5 / 12
♪4 ヒロインと主人公
しおりを挟む
「お前、なんか変わったな」
「え、そう………ですか?」
唐突にそう彼に言われて、私は驚きを隠せなかった。
だって蒼真君、優しい笑顔まで浮かべてるんだよ?
何が変わったのかも分からないまま考えこんでいると、頭をぽんと軽く撫でて蒼真は言う。
「なんか、表情とか可愛くなった」
そして、何事もなかったかのように蒼真はスタッフの方へ去っていく。
先ほど撫でられた所が温かい。
なんだろうこれ。
まただ、このふわふわする感じ。
この間、私はこの気持ちに恋と言う名前をつけたのだ。
ならば私は、蒼真に惹かれているとでも言うのだろうか。
「麻理、好きだ」
「私も綾斗のこと………好き」
映画の中の登場人物、綾斗は麻理に触れるくらいのキスをする。
………はずだった。
なんと、蒼真がふらりと床に倒れこんだのだ。
いつもは白い顔を、赤くして。
「そ、蒼真君っ!?」
「病院に連れていく。サクラさんは、ここで休んでいてください」
「……はい。」
心なしか息を荒くしている蒼真を見て、なんだか落ち着かなくなってしまうが、休んでいろと言われたならしょうがない。
ここで大人しく待っているとしよう、幸いながらほんの少しだがスタッフもいるし。
でもなんで、蒼真にあんな風に感じたんだろう?
自分が自分じゃないような感じがして、なんだか気持ち悪い。
それでもって、急に優しくなった蒼真君が分からない
「騒がせちゃってごめん、ただの風邪だった」
「良いよ、帰ってきただけ。さ、続き撮るぞ」
スタッフは笑顔で蒼真を迎えた。
本当に心から良かったと言うように。
不意に、蒼真は私の元に来て恥ずかしそうにくすりと笑う。
「その……ごめんな。自己管理できてないくせに、あんなこと言って」
「う、うぅん!だって、ほんとの事だもん!私は恋をしたことほとんど無い…」
「ふっ…、はははっ。お前、素は思ったより子供っぽいな」
蒼真は、こんな顔をして笑うんだ。
笑った、綺麗な顔に思わず見とれてしまう。
笑いだす蒼真を初めて見た私は、子供っぽいと言われたことにほんの少し怒りながら言う。
「お、お前じゃなくてサクラっ!」
「はいはい、分かった。ほら、撮影始まんぞ…………サクラ」
名前を呼ばれるだけで、ドキリとしてしまう。
あんなにいつもツンツンしているのに、笑うと素敵なんだってギャップは、もしかしたら私だけの秘密かもしれない。
結局、分かったはずだった恋に悩まされてる私。
でもそんな思考を隅に追いやって、今日もまたステップを踏む。
「え、そう………ですか?」
唐突にそう彼に言われて、私は驚きを隠せなかった。
だって蒼真君、優しい笑顔まで浮かべてるんだよ?
何が変わったのかも分からないまま考えこんでいると、頭をぽんと軽く撫でて蒼真は言う。
「なんか、表情とか可愛くなった」
そして、何事もなかったかのように蒼真はスタッフの方へ去っていく。
先ほど撫でられた所が温かい。
なんだろうこれ。
まただ、このふわふわする感じ。
この間、私はこの気持ちに恋と言う名前をつけたのだ。
ならば私は、蒼真に惹かれているとでも言うのだろうか。
「麻理、好きだ」
「私も綾斗のこと………好き」
映画の中の登場人物、綾斗は麻理に触れるくらいのキスをする。
………はずだった。
なんと、蒼真がふらりと床に倒れこんだのだ。
いつもは白い顔を、赤くして。
「そ、蒼真君っ!?」
「病院に連れていく。サクラさんは、ここで休んでいてください」
「……はい。」
心なしか息を荒くしている蒼真を見て、なんだか落ち着かなくなってしまうが、休んでいろと言われたならしょうがない。
ここで大人しく待っているとしよう、幸いながらほんの少しだがスタッフもいるし。
でもなんで、蒼真にあんな風に感じたんだろう?
自分が自分じゃないような感じがして、なんだか気持ち悪い。
それでもって、急に優しくなった蒼真君が分からない
「騒がせちゃってごめん、ただの風邪だった」
「良いよ、帰ってきただけ。さ、続き撮るぞ」
スタッフは笑顔で蒼真を迎えた。
本当に心から良かったと言うように。
不意に、蒼真は私の元に来て恥ずかしそうにくすりと笑う。
「その……ごめんな。自己管理できてないくせに、あんなこと言って」
「う、うぅん!だって、ほんとの事だもん!私は恋をしたことほとんど無い…」
「ふっ…、はははっ。お前、素は思ったより子供っぽいな」
蒼真は、こんな顔をして笑うんだ。
笑った、綺麗な顔に思わず見とれてしまう。
笑いだす蒼真を初めて見た私は、子供っぽいと言われたことにほんの少し怒りながら言う。
「お、お前じゃなくてサクラっ!」
「はいはい、分かった。ほら、撮影始まんぞ…………サクラ」
名前を呼ばれるだけで、ドキリとしてしまう。
あんなにいつもツンツンしているのに、笑うと素敵なんだってギャップは、もしかしたら私だけの秘密かもしれない。
結局、分かったはずだった恋に悩まされてる私。
でもそんな思考を隅に追いやって、今日もまたステップを踏む。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる