金髪をかき上げると、薄く開かれた瞼から赤い瞳が覗く。精悍な顔立ちと、均整の取れた体格だ。うら若き乙女がこの男を見たが最後、魂を抜かれてしまいかねない美の権化であった。

 しかし、執事の男は知っていた。男の内面は、この世のどの生物よりも醜悪であると。

 生への執着を煮詰めた下劣な人間ならばこの世に大勢いる。が、殊この大男に関しては、なべ底に張り付いた焦げ跡ほどにタチが悪い。無数の魂を貪り喰い、不老不死であることをひた隠し、リデルゴア国に寄生するヒトの化け物だ。

 大男――ゴモリー・リデルゴアは、肩の関節をバキベキと外しながら伸びをした。それから執事にひらりと手を振り、服を着せるよう指示を出す。

 執事は甲斐甲斐しく服を用意し、水平に持ち上げられたゴモリーの腕へ慎重に袖を通した。衣服が爪の先に引っ掛かりようものなら、たちまち執事の命は朝露と消えるだろう。
 
 緊迫した着替えが完了し、執事は深々とお辞儀する。

 豪奢な装いに身を包んだゴモリーは、執事に一瞥もくれることなく、再び粗野なあくびをした。そのついでに人差し指で顎の輪郭をなぞると、骨を砕くような音を立てて造形が変化していった。

 その顔は一度、トゥアハ・ハビルゴアの顔を模して、執事へにっこりと笑いかけた。そうしてまた輪郭をなぞり、今度は現リデルゴア国王、ハムクタル・リデルゴアへと変貌する。

 ハムクタル・リデルゴアは、元々はゴモリーの子孫として生まれた少年だった。だが齢十五に成人の儀を行った際、ゴモリーによって肉体ごと魂を奪われてしまった。

 若々しい身体を手に入れたゴモリーは、表向きはハムクタル・リデルゴアとして国王の座に返り咲いた。

 執事の男は短い生涯の中で、三度に及ぶゴモリーの代替わりを目の当たりにしてきた。執事がゴモリーの身の回りの世話をさせられているのも、秘密を口外しようものなら即殺すという、明確な脅しであった。

 ゴモリーであれば、わざわざ執事の男を脅さずとも、生きたまま口封じをすることだってできる。それでも執事の人格を残したまま仕えさせるのは、常に誰かの命運を握っていたいという単なる加虐趣味を満たしたいがためだった。

 ひとしきり執事の真っ青な表情を楽しんだ後、ゴモリーはようやくベッドから立ち上がる。執事の男は恭しくお辞儀をし、言われるでもなく寝室の扉を開けた。

 カツン、カツン、とよく磨かれた革靴の音が通路に響く。廊下に整列する騎士たちは、ゴモリーが視界に入るなり一斉に敬礼をした。

 ゴモリーは冷徹に騎士たちを眺めつつ、二人の従者と共に玉座の間へと進行した。
 
 竜王が潜れそうなほどの巨大な扉が開かれ、絢爛豪華な玉座の間がゴモリーを出迎える。そこには既に、大勢の貴族と憲兵隊幹部たちが膝をついて待機していた。頭を下げたまま微動だにしない貴族たち。その前を堂々と横切り、ゴモリーは玉座に足を組んで腰かけた。
 
「面を上げよ」

 布ずれの音が一斉に響き渡り、能面のような顔がシャンデリアに照らされる。
 
「時が満ちた。楽園の扉がマガツヒの襲来によって開かれようとしている。君たちが終末を超える方舟計画もまた、無事に最終段階へと移行した」

 誰も声を発しない。しかし、驚きと歓喜によって自然と全員の呼吸が揃い、無音の歓声が玉座の間を揺るがせた。ゴモリーはハムクタルリデルゴアの顔で笑みを深め、ゆるりと両手を持ち上げた。

「長きにわたる雌伏の時は、罪人共の完全駆除によって幕引きとなる。西方の里は我々に準じ、ドラゴン狩りの最前線も抵抗空しく水泡に帰した。南方のテララギの里、スキュリアの里も予言書の告げた通り、マガツヒの瘴気に沈むだろう。残るは北方、ノースマフィアのみ」

 透明な聖杯を掲げるかの如く、ゴモリーの右手が高く天へと伸ばされた。

「権利とは、行使して初めて権利足り得るのである。楽園は不断の努力なしには至れない。なればこそ、諸君らが余のために命を惜しまぬ忠臣であると、行動で示してみよ」

 バサリとマントが広がり、玉座の上に王が立つ。上背のある彼は、たったそれだけで巨人が降臨したような迫力を醸し出した。

「北方征伐だ。北方の罪人を一匹残らず、皆殺しにしろ!」

 刹那、限界まで膨らんだ風船が弾けるように、爆発的な喝采が沸き起こった。お淑やかに着飾っていた貴族も、礼服に身を包んだ憲兵も関係ない。スラムの荒くれ者にも劣る下品な叫びだった。その残響はどこか歪んでおり、ドラゴンの咆哮と酷似していた。

