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第三章~ルゼル王国~
EPISODE20~人魔解放戦線幹部~
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到着すると、すぐに玉座の間へと通され、重々しい甲冑を身に纏う騎士達にルゼル王国を支える大臣が色眼鏡でティルシア達を見る。
良い噂よりも悪名を轟かせている探究者パーティー。
当然と言える。
ましてや、ティルシアとエスティはルゼル王国で問題を起こしたばかりだ。
ベルドが跪くと、ルゼル王国国王が姿を見せる。
丸々とした顔立ちに脂汗、国王としての威厳を感じさせない程の雰囲気に、服は贅肉ではち切れそうだ。
王冠さえ玩具に見える。
デイルとルゼルは騎士だった事もあり跪き、国王が言葉を発するまで顔を上げない。
ライは訳が分からず、土下座している。
ティルシアは、床に突っ伏して寝ており、エスティは頭すら下げない。
「おい、馬鹿!国王様の御前だぞ」
ベルドが小声で訴えるが、エスティは聞く耳を持たない。
「生憎、肥え太った愚かな王に下げる頭は持ち合わせていない」
エスティが嘲笑すると、騎士達が剣に手を掛ける。
誰がどう見ても分かるほどの侮辱。
この場で処刑されてもおかしくはない。
「貴様!無礼だぞっ!」
「国王様に向かって…」
大臣達も声を荒らげる。
「はい、皆さんお静かに」
手を叩きながら現れた男がこの場を収める。
人よりも耳先が長い、茶髪の男。
エルフと言われる種族だ。
幼少期から秘めている魔力は強大で、魔法の扱いだけなら精鋭騎士と同等の実力がある。
寿命は2000年ほど生きるとされていて、数ある歴史の目撃者でもある。
漂わせる国王よりも威厳がある雰囲気だ。
「冒険者風情が、随分な口を叩く」
エルフは、ティルシア達を見下しながら鼻を摘む。
「ここは臭うな。おっと、冒険者の中でも無礼な輩がいるせいか」
分かりやすいくらいの煽り方だ。
玉座から降り、ティルシア達を腫れ物でも見るように眺める。
「我らの崇拝するお方の像を破壊した女…。本当に憎たらしい」
エルフが寝ているティルシアの頭を踏みつけようとするが、エルフが床に転がった。
「いくら王族でも、やっていい事と悪い事があるだろう!」
ルゼルの手によって、エルフは殴り飛ばされていたのだ。
ルゼルだから、この程度で済んだ。
もし踏み付けていたのなら、デイル、エスティ、ライが黙ってはいない。
下手をすれば死んでいる。
その証拠にデイルの額に青筋が浮き出ていた。
キレる寸前だ。
「貴様ぁ…!誰に手を上げたと思っている、私を誰だと思っている…私は…」
完全に頭に血が上っているエルフは、声が掠れていく。
「サラン…だぞ」
サランと名乗ったエルフは、立ち尽くしていた。
視線の先に立つ赤髪の女、ルゼルだ。
「サラン?」
ルゼルが眉間に皺を寄せる。
「その赤髪…ま、まさか…ルゼル様…?」
サランは、あまりの衝撃にふらついている。
「あのサランか!?」
ルゼルも思い出したようだ。
サランが幼少期にルゼルから剣や魔法を習っていた事があり、心の底から尊敬していた。
ルゼルが戦死したという報せを聞き、1年程、部屋に閉じ籠り泣いていた。
「大きくなったな!」
ルゼルがサランに駆け寄り、昔のように頭を撫でる。
「はい…!」
感動の再会とは裏腹に、大臣達のざわめきが増す。
ルゼルが生きていたとしても、200年も前の話である。
信じろというのが無理な話だ。
「皆様、やはり運命は我らの味方!今こそ、ルゼル様を王女として新たな戦力と共に迎え入れるのです!」
国王の面前で発した言葉。
堂々たる国家反逆罪だ。
しかし、大臣達からは拍手喝采が起こる。
国王を差し置いて、称賛する大臣達の姿。
異様な光景だ。
「さぁ、ルゼル様!私と共に…!」
