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「マジ恋が成就してしまった」
しおりを挟むマジ恋が成就してしまった。
マネージャーの宮本さんに送ってもらって家に着くと、姉さんたちが今かと待ちかまえていた。予想どおり質問攻めされ「よくやった!」と危うく胴上げされそうになった。
希愛ちゃんを家まで送ってくれたジュンくんが、たまたま偶然、剣道大会でボクと会ってプリンのストラップをきっかけにファンと推しということで仲良くなったと、姉さんたちに説明したらしい。(ジュンくんの機転! 尊いッ)
ラブずのメンバーと友達なんて、アイドルオタク一家としては前代未聞だ。めったに泣かない美紀姉さんが泣いて喜ぶくらい。なぜか、隅っこにいた父さんまで泣いてたのが不思議だったけど。(ファンでもないのに)
でもまさか、推しと夢で出会って現実でも付き合うことになったなんてそんなこと・・・言ったら確実に心療内科に連れて行かれるかもしれない。母さん付きで。
その日は興奮がおさまらない姉さんたちから逃げるように部活へ行き、一心不乱に竹刀を振って稽古に集中した。
午後はバイトに行き、何も考えず一心不乱にパンケーキを焼きまくった。
そして帰宅後、風呂に入ってようやく自分の部屋のベッドで一息ついた瞬間、スイッチが入ったかのようにめちゃくちゃ興奮して悶えまくった。
何からツッコミを入れればいいかわからないくらいたくさんのことがありすぎて、思い出すだけで数秒経たずにキャパ越えとばかりに転がりまくってベッドから落ちる。
それを1時間近くも繰り返し、0時をまわったところでようやく少し落ち着きスマホを手に取る。
帰り際、マネージャーの宮本さんからトモセくんのラインIDを教えてもらった。(プライベートの!!)
いろいろルールみたいなことをくどくど説明され、守ることを条件にされた。
宮本さんの連絡先も教えてもらい、住所はトモセくんにじゃなく宮本さんに教えるよう言われ、ラインで伝えることになった。
とりあえず、ともう遅いから送るのは明日の朝にして、文だけでも先に書いておこうとラインのアプリを開く。
トモセくんへのラインも明日でいいよね。こんな夜中にラインなんて迷惑すぎる。というか、まだ夢で会えるのかなぁ。
ふと疑問が沸いた。
一生分の推しに会ってしまった今、好きなのは変わらないし、前よりももっと大好きになったけど、会いたいという気持ちは満腹を通り過ぎて別腹すら入らない。
「ドラマとか物語の展開だと、現実で会っちゃったりすると今までの方法で会えなくなったりするよね? あの白い世界の夢も同じなのかなぁ」
これから寝るけど、もう白い世界の夢は見れない? 夢の中のトモセくんには会えない?
「そんなの、寂しいなぁ」
ボソッと口から零れた。
別腹すら入らないほど満腹なのに、夢でも会いたいなんて、ボクってなんて貪欲なんだ。だいたい、夢で会ってたトモセくんは結局本物だったんだから、夢で会えなくても現実で会えばいいだけじゃん。
「・・・なんて、アイドルのトモセくんと付き合えることになったからってそう簡単にホイホイ会えるわけじゃないよぉ!! 多分! ジュンくんも言ってたじゃん、入試試験にドラマの撮影もあって忙しいって」
自分に憤慨しながらツッコミを入れる。
誰もいないからってひとり二役のコントみたいなことをしてる自分にちょっと恥ずかしくなる。
1日頑張ったあと、夢の中で推しに会えるのが楽しみなっていたから、それがなくなるのは寂しいと思っただけと自分に言い聞かせ、欲張りになったわけじゃないと言い聞かせ、スマホを枕元に置いて部屋の電気を消して布団に入る。
寝てみればわかることなんだ。寝て、白い世界にいたらまだ会える。
疲れていたのか、わりとあっさり眠りに入った。
スマホのアラームで目が覚め、眠気の余韻なくベッドから下りてラグマットの上に座る。
寝た結果、会えた!
白い世界でトモセくんに会えた。しかも、ボクが創り出した偽物のトモセくんじゃなくて本物だった。
会った瞬間、強くハグされ、ボクと別れたあとのことをノンストップで喋り続けたトモセくん。紛れもなく本人だと思うしかない内容ばっかりだった。特にラブずメンバーのこととか。
今思えば、今までの夢でもなんかおかしいなぁ? と思うことはそれなりにあった。バグ? なんて混乱したこともあった。とろりプリンを持ってきてなんて言われた時とか。
自分なりに理由を探して解釈してたけど、単純なことだった。本人だった! そう思うと腑に落ちることがあれこれ出てきて頭を抱えて悶絶したいけど、今はやらなきゃいけないことがあるから我慢だ。
恥ずかしい気持ちを外においやって、スマホを片手にラインのアプリを開く。
朝の5時だけどおかまいなくトモセくんにラインをする。それというのも、夢の中で会ったトモセくんにラインがまだこないとめちゃくちゃ催促されたから。
すぐさま既読が付いてトモセくんから返事が。
『おはよう! めちゃくちゃごめん!』
謝ってきたから何かと思ったら、昨日、ボクと別れたあとにラインが全然来ないことへの不安と焦りがそのまま夢の中でボクに喋りまくったことをすごく反省しての「ごめん」だった。
どうやらプリンのストラップを返したせいか、意識のコントロールがうまくいかないとかなんとか。(へ?)
ジュンくんが、プリンのストラップを拾ってからいろいろ聞けるようになったとか言ってたことを思い出し、夢の法則に疑問が沸いてきた。相手の私物で夢の中でできることが左右されるってことかなぁ?
うーん・・・と起きたばかりの思考回路で考えるけど、うまく働かない。とにかく今回は思ったことが全部夢の中で喋っちゃった。てことかと理解すると、それはそれで一日中落ち着かなかったトモセくんを想像すると可愛すぎて尊いッッ!!(朝キュンッ)
「あ、ヤバい、朝練があるんだった!」
慌ててTシャツを脱いでワイシャツに着替え、洗面所へと向かう。
夢の中でトモセくんは他にもたくさん話してくれた。ジュンくんも手伝ってくれた朝食のこととか。
ボクが作るパンケーキをやっと食べれたと喜んでくれたのはすごく嬉しかった。
他のラブずメンバーも食べてくれて、すごく好評だったとか。最後の1枚をカイくんに取られて悔しかったと言うトモセくんが・・・かわいいッ。(いくらでも作りまっす!)
まだ夢の中で会えることにじーんと感動しつつ、これ以上頭の中をトモセくん一色にしていると生活できないからいったん隅においやって、顔を洗いながら気持ちを切り替えた。
*あとがき*
読んでくださりありがとうございます!
次で最終話になります。
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