31 / 57
「夢占い」ートモセ視点ー
しおりを挟む恋人騒動の時から気にしないようにしてた。
ぽっかり空いた時間でなにげなく検索した夢占いでアキのことを調べた。
占いなんて興味もなくておみくじで凶を引いたとしても気にとめたことなんてなかった。
だから、夢占いの内容が気になるものだったとしてもそれ以上考えないようにしてた。
でも、アキに会ったら信じないわけない。
「もう寝よう。明日で東京公演ラストなんだし」
「あ? 寝かせるわけねーだろっ。あとで話すっつっただろ。言え」
目つきで威嚇してくるジュン。さすが元ヤンキー。
実家に帰ろうとしたらジュンに捕まってシェアハウスに連れてこられ、ジュンの部屋に泊まることになった。
「あんな奇行に走っておいて説明なしかよ」
「・・・結局行かせてくれなかったじゃん」
「あぁ? トモ、お前、全然反省してねーなー。あ?」
「い、いひゃい」
ベッドの上で座ってるオレの頬をジュンがつねってきた。
「おら。さっさと吐いちゃえよ」
赤くなった頬をさすりながら、
「・・・変な話だよ? 絶対頭おかしいとか思う」
「それを決めるのはオレだろ。いいから話せって」
ジュンが真剣な顔で見つめてくるからオレもちゃんと話すことにした。
「ふーん、面白いじゃん」
話が終わると、黙って聞いていたジュンがぽつりと言ったあとスマホを見つめながら何かを調べ始めた。
「あ、マジだ。何度も夢に見る人物はそのうち現実で出会う人かもしれません・・・だって。他にもいろいろ書いてある。コンサートで見たって奴、夢に出てきたとき怖いとか思った?」
「全然。その逆で覚えてないけど目覚めが良くて、特に落ち込んだ次の日とかはスッキリしてたり、気分がいいっていうか!」
ジュンがドン引きするどころか、普通に話にのっかってくれるのが嬉しくてついついテンションが上がる。
「・・・ネットの夢占いを見る限り、吉兆じゃん」
「うん! オレも前に調べた時そうだと思った。でも、現実で出会う相手だとか書いてあってもそんなことありえるわけないじゃんて、普通思うよ。だから、全然気にしてなかったんだけど、んー気にしないようにしてたけど、実際、コンサート会場で見かけたら信じちゃうよ」
「・・・運命だって?」
ジュンに言われ、カッと顔が熱くなる。
「そ、そこまで言ってない! 友達! アキは友達だって! オレのファンで友達! アキも夢の中で言ってたし」
「・・・へー」
ジュンの目が疑っている。
「夢見てたこと覚えてなかったんだろ。よく本人だってわかったな?」
「最近は断片的に思い出したりぼんやり程度なら。でも、不思議なんだけど見た瞬間、アキだってわかったんだ。名前も忘れてたのに、見た瞬間思い出した。ていうか、いろいろ思い出した! 歌ってる時、夢の中でのアキと話したこととかいろいろ思い出した」
「・・・コンサート中そんなこと思い出してたのかよ」
「そんなことじゃないよ。勝手に蘇ってくるんだからしょうがないじゃん」
なんか仕事サボってると言われたみたいで腹が立つ。
「あ。もう呟いてる奴がいる。感想程度の拡散だったらウエルカムだけど・・・これ、明日には記事にされっかも」
「え?」
ジュンが見てる画面を覗きこむと、ツイッターでファンの子たちがオレについて呟きまくっている。
「トモ、投げキッスとかキュンサインとか普段しないもんな。まさかこんなに騒がられるとはな。つーか、俺らメンバーもびっくりした」
「アキと約束してたことを思い出してやった」
「あ?」
「夢の中でアキが目立つようにうちわを作るっていうから、ちゃんと見た証拠を・・・と思ってやった。まさか、投げキッスとこれとは」
指でキュンサインをしてから、コンサート会場でアキに向かってやったことを思い出し顔が熱くなる。
メンバーのみんなは(意外にジュンもする)やるのに、オレだけ恥ずかしくて今までやったことはなかった。
オレのファンもわかっててあえてお願いをしてこなかっただけに、さすがアキだなと思ってしまう。
きっと、試したんだ。
夢でのことを覚えているかどうか。
「やられた席の奴らみんなすげー黄色い声あげてたもんなー。あれぜってーお前以外のファンも叫んでたぜ?」
「そんなに驚くことかな」
「普段やらない奴だからこそだろ。カイが悔しがってたぜ」
「え? マジ? それならやったかいあった」
「おい」
「約束・・・ていうなら、トモがうちわに書いてあることをしたってことは、お互い同じ夢を見てるっていうことだろ? なんかすげー。ドラマとかにありそうじゃん」
「そう言われるとすごいかも。オレも実はめちゃくちゃびっくりしてる」
「なんかいいじゃん、夢があって」
フッと目元だけで笑うジュン。