サランが手を差し伸べる。
「何を言ってる?私は王女になんかならないぞ」
「な、何を仰いますか!貴女は、これまで多くの民を守って来たではありませんか!」
サランが、その言葉を口にした時、ルゼルから懐かしさを感じていた表情が消え失せる。
「守れなかったから、王になる資格がないんだ」
ルゼルは今でも悔いている。
あの村を救えなかった事を。
「それに、私は戦いから身を引く事にしたんだ。平和に暮らそうと思う」
200年前は、平和からかけ離れた世界だったと断言出来る。
激化する魔王軍と人間達の戦いは、血を血で洗う戦いそのものだ。
激突すれば、人間はそれに報復し、守るべき民までも立ち上がり犠牲になった。
「なら…仕方ないですね」
サランが左手を振ると、ルゼルは立ちくらむ。
体調が悪い訳ではない。
ただ急激に眠気が襲って来た。
瞼が徐々に閉じていき、立つことさえ出来ない。
「何…を…」
サランは崩れ落ちるルゼルを優しく抱き寄せる。
誰でも扱える睡眠魔法を使ったのだが、今のルゼルには効果は抜群。
魔力が安定しないルゼルにとって、防ぐ術はない。
「是が非でも…。貴女は私の王女になってもらう」
サランの取った行動に、デイルが敵意を剥き出しにする。
「何してやがる!」
「ほざくな冒険者。更地にさせる程の戦力…ここで消しておかなければ脅威になるからな」
サランが合図すると、騎士達が直ぐに取り囲む。
「あと一つ。私は冒険者が嫌いでね」
サランは、ティルシア達を見下す。
デイル達は、寝ているティルシアを守るようにして背中を合わせ拳を握る。
「こんな状況でも、まだ寝てんのかよ!」
「ベルド、その者達を片付けろ」
すると、デイルと気が合いそうだったベルドが拳を握り構えていた。
「最初から俺達を始末するつもりで、ここに連れて来たのかよ!」
デイルは唇を噛み締める。
「ああ。てめーらは大きな戦力になるからな」
ベルドが肯定する。
「嫌な人だと思ってましたけど、貴方は誇りある騎士じゃないですか!」
ライは実際にベルドと戦ったからこそ、誇りを蔑ろにするような人物ではないと思っていた。
しかし、肯定した以上、ベルドは敵となってしまう。
「ルゼルから聞いてはいたが、ティー達が戦ったという人魔解放戦線。貴様…人魔解放戦線と組んでいるな?」
エスティは、2年前から薄々勘づいていた。
ルゼル王国へと足を運んだ理由は、不穏な噂の確証を得るためだ。
住民の不可解な死。
ここ最近で増した戦力。
もし、強大な力を持つ人魔解放戦線が裏で糸を引いていたとするなら納得がいく。
「やれ!」
サランの合図で騎士達が飛び掛かると、ベルドが誰よりも早く飛び出していた。
デイルが蹴りを繰り出そうとするが、直ぐに行動を制止する。
視線が明らかに違う方向を向いていた。
飛び掛かった騎士の1人を踏み台に、ベルドは更に加速する。
騎士達の視線がベルドに注目した。
「な!?」
視線の先はサランだった。
上擦った声が上がる。
完全に不意を突かれた。
「待ってたぜ…この時をなッ!!」
ベルドが拳に魔力を纏わせる。
「貴様ッ!?」
「吹っ飛びやがれ!」
しかし、ベルドの拳はサランに届く事はなかった。
サランの目の前に現れた見えない壁によって、拳が防がれる。
「魔力障壁か!?」
魔力を放出させて攻撃を防ぐ魔力防御の1つなのだが、完全に不意突かれたサランが展開させる事は出来なかった。
「ベルド避けろ!」
エスティが魔力を捉え、ベルドに警告するが鮮血が舞う。
「ぐあっ!?」
ベルドは体に衝撃を受け、デイル達の元へと吹き飛ばされてしまう。
サランの元へと駆け付けた黒いローブを身に纏う影が2つ。
「大丈夫か!」
デイルが吹き飛ばされたベルドを受け止めると、体には太い針が突き刺さっていた。
「悪ぃ…助かった」
ベルドが太い針を抜き、自ら回復魔法で傷を癒すが治りが遅い。
