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♪2 厳しいレッスン

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一生懸命頑張るとは言いました。
せめて、役足らずなりに頑張るとは言いました。
でも、これは厳し過ぎますよ!

映画のリハーサルの中で言われた一言が、思ったより心に刺さったんです。
しかも、普段はにこりともしない神野 蒼真に。


「……お前さ、恋愛とかしたことねーだろ。」
「へ…?な、なんでですか…?」
「仕草が、『恋してる女』出来てねーから」


細くて切れ長な、濃紺の冷たい目で蒼真は私に言う。
確かに、事実ではあるから痛い。

去っていく蒼真の背中を見つめ、どうすれば良いか一人悩む。
答えなんか決まってるくせに、いつまでも悩み続ける。
だって、知らないなら体験すれば良いだけの話しなんだから。
 …
…問題は、相手がいないことだ。それに、事務所からNGが出ているからバレないようにしなければいけない。



「で、僕の所に相談しに来た………と」
「前聞いた時、恋したことあるって言ってたから……。どうすればいいか知ってると思って」


私は、珍しく私服の彼に笑いかけた。
アンティーク屋さんに行こうとした途中、偶然にも私服で歩いている真を見つけたのだ。

人があまりいなくて、どちらかというと物陰に隠れてしまう公園のベンチで、彼にそう打ち明けた。


「そっか、それなら……」


なるほど、と呟いた真は私の手を握り、暗闇のせいかいつもより艶やかな笑みを浮かべて言う。


「じゃあ、……僕と恋愛してみる?」


………はい?

これっていわゆる告白ってやつですか?
映画とかで良く出る、ってか私が演技でするやつ。

すると、真はくいっと私の体を引き寄せ、受け止める。
私もしかして、今抱きしめられてる?

耳もとに優しく囁く声と、熱い吐息が降ってくる。


「ねぇ、僕じゃあ…駄目?君の初恋の相手」


カッと体が熱くなる。
こんなことされたのは初めてだし、なにより私は、嫌がってない。
男の人に触れるのはあまり好きではなくて、付き合うとか告白とか縁がなくて、それでいいやって思ってた。
でも私、真に今抱きしめられてて嫌じゃない。


「だって桜ちゃんさ、食べちゃいたいくらい可愛いんだもん」
「ひゃ……」
「僕、ずっと君のこと見てた。店にいるときもいつも、にこにこして商品を見てくれるから嬉しかったんだ」


耳たぶにキスを落とされ、まともな判断力を奪われてしまう。甘い声が、余計にドキドキしてしまう。
これが、恋してるって言うんだろうか。

真は私からそっと離れると、本当に嬉しそうな笑顔で言う。


「ごめんね、引き留めちゃって。でも、今日は嬉しかったよ。」
「あ、こ、こちらこそ!な、なんていうか、ありがとう」


恋って気持ち、少し分かった気がする。
なんかふわふわしてて、弾けちゃいそうで、きらきらしてる。
そんな気持ち。

私今、恋してる。
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