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こぼれ話・その4
しおりを挟む☆本編からのこぼれ話になります。落ちはないです。ゆるーい脳と心でお読みください。
タイトル『世話がやける』ージュン視点ー(最終話からのこぼれ話)
「はいこれ、目を通しておいて」
マネージャーの増田さんからプリントの束を受け取る。
「男性アイドルグループのオーディションの審査委員でしたっけ?」
「ゲスト枠だから気楽でいいよ。でも一応リストは目を通しておいて」
「うっす」
そう言われ、リビングに入りながらオーディションリストの資料でもあるプリントの束に目を通す。
「あ?」
リスト名から見覚えのある奴に気づいたところで、男の悲鳴がリビング内に響く。
驚いて顔をあげると、カイがソファの前で騒いでいる。
「なんか踏んだと思ったらトモセかよぉ! びっくりするだろ。なんでこんなところで寝てるんだよ!」
「どした? カイにしては珍しいじゃん」
「ソファに座ろうとしたらトモセが床で寝てたんだよ。知らないで踏んだ」
見ると、確かにトモがうつ伏せのまま床で寝ている・・・というか行き倒れにも見える。
よく見ると、服装が昨日のダンスレッスンの時のままだ。(Tシャツにジャージ姿)
カイと目を合わせながら「え、まさかこいつ、昨日のダンスレッスンからここで?」と声のない会話を交わす。
「そーいえば、昨日のダンスレッスンもそうだけど、最近変だよな。心ここにあらずっていうか。練習でも隣にいるアイに何度も激突してたし」
「マジかー」
最近のトモの様子を思い出しながらカイとしみじみする。
普段、なにかとトモに突っかかるカイだけど、べつにトモのことを嫌ってるわけじゃない。目立ちたがり屋でチャラいところもあるけど、メンバーのことはよく見てる。
トモに対してはあれだ。いわゆるツンデレって奴。
あと、人一倍努力家でアイドルに本気。
「自分の部屋戻ろ。ジュン、トモセのことなんとかしといて」
ヒラヒラと手を振ってカイがリビングをあとにする。
たっく、俺はこいつのおもり役じゃねっつーの。
と、言いたいけど、現時点ではほぼそれ。
しゃがみこんでトモの脇腹を突っつくと、うめき声みたいのがかすかに聞こえた。
寝てる。
「あーあ。世話がやける」
ため息をこぼして、オーディションの資料にもう一度目を通す。
もうそろそろ限界かと思ってたし、トモも今日はオレと同じビルで仕事があったはず。
スマホをズボンのポケットから取り出してラインのトークリストからアキの名前を探す。
「相手してらうか」
おわり。
タイトル「話題はトモセ」ージュン視点
「まだねみー」
大あくびをしながらTシャツとスウェットパンツ姿で1階へ下りる。
新曲発表が近づくとダンスレッスンやジャケットの撮影とかやることが増える。そのうえ、レギュラー番組やら取材やら・・・
「次の休みっていつもらえんだろ」
アイドル業、マジブラックだ。
「と、言いつつ、今日の仕事は午後から~ってね」
眠い目をこすりながら、時間に余裕があるのが嬉しくてついつい鼻歌を歌いたくなる。
新曲を口ずさみながらリビングに入ると、ソファのあたりでラブずメンバーが朝から集結していた。
あ? 朝から集まりとかあったか? なんも聞いてねー。
「俺なんも知らんけど、なんかあったっけ?」
話しかけやすいアツシに声をかける。
「お、ジュン。はよーっす。なんもないない。これ見て」
あはははとおかしそうに笑いながらアツシがソファの下を指さす。
覗き込んでみると、床にまたしてもトモがうつ伏せになって寝ている。
「こいつー」
この前さんざん注意してやったのに。
「服装からして帰宅して行き倒れたな、これ」
春らしい水色のパステルカラーのトレーナーにベージュのパンツ。裾を軽く折っておしゃれか。
「ていうか、こいつ、スタイリストが用意した服のまんま帰ってきてね?」
「あ、やっぱり? 昨日撮影があったみたいだからそれ用の服かもね」
あちゃーとアツシ。
「トモセってしっかりしてそうで抜けてるっていうか、ずぼら?」
話に入ってきたショウ。
「わかる! 前にさ、部屋のドア開いてたからチラ見したけど、靴下とかズボンとか脱ぎっぱなしだった」
「あーそれ、親に怒られるやつだ。つーか、行き倒れっていうより、事件現場だよな、これ」
「わかるー」
ケラケラと笑い合って盛り上がるアツシとショウ。俺も横で笑った。
「トモセ、この前も同じところで寝てた」
と、ソファの手すりに腰かけているカイも話に入ってきた。
「な?」とわざわざ俺に同意を求めてくる。
「あ? あぁ、あれな」
「マジか。一緒に住むようになってトモセの印象変わったなー」
アツシが寝ているトモを見下ろしながらしみじみ言う。
「つーか、ジュンとダブル出演したドラマからすげー人気出て仕事増えたよな。大学も行ってるし、いつ休んでるんだ?」
ショウがメンバーに視線を合わせながら問いかける。
「あれー? ともよんいつ休みだったんだろう」
首をかしげならアイが答える。
「え。トモセくん、休んでないの?」
口数の少ないセクシー担当のミツルが珍しく話に入ってきた。
「うわーそれやばくない?」
「そりゃぁ行き倒れるわな!」
ショウとアツシがドン引きする。
「さすがにそれはないだろ」
カイもそう言いつつ、顔が引いてる。
面白半分で見ていたトモを、今は哀れみいっぱいの眼差しが注ぐ。
行き倒れたトモがそのままあの世に逝ったみてーだ。これから葬式か?
「ともよんかわいそうすぎるぅー。また過労で倒れちゃったらどうしよう」
アイが半べそ顔で言い出す。
「つーか、まさしく過労で倒れてんじゃね?」
と、ショウ。
「え。ヤバくない?」
「脈測る?」
「息してんのか?」
「救急車呼ぶ?」
「それよりマネージャーじゃね?」
「管理人さんじゃ?」
「もう死んでたり?」
「マジ?」
「警察呼ぶ?」
「マジで事件現場じゃね?!」
トモを囲んでみんな喋りまくる。もう誰が何喋ってるかわかんねー。
「おい」
急にしっかりした声が後ろから聞こえ、一斉に振り返る。
リーダーのルイだ。
「警察の前にトモセを起こすのが先だろ」
その一言でメンバーの心がひとつになる。
『ですよね!』
勝手に世話係担当にされている俺がトモを起こした。
おわり。
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