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魂の戯れ part.9
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ここは、天国と呼ばれているところだ。空気は澄み、衣食住には困らず、人々は優しい。優美な音楽が流れ、豊かさが溢れる。言葉は悪いが、無駄遣いという概念もない。
それぞれの魂が生活を楽しみ、毎日が喜びに溢れている。
そう思っているのだが、たまに人間がどうしても気になる時がある。そこまでではないが、無視出来る程、小さいものでもない。
ここの生活は楽しいのだが、何か付き出るようなそんな喜びを欲する瞬間があるのだ。
そんなことを思いながら生活している。日々は楽しいし、二百年の付き合いの相方もいる。何一つ不足はないのだが、時折そうした感情が胸をよぎったりする。
今日は相方が旅行で出かけているので、私は一人で地上を眺めていた。先日、サキという私より輪廻を多くこなしている少女に見るポイントが悪いと怒られてしまったのだ。
私は見たい部分を見ているだけなのだが、どうもセンスがないらしい。そのセンスとやらも、彼女は人間界で習得してるらしく、複雑な気持ちがよぎる。
もっとも、そんな悩みもここでは一瞬で消えてしまうが。
ただ、言われたことが気になったので、着眼点を変えてみた。ようするに、ここには無いネガティブな部分を見ることが多かったらしく、今度はポジティブな方向に視点を合わせてみろというのだ。
地上で言われる幸せというものに視点を合わせてみる。
「あー腹いっぱい。幸せ」
「やった!明日から休み、幸せ」
「今日はバーゲンでたくさん買ったわ。幸せ」
「あーやっと、風邪治ったよ。普通って幸せ」
どうも、地上ではある特定の条件の元に幸せが発生することが多いらしい。ただ、何もしないでも幸せを感じる人も見受けられた。この幸せについては、人間の永遠のテーマのように思う。
視点をずらすと、今度は二人の男女目に付いた。
「あー私、幸せ過ぎて怖い。何か起こるんじゃないかしら」
「僕もさ!君と一緒にいられるなんて」
幸せなのに、怖いという概念がよく分からない。質問する相方もいないので、首を傾げていると、後ろから光がふっと下りた。準天使のシン様だ。ちなみに、準天使とは、天使の一歩手前の存在で、ある。その一歩がどれくらいの距離かは分からない。巨人の足ほどの一歩かもしれない。
「シン様」
「相変わらず、着眼点が面白いな」
「わざわざ、どうしたんですか? 」
「困ってるから、見に来たんだよ。相方もいないのに寂しいだろう? 」
「い、いや、別に」
シン様は眩しいので、顔を凝視しにくい。目を細めながら話すと、笑われた。
「で、あの事例はどうなんですか? 」
「幸せが多すぎるなら、あげればいい。簡単な話だ。自分がそこまでの幸せを持つ器がないと感じられるなら、それに相当する行いでもすればいいのさ」
「募金とかですか? 献血? ボランティア? 」
「本人が満足すれば何でもいいと思うが。」
「でも、地上では、偽善って思ってやりにくいって話しもありますが」
「それで喜んでもらえる人間がいるなら、やった方がいいと思うが。まあ、それもまた事実。するも人間、しないも人間だよ」
「そうですか」
そう言えば、ここにいる間に幸せを意識したことなど、ほとんどなかった。人間観察をしていて、初めて自分が幸せな位置にいるのではないかと気付いたのだ。
「一つ、話しがある」
「はい」
「人間に戻りたいなら、戻る手段がある」
私の思考はフリーズしたが、心の底で何かがチリっと感じた。それを打ち消すかのように、首を振った。
「まさか、人間観察で十分ですよ」
「そうか。気が変わったら、言ってくれ。じゃあ」
光がふうっと消えると、来た時と同様、清らかな風が吹いた。一瞬、胸がざわつくような感じもしたが、すぐに消えてしまった。
それぞれの魂が生活を楽しみ、毎日が喜びに溢れている。
そう思っているのだが、たまに人間がどうしても気になる時がある。そこまでではないが、無視出来る程、小さいものでもない。
ここの生活は楽しいのだが、何か付き出るようなそんな喜びを欲する瞬間があるのだ。
そんなことを思いながら生活している。日々は楽しいし、二百年の付き合いの相方もいる。何一つ不足はないのだが、時折そうした感情が胸をよぎったりする。
今日は相方が旅行で出かけているので、私は一人で地上を眺めていた。先日、サキという私より輪廻を多くこなしている少女に見るポイントが悪いと怒られてしまったのだ。
私は見たい部分を見ているだけなのだが、どうもセンスがないらしい。そのセンスとやらも、彼女は人間界で習得してるらしく、複雑な気持ちがよぎる。
もっとも、そんな悩みもここでは一瞬で消えてしまうが。
ただ、言われたことが気になったので、着眼点を変えてみた。ようするに、ここには無いネガティブな部分を見ることが多かったらしく、今度はポジティブな方向に視点を合わせてみろというのだ。
地上で言われる幸せというものに視点を合わせてみる。
「あー腹いっぱい。幸せ」
「やった!明日から休み、幸せ」
「今日はバーゲンでたくさん買ったわ。幸せ」
「あーやっと、風邪治ったよ。普通って幸せ」
どうも、地上ではある特定の条件の元に幸せが発生することが多いらしい。ただ、何もしないでも幸せを感じる人も見受けられた。この幸せについては、人間の永遠のテーマのように思う。
視点をずらすと、今度は二人の男女目に付いた。
「あー私、幸せ過ぎて怖い。何か起こるんじゃないかしら」
「僕もさ!君と一緒にいられるなんて」
幸せなのに、怖いという概念がよく分からない。質問する相方もいないので、首を傾げていると、後ろから光がふっと下りた。準天使のシン様だ。ちなみに、準天使とは、天使の一歩手前の存在で、ある。その一歩がどれくらいの距離かは分からない。巨人の足ほどの一歩かもしれない。
「シン様」
「相変わらず、着眼点が面白いな」
「わざわざ、どうしたんですか? 」
「困ってるから、見に来たんだよ。相方もいないのに寂しいだろう? 」
「い、いや、別に」
シン様は眩しいので、顔を凝視しにくい。目を細めながら話すと、笑われた。
「で、あの事例はどうなんですか? 」
「幸せが多すぎるなら、あげればいい。簡単な話だ。自分がそこまでの幸せを持つ器がないと感じられるなら、それに相当する行いでもすればいいのさ」
「募金とかですか? 献血? ボランティア? 」
「本人が満足すれば何でもいいと思うが。」
「でも、地上では、偽善って思ってやりにくいって話しもありますが」
「それで喜んでもらえる人間がいるなら、やった方がいいと思うが。まあ、それもまた事実。するも人間、しないも人間だよ」
「そうですか」
そう言えば、ここにいる間に幸せを意識したことなど、ほとんどなかった。人間観察をしていて、初めて自分が幸せな位置にいるのではないかと気付いたのだ。
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「はい」
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私の思考はフリーズしたが、心の底で何かがチリっと感じた。それを打ち消すかのように、首を振った。
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「そうか。気が変わったら、言ってくれ。じゃあ」
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