ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ

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「夢占い」ートモセ視点ー

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 恋人騒動の時から気にしないようにしてた。
 ぽっかり空いた時間でなにげなく検索した夢占いでアキのことを調べた。
 占いなんて興味もなくておみくじで凶を引いたとしても気にとめたことなんてなかった。
 だから、夢占いの内容が気になるものだったとしてもそれ以上考えないようにしてた。

 でも、アキに会ったら信じないわけない。

「もう寝よう。明日で東京公演ラストなんだし」
「あ? 寝かせるわけねーだろっ。あとで話すっつっただろ。言え」
 目つきで威嚇してくるジュン。さすが元ヤンキー。

 実家に帰ろうとしたらジュンに捕まってシェアハウスに連れてこられ、ジュンの部屋に泊まることになった。
「あんな奇行に走っておいて説明なしかよ」
「・・・結局行かせてくれなかったじゃん」
「あぁ? トモ、お前、全然反省してねーなー。あ?」
「い、いひゃい」
 ベッドの上で座ってるオレの頬をジュンがつねってきた。
「おら。さっさと吐いちゃえよ」
 赤くなった頬をさすりながら、
「・・・変な話だよ? 絶対頭おかしいとか思う」
「それを決めるのはオレだろ。いいから話せって」

 ジュンが真剣な顔で見つめてくるからオレもちゃんと話すことにした。

「ふーん、面白いじゃん」
 話が終わると、黙って聞いていたジュンがぽつりと言ったあとスマホを見つめながら何かを調べ始めた。
「あ、マジだ。何度も夢に見る人物はそのうち現実で出会う人かもしれません・・・だって。他にもいろいろ書いてある。コンサートで見たって奴、夢に出てきたとき怖いとか思った?」
「全然。その逆で覚えてないけど目覚めが良くて、特に落ち込んだ次の日とかはスッキリしてたり、気分がいいっていうか!」
 ジュンがドン引きするどころか、普通に話にのっかってくれるのが嬉しくてついついテンションが上がる。
「・・・ネットの夢占いを見る限り、吉兆じゃん」
「うん! オレも前に調べた時そうだと思った。でも、現実で出会う相手だとか書いてあってもそんなことありえるわけないじゃんて、普通思うよ。だから、全然気にしてなかったんだけど、んー気にしないようにしてたけど、実際、コンサート会場で見かけたら信じちゃうよ」
「・・・運命だって?」
 ジュンに言われ、カッと顔が熱くなる。
「そ、そこまで言ってない! 友達! アキは友達だって! オレのファンで友達! アキも夢の中で言ってたし」
「・・・へー」
 ジュンの目が疑っている。

「夢見てたこと覚えてなかったんだろ。よく本人だってわかったな?」
「最近は断片的に思い出したりぼんやり程度なら。でも、不思議なんだけど見た瞬間、アキだってわかったんだ。名前も忘れてたのに、見た瞬間思い出した。ていうか、いろいろ思い出した! 歌ってる時、夢の中でのアキと話したこととかいろいろ思い出した」
「・・・コンサート中そんなこと思い出してたのかよ」
「そんなことじゃないよ。勝手に蘇ってくるんだからしょうがないじゃん」
 なんか仕事サボってると言われたみたいで腹が立つ。

「あ。もう呟いてる奴がいる。感想程度の拡散だったらウエルカムだけど・・・これ、明日には記事にされっかも」
「え?」
 ジュンが見てる画面を覗きこむと、ツイッターでファンの子たちがオレについて呟きまくっている。
「トモ、投げキッスとかキュンサインとか普段しないもんな。まさかこんなに騒がられるとはな。つーか、俺らメンバーもびっくりした」
「アキと約束してたことを思い出してやった」
「あ?」
「夢の中でアキが目立つようにうちわを作るっていうから、ちゃんと見た証拠を・・・と思ってやった。まさか、投げキッスとこれとは」
 指でキュンサインをしてから、コンサート会場でアキに向かってやったことを思い出し顔が熱くなる。
 
 メンバーのみんなは(意外にジュンもする)やるのに、オレだけ恥ずかしくて今までやったことはなかった。
 オレのファンもわかっててあえてお願いをしてこなかっただけに、さすがアキだなと思ってしまう。
 きっと、試したんだ。
 夢でのことを覚えているかどうか。

「やられた席の奴らみんなすげー黄色い声あげてたもんなー。あれぜってーお前以外のファンも叫んでたぜ?」
「そんなに驚くことかな」
「普段やらない奴だからこそだろ。カイが悔しがってたぜ」
「え? マジ? それならやったかいあった」
「おい」

