孤独のすのぅほわいと

サクラ

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▶6 告白

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真っ白い雪の様に美しい肌と髪の毛。
全てを見透かすような綺麗な林檎色の瞳。

それは、現代の白雪姫の様だった。



「──全然、気が付かなかった」



音々子が告白してくれた"白雪ねねと同一人物である"という事に、言われるまでこれっぽっちも気付かなかった。

今、彼女に告白なんかしたら"元アイドルと知ったから"と思われてしまうだろうか。



さっき音々子に伝えた、どんな彼女でも好きだとか、俺は見ているだとか。
嘘偽りはそこにはほんの少しも無かった。

それどころか、それは俺が伝えられる精一杯だった。



あの日桜の下で春風に吹かれて微笑む彼女だけを、ずっとずっと俺は追いかけてた。



「俺は…どうしたら……」
















月曜日の今日、音々子は学校へは来なかった。

隣の席がいつもと変わらない様に空いている。
プリントを届けに行くというキッカケが無かったら、それは本当にいつもと変わらない景色だった。

けれど、あれから彼女は少しずつ学校に来る様になったし、少しだけど笑いかけてもくれる様にすらなった。



それら全てを、やっと動き出したこの世界を、失いたくは無かった。

また、ただ身勝手で一方的なままで終わらせたくはない。



(──音々子ちゃんに会いに行こう)



例え拒否をされたとしても。
俺は音々子を好きだということを、一歩も譲りはしない。



「統矢」
「凛?どうしたの?」
「舞が、呼んでたから」



凛が俺を呼ぶと、もじもじと立っていた舞が廊下にいた。

言いにくそうに俺へ言う。



「その、少しだけ、聞いてけろ」
「………?」

「私、統矢の事…好き」



いつもの元気な彼女からは意外にも、小さく弱気な声で、そう告げられた。

舞が、俺の事を?
いつからそんな風に思って?

追い付かない頭の中をぎゅっと押さえつけようにも、全く訳が分からず、もはや収拾がつかない。


そんな大慌てで考え出したのは。



「ごめん、舞」



その一言だけだった。


いつかのクラスの高嶺の花みたいに、舞は悲しそうに顔をくしゃっとさせて笑ってみせた。



「そっか」



彼女も小さく一言だけだった。
オリーブ色の瞳に、涙が揺れているのが見えた。

明るく変わらない調子を保とうと笑顔を貼り付けて、彼女はほんの少しだけ震えた声で笑う。



「どーせ音々子ちゃんだべー、めんこいもんなぁ」



しゅんと勢い無くした彼女の影にただ分かった事は、俺が最低なのだという紛れもない事実ただ一つであった。

















ピンポンと明るいチャイムの音と同時に、これまた不用心にドアが開いたお陰で、彼女から逃げられるという最悪の事態は起こり得なかった。

…まぁ、すぐにドアを閉められたんだけど。



「音々子ちゃん…少しだけ話を聞いて欲しくて来たんだけど……」



ぴこりと電子的な通知音がポケットの中で鳴り響く。

[私は喋りません]と、ドアを一枚挟んだ向こう側にいる音々子からそう送られてきたのだ。

だけど裏を返せばそれは喋らないのであって、話を聞かないとは言ってない。
つまり、このままの状態で言ってしまえばいいのではないかと。



「ねぇ、聞いて。俺ずっと、音々子ちゃんの事、好きだったんだ」

「──覚えてないでしょ、入学式。あの日、初めて音々子ちゃんと喋って、その時にはもう頭の中から離れなくて」


「俺は…好きだよ、白井音々子ちゃんが」



胸がぎゅっと締め付けられるように苦しくなって、何だか息がし辛くなる。


舞だって、こんな風に想ってくれていたんだ。


そう考えるとますます、自分が駄目なやつだと思ってしまう。



だけど、彼女の可愛らしいところも、意外な反応も、果てには辛くて途方に暮れているところも、知ってしまった。



[私には、その感情が分からない]

["好き"って気持ちは…嫌い]



響き出したAimの文面は、俺にそう告げた。
彼女を傷付けてしまっただろうか。

自分の周りだけ時が止まったように空気が重たくて、沈黙がただただ辛かった。



「……ごめん、今日は…帰るね…」



返事も何も無い。
嫌われただろうか、当然の報いか。

帰ろうとしてドアに背を向けた時、ふと思い出して俺は一度ドアを振り返って言う。



「学校に来るの…待ってる、から」



ドアの向こうからはガタリ、と一音だけが妙にはっきり聞こえてきただけだった。
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