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♪4 ヒロインと主人公

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「お前、なんか変わったな」
「え、そう………ですか?」


唐突にそう彼に言われて、私は驚きを隠せなかった。
だって蒼真君、優しい笑顔まで浮かべてるんだよ?

何が変わったのかも分からないまま考えこんでいると、頭をぽんと軽く撫でて蒼真は言う。


「なんか、表情とか可愛くなった」


そして、何事もなかったかのように蒼真はスタッフの方へ去っていく。
先ほど撫でられた所が温かい。
なんだろうこれ。
まただ、このふわふわする感じ。
 
この間、私はこの気持ちに恋と言う名前をつけたのだ。

ならば私は、蒼真に惹かれているとでも言うのだろうか。


「麻理、好きだ」
「私も綾斗のこと………好き」


映画の中の登場人物、綾斗は麻理に触れるくらいのキスをする。

………はずだった。

なんと、蒼真がふらりと床に倒れこんだのだ。
いつもは白い顔を、赤くして。


「そ、蒼真君っ!?」
「病院に連れていく。サクラさんは、ここで休んでいてください」
「……はい。」


心なしか息を荒くしている蒼真を見て、なんだか落ち着かなくなってしまうが、休んでいろと言われたならしょうがない。
ここで大人しく待っているとしよう、幸いながらほんの少しだがスタッフもいるし。

でもなんで、蒼真にあんな風に感じたんだろう?
自分が自分じゃないような感じがして、なんだか気持ち悪い。
それでもって、急に優しくなった蒼真君が分からない












「騒がせちゃってごめん、ただの風邪だった」
「良いよ、帰ってきただけ。さ、続き撮るぞ」


スタッフは笑顔で蒼真を迎えた。
本当に心から良かったと言うように。

不意に、蒼真は私の元に来て恥ずかしそうにくすりと笑う。


「その……ごめんな。自己管理できてないくせに、あんなこと言って」
「う、うぅん!だって、ほんとの事だもん!私は恋をしたことほとんど無い…」
「ふっ…、はははっ。お前、素は思ったより子供っぽいな」


蒼真は、こんな顔をして笑うんだ。
笑った、綺麗な顔に思わず見とれてしまう。
 
笑いだす蒼真を初めて見た私は、子供っぽいと言われたことにほんの少し怒りながら言う。


「お、お前じゃなくてサクラっ!」
「はいはい、分かった。ほら、撮影始まんぞ…………サクラ」


名前を呼ばれるだけで、ドキリとしてしまう。
あんなにいつもツンツンしているのに、笑うと素敵なんだってギャップは、もしかしたら私だけの秘密かもしれない。

結局、分かったはずだった恋に悩まされてる私。
でもそんな思考を隅に追いやって、今日もまたステップを踏む。
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