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▷14 安心する夜
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目を覚ますともう朝で、Aimには2時近くに[凛は全然大丈夫だよ]と統矢から送られてきていた。
泣きながら必死に謝る昨夜のゆんの姿が、私の脳裏からずっと離れなかった。
彼は、きっと強い。
だって私は血がとても怖かった。
おばあちゃんの事を思い出してしまい、あぁ凛も死んでしまうのではないかと、足が震えて動かなくなりそうだった。
なのにそれでも、彼は懸命に自分が出来る精一杯の応急処置を咄嗟に行う事が出来た。
自分が血塗れになるのも、たくさん血が出ている腕を触るのも厭わず、ただ凛の為だけに必死で。
それは、きっと私には出来ない事だった。
(──学校、行かなきゃ)
◇
「…おはよう、夕灯君。昨日はお疲れ様」
「音々子ちゃんおはよ、あいつは一週間くらい入院だって」
「そう…なんだ」
いつもより物憂げな表情で、統矢はふわりと笑った。
先生が入って来ると、一時間目から一番広い部屋の大講義室に全クラス集合だと連絡を受けた。
修学旅行の話をするらしい。
私はこういう行事が嫌い。
それはクラスの人にとって、私を先生が全く見ていない(目の届かない)所で虐められる、絶好の機会他ならないからである。
ぞろぞろと移動する人の列の、一番後ろについて歩いた。
面倒くさいなぁと思っていると、先が見えない長い行列が大講義室に収まっていく。
主任の男の先生、名前は……確か東堂先生。
東堂先生が生徒の前で言った。
「じゃあ班組でもするぞ、4人以上の班作れー。休んでる奴も何処かに入れてくれよ、出来たら座れ」
先生の一言で、皆はザワザワと騒ぎ出す。
この空気が苦手で昔を思い出すと、言い様の無い不快感に襲われて吐き気がした。
俯いた私はその場から一歩も動けないでいると、唐突に左右から手を引っ張られ、その場に座らせられた。
自分に何が起こったのか理解が出来ずに慌てて前を向くと、舞と統矢がそれぞれ私の右手と左手を握って、悪戯っぽい顔で笑っている。
「ここに凛が入って、班完成だべー」
「という訳で音々子ちゃん、よろしくね」
「え…?あ、私……」
「あっ、えっと…迷惑だった…?」
「違うの…そうじゃ、なくて」
戸惑った私に、彼がそう言う。
慌てて胸の前で両腕を左右にぶんぶんと振る。
迷惑なんかじゃない。
むしろ嬉しい。
「…修学旅行、行くか迷ってたから」
「行ぐしかねーべ。関西なんていつでも行げるげっど、このメンバーで、このタイミングで行げるのは今だけだど?」
「音々子ちゃんが嫌なら…無理にとは言わないけど。俺は、舞と凛と、音々子ちゃんと四人で行けたら嬉しい」
温かくて少し骨ばってゴツゴツとした手が。
細くて綺麗で、ほんの少し冷たい柔らかな手が。
その二つの手は少しだけ力を入れて、繋がれたままの私の手をぎゅっと握る。
「…うん、ありがとう」
「ゆんも行きたいって騒いでたよ」
「んだがら!あの娘っ子ほんと好かね」
◇
衝動的に散りばめられた色の上に、真っ白い油絵具を重ねて、キャンバス一面を白で染め上げた。
恒例行事みたいなもので。
感情のまま描いた絵を白の絵具で上塗りすることで、その感情が私の中から無くなるような、そんな事を期待してしまう。
一度この行為を茜先生に見られて、不思議な顔をされたのを覚えている。
「真っ白い、絵……」
何も描かれていない白いピースを合わせて完成させる、意味の無いミルクピースと、何処か似ている様な気もする。
