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「気づき」ートモセ視点ー
しおりを挟む「トモセくんのことが大っっ好きですっ!」
オレより年下の中学生の女の子から圧倒される告白を受け、思わず言葉が詰まった。
「・・・あ、ありがとう」
慌ててアイドルスマイルを貼り付け微笑む。
受け止めてくれたことにホッとした彼女は、溢れる感情をオレにぶつけるようにどんどん話しかけてくる。
ただ今、某バラエティ番組の収録で地方に来ている。
アキと夢でやった『恋人ごっこ』を応募してくれたファンの子とやることに。
この企画の相方でもあるアイが今、ファンの子とアヒルのボートでデート中だ。
オレはその間、暇なのでファンの子と仲を深めるためにスタッフが用意してくれたパラソルの下でのほほんと会話をするはず・・・だったんだけど、大人しい子かと思っていたら内面が熱い子だった。
気持ちを伝えてくれるのはすごく嬉しいんだけど・・・こっちがしゃべる隙をあたえようとしない彼女のしゃべりに少し疲れてきたところで、スタッフに声をかけられ内心ホッとする。
「それじゃ、緊張がほぐれたところで収録楽しもう!」
「は、はい! トモセくんとボートに乗れるなんて幸せですっ!」
キラキラした瞳でめいっぱいプレッシャーをかけられた。(うっ)
手を振ってスタッフの元へ段取りを聞きに行くフリをして彼女から逃げる。
ふーと息を吐いたところで、アイが腰に巻きついてきた。
「トモセくん大好きだって!! ファンから言われると嬉しいセリフのひとつだよねー!」
「ボートお疲れ様。アヒル回ってたね」
「足で漕いでるだけなのに難しいよぉ! 必死に漕ぎながら顔は笑顔でいなきゃいけないって・・・ボクのことはいいの! トモよんの方こそ体はもう大丈夫なの? もうちょっと休んでたらいいのに。宮本さんも働かせるよね!」
ぷんぷんと頬を膨らませて怒ってくれる。
「気にかけてくれてありがとう。でも大丈夫。宮本さんもすごく気を使ってくれるし。退院したあともちゃんと実家で2日も安静にしてたから」
「ふーん。ならいいんだけどさ。たまたま控室で倒れたから公表されずに済んだけど、18で過労なんて普通じゃないんだからね! 頑張りすぎ禁止!」
可愛い顔で説教してくるアイに癒される。
「ありがとー。もう無理しない。アイ大好きぃー」
ぎゅーっと覆いかぶさるようにアイに抱きつく。
「ボクもトモよんのそうゆう素直なとこ大好きぃー」
周りのスタッフが一瞬戸惑ったけど、これはオレとアイのおふざけの1種だ。
だけど、アイのサイズがアキに似てるせいか、ついついハグが長めに・・・アイも嫌がることなくつきあってくれるから、しばらく抱き合ったまま5分も経った。
「あ、あの・・・もうそろそろ準備を・・・」
どう切り出したらいいか戸惑っていたスタッフがしどろもどろに話しかけてきた。
「よぉーし、デート頑張ってくる」
アイから離れ、うーんと腕を上げて伸びをする。
「トモよん、何か悩みがあったらジュンよりボクを頼ってよね。ジュンは確かに世話やきなところがあるけど繊細さにかけるんだよねー」
腕組みをしてまた頬を膨らませるアイが面白くて吹き出しながら、
「ありがとっ。でもジュンは良い奴だよ。倒れる直前まで気にかけてくれたし」
「そっ。でも、ボクもトモよんのこと気にかけてるんだからね」
「ありがと」
にぃーと歯を見せて笑ってみせる。
こうゆう時、アイドルやっててよかったって思う瞬間だ。
アイドルをやってなきゃアイやジュン、メンバーみんなと出会うことはなかった。
「あれこれ欲張って追うと全部逃すっていうから、欲張っちゃダメだよ」
「・・・え?」
アイがなにげに言った言葉にハッとさせられる。
「二頭追うものは一頭も得ず。てことわざあるじゃん。ボク、自分に言い聞かせて気をつけてるんだよねー。だから、さっきと一緒。頑張りすぎに注意!」
「あーうん、気をつける」
うん、と笑顔で手を振るアイ。
あたりまえの言葉なのに、やたらと胸に刺さった。
アヒルのボートがある湖の前にさっきのファンの女の子がすでにスタンバイしていた。
彼女と目が合い、アイドルスマイルで返す。
『大好きですっ!!』
彼女の想いが今更胸に響く。
アキに応援はされても好きとは言ってもらえてないことに気づく。
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