「――肩慣らしに、そこの子ネズミ共」

 ゴモリーが声を発した途端、ふっと声が途切れる。

 ゴモリーの指が向けられた先には、貴族の礼服を身にまとった古希の男と年若い青年がいた。壁際でひっそりと隠れるように佇んでいた二人は、突然注目を浴びたことで目玉が零れ落ちそうなほどに驚愕していた。

「やべっ……」

 青年の方が思わず声を漏らす。

 にたり、と玉座の上で、化け物の口が耳まで吊り上がった。
 
「飢えた獣の餌になる覚悟、できているかね? ドブネズミ」

 ゴモリーが指を鳴らすや否や、二人の真横で微笑んでいた淑女が、老婆の顔つきに豹変した。

「グギャアアア!」

 人間とは思えぬ俊敏さで、淑女が二人へ飛びかかる。咄嗟に二人が回避すると、淑女は顔面から床に叩きつけられた。

 すると、淑女の頭部が大きく膨張し、ネフィリムの真っ白な鱗が皮膚を割って生えてきた。

「う、うわあああ!」

 青年が悲鳴を上げながら尻餅をつくも、古希の男は素早く拳を振りかぶる。

 ドン、と重々しい一撃によって、淑女だったネフィリムが軽々と吹き飛ぶ。

 しかし一人を倒したところで事態は変わらない。淑女だけでなく、周囲にいた人間までもが不気味な音を立てて孵り始めた。

 ものの数秒で、玉座の間はネフィリムの巣窟と化した。

「逃げるぞジェイル!」

 古希の男――オーディは老体と思えぬほどの腕力でジェイルを立たせると、大扉を蹴破って脱出した。

「お、叔父貴! なんで潜入がバレたんだ!? 昨日まで気づかれてなかっただろ!?」
「最初から泳がされていたってことさ!」

 オーディに腕を引かれ、つんのめるようにしてジェイルは走り続ける。広々とした通路には警備の兵士が並んでおり、ジェイルたちを見るや襲いかかってきた。

 ジェイルとオーディは、衣服の下から武器を抜いて迎撃する。何人かの兵士を切り捨てると、今度は死体がモゾモゾと動き出した。

 パン! と音を立てて死体の皮が弾け、新たなネフィリムが誕生する。

「うぎゃああ!?」

 飛び散った皮の残骸をモロに被ってしまい、ジェイルは半狂乱になりながらそれを引き剥がした。それから菌糸能力をぶっ放し、強引に退路を切り開きながら全力疾走した。

「なんでネフィリムが人間のフリしてんだよ! 楽園に連れてくって話は嘘じゃねぇか! あの偽国王!」
「さしずめ、人間とネフィリムのキメラってところだ。奴さん、人間の自我を残せるぐらいにゃあ、人体実験を成功させまくったってことさ」
「この、外道め!」

 煙幕を出しつつ、窓を破って信号弾を青空へぶっ放す。火薬を詰め込んだ甲斐あって、信号弾は城壁を軽々と越え、城下町の真上まですっ飛んで行った。

 信号弾は一度点滅すると、勢いよく眩い光を放った。太陽の如く空を彩る閃光は、たとえ室内にいても気づかざるを得ないだろう。

 ジェイルは通路を走りながら、何度も城下町の方を確認した。しかし、街のどこからも、仲間からの返答の信号弾が上がらない。

「まさか全員、とっくに殺されてるとかないよなぁ!?」
「あり得るぞ」
「冗談じゃない……!」

 ある程度警備を撒いたところで、ジェイルたちは屋根伝いに城下町を目指す。しかし外に出た途端、今度は飛行型ネフィリムが城の上から砲弾のように落ちてきた。

 顔面から屋根に突っ込み、血をぶちまけ続けるネフィリムたち。捨て身な戦法にジェイルはゾッとしながら、必死に合流地点へと走り続けた。

「うぉっとぉ!」

  オーディは気の抜けるような声を上げながら、避けつるついでにネフィリムの顔面を蹴飛ばした。ダメ押しに煙玉を叩きつけ、自分たちの姿を煙幕で覆い隠す。

「こっちだジェイル!」

 ジェイルの首根っこを掴み、オーディは路地裏へ飛び降りる。

「ボン、ってな」

 オーディがおどけた瞬間、鈍色の煙の内側から火花が駆け巡った。瞬間、薙ぎ払うような光線が炸裂し、煙の中にいたネフィリムたちを爆破した。煙玉の中にこっそりとアルカリの火薬を混ぜていたのである。花火でよく使用されるその火薬は、煙玉の成分との相乗効果で景気よく燃え盛った。