「くそ…黒い瘴気の影響か…」
太い針は黒い瘴気を纏っていた。
エスティの言った通り、サランの後ろ盾は人魔解放戦線で確定した。
「しっかり殺せよ!」
黒いローブを着ていても分かる屈強な肉体を持つ男は針を投げたであろう、もう一人へ文句を付ける。
「【殺し】はアタシの信条に反するからね」
もう一人は声から察するに女性だった。
「サラン、随分と良い後ろ盾を得たな」
エスティが鼻で笑う。
「おい魔法使い。そりゃどういう意味だ?」
男がフードを脱ぐと、顔面に大きな傷を受けた厳つい顔が顕になる。
「皮肉に決まっているじゃんね」
フードを脱ぐと、ツリ目で青髪の女が答える。
2人の顔触れにデイルが驚く。
恐らく知らない者は居ないだろう。
「【屠りし者】デゴに【不殺】のマレイか…!」
【屠りし者】デゴと【不殺】のマレイ。
人魔解放戦線は、強大な力を有しているとはいえ、烏合の衆と言ってもいい。
しかし、人魔解放戦線が最も恐れられている理由は、戦力の要である幹部達である。
二つ名を持つ幹部達の実力は、一国を攻め滅ぼすと言われている。
幹部と相まみえたら最後、必ず命を落とすと恐れられている程だ。
「あの冒険者達を始末しろ、いいな」
サランが命じ、ルゼルを抱きかかえたまま、奥へと姿を消す。
「ベルドよ。貴様、こうなる事を分かって連れて来たな」
エスティがベルドの意図を汲む。
「ああ。戦力としてなら、十分過ぎるからな。サランが王を誑かした後、長年好き放題だ。そして昨日、魔生物が現れた時、【契約騎士】達を地下牢に閉じ込めやがった…」
ベルドは状況を打開すべく長年悩んでいたが、ティルシア達に遭遇し今を描いた。
「まずは、仲間を解放したい。手を貸してくれ」
「良いだろう。1つ…貸しだぞ?」
エスティが不敵に微笑む。
後が怖いが、そうも言ってはられない状況に、ベルドが承諾する。
ベルドは地面に手を触れ、ティルシア達から取り上げた武器を手渡す。
「やるとするか…」
エスティが全身に魔力を巡らせ、魔法封じの手枷を破壊し、デイルとライも同じようにして手枷を破壊して戦闘態勢になる。
良い噂よりも悪名を轟かせている探究者パーティー。
当然と言える。
ましてや、ティルシアとエスティはルゼル王国で問題を起こしたばかりだ。
ベルドが跪くと、ルゼル王国国王が姿を見せる。
丸々とした顔立ちに脂汗、国王としての威厳を感じさせない程の雰囲気に、服は贅肉ではち切れそうだ。
王冠さえ玩具に見える。
デイルとルゼルは騎士だった事もあり跪き、国王が言葉を発するまで顔を上げない。
ライは訳が分からず、土下座している。
ティルシアは、床に突っ伏して寝ており、エスティは頭すら下げない。
「おい、馬鹿!国王様の御前だぞ」
ベルドが小声で訴えるが、エスティは聞く耳を持たない。
「生憎、肥え太った愚かな王に下げる頭は持ち合わせていない」
エスティが嘲笑すると、騎士達が剣に手を掛ける。
誰がどう見ても分かるほどの侮辱。
この場で処刑されてもおかしくはない。
「貴様!無礼だぞっ!」
「国王様に向かって…」
大臣達も声を荒らげる。
「はい、皆さんお静かに」
手を叩きながら現れた男がこの場を収める。
人よりも耳先が長い、茶髪の男。
エルフと言われる種族だ。
幼少期から秘めている魔力は強大で、魔法の扱いだけなら精鋭騎士と同等の実力がある。
寿命は2000年ほど生きるとされていて、数ある歴史の目撃者でもある。
漂わせる国王よりも威厳がある雰囲気だ。
「冒険者風情が、随分な口を叩く」
エルフは、ティルシア達を見下しながら鼻を摘む。
「ここは臭うな。おっと、冒険者の中でも無礼な輩がいるせいか」
分かりやすいくらいの煽り方だ。
玉座から降り、ティルシア達を腫れ物でも見るように眺める。
「我らの崇拝するお方の像を破壊した女…。本当に憎たらしい」
エルフが寝ているティルシアの頭を踏みつけようとするが、エルフが床に転がった。