「約束・・・ていうなら、トモがうちわに書いてあることをしたってことは、お互い同じ夢を見てるっていうことだろ? なんかすげー。ドラマとかにありそうじゃん」
「そう言われるとすごいかも。オレも実はめちゃくちゃびっくりしてる」
「なんかいいじゃん、夢があって」
 フッと目元だけで笑うジュン。
 ときどき見せるジュンの優しい笑顔が見れるのは仲良しの特権だ。
「ジュンはオレの話、信じてくれるんだね。何言ってんのとかドン引きされるかと思った」
「あ? まぁ、その辺の奴ならするかもな。だって、お前、あの時すげーマジな目してたじゃん。マジでファンがいる会場内に飛び込んで行きそうでビビった。その時は頭イカレたんじゃねーかって思った」
 フッと今度は鼻で笑った。(これはムカつく)

「夢で何度も会う奴が会場内にいればそりゃー会いに行くよな。俺も行こうとしたかも」
「でしょ!」
「・・・でもさすがにファンが大勢いる中はなー」
 ゴロンと、敷布団の上に寝転がるジュン。
 オレもベッドに寝転がる。
「あーどうしよう。せっかくのチャンスだったのに」
「ファンなんだろ。明日のコンサートにまたくんじゃね?」
「それは無理でしょ。アキもやっとチケット取れたって喜んでたし」

「そいつ、お前のこと相当好きなんだな」
「え。急になに?」
「夢占いに書いてあんだよ。相手の会いたいという強い思いから夢に出てくることもある・・・て。普通なら怖すぎなファンだろ? 生霊的な?」
「生霊・・・て。いきすぎたファンと一緒にするなよ。アキはそんなんじゃない、と思う。なんか、癒されるっていうか」
「へいへい。あ、生霊じゃなくてもう死んでたりして? 不慮の事故で幽霊になってお前の夢に夜な夜な出てくるとか」
「じゅーん!」
 ケラケラ笑って、オレの反応を見て楽しんでる。

「マジな話、否定するわけじゃねーけど、他人の空似って奴もあんじゃん。あんだけたくさんファンもいたんだしさ」
「それはない。オレ目いいし、コンサート中何度もアキのこと見たし」
「あぁ、だからやたら東側行ってたんだ。2階席ばっか手ぇ振ってたよな?」
「うっ・・・」
 ジュンにバレてたと思うと恥ずかしい。
「ひ、東担当ってことで!」
「あ? じゃー明日からコンサートツァーずっと東担当な」
「なんでだよ」
「東担当なんだろ?」
 寝転びながらニヤリと不敵な笑みを向けてくるジュンにイラっとする。

 ジュンにイライラしてたらふとある提案を思いつく。
「夢かー。マジで夢で会えるなら距離なんて関係ねーよなー」
 どこか上の空で呟くジュンをスルーするして、
「いいこと思いついた! 配信でアキに呼びかけるっていうのはどう?!」
 我ながら良い案だと目を輝かせて言ってみたけど、ジュンが急にむせり出した。
「おっまえ、バカじゃねーの! 受験生で今メンバーの中で一番頭いいくせに、なんだその提案は!! なんでいちいち騒動に発展するようなことばっか考えんだよっ! 干されてーのかっ!」
「なんだよ、そこまで言わなくてもいいじゃん。思い出したんだけど、アキも配信見てくれてるし呼びかけたら答えてくれるかなーって思っただけ」
「クソ単純だな。アキ以外のファン・・・いや、メディアが見てるとかおもわんのか!」
「・・・あ」
 ジュンに諭されハッとする。
「やってみれば? 偽アキがどんだけ出てくるか楽しみだぜ」
 悪い顔で笑うジュンに元ヤンの影が・・・。

「ごめん、今の無し。確かに考えなしだった。思いつくままに言いました」
「反省はしっかりしろよー。そして、勝手に動くなよ。なんかやらかしそうで怖いわ!」
「・・・そこまで言わなくても」
 反省とばかりにうつむいてみせるオレだけど、配信を利用してアキにだけわかる方法がないか考えてみる。

「とりあえず今日はもう寝ようぜ。なんか話聞いてたら俺もアキとかいう奴の顔を拝んでみたくなったから協力してやるよ」
「やった、オレも他になにか思い出したら話すよ。あ、アキって高2だったんだよ! ずっと光喜と同い年くらいだとばかり思っててさー」
「いいから寝ろや」
「・・・わかった」
 ジュンの圧に押され、渋々タオルケットをかけて横になる。
「いつもベッド借りて悪い」
「気にすんな」
 部屋が暗くなるとジュンの寝息がすぐに聞こえてきた。

 オレも目をつぶるけど、思い出したばかりのアキの情報が多すぎて胸がいっぱいで・・・なかなか寝つけなかった。
 ていうか、そのまま朝になるまで起きていた。
 おかげで、ラストの東京公演は終始ハイテンションだった。

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