 屋根から降り注ぐ血の雨を避け、オーディは皺だらけの顔でげらげら笑った。

「今日は大盤振る舞いだ。派手にやっとけ!」

 もう一発、火薬入りの煙玉が空へ放られる。ネフィリムの腹部にぶつかったそれは、大量の煙と爆炎を振り撒き、オーディたちの姿を覆い隠してくれた。

「流石だぜ叔父貴!」
「おっと、喜ぶのは早ェぞ」

 砂利を踏みしめながらオーディはブレーキをかける。ジェイルもワタワタと立ち止まり、顔を上げて驚愕した。

「行き止まり!?」

 二人の行手を阻んだのは、巨大なレンガの壁だった。オーディは中央都市の土地勘に長けているというのに、彼らしくない凡ミスだ。しかしよく見ると、目の前の壁には建築系の菌糸能力で弄られた形跡があった。こうなると予想していたゴモリーの部下が、あらかじめ道を塞いでいたのだろう。

「下がってろ!」

 オーディは腕を捲り、右腕から全力で菌糸能力を解放する。『掘削』と呼ばれる彼の菌糸能力は、周囲の砂を巻き上げて高速回転させることができる。砂の密度を上げれば巨大なドリルを形作ることもできた。

「ッらぁ!」

 威勢の良い声を上げ、砂のドリルをレンガの壁に叩き込む。しかしいくら抉ってもくぼみが深くなるばかりで、突き当りが全く見えなかった。見た目よりよほど分厚く頑丈な壁らしい。これ以上ここで体力を消費していても、ネフィリムに追いつかれてしまうだけだ。

 オーディは壁を背にしながら来た道を振り返る。

「ったくネフィリムの野郎、獲物を誘い込める知能は残っていたようだな」
「ああもう! だから止めたんだよ俺は! 鍵者と関わると碌なことにならないって!」

 ジェイルが頭を掻きむしりながら文句を言うや、煙幕の向こうからぎゃあぎゃあとネフィリムの鳴き声が近づいてきた。歴戦のオーディならまだしも、ひよっこのジェイルでは耐久戦ができると思えない。それに仲間との連絡は以前として取れないままだ。戦ったとて、助けは望めそうにない。

 オーディは右腕を払うように『掘削』を解除すると、真剣な面持ちでジェイルの両肩を掴んだ。

「ジェイル。隙を見てお前だけでも逃げろ」
「な、なに言ってんだよ! 俺も戦う!」
「馬鹿野郎! 誰かが生き残って情報を伝えにゃぁ、俺達は犬死だ!」

 どん、とジェイルの肩を突き飛ばし、オーディは振り返りざまに『掘削』を振り出した。瞬間、橙色の菌糸模様が一瞬煌き、砂を混ぜた竜巻が前方を抉る。ドリルのように高速回転した砂は、飛び込んできたネフィリムをあっという間に塵へ粉砕した。

「今だ、行け!」

 ジェイルの顔はまだ不服そうであったが、上下関係を叩き込まれた身体が勝手に動いていた。ネフィリムがオーディに気を取られている間に、ジェイルは路地裏から屋根へと飛び上がる。

 煙幕と砂塵を抜け、視界が広がる。着地しようとした屋根の上を見れば、びっしりと白いドラゴンたちがへばりついていた。

「くそ!」

 無防備に空中へ躍り出たジェイルへ、真っ赤な視線が突き刺さる。ネフィリムたちは耳まで裂けるほど大きく口を広げて、人間のように喉から大笑いした。そして、死体に集るハエのように、ジェイルの元へ我先にと飛び込んでくる。

 退路はない。菌糸能力を発動したところで、殺せるのは数体だけ。死の気配が急速にジェイルを包み込み、目の前が真っ暗になった。

 襲い来るであろう痛みに全身を硬直させる。

 その時、前方のネフィリムの群れが、枯れ葉のように真横へと消し飛んだ。

「は……?」

 何が起こったのか理解するより早く、二度、三度と同じような現象が起き、真上、背後、真横にいたネフィリムの群れが面白いように吹き飛んでいく。繰り返し謎の現象を見ているうちに、水色の薄い菌糸能力の光が、ネフィリムを切り刻みながら衝撃波を放っているのだとジェイルは気づいた。

