ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ

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ハロウィン編

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☆短い話の2点です。心と脳をゆるーくしてお読みください。




タイトル『お菓子かいたずらか』ートモセ視点ー

 今日はハロウィンだ。
 嬉しいことにシェアハウスにアキが来ている。
 ラブずメンバーがあまりにアキの料理を気に入って何度も呼ぶもんだから事務所側がただで作ってもらうのは申し訳ないと、正式にバイトとして雇ってくれた。
 おかげでアキは定期的にオレのために料理を作りに来てくれる。

 キッチンからカボチャと甘い匂いがする。
 アキがハロウィン用にお菓子を作ってるのが簡単に想像がつく。
 今すぐキッチンに飛び込んでアキに会いたい気持ちをグッとこらえ、オレは廊下で悩むはめに。

 何を悩んでいるかというと、
「お菓子をもらうか、イタズラをするか」
 
 この甘い匂いからして絶対カボチャ入りのクッキーだ。それかケーキか。とにかく焼き菓子なのは絶対間違いない。
 香ばしい匂いが廊下までただよってよだれが出そうだ。
「アキが作るんだから絶対に美味しいに決まってる! ていうか、食べたい!」
 でも、アキとつきあってるのに普段恋人らしいことが全然できてない。
 ここはイベントにのっかってイタズラという名のイチャイチャがしたい!
「クッソーッ!! 究極の選択すぎてまったく選べない!!!」
 アイロンでセットしたストレートヘアの髪を手でぐしゃぐしゃにしながら苛立ちがつのる。

「ともよーん、なにしてるの? アキのハロウィン用のクッキーなくなっちゃうよぉ」
 キッチンから出てきたアイが、カボチャ型のクッキーを食べながら話しかけてきた。
「え」
「おーいい匂いー! ちょーど小腹すいてたからラッキー!」
 お腹をさすりながらニコニコ顔のアツシが走りながらキッチンへと入って行く。続いてぞくぞくとラブずメンバーが・・・。
「アキのお菓子めっちゃ楽しみにしてたー!!」
「匂いからしてクッキーかな」
「アキの料理ならなんでも好きだなぁ」
「ハズレがないよなー」
 ショウやカイ、普段イベントごとに興味のないリュウやミツルさんまでアキのお菓子を楽しみにしながらキッチンへ入って行く。

 立ち尽くすオレにアイがとどめとばかりに、
「ともよんは行かないの? クッキーなくなっちゃうよ?」
「行く!!!!」


 むちゃくちゃ焼き菓子を堪能した。


おわり。

 









タイトル『いたずら』ーアキ視点ー

 今日はハッピーハロウィンだった。
 せっかくだから受験勉強をお休みにしてシェアハウスに行き、ラブずメンバーやシェアハウスで暮らしている俳優さんやそのたまごの人にハロウィン向けのお菓子を作ることに。
 カボチャ入りのクッキーとパウンドケーキ、カップケーキと大量に作った。本当は夕飯の後に食べてもらおうと思っていたのに、匂いに誘われたのか、ラブずメンバーの皆さんを筆頭に、

『トリックオアトリート!』

 と言いながらキッチンに入ってきて、作った焼き菓子はあっという間になくなった。(来なかった人はちゃんとわけて取っておいた)

「ふー、さすがに疲れたぁ」

 後片付けを終わらせ、一息つこうと丸いパイプ椅子に腰かける。
 時間がある時でいいからと芸能事務所の人がボクをバイトとして雇ってくれた。
 すごくすごく嬉しいけど、お金をもらうなんてそんなこと!! 過労で倒れてもいいから無料でいくらでも奉仕します!! と言いたい気持ちだったけど、さすがに引かれそうだったから丁重に受け入れた。

「うわぁぁぁ、今日もラブずのメンバーに美味しいってめちゃくちゃ褒めてもらえて幸せすぎるぅぅ。いいのかなぁ、こんなにボクばかり良い思いして」
 クッキーを美味しそうに食べてくれるアイドルたちの顔を思い出すとニヤニヤが止まらない。(尊すぎ)
 推しのトモセくんも美味しそうに食べてたなぁ。(食べてる姿がかわいい)

 ボクしかいないキッチンでニヤニヤしていたら、
「アキ? あ、よかったまだいた。ラインしたら既読つかないから」
 トモセくんがTシャツとジャージ姿でキッチンに入って来た。ダンスレッスンのあとだろうか。
「と、トモセくん! あ、ご、ごめんね! 後片付けしててっ」
 にやけ顔を見られていないか気にしつつ、慌ててバックに入ってるスマホを覗くとトモセくんからラインが来ていた。(うわー)
「今って大丈夫?」
「あ、うん! 休憩してたところだから大丈夫だよ。それにもう帰るだけだから」
「夜の九時だもんね。帰る前に会えてよかったー。さっきはメンバーのみんなもいたからほとんど話せなかったなーて」
 そう言いながらさりげなくボクとの距離を縮めながら横に立つトモセくん。ふたりしてキッチン台に寄りかかる。
 
 一瞬間があいてからトモセくんと目が合い、お互いそれとなくそらした。
 こうやって会うのは久しぶりな気がする。トモセくんはアイドル業と大学で多忙の毎日で、ボクは部活とパンケーキ専門店のバイトを辞めたけど受験生だ。シェアハウスに料理を作ったりジュンくんに剣道を教えに来るとは言ってもトモセくんとはすれちがってばかりでほとんど会えない。
 前回会ったのはいつだっけ?
 意識した途端、緊張で心臓がドキドキする。
 トモセくんも気まずいのか、黙ったままだ。
 なにか、なにか会話を!

「クッキー美味しかったよ! ケーキも」
 話題をふってくれたのはトモセくんだった。ケーキの名前がわからないらしく、手で一生懸命に表現しようとしているのが見ててかわいい。(推しよ、尊すぎ)
「よかったぁ、作りに来た甲斐があったよぉ」
「うん、めちゃくちゃ美味しかったー。でも、カイの奴食いすぎだよねー」
 気に入らないのか、遠い目をするトモセくん。
「アキは食べた?」
「ボクは・・・皆さんのために作りにきただけだから」
「えー、せっかくのハロウィンなのにー。アキもハロウィンを味わうべきだよー」
「そ、そうかなぁ」
「今から仮装でもする?」
「それはさすがに」
 だよねーとおかしそうに笑うトモセくん。
 久しぶりに好きな人の生の笑顔が見れて、それだけで十分だよ。なんて、満足していたけど、ふとボクもハロウィンをしてみたくなった。
 
 魔が差すとはこのことだ。からかい好きのトモセくんをからかってもハロウィンなんだから罰はあたらないと勝手に思ってみたり。
 トモセくん。と声をかけてニヤッと不敵な笑みを浮かべてみる。普段しないボクのいたずらっぽい笑みにきょとんとするトモセくん。
「トリックオアトリート! お菓子下さい! もってないとイタズラしちゃうぞぉ~」
 野獣っぽく爪を立てて襲うふりをしてみせると、トモセくんの瞳がキラキラと輝いてぎょっとする。

「イタズラでよろしくお願いしまっす!!! あざっす!!」
「冗談だよ!!!」


 トモセくんにめちゃくちゃしょんぼりされた。


おわり。
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