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幼少期のロウ
しおりを挟む突然、紫色の魔法陣が現れロウが幼稚園児の姿になってしまった。
「え? え?! ロウ?! マジか!」
歳でいうと5,6歳てところか。
幼いロウを目の前にして頭ん中パニックだけど・・・。
「かわいい」
本人を目の前に、つい口から出た。
ロウはダボダボの服と靴を魔法でサイズぴったりにしていた。(オレの独り言はスルーされた)
「ロウ、これって時の魔法だよな。まさか、コトリさんの仕業?」
今すぐにでもギューッとハグしたい気持ちを堪えて、今の状況を分析する。
「あの魔法陣はコトリのじゃない。が、同じ時の属性の奴の仕業なのは間違いない」
声が幼くてかわいいけど、ロウの顔がさっきからずっと険しい。(かわいいけど)
「他の奴? それって・・・」
「奇襲だ」
「!」
「真っ先に聖女を狙わず俺の魔力を封じようとした。相手は何が一番面倒かわかってる奴だ。ということは、同じ王族で、頭のきれる奴だ」
「魔力を封じる? でも今、使ってたよな?」
「完全に封じるのは無理でも、子供にすれば魔力も下がる」
「マジか」
「ついでに、おまえのその魔石は俺の魔力が下がれば火魔法は使えない。魔石の防御のみだ」
「!! ヤバイじゃん!」
「そう・・・ヤバイんだ」
サーッと血の気が引くオレと違って、ロウはニヤッと笑ってどこか楽しそうだ。(かわいいけど)
「つーことだ。覚悟しろ」
「え?」
急にロウがまたオレの腕をつかんだ。(手が小さい)
「今から儀式をする」
「儀式?」
「時間がない。荒いやり方になるが失敗はさせない」
「どいうこと??」
「ルノーの魔力を飲んでもらう」
ん???
ルノーの魔力? 飲む?
「いいか、よく聞け。数分後には俺は子供になってる。まったく頼りにならん。おまえを守るのは魔石の防御と、ルノーの魔力だ。同じ属性だからちゃんと使えるはずだ。あと、」
「ま、待った。どいうこと?? ルノーはもう子供じゃん。それに」
「聞けって!」
珍しくロウが声を荒げる。切羽詰まってるのが伝わってくる・・・けど、声が幼くて説得力が・・・。それでも、ロウの険しい顔が幼いのに大人びて見える。
「コトリを呼べ。オレを戻せるのはあいつだけだ。あと、俺の姉を頼れ」
「ロウのお姉さん?」
急に胸ぐらをつかまれぐぃっと引き寄せられる。今のロウに合わせようとしゃがむ。
「無茶だけはするなよ」
「え?」
ぶわっと炎が燃え上がりオレとロウを囲むように燃え、熱風が吹く。
足元に赤色の魔法陣が現れた。
儀式が、始まる?
オレを見つめるロウの瞳が揺れ、チュッと口に軽くキスしてきたと思ったら次は小瓶を思いっきり口に押し込まれ、濃い液体のようなものを飲まされた。
なにこれ。身体が・・・熱い。
強いアルコールを飲まされた気分。
クラクラして視界に映るロウがぼやける。
「・・・」
限界とばかりに、意識がぷつりと切れた。
ぱちっと目が覚める。自分の部屋のベッドで寝ていた。
「・・・あれ?」
「ダイヤ様、お目覚めですか?」
「お兄ちゃん!」
横からメリアヌさんと桃花が顔を覗き込んできた。
「えーと・・・」
なんかめちゃくちゃ汗かいてる。しかも身体がすごくだるい。だるすぎて手でさえも動かすのが難しそうだ。
「メリアヌさん」
「はい、ただいま」
メリアヌさんから小瓶を受け取った桃花が、
「お兄ちゃん、調合師さんに特別に作ってもらったポーションだよ。これ飲んで回復して」
妹の桃花がテキパキしてて頼もしくみえる。
飲みたいけど身体が動かないと言おうとしたら、飲もうとしないオレに桃花が容赦なく小瓶を口に押し込んだ。
一気に回復して身体が軽くなったけど、大いにむせりながら上半身を起こした。
「おい! なにすんだよ」
「元気になったんだからいいじゃん。よかったーこのまま起きないかと心配したんだから」
ホッとする桃花。
「それは・・・悪かったな」
ほんとだよ。とふんぞりかえる桃花にちょっとイラっとする。
異世界で再会した妹の桃花は聖女になっていた。
性格も見かけもオレの知ってる桃花に全然変わらないけど、銀のティアラを付けて髪を垂らし体をすっぽり覆うような白いドレス? ワンピースを着ている桃花は未だに見慣れない。(普段の聖女の格好らしい)
「お身体の具合はいかがですか?」
メリアヌさんに聞かれ、
「ポーションのおかげでだいぶいいよ。ただ・・・」
自分の手のひらを見つめ、明らかに魔力が身体の中にあるのを感じる。ロウに無理やり飲まされた時は身体が熱かったけど、今は水よりも冷たいものが身体の中をめぐっている。冷たいのに、寒くないのが不思議だ。
「前は、魔法を使う時に集中すると魔力を感じていたんだ。でも今は、なにもしてなくても魔力を感じる。魔力が満ちるってこんな感じなのかな」
独り言のように口から出た。
魔力を持てない桃花が「いいなー」とつぶやく。(あげた魔石に注入したオレの水魔法は使える)
ロウが言ったように、本当にルノーの魔力かもしれない。
ルノーが扱えなかった魔力を抜き取ったと聞いたけど、それをオレがもらっちゃっていいのかな?
ロウを思い出し、
「メリアヌさん、ロウは? オレってどれくらい寝てた?」
「3日間ほどです。お医者様は魔力の引継ぎの儀式をしたのではないかとおっしゃっておりました」
「お兄ちゃん寝てる時ずっとうなされてたんだよ。すごい汗かいてたし。起きたんならシャワー浴びたほうがいいよ」
「え。臭い?」
いつの間にか着替えていたパジャマの匂いを嗅ぐけど、思ったより臭くなかった。
「ロウ国王は・・・」
メリアヌさんが珍しくどう言おうかと迷って黙ってしまった。
ん??!!
「ロウに何かあった?! 無事?!!」
「ぜーんぜん。ムカつくガキになってるよ。お兄ちゃん見たんじゃないの?」
「え? 外見が幼くなったのは見たけど。ロウが変なこと言ってたんだ。数分後に子供になるって」
「じゃー会ったら? その方が早いよ」
勝ち誇ったようなニヤニヤ顔の桃花がどうも引っかかる。
オレがこの世界にもう一度召喚された時にはすでにロウと桃花はめちゃくちゃ仲が悪くなっていた。オレが見る限りいつも顔を合わせれば口ゲンカしてるし。
「メリアヌさん、ロウに会えますか?」
「お兄ちゃん!」
ちっちっと舌を鳴らしながらドヤ顔をする桃花。
「王族のことはメイドのメリアヌさんじゃなくて、あたしを頼りなさいって!」
ふんっと鼻息を荒くして誇らしげだ。(なんだこいつ。態度でかいな)
「じゃー桃花。ロウに会える?」
「会えるもなにもそのうち来るんじゃない? 毎日のようにお兄ちゃんのお見舞いに来るから」
「え?」
「三女のお姉さま付きだけど」
「?」
「変態国王の実のお姉さん。結婚してアリッシュにいないんだけど、王族の習わしで、半年間私の世話役としてアリッシュに滞在してるの。変態国王が子供になっちゃったから今は変態国王の面倒を見てるけど」
変態国王っていいかげんやめてやれよ。と桃花を叱り、
「そういえば、ロウが姉を頼れって言ってたな。あとコトリさんも」
「あたし絶対今回の騒ぎはコトリさんが犯人だと思うの! 時の魔法を使える人間て少ないんでしょ?」
「だからってコトリさんが犯人とは限らないだろ。ロウは違うって言ってたし」
「変態国王を信じるの?」
「桃花よりは魔法をわかってる」
「うっ」
グーの根もでない桃花が悔しそうな顔をした。
向こうから来るというのなら待つしかない。とりあえず風呂でも入ることにした。服も襟なしシャツに着替えた。
メリアヌさんが用意してくれたミルク粥をソファで食べる。
桃花は聖女修行があるといって出て行ったらしい。
修行といってもいわゆる勉強らしい。歴代の聖女についてやこの世界について。あとは言語や聖女のふるまいとか。
聖女でいるのも大変だ。
ミルク粥をちょうど食べ終わった頃に来客が来た。
パタパタと廊下から軽い足音が聞こえ、
「こら、ロウ。いつも言ってるでしょ。廊下は走らない」
「シーリアはそればっかりだ。ききあきた」
「ロウッ! 名前呼びではなく、目上の者には・・・」
なにやらドアの前が騒がしい。
若そうな女性の声と幼い子供の声だ。
ロウって言った?