 まるで原理の分からない攻撃だ。巧みにジェイルだけを避けて、ネフィリムたちをあっという間に一掃してしまう。

 ジェイルは真っ白な思考のまま、ひとまず屋根の上へと着地した。遅れて、路地のネフィリムを倒したらしいオーディが上がってきた。

「生きてんな、ジェイル」
「あ、ああ……なにがなにやら……」

 呆然としながら静まり返った屋根を見渡す。城の方ではネフィリムの群れが蠢いているが、何かを警戒しているようで襲い掛かってくる様子はなかった。

「──ふぃー、間一髪だったぜ」

 何者かの声が、路地を挟んだ反対側の屋根から聞こえてきた。

 数秒前まではそこに誰もいなかったはず。だというのに、その男は忽然と屋根の縁に佇んでいた。貧相な体格と黒づくめの服装は、いかにも暗殺者といった風貌である。眉が太いこと以外、あまり特徴のない顔だ。

「何者だ」

 オーディが拳を構えながら睨みを利かせる。対して謎の男は、細長いバトルアックスを両肩に乗せながら不敵に笑った。

「ははは! オーディでも分からねぇのか? これでもおれぁ、中央都市でも有名な守護狩人なんだがな。こうすれば誰か分かるか?」

 男はぐっと顔が見えなくなるほど背中を反らすと、気だるそうに息を吐きながら姿勢を戻した。戻ってきた顔は、先ほどと造形が同じにも関わらず、全く雰囲気が異なっていた。体格も先ほどより明らかに大きくなっており、屈強な筋肉が服越しに浮かび上がっていた。

「貴様……百面相の暗殺者か!」
「その通称は嫌いなんだ。今はアークって呼んでくれ」

 アークと名乗った男は、バトルアックスをくるくると回し、屋根に突き刺して寄りかかった。本人が言った通り、この男は中央都市で有名な変人であった。会うたびに顔や雰囲気が変わる、得体の知れない流浪狩人。会えたら運気が巡って来るだの、狩りでの死傷者が減るだの、妙な迷信がついて回るこの男の本名を誰も知らない。

 この男は『アーク』として、エラムラ防衛戦やヤツカバネ討伐隊に加わっていた。バルド村の者は、彼が名も姿も変えずにいたことから、百面相の暗殺者だと気づかなかったのだろう。

 アークは太い眉毛をひょいと持ち上げながら囁くように言った。

「おれはおたくらと同じ、化け物の腹の中で息を潜めてた同業さ。しっかし、あんたらの潜入があんまりにも下手すぎて、いつかこうなるんじゃないかと思ってたぜ」

 言いながら、アークは背負っていた布袋をジェイルたちの元へ放る。落ちた衝撃で布袋がほどけ、中から執事の服が飛び出してきた。

「潜入任務をやりたいなら、完全に自分を殺さなきゃ失敗しちまうんだぜ? 例えば、道端でくたばってる犬みたいにな」

 後半に付け足された言葉にオーディは目を見開く。その常套句は、リデルゴア国の人間なら誰もが知る諜報組織のものだ。

「デッドハウンド……この服の持ち主はどうした?」
「執事の男なら、何年も前から北方で奴隷やってるぜ」

 アークの言葉は嘘ではない。ゴモリーの執事をやらされていた男は、デッドハウンドに助けを求め、巨額の依頼料を支払えずに奴隷に落ちた。だが奴隷であれば身分や出生を詮索されることもなく、憲兵も注意を払ったりはしない。お陰で、本物の執事の男はゴモリーの監視から解放され、今日も家族の元に帰るべく元気に働いていることだろう。

 オーディは執事の服を掴み上げると、ふんと鼻で笑った。

「死人に口なしと聞いたが、よく喋るじゃねぇか。ワンコロ」
「死人から話を聞き出すのが仕事なんだよ」

 アークは歯を見せるように太く笑うと、オーディたちのいる屋根へ軽々と飛び移ってきた。

「あんたら、鍵者と一緒にゴモリーを一泡吹かせようとしてんだって? うちのリーダーが会いたがってんだ。当然協力するよな?」

 バトルアックスに水色の菌糸模様を浮かび上がらせながら、アークは底意地の悪い笑みを浮かべる。

 オーディは正直、NOと言ってやりたかった。デッドハウンドと関わると碌なことにならない。彼らの持つ情報網はリデルゴア国随一であるが、逆に言えば相手はどんな人間の弱みも握っている巨悪である。執事から奴隷に落ちた男のように、デッドハウンドに人生を捻じ曲げられたものはごまんといるだろう。

 だが、ここで断ればどうなるかは、アークに問うまでもない。わざわざデッドハウンドのリーダーの名を出したのだから、彼らはだ。

 オーディはジェイルの顔を横目で見つめた後、深々と嘆息した。

「アークと言ったか……一応、お前さんは命の恩人だ。とことん付き合ってやろうじゃねぇか」
「そうこなくちゃな!」

 アークは屋根から武器を引き抜くと、輝かんばかりの笑顔でサムズアップした。ジェイルはいまいち事態を飲み込めていないようだが、その方が幸せかもしれない。せめて亡霊の仲間入りをするのは自分だけで済めばいい、とオーディは腹をくくった。
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