全てを覆い隠して音を無くしてしまう、雪の様でもある。
また、そしてそれは、感情を殺して清純を装おう私の心の弱さでもあった。
まだ中学生でおばあちゃんが生きていた頃。
夢だったアイドルになれた時から、私は"普通の人"にはなれなくなった。
『私のママ、音々子ちゃんは特別って言ってた』
『あ、うちのお母さんも』
『やっぱり特別なんだー、すごいね』
あちこちから聞こえてくる、批判とも褒め言葉とも取れない少女達の何気ない一言。
そうして、住む世界が違うのだと距離を取るクラスメイト達。
それに、どれだけ傷ついたか。
「…"特別"、か」
だけど、今は。
統矢に舞や優音、凛など。
私をそういう特別扱いしないから、とても学校が居心地の良い場所で、学校へ来る事に対する抵抗もあまり強くは無い。
「そういえばゆん、大丈夫かな」
「一 優音の事か?」
「ひゃっ!…茜、先生?」
「アイツ今日休んでるぞー、電話したが元気なさげでな」
ぽつりとなんとなく零した一言に返事をくれたのは、ひょこりと顔を見せた茜先生だった。
彼女は優音のクラスの担任である。
茜先生が"元気なさげ"と言っても無理はない。
自分の為に傷を負った凛を思うと、どうしても気が滅入るのだろう。
「凛君がゆんを庇って、大きな傷を負ったの…」
このまま、学校に来なかったらどうしよう。
最初は"白雪ねね"として。
だけど呼び方こそ"ねね"のままだけど、今はちゃんと私自身を見てくれている。
「……音々子、良かったな」
「…何が?」
「大切なものが、大切な人が、いっぱい出来たんだろ?」
「そうやって悲しんで悩むくらいに」
幼い頃から長い事一緒にいるせいか、茜先生には何だって分かってしまう。
そんな時に何となく脳裏にチラつくのはいつだって、幸せそうに微笑む統矢の顔だった。
◇
昨日送られてきた統矢のAimメッセージを見返しながら、数学のワークを解いていく。
不意に画面をスクロールしようと画面に触れると、何と間違えて触ってしまったのか通話機能が開かれた。
発信音が部屋に流れ始めて、慌てて止めようとする。
……が、もう手遅れだった。
「……もしもし、音々子ちゃん?」
「ゆ、夕灯君…ごめんね、間違えて押しちゃって…」
「そうだったんだ、でも…音々子ちゃんの声が聴けて…嬉しいな」
彼の優しい声が響く。
少し遅い時間帯だからだろうか、心なしか眠たそうな声をしている。
携帯の向こうから聴こえてくる声が嬉しそうに笑うと、私に言った。
「修学旅行は、何処に行きたい?」
「わ、私は…皆と行けるならどこでもっ」
「……こうして電話で喋ってると、音々子ちゃんを一人占めしてるみたいで幸せ」
それはつまり、逆に私が統矢を一人占めしている事にもなるのだろうか。
胸がぎゅっと掴まれた様に、鼓動がとにかくうるさくてしょうがない。
耳に伝わってくる彼の声が心地良く、携帯を持つ手が少しだけ震えてしまっている。
「私、も…夕灯君を、一人占め…してるみたい」
「俺を一人占めしたかったら、いつでも言ってくれていいよ」
「う、ん…ありがとう」
「今は何してたの?」
「えっと、数学のワーク」
「分からない所があったらまた教えるね」
嗚呼私ってば罰当たりだ。
舞を押しのけて、そうして手に入れた幸せにまだ浸っていたいなんて。
──そんな幸せを、一人占めしたいなんて。
小さな欠伸が響くと、かしゃかしゃとペンを筆箱にしまう音が続いていく。
やっぱりこの時間だから眠いのだろうか。
「…夕灯君、もう眠っちゃう?」
「うーん…どうしようか悩んでるけど…」
「もう少しだけ、お話し…したいなって……」
「あ、じゃあ今日は電話繋げっぱなしにしとこうか?」