ときどき見せるジュンの優しい笑顔が見れるのは仲良しの特権だ。
「ジュンはオレの話、信じてくれるんだね。何言ってんのとかドン引きされるかと思った」
「あ? まぁ、その辺の奴ならするかもな。だって、お前、あの時すげーマジな目してたじゃん。マジでファンがいる会場内に飛び込んで行きそうでビビった。その時は頭イカレたんじゃねーかって思った」
フッと今度は鼻で笑った。(これはムカつく)
「夢で何度も会う奴が会場内にいればそりゃー会いに行くよな。俺も行こうとしたかも」
「でしょ!」
「・・・でもさすがにファンが大勢いる中はなー」
ゴロンと、敷布団の上に寝転がるジュン。
オレもベッドに寝転がる。
「あーどうしよう。せっかくのチャンスだったのに」
「ファンなんだろ。明日のコンサートにまたくんじゃね?」
「それは無理でしょ。アキもやっとチケット取れたって喜んでたし」
「そいつ、お前のこと相当好きなんだな」
「え。急になに?」
「夢占いに書いてあんだよ。相手の会いたいという強い思いから夢に出てくることもある・・・て。普通なら怖すぎなファンだろ? 生霊的な?」
「生霊・・・て。いきすぎたファンと一緒にするなよ。アキはそんなんじゃない、と思う。なんか、癒されるっていうか」
「へいへい。あ、生霊じゃなくてもう死んでたりして? 不慮の事故で幽霊になってお前の夢に夜な夜な出てくるとか」
「じゅーん!」
ケラケラ笑って、オレの反応を見て楽しんでる。
「マジな話、否定するわけじゃねーけど、他人の空似って奴もあんじゃん。あんだけたくさんファンもいたんだしさ」
「それはない。オレ目いいし、コンサート中何度もアキのこと見たし」
「あぁ、だからやたら東側行ってたんだ。2階席ばっか手ぇ振ってたよな?」
「うっ・・・」
ジュンにバレてたと思うと恥ずかしい。
「ひ、東担当ってことで!」
「あ? じゃー明日からコンサートツァーずっと東担当な」
「なんでだよ」
「東担当なんだろ?」
寝転びながらニヤリと不敵な笑みを向けてくるジュンにイラっとする。
ジュンにイライラしてたらふとある提案を思いつく。
「夢かー。マジで夢で会えるなら距離なんて関係ねーよなー」
どこか上の空で呟くジュンをスルーするして、
「いいこと思いついた! 配信でアキに呼びかけるっていうのはどう?!」
我ながら良い案だと目を輝かせて言ってみたけど、ジュンが急にむせり出した。
「おっまえ、バカじゃねーの! 受験生で今メンバーの中で一番頭いいくせに、なんだその提案は!! なんでいちいち騒動に発展するようなことばっか考えんだよっ! 干されてーのかっ!」
「なんだよ、そこまで言わなくてもいいじゃん。思い出したんだけど、アキも配信見てくれてるし呼びかけたら答えてくれるかなーって思っただけ」
「クソ単純だな。アキ以外のファン・・・いや、メディアが見てるとかおもわんのか!」
「・・・あ」
ジュンに諭されハッとする。
「やってみれば? 偽アキがどんだけ出てくるか楽しみだぜ」
悪い顔で笑うジュンに元ヤンの影が・・・。
「ごめん、今の無し。確かに考えなしだった。思いつくままに言いました」
「反省はしっかりしろよー。そして、勝手に動くなよ。なんかやらかしそうで怖いわ!」
「・・・そこまで言わなくても」
反省とばかりにうつむいてみせるオレだけど、配信を利用してアキにだけわかる方法がないか考えてみる。
「とりあえず今日はもう寝ようぜ。なんか話聞いてたら俺もアキとかいう奴の顔を拝んでみたくなったから協力してやるよ」
「やった、オレも他になにか思い出したら話すよ。あ、アキって高2だったんだよ! ずっと光喜と同い年くらいだとばかり思っててさー」
「いいから寝ろや」
「・・・わかった」
ジュンの圧に押され、渋々タオルケットをかけて横になる。
「いつもベッド借りて悪い」
「気にすんな」
部屋が暗くなるとジュンの寝息がすぐに聞こえてきた。
オレも目をつぶるけど、思い出したばかりのアキの情報が多すぎて胸がいっぱいで・・・なかなか寝つけなかった。
ていうか、そのまま朝になるまで起きていた。
おかげで、ラストの東京公演は終始ハイテンションだった。
9
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
バズる間取り
福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。
自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき……
すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる