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「同担OK? or NO?」
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2学期が始まった。
残りの夏休みは剣道部の合宿と試合でほぼ終わった。
予想通り合宿は余計なことを考える暇すらなくひたすら稽古に明け暮れ、9時には夢すら見ずにぐっすり。おかげで、未だに夢の中でトモセくんに会えていない。
会いたい。
この気持ちが日に日に積もっていくけど・・・その前に立ちはだかる壁が、今目の前に。
体育館で行われた始業式が終わった帰り、素通りする男子の視線を浴びながら浜村さんがボクに声をかけてきた。
「ちょっといい?」
ニコッとかわいい笑顔をしてるけど、目が笑っていない。
「え? なになにいつの間に?」
勝手に勘違いをしてる鳥海くんを先に教室に行くように促し、浜村さんと一緒に裏庭へと向かう。
口止めに来ると思っていたけど、2学期の初日から来るとは思ってなかった。もっとこう穏便に・・・だと思っていたけど、有無を言わせない気迫めいた笑顔に穏便の文字はないように感じた。
ボクは同じオタクなんだから仲良くしたい。
口止めされなくても周りに話す気なんて一切ない。
だいたい、自分も隠れオタクなのに人のをバラしたところで自分も危うくなるだけだ。
あれかな? 弱み握られたと思ってるとか? それとも、同じトモセくん推しだから同担拒否とか? それだったらちょっと話が変わりそうだ。
なんて、あれこれ考えていたら裏庭についた。
ベンチの前で立ち止まった浜村さんがクルッとこっちに振り返る。
今日は丸メガネもツインテールもしていない。ゆるふわのロングヘアーをおろしてナチュラルメイクはばっちり。1学期で毎日のように見かけていた浜村さんだ。
ただ、マニキュアの色が水色なのが気になる。(わざとなのかたまたまなのか)
真顔だった浜村さんが一瞬で貼り付けた笑顔に。そして、両手を可愛く顔の前に添えて、
「コンサート会場で会ったことはみんなに秘密にして欲しいのぉー。実はね、うちの妹がどうしてもついて来てほしいってしつこくてぇ。しょうがなく行っただけなのぉー」
オタク丸出しでそのいいわけはだいぶ痛い!(しかも、ボク相手にぶりっこだし)
「えーと・・・」
ボクも合わせて引きつった笑顔を貼り付ける。
ここは穏やかに浜村さんに合わせるべきだよね。
「わかった」と一言いえばこれ以上なにも言ってこなそうだし。
同意してる最中、浜村さんが急にボクのワイシャツの胸ポケットに入っている生徒手帳を指さした。
「そ、そそそこからのぞいているカードっぽいそれは?!」
めちゃくちゃ凝視する浜村さん。(目が血走ってるように見えて怖い)
「えーと・・・これはトモセくんのカードで」
しょうがなく生徒手帳から挟んで入れておいたトモセくんのアクリルカードを取り出す。すると、ものすごい速さで浜村さんに取られた!
「初武道館コンサートの記念に配られた限定カード!! しかもこの衣装のともよんは初日にしか貰えないやつ!! まさか生きてるうちに現物にお目にかかれるなんてぇー-!!」
さっきのぶりっこは吹っ飛び、コンサート会場で見た浜村さんがトモセくんのレアカードに大興奮。
うん、ボクもファンだからわかる。会えないと思ってたものに会えるこの感動!(尊い!)
「まさか、コンサート行ってゲットしたの?!」
「ネットオークションで。けっこう高かったけど頑張りました」
「うそぉー! 私も参戦したかったーぁ!」
「他にもあって」
「え! 待って待って! あたしだって・・・ていうか、フリマとかやってる?」
「やってるよ。 モルカリとか」
「あたしもー! そこでの名前は? そういえば、夏休みのコンサートのグッズなんだけどー」
あれよあれよと浜村さんと会話が弾み、気づけば下校のチャイムが鳴り響いていた。
「うっそ! ヤバッ。 ホームルームサボっちゃった!」
「あちゃー」
2学期初日はお昼で学校が終わる。ボクの場合は部活があるからまだ学校には残るけど。
ふと浜村さんと目が合い、お互い数秒その場で固まる。
トモセくんの話が楽しくてしゃべりすぎて肝心の口止めについて忘れていた。
「えーと・・・もうバレてるからあれだけど。安心して・・・ボクも隠れオタクだから。お口は一生チャックで」
グッと口をつぐんでみせる。
それじゃ、と教室へ戻ろうとしたら浜村さんがストップをかける。
「天野くんのこと信じる」
強い眼差しで言われ、思わず「はい」と返事する。
「あたし・・・ともよんの話できるの妹だけだったの。だから、天野くんと話せて楽しかった!」
「ボクも楽しかった。オタク仲間はいるけど推しが同じな人はいなかったから」
「あたし、同担オッケーだから! 天野くんは?」
「ボクも大丈夫だよ」
「そ、そしたら・・・アドレス交換とかして、くれる?」
チラッと上目遣いでそう言われ、不覚にもドキッとしてしまった。
信じられないけど、モテ女子の浜村さんとオタク仲間になった。
