23 / 57
「同担OK? or NO?」
しおりを挟む
2学期が始まった。
残りの夏休みは剣道部の合宿と試合でほぼ終わった。
予想通り合宿は余計なことを考える暇すらなくひたすら稽古に明け暮れ、9時には夢すら見ずにぐっすり。おかげで、未だに夢の中でトモセくんに会えていない。
会いたい。
この気持ちが日に日に積もっていくけど・・・その前に立ちはだかる壁が、今目の前に。
体育館で行われた始業式が終わった帰り、素通りする男子の視線を浴びながら浜村さんがボクに声をかけてきた。
「ちょっといい?」
ニコッとかわいい笑顔をしてるけど、目が笑っていない。
「え? なになにいつの間に?」
勝手に勘違いをしてる鳥海くんを先に教室に行くように促し、浜村さんと一緒に裏庭へと向かう。
口止めに来ると思っていたけど、2学期の初日から来るとは思ってなかった。もっとこう穏便に・・・だと思っていたけど、有無を言わせない気迫めいた笑顔に穏便の文字はないように感じた。
ボクは同じオタクなんだから仲良くしたい。
口止めされなくても周りに話す気なんて一切ない。
だいたい、自分も隠れオタクなのに人のをバラしたところで自分も危うくなるだけだ。
あれかな? 弱み握られたと思ってるとか? それとも、同じトモセくん推しだから同担拒否とか? それだったらちょっと話が変わりそうだ。
なんて、あれこれ考えていたら裏庭についた。
ベンチの前で立ち止まった浜村さんがクルッとこっちに振り返る。
今日は丸メガネもツインテールもしていない。ゆるふわのロングヘアーをおろしてナチュラルメイクはばっちり。1学期で毎日のように見かけていた浜村さんだ。
ただ、マニキュアの色が水色なのが気になる。(わざとなのかたまたまなのか)
真顔だった浜村さんが一瞬で貼り付けた笑顔に。そして、両手を可愛く顔の前に添えて、
「コンサート会場で会ったことはみんなに秘密にして欲しいのぉー。実はね、うちの妹がどうしてもついて来てほしいってしつこくてぇ。しょうがなく行っただけなのぉー」
オタク丸出しでそのいいわけはだいぶ痛い!(しかも、ボク相手にぶりっこだし)
「えーと・・・」
ボクも合わせて引きつった笑顔を貼り付ける。
ここは穏やかに浜村さんに合わせるべきだよね。
「わかった」と一言いえばこれ以上なにも言ってこなそうだし。
同意してる最中、浜村さんが急にボクのワイシャツの胸ポケットに入っている生徒手帳を指さした。
「そ、そそそこからのぞいているカードっぽいそれは?!」
めちゃくちゃ凝視する浜村さん。(目が血走ってるように見えて怖い)
「えーと・・・これはトモセくんのカードで」
しょうがなく生徒手帳から挟んで入れておいたトモセくんのアクリルカードを取り出す。すると、ものすごい速さで浜村さんに取られた!
「初武道館コンサートの記念に配られた限定カード!! しかもこの衣装のともよんは初日にしか貰えないやつ!! まさか生きてるうちに現物にお目にかかれるなんてぇー-!!」
さっきのぶりっこは吹っ飛び、コンサート会場で見た浜村さんがトモセくんのレアカードに大興奮。
うん、ボクもファンだからわかる。会えないと思ってたものに会えるこの感動!(尊い!)
「まさか、コンサート行ってゲットしたの?!」
「ネットオークションで。けっこう高かったけど頑張りました」
「うそぉー! 私も参戦したかったーぁ!」
「他にもあって」
「え! 待って待って! あたしだって・・・ていうか、フリマとかやってる?」
「やってるよ。 モルカリとか」
「あたしもー! そこでの名前は? そういえば、夏休みのコンサートのグッズなんだけどー」
あれよあれよと浜村さんと会話が弾み、気づけば下校のチャイムが鳴り響いていた。
「うっそ! ヤバッ。 ホームルームサボっちゃった!」
「あちゃー」
2学期初日はお昼で学校が終わる。ボクの場合は部活があるからまだ学校には残るけど。
ふと浜村さんと目が合い、お互い数秒その場で固まる。
トモセくんの話が楽しくてしゃべりすぎて肝心の口止めについて忘れていた。
「えーと・・・もうバレてるからあれだけど。安心して・・・ボクも隠れオタクだから。お口は一生チャックで」
グッと口をつぐんでみせる。
それじゃ、と教室へ戻ろうとしたら浜村さんがストップをかける。
「天野くんのこと信じる」
強い眼差しで言われ、思わず「はい」と返事する。
「あたし・・・ともよんの話できるの妹だけだったの。だから、天野くんと話せて楽しかった!」
「ボクも楽しかった。オタク仲間はいるけど推しが同じな人はいなかったから」
「あたし、同担オッケーだから! 天野くんは?」
「ボクも大丈夫だよ」
「そ、そしたら・・・アドレス交換とかして、くれる?」
チラッと上目遣いでそう言われ、不覚にもドキッとしてしまった。
信じられないけど、モテ女子の浜村さんとオタク仲間になった。
しかも、モルカリでいつも買ってくれる常連さんが浜村さんだったことと、いつも頼りにしている出品者様が浜村さんだったことはお互い大いに驚いた。
