ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ

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最終話「会いたいから頑張る」2/2

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「最悪。僕のこと放ってどこ行ってたんだよ」
 ぷぅと頬を膨らませて怒るあずくん。
「ごめんごめん。道に迷っちゃって」
「絶対うそだ。他の部屋で仕事してる芸能人でも観に行ってたんだろ」
 ぷいっと機嫌は最悪だ。
「でも、オーディションに間に合ったし、ね」
 ニコッと明るく振舞うボクにあずくんが、
「審査員がひとりまだ来ないんだって。そいつ偉い奴らしい。アホらし」
 ケッとあずくん。本当にアイドルになる気あるのかなぁ。

「あずくんがアイドルになったら同じ家に住んでてもなかなか会えなくなるね」
「は?」
「今年高3だから、受験で部活引退するし、バイトも夏には辞めると思う。看護学校て人気あるから倍率高いんだよねぇ」
 ふーと先のことを考えるとため息が漏れる。

 あずくんにはまだトモセくんのこともジュンくんやシェアハウスに行ってることもまだ話していない。話そうとは思っているけど・・・一度めちゃくちゃ心配されてるし、ジュンくんに関してはあずくんを利用してボクに会おうとしていたから、あずくんの反応を考えると気が引ける。
 本当はさっきまでトモセくんに会えたことや、き、キスしたこととかいろいろ推し話・・・じゃなかった。恋バナをしたいところだけど。
 芸能人と付き合うことは自分のためにも秘密が一番だけど、あずくんならきっと信用できる。(モデルのお姉さんがいるしね)

 顔の熱はとれたけど、何事もなかったフリができてるか内心ドキドキだ。だからって、受験の話をここで出す話題じゃなかったかもしれない。(失敗した)
 何も言ってこないあずくんの顔を覗き込むと、初耳とばかりに目が点になっていた。
「あずくん?」
「アキ、看護師目指してるの?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてない!」
「母さんの影響なんだけどね。ボクもできれば夜勤の看護師として人の役に立てたら・・・と思って」
「・・・なんだそれ」
「へ?」
 
 バカにされた? と思った瞬間、あずくんがスクッと立ち上がり控室にいるスタッフさんらしき人に声をかけた。
「すいませーん! オーディション番号211ですけど、なかなか始まらないので辞退します!」
「え」とスタッフさんだけじゃなく、控室にいる他のオーディションに来たイケメンたちも一斉に声を揃えて驚く。

「行こう、アキ」
「へ?! ほ、本気なの? あずくん。せっかく来たのに」
 スタッフさんも呼び止めようとするけど、まったく聞く耳をもたないあずくんはさっさと控室を出て行ってしまった。
 残されたボクは居づらくてスタッフさんにお辞儀をしてそそくさと部屋を出た。

 トモセくんがまだ仕事しているであろうビルを、オーディションをせず出ることに。
「あずくん、本当にいいの?」
 戻るなら今だよと念を押す。
「アイドルになるのやめた」
「へ?!」
「ボクもアキと一緒に看護師になる」
「なぜそうなる?!」
 いきなりの目標変更にどうツッコミを入れればいいか。とにかくめちゃくちゃ驚いた。
「アイドル向いてないのはわかってたから全然問題ない」
「えぇー」
「応援してくれても会えなきゃ意味ない」
「へ?」
「なんでもない。アキはさっさと家に帰って受験勉強だよ。ボクがみっちり監視してあげるよ」
 ニヤリと不敵な笑みを浮かべるあずくん。美形なだけに貫禄があって怖い。

 早く早くとあずくんに腕を引っ張られながら家路を急いだ。
 
 こんなボクだけど、これからも会いたい推しのため、ボクの日常を頑張る。



 おわり。




*あとがき*
 読んでくださりありがとうございました!
 引き続き、番外編などを更新していきますのでよろしくお願いします。(ぺこり)
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