バーンッとドアが勢いよく開き、幼いロウとロウにそっくりな若い女性の人が立っていた。
アーモンドの形をした目がオレを見つけるなり活き活きと輝いた。そして、普段ロウが出さないだろうでかい声で、
「あーーー!! おきてる! シーリア、ダヤがおきてる! 目をさましたんだっ!」
ダヤ?
オレを指さしたと思ったら全速力で駆け寄って座ってるオレの膝の上にダイブッ。(?!!!)
「ダヤでしょ! シーリアがいってた。いせかいからきたにんげんだって。聖女の兄上だっていうんだけど、おなじ国に聖女はふたりいちゃいけないんだ。だってふたりもなんてよくばりでしょ。聖女がいなくてこまってる王さまもいるのに」
白い肌にぷっくり饅頭みたいな頬、コロコロと変わる表情・・・。子供っぽい口調。(ダイヤって言えてない)
これは、まぎれもなく子供の頃のロウだっ!!
ルノーの魔力を飲まされる前のロウは身体だけが子供だった。
でも今は、中身まで子供になってる! マジかっ。
呆然とするオレの膝の上でオレを好奇心いっぱいの瞳で見上げる子供のロウ。
か、かわいい!!
子供の頃のロウってめちゃくちゃかわいいじゃん!
なんであんなツンっとした一匹オオカミみたいな奴になったんだよ。どこで道間違えた??
「ロウッ! いけません! ダイヤさんの膝からおりなさい!」
ロウにそっくりな顔をしたシーリアと呼ばれる女性が小走りでやってきた。
焦げ茶色の髪は少しくせ毛のあるセミロング、アーモンド形の目には軽くオレンジ色のアイメイクがしてある。
服は灰色の襟なしシャツに靴が見えない長いスカートを履いている。(アリッシュの女性はだいたいこの格好)
歳はメリアヌさんと同じくらいか、20代に見える。
「やだ! せっかくおきたんだからダヤとあそぶ!」
「いけません! 証人となるダイヤさんが起きたとなればこれから騎士団や姉上がこちらに来るでしょう。ロウはわたくしと一緒にお勉強です」
「やだーっ! そんなのやだー! ボクもダヤといっしょにわるものとたたかう!」
オレの膝の上でだだをこねまくる子供のロウ。
「えーと・・・オレでよければ他の人が来るまでの間なら遊び相手になりますけど」
誰かが間に入らないと終わらなそうな雰囲気だったからつい、口を挟んでみる。
それを聞いてすぐさま子供のロウがぱぁぁぁっとルノーなみの喜びを全身でまき散らす。(目が潰れる)
「ほらシーリア! ダヤがぼくとあそんでくれるって!」
わーい、と子供らしい反応で喜んでくれる。
やれやれとため息をつきながらシーリアさんは、
「ダイヤさん、変な気を遣わせちゃってごめんなさいね。ロウはこのとおり見た目だけじゃなく心まで幼少期に戻ってしまったの。時の属性を持つ者の仕業だと思うのだけど」
「ロウも・・・大人の方のロウも言ってました。この魔法はコトリさんにしか解けないって」
「ロウがそういうなら確かね。今すぐコトリを呼ぶわ。他に何か言ってなかったかしら?」
「えーと、オレの姉を頼れ。と」
それを聞いて、シーリアさんがニヤッと不敵に笑った。(え)
「ほら、なんだかんだいって結局はわたくしたちが必要になるのよ。勝ったわ」
控えめにグッと拳を突き上げ喜ぶ。
どんな兄弟関係なんだ。
「それじゃ、聖女様のお兄様であるダイヤさんにお願いするのは心苦しいのだけど、ちょっとの間だけロウを見ててもらってもいいかしら」
「はい、大丈夫です」
「やたー!」
子供のロウが万歳して喜ぶ。
「ロウ、いくらダイヤさんが遊んでくれるからってわがままはいけませんよ! 国王としての気品を忘れず、いいですね!」
「次期国王でしょ、シーリア。みみにたこができるくらいいわれてるからわかってるよ! 王さまのパパみたいに、でしょ! でもパパ、きのうママじゃないおんなのひとのてを・・・」
「こらっ! そんなのはすぐ忘れなさい! ご隠居中の先代国王のように。ですよ!」
「ジジさま!」
そうです。と強めに言い聞かせ、シーリアさんは部屋を出て行った。
「ねぇ、ダヤ! なにしてあそぶ?」
当然のようにオレの膝の上に座ってワクワクする子供のロウを見て、ついつい頬を触りたい気持ちがうずく。
「んーなにしてあそぼうか」
ツンツンと指で頬をつつく。ぷにぷにの子供肌に思わずほっこり。(ロウの子供時代サイコー)
そしたら、何を思ったのか、自分の頬をオレの頬にくっつけてきた。
ん??
