ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ

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「もしかして・・・」

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「やっぱり・・・ない、か」
 スマホを片手にバイト先を出る。その足でまだ開いてるであろう本屋へと向かう。
 
 夢の中のトモセくんに爆誕発言をされてから3日目、SNSで情報収集を試みたけど一切それらしい内容は見当たらなかった。
 トモセくんが『まだお披露目されてないから秘密ね』て言ってたのを本気にしてるわけじゃない。自分が創り出した妄想の可能性が高いわけで。
 ただ、自分がど忘れしてるだけで、どこかで見聞きしたかもしれないわけで・・・。

「あ、あった!」

 昨日の夢でトモセくんから原作漫画を教えてもらった。それがBLコーナーの本棚の一角に、今ボクの目の前に存在する。
 ごくりと喉を鳴らし、1巻を手に取る。
 タイトルは『こんな恋心はおかしい?!』漫画家、『真夜中チップス』さん。
「・・・見たことあるような、ないような・・・」

 穴があくくらい表紙を見ても、今初めて見たイラストだ。美紀姉ならBLを読んでるからもしかしたら目にしたことがある・・・かもしれない。それでも、記憶を探っても思い出せないほど曖昧だ。
 人気があるみたいで、陳列されてお試し本も置いてある。7巻まで出ていてあらすじを見る限りまだ続いてるみたいだ。帯にも人気があることをアピールするキャッチコピーが。
 少し迷って1巻だけ買うことに。

 演技の参考にお付き合いごっこをしてほしいと頼まれて、昨日の夢の時は緊張したけど、いつもと変わらずおしゃべりしただけだった。(ただいつもより距離が近かった気がする)
 トモセくんも、確定したというだけでまだ台本を貰ってないからどんな感じでいくかわからないと言ってたし、原作漫画は2巻までしか読んでないって言ってた。
 
 夜道を自転車に乗って家へと向かいながら、最近のトモセくんとのやりとりを思い返す。
 曖昧なことは多いけど、リアルな部分もあって。なにより、ボク自身が知らない情報をトモセくんは知っている。
 さっき買った漫画のことだって・・・。
 ギュッとハンドルを握って、ありえないことを想像する。

 夢で会ってるトモセくんは、実は本物・・・?

 思っていることを頭の中で文字にするけど、ありえないと頭を振って否定する。
 いくらなんでもそんなことありえるわけない。本物が夢の中にってどうやってトモセくん本人が?!

 家に帰宅し、自分の部屋に入るなり買った漫画を手に取る。
「もし、読まずにトモセくんに漫画の内容を聞いて応えられたら・・・」
 ごくり、と喉が鳴るのに喉がカラカラする。心臓だってドキドキしてる。

 コンコンと静かな部屋にドアをノックする音が響く。心臓がドキリと跳ねた。
 はい、と返事をすると美紀姉がドアを開けて入って来た。
「なんだ、帰ってるじゃない。自分の部屋に入る前に声かけてよ」
「ご、ごめん。今行こうと思ってて」
「なに? 何かあったの? て、それ」
 近づいてボクが持っている漫画を覗き込むなり美紀姉がハッとする。
「その漫画、私がすでに持ってる! えー、同じの買ってきたのぉ?! なんで?! 言ってくれたら普通に貸すのにぃ」
「・・・へ?」
「自分で買うくらい気に入ったの? あの時は特に興味なさそうだったのに」
 美紀姉の言葉に目が点になる。
「美紀姉、この漫画持ってるの?」
「え? なによ、今更。だいぶ前に貸したでしょ?」
「そ・・・そうだっけ?」
「えー忘れてたの?! だから同じの買っちゃったのぉ? もったいない! 2巻は貸してあげるから買っちゃダメ」
「う、うん。わかった・・・」
 
 美紀姉が部屋を出ていくと、緊張感が解けて肩の力が一気に抜けていく。
「だ、だよね~」
 漫画を持ったままベッドに倒れこむ。

 まさかすでに読んでいたとは・・・。
 潜在意識、恐るべし!
 
 夢の中で本物のトモセくんに会うなんて、そんなファンタジーなこと起こるわけがなかった。
「あー・・・好きすぎて末期すぎるぅー」
 信じかけてた自分が、ヤバい。

 それにしても、一度読んだのに思い出せないって・・・ボクの記憶力はポンコツなのか。

 自分のふがいなさと、勘違いした恥ずかしさでしばらく悶々としていると、スマホが鳴った。
 あずくんからラインだ。
『チケット取れた』
「・・・へ?」

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