「いくら王族でも、やっていい事と悪い事があるだろう!」
ルゼルの手によって、エルフは殴り飛ばされていたのだ。
ルゼルだから、この程度で済んだ。
もし踏み付けていたのなら、デイル、エスティ、ライが黙ってはいない。
下手をすれば死んでいる。
その証拠にデイルの額に青筋が浮き出ていた。
キレる寸前だ。
「貴様ぁ…!誰に手を上げたと思っている、私を誰だと思っている…私は…」
完全に頭に血が上っているエルフは、声が掠れていく。
「サラン…だぞ」
サランと名乗ったエルフは、立ち尽くしていた。
視線の先に立つ赤髪の女、ルゼルだ。
「サラン?」
ルゼルが眉間に皺を寄せる。
「その赤髪…ま、まさか…ルゼル様…?」
サランは、あまりの衝撃にふらついている。
「あのサランか!?」
ルゼルも思い出したようだ。
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ルゼルが戦死したという報せを聞き、1年程、部屋に閉じ籠り泣いていた。
「大きくなったな!」
ルゼルがサランに駆け寄り、昔のように頭を撫でる。
「はい…!」
感動の再会とは裏腹に、大臣達のざわめきが増す。
ルゼルが生きていたとしても、200年も前の話である。
信じろというのが無理な話だ。
「皆様、やはり運命は我らの味方!今こそ、ルゼル様を王女として新たな戦力と共に迎え入れるのです!」
国王の面前で発した言葉。
堂々たる国家反逆罪だ。
しかし、大臣達からは拍手喝采が起こる。
国王を差し置いて、称賛する大臣達の姿。
異様な光景だ。
「さぁ、ルゼル様!私と共に…!」
サランが手を差し伸べる。
「何を言ってる?私は王女になんかならないぞ」
「な、何を仰いますか!貴女は、これまで多くの民を守って来たではありませんか!」
サランが、その言葉を口にした時、ルゼルから懐かしさを感じていた表情が消え失せる。
「守れなかったから、王になる資格がないんだ」
ルゼルは今でも悔いている。
あの村を救えなかった事を。
「それに、私は戦いから身を引く事にしたんだ。平和に暮らそうと思う」
200年前は、平和からかけ離れた世界だったと断言出来る。
激化する魔王軍と人間達の戦いは、血を血で洗う戦いそのものだ。
激突すれば、人間はそれに報復し、守るべき民までも立ち上がり犠牲になった。
「なら…仕方ないですね」
サランが左手を振ると、ルゼルは立ちくらむ。
体調が悪い訳ではない。
ただ急激に眠気が襲って来た。
瞼が徐々に閉じていき、立つことさえ出来ない。
「何…を…」
サランは崩れ落ちるルゼルを優しく抱き寄せる。
誰でも扱える睡眠魔法を使ったのだが、今のルゼルには効果は抜群。
魔力が安定しないルゼルにとって、防ぐ術はない。
「是が非でも…。貴女は私の王女になってもらう」
サランの取った行動に、デイルが敵意を剥き出しにする。
「何してやがる!」
「ほざくな冒険者。更地にさせる程の戦力…ここで消しておかなければ脅威になるからな」
サランが合図すると、騎士達が直ぐに取り囲む。
「あと一つ。私は冒険者が嫌いでね」
サランは、ティルシア達を見下す。
デイル達は、寝ているティルシアを守るようにして背中を合わせ拳を握る。
「こんな状況でも、まだ寝てんのかよ!」
「ベルド、その者達を片付けろ」
すると、デイルと気が合いそうだったベルドが拳を握り構えていた。
「最初から俺達を始末するつもりで、ここに連れて来たのかよ!」
デイルは唇を噛み締める。
「ああ。てめーらは大きな戦力になるからな」
ベルドが肯定する。
「嫌な人だと思ってましたけど、貴方は誇りある騎士じゃないですか!」
ライは実際にベルドと戦ったからこそ、誇りを蔑ろにするような人物ではないと思っていた。
しかし、肯定した以上、ベルドは敵となってしまう。