「ババさまとあうといつもこうするんだ。それでね、ババさま、にこーってすごくよろこんでくれるんだ」
パッと離れて、にこっと笑った。(初めてロウの笑顔を見た!!)
衝撃的すぎる笑顔に・・・ソファの背もたれでノックダウンする、オレ。
「だいじょうぶ?」
「だい、じょうぶ・・・。ババさまってだれかな?」
復活して、子供のロウに聞く。
「この国の聖女様だよ。ぼくのババさまなんだ」
「聖女様・・・ということは、桃花の前の・・・先代聖女様か」
ん?
先代聖女様が亡くなられてから100年経つって言ってなかったか??
ん???
「・・・」
なんか変な汗をかくも、これ以上追及するのはやめることにした。
ロウが今いったいいくつかなんて、そんなことは気にすることじゃ・・・ない。うん。(気づかなかったことにしよう)
オレの世界で3年経つのにこっちは三ヶ月しか経ってないんだ。時差がまったく別物なのはファンタジーあるあるだ。
ねーなにしてあそぶ? と急かしてくる子供のロウにいつも何して遊んでるのか聞いてみると、めちゃくちゃキラキラした瞳で、
「魔物退治ごっこ!」
「え」
「シーリアはそんなやばんなあそびいけませんっていつもおこってくるけど、ぼく、魔物だいすきなんだ!」
満面の笑顔をまき散らす。
「そ、そっか」
さすが幼少期のロウ!!
まったくブレないっっ! つーか、この頃から魔物好きなのか。ということは、
「フォ・ドさんて知ってる?」
「ふぉ??」
首をかしげてかわいいリアクションをしてくれる子供のロウにきゅん・・・。
どうやらまだフォ・ドさんとは出会ってない頃の記憶みたいだ。
ぴょんっとオレの膝から降りて、
「ジジさまはすごいんだ!」
「ジジさまって、先代国王ってシーリアさんが言ってたね?」
「うん! いまはパパが国王だからジジさまは国王をやめてせかいをたびしてるんだ。たびからかえってきたらいつもぼくに退治した魔物のはなしをしてくれるんだ! ぼくもいちどだけジジさまといっしょにほかのたいりくへいってこーーーんなおっきな魔物にあったことあるんだ!」
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淡々としゃべるロウを見慣れてるから新鮮すぎて、もう尊すぎる。
「そっか、他の大陸へ行ったことあるって行ってたけど、それか」
「知ってるの?」
きょとんとする子供のロウにしまったと口を手でふさぐ。
「えーと・・・そんな大きな魔物と会って大丈夫だった? 怪我とかしなかった?」
「しないよ! ジジさまがやっつけてくれたもん。すごいんだよジジさま、バーッとワーッとドシャッとやっつけてくれたんだ!」
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ごまかせてホッとしたけど、擬音ばっかりで何言ってるのか全然わからん。とりあえず退治した時の再現を身振り手振りして教えてくれたからそれを見てなんとなく魔法でやったのかなーくらいは理解した。
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「先代国王も火魔法使いなの?」
「うん! すっごくすっごくかっこいいんだ! ぼくもいつかジジさまみたいに火魔法をじゆうにあやつって魔物を退治したい」
キラキラと。眩しすぎる子供のロウの瞳。先代国王を心から尊敬してるのが伝わってくる。
ロウにもちゃんと憧れをもった時期があったんだと、感動してじーんときた。
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あまり自分のことを積極的に話さないロウだけに、ロウのことを知れて嬉しいのと同時に好きが増した。
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ぽんっと子供のロウの肩に手をおいて意味深な励ましをするオレ。あたまにはてなを浮かべながらも子供のロウは「がんばる!」と素直に返してくれた。
マジで魔物を倒しながら笑ってるロウにこの純粋な頃を見せてやりたい。
シーリアさんがコトリさんと一緒に戻ってくるまでの小一時間ほど、子供のロウと一緒に魔物退治ごっこをして遊んだ。
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