「え…でも、良いの?」
「うん、途中で寝ちゃうかもしれないけど」
とはいえ私も普通に眠いけれど。
私は心地良い低音の声を聴きながら、夏に近づいているお陰で薄くなっていく毛布をかけて、ベッドの上に寝た。
仰向けで眠ると、天井が嫌でも目に入る。
天井を睨んでいると見てはいけない何かが見えてしまいそうで、一人で眠るのは好きじゃない。
横を向いて眠っても、一度目を閉じてしまったら、朝が来るまで怖くて目を開く事が出来ないのだ。
「…今日は、夕灯君のお陰で夜が怖くない」
「俺も音々子ちゃんがいてくれるから、ゆっくり寝れそう」
「あの、我儘…言っても、いい?」
「うん?」
「夕灯君に何か歌を歌ってほしい。ちゃんと聴いたことってない気がするから」
「良いよ、あんまり上手くはないけど」
私が零した我儘は本当に唐突だった。
ライブハウスで間近に凛の歌声を聴いた事はあったし、勿論美術室でも歌は聴こえてきた。
でも、結局それだって"闇さん"として聴いていたのであって、統矢本人と知って聴いた訳では無い。
統矢はふっと笑うと小さく息を吸って、ギターの静かな伴奏と共に歌い始めた。
◇
君を泣かせたのはアイツで
僕なら君を泣かせないなんて
決まってる、アイツだから
君は涙を流すんだ
それでも君を追いかけて
報われないって分かったって
諦められる訳がないんだ
僕の好きだよは伝わらない
君からの好きだよは痛かった
もういっそ、気づかないで
そのままでいて
◇
「……やっぱり、かっこいいね。夕灯君の歌」
「ありがと。大丈夫?眠くない?」
「少し、眠たい…」
「無理しないで寝ていいよ」
「じゃあ…おやすみ…」
歌い終わると、統矢がそう言う。
時間を見ると確かにもう深夜に近い。
ふわふわと意識が微睡む中で、そっと目を閉じた。
ギターが静かに弦を震わせて音が響く。
たったそれだけの事なのに、一人で居る時とは全く比べ物にならない程安心する。
安心に身を委ねて、私は久し振りの安眠へと誘われたのだった。
泣きながら必死に謝る昨夜のゆんの姿が、私の脳裏からずっと離れなかった。
彼は、きっと強い。
だって私は血がとても怖かった。
おばあちゃんの事を思い出してしまい、あぁ凛も死んでしまうのではないかと、足が震えて動かなくなりそうだった。
なのにそれでも、彼は懸命に自分が出来る精一杯の応急処置を咄嗟に行う事が出来た。
自分が血塗れになるのも、たくさん血が出ている腕を触るのも厭わず、ただ凛の為だけに必死で。
それは、きっと私には出来ない事だった。
(──学校、行かなきゃ)
◇
「…おはよう、夕灯君。昨日はお疲れ様」
「音々子ちゃんおはよ、あいつは一週間くらい入院だって」
「そう…なんだ」
いつもより物憂げな表情で、統矢はふわりと笑った。
先生が入って来ると、一時間目から一番広い部屋の大講義室に全クラス集合だと連絡を受けた。
修学旅行の話をするらしい。
私はこういう行事が嫌い。
それはクラスの人にとって、私を先生が全く見ていない(目の届かない)所で虐められる、絶好の機会他ならないからである。
ぞろぞろと移動する人の列の、一番後ろについて歩いた。
面倒くさいなぁと思っていると、先が見えない長い行列が大講義室に収まっていく。
主任の男の先生、名前は……確か東堂先生。
東堂先生が生徒の前で言った。
「じゃあ班組でもするぞ、4人以上の班作れー。休んでる奴も何処かに入れてくれよ、出来たら座れ」
先生の一言で、皆はザワザワと騒ぎ出す。
この空気が苦手で昔を思い出すと、言い様の無い不快感に襲われて吐き気がした。
俯いた私はその場から一歩も動けないでいると、唐突に左右から手を引っ張られ、その場に座らせられた。