残りの夏休みは剣道部の合宿と試合でほぼ終わった。
予想通り合宿は余計なことを考える暇すらなくひたすら稽古に明け暮れ、9時には夢すら見ずにぐっすり。おかげで、未だに夢の中でトモセくんに会えていない。
会いたい。
この気持ちが日に日に積もっていくけど・・・その前に立ちはだかる壁が、今目の前に。
体育館で行われた始業式が終わった帰り、素通りする男子の視線を浴びながら浜村さんがボクに声をかけてきた。
「ちょっといい?」
ニコッとかわいい笑顔をしてるけど、目が笑っていない。
「え? なになにいつの間に?」
勝手に勘違いをしてる鳥海くんを先に教室に行くように促し、浜村さんと一緒に裏庭へと向かう。
口止めに来ると思っていたけど、2学期の初日から来るとは思ってなかった。もっとこう穏便に・・・だと思っていたけど、有無を言わせない気迫めいた笑顔に穏便の文字はないように感じた。
ボクは同じオタクなんだから仲良くしたい。
口止めされなくても周りに話す気なんて一切ない。
だいたい、自分も隠れオタクなのに人のをバラしたところで自分も危うくなるだけだ。
あれかな? 弱み握られたと思ってるとか? それとも、同じトモセくん推しだから同担拒否とか? それだったらちょっと話が変わりそうだ。
なんて、あれこれ考えていたら裏庭についた。
ベンチの前で立ち止まった浜村さんがクルッとこっちに振り返る。
今日は丸メガネもツインテールもしていない。ゆるふわのロングヘアーをおろしてナチュラルメイクはばっちり。1学期で毎日のように見かけていた浜村さんだ。
ただ、マニキュアの色が水色なのが気になる。(わざとなのかたまたまなのか)
真顔だった浜村さんが一瞬で貼り付けた笑顔に。そして、両手を可愛く顔の前に添えて、
「コンサート会場で会ったことはみんなに秘密にして欲しいのぉー。実はね、うちの妹がどうしてもついて来てほしいってしつこくてぇ。しょうがなく行っただけなのぉー」
オタク丸出しでそのいいわけはだいぶ痛い!(しかも、ボク相手にぶりっこだし)
「えーと・・・」
ボクも合わせて引きつった笑顔を貼り付ける。
ここは穏やかに浜村さんに合わせるべきだよね。
「わかった」と一言いえばこれ以上なにも言ってこなそうだし。
同意してる最中、浜村さんが急にボクのワイシャツの胸ポケットに入っている生徒手帳を指さした。
「そ、そそそこからのぞいているカードっぽいそれは?!」
めちゃくちゃ凝視する浜村さん。(目が血走ってるように見えて怖い)
「えーと・・・これはトモセくんのカードで」
しょうがなく生徒手帳から挟んで入れておいたトモセくんのアクリルカードを取り出す。すると、ものすごい速さで浜村さんに取られた!
「初武道館コンサートの記念に配られた限定カード!! しかもこの衣装のともよんは初日にしか貰えないやつ!! まさか生きてるうちに現物にお目にかかれるなんてぇー-!!」
さっきのぶりっこは吹っ飛び、コンサート会場で見た浜村さんがトモセくんのレアカードに大興奮。
うん、ボクもファンだからわかる。会えないと思ってたものに会えるこの感動!(尊い!)
「まさか、コンサート行ってゲットしたの?!」
「ネットオークションで。けっこう高かったけど頑張りました」
「うそぉー! 私も参戦したかったーぁ!」
「他にもあって」
「え! 待って待って! あたしだって・・・ていうか、フリマとかやってる?」
「やってるよ。 モルカリとか」
「あたしもー! そこでの名前は? そういえば、夏休みのコンサートのグッズなんだけどー」
あれよあれよと浜村さんと会話が弾み、気づけば下校のチャイムが鳴り響いていた。
「うっそ! ヤバッ。 ホームルームサボっちゃった!」
「あちゃー」
2学期初日はお昼で学校が終わる。ボクの場合は部活があるからまだ学校には残るけど。
ふと浜村さんと目が合い、お互い数秒その場で固まる。
トモセくんの話が楽しくてしゃべりすぎて肝心の口止めについて忘れていた。
「えーと・・・もうバレてるからあれだけど。安心して・・・ボクも隠れオタクだから。お口は一生チャックで」
グッと口をつぐんでみせる。
それじゃ、と教室へ戻ろうとしたら浜村さんがストップをかける。
「天野くんのこと信じる」
強い眼差しで言われ、思わず「はい」と返事する。
「あたし・・・ともよんの話できるの妹だけだったの。だから、天野くんと話せて楽しかった!」
「ボクも楽しかった。オタク仲間はいるけど推しが同じな人はいなかったから」
「あたし、同担オッケーだから! 天野くんは?」
「ボクも大丈夫だよ」
「そ、そしたら・・・アドレス交換とかして、くれる?」
チラッと上目遣いでそう言われ、不覚にもドキッとしてしまった。
信じられないけど、モテ女子の浜村さんとオタク仲間になった。
しかも、モルカリでいつも買ってくれる常連さんが浜村さんだったことと、いつも頼りにしている出品者様が浜村さんだったことはお互い大いに驚いた。
9
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる