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11,再会
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「街までは、まだかなっ!?」
「たぶん…もう、すこしっ!」
リントは私達を先に逃がしてくれた。
示された方向へ走っていくと、きらびやかな繁華街が再び姿を表した。
息を切らせながらに走る私達は、前にいた人に勢いよくぶつかってしまう。
「わっ、ごめんなさ─」
「─レイ?それに、未ちゃんも…?」
「え……あ、アル…さん…?」
そこに立っていたのは、居るはずが無いアルだった。
だがしかし、母親に傷つけられた箇所は同じだし、綺麗なグレーの髪の毛に特徴的な銀の瞳。
そして何よりも。
──私が彼を見間違える訳が無い。
「アルさん!!」
「おっと、未ちゃん…今日は随分と積極的だね」
レイが見ているのも構わずに彼に抱きつくと、彼はくすりと笑いながら私を両腕で抱き止めてくれた。
温かい。
ずっとずっと会いたかった。
優しいアルを困らせないように、今度こそ私からも彼に触れられるように頑張りたかった。
でも、いざとなったら体が勝手に動いて、そんなの関係なんか無かったのだ。
いつしか私の「好き」には、理由が無くなってた。
「アルさん、アルさん、繁華街は賑やかで楽しくて………リントさんもすごく優しいし、レイちゃんと歩くのも楽しかったけど……。私、やっぱり…アルさんがいいです!アルさんとレイちゃんと、森の中をゆっくり歩いて、お話ししたいです…!」
「……リントと少し話をしたら、帰ろうか…俺達の森に」
「──はいっ!」
理屈じゃなくて。
言い訳なんか要らなくて。
ふと気付いたら胸がいっぱいになってるような。
そんな恋になってた。
溢れる涙を、アルが指で拭ってくれる。
レイも泣きそうになっていた。
「私、先に森へ帰ってるね。また今度、未ちゃん」
「またね、レイちゃん。ありがと」
軽やかに駆けていくレイの後ろ姿を見送ると、丁度リントが私達に追い付いた所だった。
「お、アル。久しぶりだな」
「そうだね…。二人を守っていてくれて、ありがとう」
「昔の約束を守っただけだ、気にするな」
「さて、じゃあ俺達はもう行くから」
「あ、あのリントさん!ありがとうございました!」
「気を付けて帰れよ」
ひらひらと手を振り、リントは背を向けて家の方向へと歩いていった。
するとアルは、私の手を優しく引いて微笑む。
悪戯っ子みたいな笑顔で言った。
「せっかくだから、未ちゃんと街を回りたいな」
「…ぜひ!」
「ふふっ…それじゃあお手をどうぞ、御姫様」
握られた手は私の手よりも一回り大きい。
少しだけ節が出っ張ってて、ごつごつとしてる。
そして何よりも温かい。
アルさんは、男の人だ。
わざわざそう意識をさせられる様な、そんな不思議な雰囲気を持った人。
………駄目。
思い出したら顔が赤くなってきた。
私、何だかんだ言ってやることはやってる様な…。
不意にタイミング良く振り向いた彼に、赤くなった顔を見られてしまった。
「未ちゃん、顔赤いよ?」
「何でもな……ひゃっ…!?」
次の瞬間、アルの顔がぐいっと近づくと、キスすると同時に唇を舐められた。
熱い吐息と、ぬるりとした舌の感触と、耳元に届く彼の甘い囁きに、背筋がぞくぞくする。
「──愛してるよ…ひつじ……」
「っあ、アルさん……?やっ、駄目、こんなとこで……!」
「そんなに怒らないで、さっきのは誰も見ていないよ」
行き交う人々はそれぞれの用事で先を急ぐのか、はたまた友達や家族とのおしゃべりに夢中なのか、私達には視線は向けられていなかった。
耳がすごく熱い。
耳元で囁くのはズルい。
◇
「…………!」
「やっぱり街のお店は珍しいんだね」
「す、すごい綺麗……!」
「あはは、聞いてないや」
アクセサリー屋さんの品物を見てはしゃいでる私を、愉しげにアルが笑っている。
素敵なアクセサリーがたくさんある。
銀のブレスレット、金のペンダントやネックレス。
プラチナの指輪に宝石をあしらったピアス。
その一つ一つが可愛らしくて、色んな物に目移りしてしまう。
だってせっかくだから、何か記念に買って帰りたい。
そう悩んでる私の横にアルは並ぶと、微笑んで提案をする。
「この銀の指輪、俺とお揃いにしない?」
「え、アルさんと…お揃い?」
「マフラーのお礼に、俺がこのペアリングをプレゼントするから」
唐突な提案に驚きながらも、彼が指を指した指輪は私が気になっていた物の一つだった事に気付いた。
綺麗な銀の土台に、深紅の小さなルビーが一粒だけ埋め込まれている。
土台の裏には名前を彫ってくれるサービスがあるらしい。
すごく気になってたけど、ペアリングだから私が買ってもなぁ…って思ってた。
「でも、良い…んですか?」
「………駄目?」
「駄目じゃ、ないですけど…」
「じゃあ、俺の指輪には未ちゃんの名前を彫って貰おうかな」
「な、なんで私の名前なんですか?」
「未ちゃんが俺の隣にいつも居てくれるように、おまじないみたいな?かな」
そうして手元に届いた指輪の裏には、お互いの名前が英語で書いてあった。
「えへへ…アルさんと、お揃い…♪」
「じゃあ、帰ろっか」
「はいっ」
私と彼の指には、私の目と同じ緋色のルビーがきらりと光っていた。
「たぶん…もう、すこしっ!」
リントは私達を先に逃がしてくれた。
示された方向へ走っていくと、きらびやかな繁華街が再び姿を表した。
息を切らせながらに走る私達は、前にいた人に勢いよくぶつかってしまう。
「わっ、ごめんなさ─」
「─レイ?それに、未ちゃんも…?」
「え……あ、アル…さん…?」
そこに立っていたのは、居るはずが無いアルだった。
だがしかし、母親に傷つけられた箇所は同じだし、綺麗なグレーの髪の毛に特徴的な銀の瞳。
そして何よりも。
──私が彼を見間違える訳が無い。
「アルさん!!」
「おっと、未ちゃん…今日は随分と積極的だね」
レイが見ているのも構わずに彼に抱きつくと、彼はくすりと笑いながら私を両腕で抱き止めてくれた。
温かい。
ずっとずっと会いたかった。
優しいアルを困らせないように、今度こそ私からも彼に触れられるように頑張りたかった。
でも、いざとなったら体が勝手に動いて、そんなの関係なんか無かったのだ。
いつしか私の「好き」には、理由が無くなってた。
「アルさん、アルさん、繁華街は賑やかで楽しくて………リントさんもすごく優しいし、レイちゃんと歩くのも楽しかったけど……。私、やっぱり…アルさんがいいです!アルさんとレイちゃんと、森の中をゆっくり歩いて、お話ししたいです…!」
「……リントと少し話をしたら、帰ろうか…俺達の森に」
「──はいっ!」
理屈じゃなくて。
言い訳なんか要らなくて。
ふと気付いたら胸がいっぱいになってるような。
そんな恋になってた。
溢れる涙を、アルが指で拭ってくれる。
レイも泣きそうになっていた。
「私、先に森へ帰ってるね。また今度、未ちゃん」
「またね、レイちゃん。ありがと」
軽やかに駆けていくレイの後ろ姿を見送ると、丁度リントが私達に追い付いた所だった。
「お、アル。久しぶりだな」
「そうだね…。二人を守っていてくれて、ありがとう」
「昔の約束を守っただけだ、気にするな」
「さて、じゃあ俺達はもう行くから」
「あ、あのリントさん!ありがとうございました!」
「気を付けて帰れよ」
ひらひらと手を振り、リントは背を向けて家の方向へと歩いていった。
するとアルは、私の手を優しく引いて微笑む。
悪戯っ子みたいな笑顔で言った。
「せっかくだから、未ちゃんと街を回りたいな」
「…ぜひ!」
「ふふっ…それじゃあお手をどうぞ、御姫様」
握られた手は私の手よりも一回り大きい。
少しだけ節が出っ張ってて、ごつごつとしてる。
そして何よりも温かい。
アルさんは、男の人だ。
わざわざそう意識をさせられる様な、そんな不思議な雰囲気を持った人。
………駄目。
思い出したら顔が赤くなってきた。
私、何だかんだ言ってやることはやってる様な…。
不意にタイミング良く振り向いた彼に、赤くなった顔を見られてしまった。
「未ちゃん、顔赤いよ?」
「何でもな……ひゃっ…!?」
次の瞬間、アルの顔がぐいっと近づくと、キスすると同時に唇を舐められた。
熱い吐息と、ぬるりとした舌の感触と、耳元に届く彼の甘い囁きに、背筋がぞくぞくする。
「──愛してるよ…ひつじ……」
「っあ、アルさん……?やっ、駄目、こんなとこで……!」
「そんなに怒らないで、さっきのは誰も見ていないよ」
行き交う人々はそれぞれの用事で先を急ぐのか、はたまた友達や家族とのおしゃべりに夢中なのか、私達には視線は向けられていなかった。
耳がすごく熱い。
耳元で囁くのはズルい。
◇
「…………!」
「やっぱり街のお店は珍しいんだね」
「す、すごい綺麗……!」
「あはは、聞いてないや」
アクセサリー屋さんの品物を見てはしゃいでる私を、愉しげにアルが笑っている。
素敵なアクセサリーがたくさんある。
銀のブレスレット、金のペンダントやネックレス。
プラチナの指輪に宝石をあしらったピアス。
その一つ一つが可愛らしくて、色んな物に目移りしてしまう。
だってせっかくだから、何か記念に買って帰りたい。
そう悩んでる私の横にアルは並ぶと、微笑んで提案をする。
「この銀の指輪、俺とお揃いにしない?」
「え、アルさんと…お揃い?」
「マフラーのお礼に、俺がこのペアリングをプレゼントするから」
唐突な提案に驚きながらも、彼が指を指した指輪は私が気になっていた物の一つだった事に気付いた。
綺麗な銀の土台に、深紅の小さなルビーが一粒だけ埋め込まれている。
土台の裏には名前を彫ってくれるサービスがあるらしい。
すごく気になってたけど、ペアリングだから私が買ってもなぁ…って思ってた。
「でも、良い…んですか?」
「………駄目?」
「駄目じゃ、ないですけど…」
「じゃあ、俺の指輪には未ちゃんの名前を彫って貰おうかな」
「な、なんで私の名前なんですか?」
「未ちゃんが俺の隣にいつも居てくれるように、おまじないみたいな?かな」
そうして手元に届いた指輪の裏には、お互いの名前が英語で書いてあった。
「えへへ…アルさんと、お揃い…♪」
「じゃあ、帰ろっか」
「はいっ」
私と彼の指には、私の目と同じ緋色のルビーがきらりと光っていた。
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