55 / 57
こぼれ話・その4
しおりを挟む☆本編からのこぼれ話になります。落ちはないです。ゆるーい脳と心でお読みください。
タイトル『世話がやける』ージュン視点ー(最終話からのこぼれ話)
「はいこれ、目を通しておいて」
マネージャーの増田さんからプリントの束を受け取る。
「男性アイドルグループのオーディションの審査委員でしたっけ?」
「ゲスト枠だから気楽でいいよ。でも一応リストは目を通しておいて」
「うっす」
そう言われ、リビングに入りながらオーディションリストの資料でもあるプリントの束に目を通す。
「あ?」
リスト名から見覚えのある奴に気づいたところで、男の悲鳴がリビング内に響く。
驚いて顔をあげると、カイがソファの前で騒いでいる。
「なんか踏んだと思ったらトモセかよぉ! びっくりするだろ。なんでこんなところで寝てるんだよ!」
「どした? カイにしては珍しいじゃん」
「ソファに座ろうとしたらトモセが床で寝てたんだよ。知らないで踏んだ」
見ると、確かにトモがうつ伏せのまま床で寝ている・・・というか行き倒れにも見える。
よく見ると、服装が昨日のダンスレッスンの時のままだ。(Tシャツにジャージ姿)
カイと目を合わせながら「え、まさかこいつ、昨日のダンスレッスンからここで?」と声のない会話を交わす。
「そーいえば、昨日のダンスレッスンもそうだけど、最近変だよな。心ここにあらずっていうか。練習でも隣にいるアイに何度も激突してたし」
「マジかー」
最近のトモの様子を思い出しながらカイとしみじみする。
普段、なにかとトモに突っかかるカイだけど、べつにトモのことを嫌ってるわけじゃない。目立ちたがり屋でチャラいところもあるけど、メンバーのことはよく見てる。
トモに対してはあれだ。いわゆるツンデレって奴。
あと、人一倍努力家でアイドルに本気。
「自分の部屋戻ろ。ジュン、トモセのことなんとかしといて」
ヒラヒラと手を振ってカイがリビングをあとにする。
たっく、俺はこいつのおもり役じゃねっつーの。
と、言いたいけど、現時点ではほぼそれ。
しゃがみこんでトモの脇腹を突っつくと、うめき声みたいのがかすかに聞こえた。
寝てる。
「あーあ。世話がやける」
ため息をこぼして、オーディションの資料にもう一度目を通す。
もうそろそろ限界かと思ってたし、トモも今日はオレと同じビルで仕事があったはず。
スマホをズボンのポケットから取り出してラインのトークリストからアキの名前を探す。
「相手してらうか」
おわり。
タイトル「話題はトモセ」ージュン視点
「まだねみー」
大あくびをしながらTシャツとスウェットパンツ姿で1階へ下りる。
新曲発表が近づくとダンスレッスンやジャケットの撮影とかやることが増える。そのうえ、レギュラー番組やら取材やら・・・
「次の休みっていつもらえんだろ」
アイドル業、マジブラックだ。
「と、言いつつ、今日の仕事は午後から~ってね」
眠い目をこすりながら、時間に余裕があるのが嬉しくてついつい鼻歌を歌いたくなる。
新曲を口ずさみながらリビングに入ると、ソファのあたりでラブずメンバーが朝から集結していた。
あ? 朝から集まりとかあったか? なんも聞いてねー。
「俺なんも知らんけど、なんかあったっけ?」
話しかけやすいアツシに声をかける。
「お、ジュン。はよーっす。なんもないない。これ見て」
あはははとおかしそうに笑いながらアツシがソファの下を指さす。
覗き込んでみると、床にまたしてもトモがうつ伏せになって寝ている。
「こいつー」
この前さんざん注意してやったのに。
「服装からして帰宅して行き倒れたな、これ」
春らしい水色のパステルカラーのトレーナーにベージュのパンツ。裾を軽く折っておしゃれか。
「ていうか、こいつ、スタイリストが用意した服のまんま帰ってきてね?」
「あ、やっぱり? 昨日撮影があったみたいだからそれ用の服かもね」
あちゃーとアツシ。
「トモセってしっかりしてそうで抜けてるっていうか、ずぼら?」
話に入ってきたショウ。
「わかる! 前にさ、部屋のドア開いてたからチラ見したけど、靴下とかズボンとか脱ぎっぱなしだった」
「あーそれ、親に怒られるやつだ。つーか、行き倒れっていうより、事件現場だよな、これ」
「わかるー」
ケラケラと笑い合って盛り上がるアツシとショウ。俺も横で笑った。
「トモセ、この前も同じところで寝てた」
と、ソファの手すりに腰かけているカイも話に入ってきた。
「な?」とわざわざ俺に同意を求めてくる。
「あ? あぁ、あれな」
「マジか。一緒に住むようになってトモセの印象変わったなー」
アツシが寝ているトモを見下ろしながらしみじみ言う。
「つーか、ジュンとダブル出演したドラマからすげー人気出て仕事増えたよな。大学も行ってるし、いつ休んでるんだ?」
ショウがメンバーに視線を合わせながら問いかける。
「あれー? ともよんいつ休みだったんだろう」
首をかしげならアイが答える。
「え。トモセくん、休んでないの?」
口数の少ないセクシー担当のミツルが珍しく話に入ってきた。
「うわーそれやばくない?」
「そりゃぁ行き倒れるわな!」
ショウとアツシがドン引きする。
「さすがにそれはないだろ」
カイもそう言いつつ、顔が引いてる。
面白半分で見ていたトモを、今は哀れみいっぱいの眼差しが注ぐ。
行き倒れたトモがそのままあの世に逝ったみてーだ。これから葬式か?
「ともよんかわいそうすぎるぅー。また過労で倒れちゃったらどうしよう」
アイが半べそ顔で言い出す。
「つーか、まさしく過労で倒れてんじゃね?」
と、ショウ。
「え。ヤバくない?」
「脈測る?」
「息してんのか?」
「救急車呼ぶ?」
「それよりマネージャーじゃね?」
「管理人さんじゃ?」
「もう死んでたり?」
「マジ?」
「警察呼ぶ?」
「マジで事件現場じゃね?!」
トモを囲んでみんな喋りまくる。もう誰が何喋ってるかわかんねー。
「おい」
急にしっかりした声が後ろから聞こえ、一斉に振り返る。
リーダーのルイだ。
「警察の前にトモセを起こすのが先だろ」
その一言でメンバーの心がひとつになる。
『ですよね!』
勝手に世話係担当にされている俺がトモを起こした。
おわり。
8
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
続・聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。
あらすじ
異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる