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◆第壱章 メリーさんは寒がり①
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メリーに会うために、僕は教会の中で立ち尽くす。
お祈りを捧げようとも思ったのだが、本当に神様が僕らを見てるなら、神様が僕らを見捨てることなんて有り得ない。
僕とメリーは、そんな自分勝手な神様に選ばれた人間だから。
ゆらゆらと壁を照らしながら灯りが燃えている。
待っていた通り、メリーは教会へとやってきた。
振り返ってメリーに向き直ると、にこやかにメリーへ言った。
「初めまして、メリー」
「………貴方、なのね」
その声は、可憐で儚い花びらの様な声だった。
透き通った綺麗な声は、僕に対する不信感を表すかの如く不機嫌な声だ。
慌てて笑顔で弁解を始める。
「あぁ、そんなに警戒しないで。僕は君をどうしようって訳じゃないよ」
「…ならどうして、私をここへ呼んだの?私がここに来るように仕向けたのは、貴方でしょう?」
うわぁ、僕すごい信頼されてないなぁ。
っていうかむしろこれ、嫌われてない?
すごく棘が刺さってくるんだけど。
ふと目に止まった、腹部の傷が痛々しい。
これだけ血が出ても感じないなんて、ある意味痛覚が無い方が危険なんじゃないかな。
僕のしようとしてる事が分かったのか、メリーは後退りをしていた。
だけど、逃がさないよ。
痛覚が無いだけで体は普通の人とあんまり変わらないんだから。
逃げようとするメリーを押さえ付ける。
「その前にその傷、治療しなきゃね」
「ちょ、やめ…離して!…変態って叫ぶよ!?」
「叫んでごらん。シスター達が駆けつけて、怪我してる事と真夜中に孤児院を抜け出してきた事、怒られるだろうなぁ」
抵抗の仕方が可愛らしくて、つい笑ってしまった。
メリーはシスター達が苦手だからなぁ。
シスター達って言葉が効いたのか、メリーはしょうがなさそうに僕に対する抵抗を止めて、僕の腕の中でピタリと止まった。
メリーは手当てを始めた僕に向けて、感情が読み取れない暗い声で言う。
「…貴方、私の事何でも知ってる」
「なんでか気になる?」
「…とっても、ね」
メリーは「何で私がこんな目に」とでも言いたげな目で、だけどそれ以上は何も言わずにただ俯いた。
さらさらのこの白髪、すごく綺麗でうらやましい。
不意に、自己紹介をしてないと思い出した。
「あ、僕の名前はノイズ・シャーリー(noise-shally)。」
「不思議な名前。『雑音』なんて」
「実際に僕の声は気持ち悪いでしょ?」
彼女がこちらを見て不思議そうな顔をしたため、僕は自嘲気味に笑って見せた。
僕は所詮、この世界には必要ない雑音なんだから。
するとメリーはまたさっきみたいに俯いて、ぼそりと言った。
「そんなことないのに」
その言葉がどういう意味で言われた言葉かっていうのは、僕には全くと言っていいほど分からない。
そんなことないって、それは僕の声が悪くないって事?
それとも君の優しい慰め?
「メリーは、隠し通して生きているんだね」
「………そろそろ、話してくれない?」
「おっと、今日は時間切れだ。また、明日ね」
イライラした声で返してくるメリーに、僕は強引ながらも話を切り上げた。
反論しようとする元気な彼女へ一言。
「おやすみ、メリー」
彼女はふわりと倒れこむ。
これは僕が一番得意とする眠りの魔法だ。
すやすやとよく眠るメリーの頭を撫でる。
あぁ、本当にメリーは可愛いなぁ。
そんなメリーが神様に選ばれたんだって、可哀想になってくる。
けれど、それがなければ僕とメリーが出会うことも無かった。
ならば僕は神様に感謝するべきだろうか?
軽い体をお姫様だっこし、宵闇の空の下僕は孤児院へと向かった。
お祈りを捧げようとも思ったのだが、本当に神様が僕らを見てるなら、神様が僕らを見捨てることなんて有り得ない。
僕とメリーは、そんな自分勝手な神様に選ばれた人間だから。
ゆらゆらと壁を照らしながら灯りが燃えている。
待っていた通り、メリーは教会へとやってきた。
振り返ってメリーに向き直ると、にこやかにメリーへ言った。
「初めまして、メリー」
「………貴方、なのね」
その声は、可憐で儚い花びらの様な声だった。
透き通った綺麗な声は、僕に対する不信感を表すかの如く不機嫌な声だ。
慌てて笑顔で弁解を始める。
「あぁ、そんなに警戒しないで。僕は君をどうしようって訳じゃないよ」
「…ならどうして、私をここへ呼んだの?私がここに来るように仕向けたのは、貴方でしょう?」
うわぁ、僕すごい信頼されてないなぁ。
っていうかむしろこれ、嫌われてない?
すごく棘が刺さってくるんだけど。
ふと目に止まった、腹部の傷が痛々しい。
これだけ血が出ても感じないなんて、ある意味痛覚が無い方が危険なんじゃないかな。
僕のしようとしてる事が分かったのか、メリーは後退りをしていた。
だけど、逃がさないよ。
痛覚が無いだけで体は普通の人とあんまり変わらないんだから。
逃げようとするメリーを押さえ付ける。
「その前にその傷、治療しなきゃね」
「ちょ、やめ…離して!…変態って叫ぶよ!?」
「叫んでごらん。シスター達が駆けつけて、怪我してる事と真夜中に孤児院を抜け出してきた事、怒られるだろうなぁ」
抵抗の仕方が可愛らしくて、つい笑ってしまった。
メリーはシスター達が苦手だからなぁ。
シスター達って言葉が効いたのか、メリーはしょうがなさそうに僕に対する抵抗を止めて、僕の腕の中でピタリと止まった。
メリーは手当てを始めた僕に向けて、感情が読み取れない暗い声で言う。
「…貴方、私の事何でも知ってる」
「なんでか気になる?」
「…とっても、ね」
メリーは「何で私がこんな目に」とでも言いたげな目で、だけどそれ以上は何も言わずにただ俯いた。
さらさらのこの白髪、すごく綺麗でうらやましい。
不意に、自己紹介をしてないと思い出した。
「あ、僕の名前はノイズ・シャーリー(noise-shally)。」
「不思議な名前。『雑音』なんて」
「実際に僕の声は気持ち悪いでしょ?」
彼女がこちらを見て不思議そうな顔をしたため、僕は自嘲気味に笑って見せた。
僕は所詮、この世界には必要ない雑音なんだから。
するとメリーはまたさっきみたいに俯いて、ぼそりと言った。
「そんなことないのに」
その言葉がどういう意味で言われた言葉かっていうのは、僕には全くと言っていいほど分からない。
そんなことないって、それは僕の声が悪くないって事?
それとも君の優しい慰め?
「メリーは、隠し通して生きているんだね」
「………そろそろ、話してくれない?」
「おっと、今日は時間切れだ。また、明日ね」
イライラした声で返してくるメリーに、僕は強引ながらも話を切り上げた。
反論しようとする元気な彼女へ一言。
「おやすみ、メリー」
彼女はふわりと倒れこむ。
これは僕が一番得意とする眠りの魔法だ。
すやすやとよく眠るメリーの頭を撫でる。
あぁ、本当にメリーは可愛いなぁ。
そんなメリーが神様に選ばれたんだって、可哀想になってくる。
けれど、それがなければ僕とメリーが出会うことも無かった。
ならば僕は神様に感謝するべきだろうか?
軽い体をお姫様だっこし、宵闇の空の下僕は孤児院へと向かった。
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