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流星編2/3
しおりを挟む「はぁー、昨日はやらかした」
盛大にため息をつきながら笹の前に立つ。
裏庭には屋根があるからまだ終わらない梅雨の今でも笹は濡れずにすんでいる。
昨日、トオルから貰った短冊にお願いごとを書いてきた。今日はそれを吊るそうと笹を眺める。
思ったより短冊がたくさん吊るされていて、ちょうどいい高さには隙間がないくらいびっしりついている。
しょうがないから背伸びをして高いところにした。
願いごとはいろいろ考えた。
カップリングでケンカしたヒヨカと仲直りができますように。
ヒヨカがこれ以上イベントに参加しませんように。(すでに夏休みまで5件のイベントに参加予定)
コミケで人気のある同人作家さんの新刊がゲットできますように。
いろいろ考えたけどやっぱり一番の願いは、
『好きな人と付き合えますように』
ピアスをあげた日、推しから恋に変わった。
トオルの反応を見てちょっと、ほんのちょっとだけど淡い期待を持ってしまったけど・・・。
あれから全然進展がない。
トオルは前よりそっけないというか、態度がキツイし口が悪いときもあるし。と思ったら、昨日みたいにオレの分まで短冊を持ってきてくれたりして優しかったり。
正直、トオルの気持ちがよくわからない。
一歩、踏み込もうにも怖くて足踏み状態。
そのうえ、ヒヨカの同人イベント用の漫画に振り回されるし。
「はぁー」
笹の前でまた盛大なため息が。
まだ睡眠足りてないのかな。
明後日から期末テストだし。今日は寄り道しないでかえ・・・
「ん?!」
短冊がびっしり吊るされてる中からトオルらしき字を発見する。
苗字の池田はありがちだけど、トオルの書く字は世界にひとつしかない。
オレの推しセンサーが反応している!
紫色の短冊をつかむと短冊のすみっこに池田と書いてある。これでもう間違いない。トオルの短冊だ。
願い事は・・・。
『あの子とたくさん会えますように』
あの子・・・。
「あの子って誰?!」
短冊を引きちぎりそうになって慌てて手を放す。
あの子にたくさん会いたいってことは好きな子ってこと?!
トオルに好きな子がいるってこと?!
ガーンッと派手にショックを受けて地面に両手を付く。
期待どころかただのオレの勘違いだった。
あの子って誰だろうとトオルの周辺にいる女子をいろいろ思い出してみるけど、どの子も当てはまりそうで全然検討がつかない。
いや、ひとりいた!
スクッと立ち上がる。
ホワイトデーの時にトオルからバレンタインのお返しを貰っていた、ポニーテールの子。
確か、3年でも同じクラスだったはず・・・。
「・・・」
でも待てよと首をかしげる。
同じクラスなら『たくさん会えますように』はおかしい。
会いたいのに会えないからお願いごとしてるんだ。
「・・・」
え? 他校生?
はたまた不倫?!
「あーわっかんない! もういい、直接本人に聞こう!」
猛ダッシュで校舎の中に入ってトオルのいる3組へと向かう。
教室を覗くと誰もいなかった。同時に昼休み終了のチャイムが鳴り響く。
どうやら3組の次の授業は音楽らしい。
隣のクラスだからすぐ会えるだろうと思い、授業が終わったあと3組に行くもトイレでいなかったり、委員会でいなかったり、先生に呼び出されたりとことごとく会えず、一日が終わった。
ラインでもよかったけど直接本人の口から聞きたくてやめた。
そのあともタイミングがまったく合わず会えないまま期末テストが始まった。
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