「ルゼルから聞いてはいたが、ティー達が戦ったという人魔解放戦線。貴様…人魔解放戦線と組んでいるな?」
エスティは、2年前から薄々勘づいていた。
ルゼル王国へと足を運んだ理由は、不穏な噂の確証を得るためだ。
住民の不可解な死。
ここ最近で増した戦力。
もし、強大な力を持つ人魔解放戦線が裏で糸を引いていたとするなら納得がいく。
「やれ!」
サランの合図で騎士達が飛び掛かると、ベルドが誰よりも早く飛び出していた。
デイルが蹴りを繰り出そうとするが、直ぐに行動を制止する。
視線が明らかに違う方向を向いていた。
飛び掛かった騎士の1人を踏み台に、ベルドは更に加速する。
騎士達の視線がベルドに注目した。
「な!?」
視線の先はサランだった。
上擦った声が上がる。
完全に不意を突かれた。
「待ってたぜ…この時をなッ!!」
ベルドが拳に魔力を纏わせる。
「貴様ッ!?」
「吹っ飛びやがれ!」
しかし、ベルドの拳はサランに届く事はなかった。
サランの目の前に現れた見えない壁によって、拳が防がれる。
「魔力障壁か!?」
魔力を放出させて攻撃を防ぐ魔力防御の1つなのだが、完全に不意突かれたサランが展開させる事は出来なかった。
「ベルド避けろ!」
エスティが魔力を捉え、ベルドに警告するが鮮血が舞う。
「ぐあっ!?」
ベルドは体に衝撃を受け、デイル達の元へと吹き飛ばされてしまう。
サランの元へと駆け付けた黒いローブを身に纏う影が2つ。
「大丈夫か!」
デイルが吹き飛ばされたベルドを受け止めると、体には太い針が突き刺さっていた。
「悪ぃ…助かった」
ベルドが太い針を抜き、自ら回復魔法で傷を癒すが治りが遅い。
「くそ…黒い瘴気の影響か…」
太い針は黒い瘴気を纏っていた。
エスティの言った通り、サランの後ろ盾は人魔解放戦線で確定した。
「しっかり殺せよ!」
黒いローブを着ていても分かる屈強な肉体を持つ男は針を投げたであろう、もう一人へ文句を付ける。
「【殺し】はアタシの信条に反するからね」
もう一人は声から察するに女性だった。
「サラン、随分と良い後ろ盾を得たな」
エスティが鼻で笑う。
「おい魔法使い。そりゃどういう意味だ?」
男がフードを脱ぐと、顔面に大きな傷を受けた厳つい顔が顕になる。
「皮肉に決まっているじゃんね」
フードを脱ぐと、ツリ目で青髪の女が答える。
2人の顔触れにデイルが驚く。
恐らく知らない者は居ないだろう。
「【屠りし者】デゴに【不殺】のマレイか…!」
【屠りし者】デゴと【不殺】のマレイ。
人魔解放戦線は、強大な力を有しているとはいえ、烏合の衆と言ってもいい。
しかし、人魔解放戦線が最も恐れられている理由は、戦力の要である幹部達である。
二つ名を持つ幹部達の実力は、一国を攻め滅ぼすと言われている。
幹部と相まみえたら最後、必ず命を落とすと恐れられている程だ。
「あの冒険者達を始末しろ、いいな」
サランが命じ、ルゼルを抱きかかえたまま、奥へと姿を消す。
「ベルドよ。貴様、こうなる事を分かって連れて来たな」
エスティがベルドの意図を汲む。
「ああ。戦力としてなら、十分過ぎるからな。サランが王を誑かした後、長年好き放題だ。そして昨日、魔生物が現れた時、【契約騎士】達を地下牢に閉じ込めやがった…」
ベルドは状況を打開すべく長年悩んでいたが、ティルシア達に遭遇し今を描いた。
「まずは、仲間を解放したい。手を貸してくれ」
「良いだろう。1つ…貸しだぞ?」
エスティが不敵に微笑む。
後が怖いが、そうも言ってはられない状況に、ベルドが承諾する。
ベルドは地面に手を触れ、ティルシア達から取り上げた武器を手渡す。
「やるとするか…」
エスティが全身に魔力を巡らせ、魔法封じの手枷を破壊し、デイルとライも同じようにして手枷を破壊して戦闘態勢になる。
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