しかも、モルカリでいつも買ってくれる常連さんが浜村さんだったことと、いつも頼りにしている出品者様が浜村さんだったことはお互い大いに驚いた。
残りの夏休みは剣道部の合宿と試合でほぼ終わった。
予想通り合宿は余計なことを考える暇すらなくひたすら稽古に明け暮れ、9時には夢すら見ずにぐっすり。おかげで、未だに夢の中でトモセくんに会えていない。
会いたい。
この気持ちが日に日に積もっていくけど・・・その前に立ちはだかる壁が、今目の前に。
体育館で行われた始業式が終わった帰り、素通りする男子の視線を浴びながら浜村さんがボクに声をかけてきた。
「ちょっといい?」
ニコッとかわいい笑顔をしてるけど、目が笑っていない。
「え? なになにいつの間に?」
勝手に勘違いをしてる鳥海くんを先に教室に行くように促し、浜村さんと一緒に裏庭へと向かう。
口止めに来ると思っていたけど、2学期の初日から来るとは思ってなかった。もっとこう穏便に・・・だと思っていたけど、有無を言わせない気迫めいた笑顔に穏便の文字はないように感じた。
ボクは同じオタクなんだから仲良くしたい。
口止めされなくても周りに話す気なんて一切ない。
だいたい、自分も隠れオタクなのに人のをバラしたところで自分も危うくなるだけだ。
あれかな? 弱み握られたと思ってるとか? それとも、同じトモセくん推しだから同担拒否とか? それだったらちょっと話が変わりそうだ。
なんて、あれこれ考えていたら裏庭についた。
ベンチの前で立ち止まった浜村さんがクルッとこっちに振り返る。
今日は丸メガネもツインテールもしていない。ゆるふわのロングヘアーをおろしてナチュラルメイクはばっちり。1学期で毎日のように見かけていた浜村さんだ。
ただ、マニキュアの色が水色なのが気になる。(わざとなのかたまたまなのか)
真顔だった浜村さんが一瞬で貼り付けた笑顔に。そして、両手を可愛く顔の前に添えて、
「コンサート会場で会ったことはみんなに秘密にして欲しいのぉー。実はね、うちの妹がどうしてもついて来てほしいってしつこくてぇ。しょうがなく行っただけなのぉー」
オタク丸出しでそのいいわけはだいぶ痛い!(しかも、ボク相手にぶりっこだし)
「えーと・・・」
ボクも合わせて引きつった笑顔を貼り付ける。
ここは穏やかに浜村さんに合わせるべきだよね。
「わかった」と一言いえばこれ以上なにも言ってこなそうだし。
同意してる最中、浜村さんが急にボクのワイシャツの胸ポケットに入っている生徒手帳を指さした。
「そ、そそそこからのぞいているカードっぽいそれは?!」
めちゃくちゃ凝視する浜村さん。(目が血走ってるように見えて怖い)
「えーと・・・これはトモセくんのカードで」
しょうがなく生徒手帳から挟んで入れておいたトモセくんのアクリルカードを取り出す。すると、ものすごい速さで浜村さんに取られた!
「初武道館コンサートの記念に配られた限定カード!! しかもこの衣装のともよんは初日にしか貰えないやつ!! まさか生きてるうちに現物にお目にかかれるなんてぇー-!!」
さっきのぶりっこは吹っ飛び、コンサート会場で見た浜村さんがトモセくんのレアカードに大興奮。
うん、ボクもファンだからわかる。会えないと思ってたものに会えるこの感動!(尊い!)
「まさか、コンサート行ってゲットしたの?!」
「ネットオークションで。けっこう高かったけど頑張りました」
「うそぉー! 私も参戦したかったーぁ!」
「他にもあって」
「え! 待って待って! あたしだって・・・ていうか、フリマとかやってる?」
「やってるよ。 モルカリとか」
「あたしもー! そこでの名前は? そういえば、夏休みのコンサートのグッズなんだけどー」
あれよあれよと浜村さんと会話が弾み、気づけば下校のチャイムが鳴り響いていた。
「うっそ! ヤバッ。 ホームルームサボっちゃった!」
「あちゃー」
2学期初日はお昼で学校が終わる。ボクの場合は部活があるからまだ学校には残るけど。
ふと浜村さんと目が合い、お互い数秒その場で固まる。
トモセくんの話が楽しくてしゃべりすぎて肝心の口止めについて忘れていた。
「えーと・・・もうバレてるからあれだけど。安心して・・・ボクも隠れオタクだから。お口は一生チャックで」
グッと口をつぐんでみせる。
それじゃ、と教室へ戻ろうとしたら浜村さんがストップをかける。
「天野くんのこと信じる」
強い眼差しで言われ、思わず「はい」と返事する。
「あたし・・・ともよんの話できるの妹だけだったの。だから、天野くんと話せて楽しかった!」
「ボクも楽しかった。オタク仲間はいるけど推しが同じな人はいなかったから」
「あたし、同担オッケーだから! 天野くんは?」
「ボクも大丈夫だよ」
「そ、そしたら・・・アドレス交換とかして、くれる?」
チラッと上目遣いでそう言われ、不覚にもドキッとしてしまった。
信じられないけど、モテ女子の浜村さんとオタク仲間になった。
しかも、モルカリでいつも買ってくれる常連さんが浜村さんだったことと、いつも頼りにしている出品者様が浜村さんだったことはお互い大いに驚いた。
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