自分に何が起こったのか理解が出来ずに慌てて前を向くと、舞と統矢がそれぞれ私の右手と左手を握って、悪戯っぽい顔で笑っている。
「ここに凛が入って、班完成だべー」
「という訳で音々子ちゃん、よろしくね」
「え…?あ、私……」
「あっ、えっと…迷惑だった…?」
「違うの…そうじゃ、なくて」
戸惑った私に、彼がそう言う。
慌てて胸の前で両腕を左右にぶんぶんと振る。
迷惑なんかじゃない。
むしろ嬉しい。
「…修学旅行、行くか迷ってたから」
「行ぐしかねーべ。関西なんていつでも行げるげっど、このメンバーで、このタイミングで行げるのは今だけだど?」
「音々子ちゃんが嫌なら…無理にとは言わないけど。俺は、舞と凛と、音々子ちゃんと四人で行けたら嬉しい」
温かくて少し骨ばってゴツゴツとした手が。
細くて綺麗で、ほんの少し冷たい柔らかな手が。
その二つの手は少しだけ力を入れて、繋がれたままの私の手をぎゅっと握る。
「…うん、ありがとう」
「ゆんも行きたいって騒いでたよ」
「んだがら!あの娘っ子ほんと好かね」
◇
衝動的に散りばめられた色の上に、真っ白い油絵具を重ねて、キャンバス一面を白で染め上げた。
恒例行事みたいなもので。
感情のまま描いた絵を白の絵具で上塗りすることで、その感情が私の中から無くなるような、そんな事を期待してしまう。
一度この行為を茜先生に見られて、不思議な顔をされたのを覚えている。
「真っ白い、絵……」
何も描かれていない白いピースを合わせて完成させる、意味の無いミルクピースと、何処か似ている様な気もする。
全てを覆い隠して音を無くしてしまう、雪の様でもある。
また、そしてそれは、感情を殺して清純を装おう私の心の弱さでもあった。
まだ中学生でおばあちゃんが生きていた頃。
夢だったアイドルになれた時から、私は"普通の人"にはなれなくなった。
『私のママ、音々子ちゃんは特別って言ってた』
『あ、うちのお母さんも』
『やっぱり特別なんだー、すごいね』
あちこちから聞こえてくる、批判とも褒め言葉とも取れない少女達の何気ない一言。
そうして、住む世界が違うのだと距離を取るクラスメイト達。
それに、どれだけ傷ついたか。
「…"特別"、か」
だけど、今は。
統矢に舞や優音、凛など。
私をそういう特別扱いしないから、とても学校が居心地の良い場所で、学校へ来る事に対する抵抗もあまり強くは無い。
「そういえばゆん、大丈夫かな」
「一 優音の事か?」
「ひゃっ!…茜、先生?」
「アイツ今日休んでるぞー、電話したが元気なさげでな」
ぽつりとなんとなく零した一言に返事をくれたのは、ひょこりと顔を見せた茜先生だった。
彼女は優音のクラスの担任である。
茜先生が"元気なさげ"と言っても無理はない。
自分の為に傷を負った凛を思うと、どうしても気が滅入るのだろう。
「凛君がゆんを庇って、大きな傷を負ったの…」
このまま、学校に来なかったらどうしよう。
最初は"白雪ねね"として。
だけど呼び方こそ"ねね"のままだけど、今はちゃんと私自身を見てくれている。
「……音々子、良かったな」
「…何が?」
「大切なものが、大切な人が、いっぱい出来たんだろ?」
「そうやって悲しんで悩むくらいに」
幼い頃から長い事一緒にいるせいか、茜先生には何だって分かってしまう。
そんな時に何となく脳裏にチラつくのはいつだって、幸せそうに微笑む統矢の顔だった。
◇
昨日送られてきた統矢のAimメッセージを見返しながら、数学のワークを解いていく。
不意に画面をスクロールしようと画面に触れると、何と間違えて触ってしまったのか通話機能が開かれた。
発信音が部屋に流れ始めて、慌てて止めようとする。
……が、もう手遅れだった。
「……もしもし、音々子ちゃん?」
「ゆ、夕灯君…ごめんね、間違えて押しちゃって…」
「そうだったんだ、でも…音々子ちゃんの声が聴けて…嬉しいな」
彼の優しい声が響く。
少し遅い時間帯だからだろうか、心なしか眠たそうな声をしている。
携帯の向こうから聴こえてくる声が嬉しそうに笑うと、私に言った。
「修学旅行は、何処に行きたい?」
「わ、私は…皆と行けるならどこでもっ」
「……こうして電話で喋ってると、音々子ちゃんを一人占めしてるみたいで幸せ」
それはつまり、逆に私が統矢を一人占めしている事にもなるのだろうか。
胸がぎゅっと掴まれた様に、鼓動がとにかくうるさくてしょうがない。
耳に伝わってくる彼の声が心地良く、携帯を持つ手が少しだけ震えてしまっている。
「私、も…夕灯君を、一人占め…してるみたい」
「俺を一人占めしたかったら、いつでも言ってくれていいよ」
「う、ん…ありがとう」
「今は何してたの?」
「えっと、数学のワーク」
「分からない所があったらまた教えるね」
嗚呼私ってば罰当たりだ。
舞を押しのけて、そうして手に入れた幸せにまだ浸っていたいなんて。
──そんな幸せを、一人占めしたいなんて。
小さな欠伸が響くと、かしゃかしゃとペンを筆箱にしまう音が続いていく。
やっぱりこの時間だから眠いのだろうか。
「…夕灯君、もう眠っちゃう?」
「うーん…どうしようか悩んでるけど…」
「もう少しだけ、お話し…したいなって……」
「あ、じゃあ今日は電話繋げっぱなしにしとこうか?」
「え…でも、良いの?」
「うん、途中で寝ちゃうかもしれないけど」
とはいえ私も普通に眠いけれど。
私は心地良い低音の声を聴きながら、夏に近づいているお陰で薄くなっていく毛布をかけて、ベッドの上に寝た。
仰向けで眠ると、天井が嫌でも目に入る。
天井を睨んでいると見てはいけない何かが見えてしまいそうで、一人で眠るのは好きじゃない。
横を向いて眠っても、一度目を閉じてしまったら、朝が来るまで怖くて目を開く事が出来ないのだ。
「…今日は、夕灯君のお陰で夜が怖くない」
「俺も音々子ちゃんがいてくれるから、ゆっくり寝れそう」
「あの、我儘…言っても、いい?」
「うん?」
「夕灯君に何か歌を歌ってほしい。ちゃんと聴いたことってない気がするから」
「良いよ、あんまり上手くはないけど」
私が零した我儘は本当に唐突だった。
ライブハウスで間近に凛の歌声を聴いた事はあったし、勿論美術室でも歌は聴こえてきた。
でも、結局それだって"闇さん"として聴いていたのであって、統矢本人と知って聴いた訳では無い。
統矢はふっと笑うと小さく息を吸って、ギターの静かな伴奏と共に歌い始めた。
◇
君を泣かせたのはアイツで
僕なら君を泣かせないなんて
決まってる、アイツだから
君は涙を流すんだ
それでも君を追いかけて
報われないって分かったって
諦められる訳がないんだ
僕の好きだよは伝わらない
君からの好きだよは痛かった
もういっそ、気づかないで
そのままでいて
◇
「……やっぱり、かっこいいね。夕灯君の歌」
「ありがと。大丈夫?眠くない?」
「少し、眠たい…」
「無理しないで寝ていいよ」
「じゃあ…おやすみ…」
歌い終わると、統矢がそう言う。
時間を見ると確かにもう深夜に近い。
ふわふわと意識が微睡む中で、そっと目を閉じた。
ギターが静かに弦を震わせて音が響く。
たったそれだけの事なのに、一人で居る時とは全く比べ物にならない程安心する。
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