16 / 57
「夢の中の推し」1/2
しおりを挟む「無理だったー!!」
バターンと勢いよくベッドに寝転がる。
クーラーが効いた自分の部屋で、コンサートチケットが1枚も当選しなかったことに撃沈する。
今は夏休み中。
トモセくんの熱愛騒動はすっかり消え、平穏な日々。
三上愛瑠ちゃんの一部過激なファンたちがトモセくんの公式ブログを炎上させたこともあったけど、それもなんとか収まったみたいだ。
トモセくんは配信で話してくれたとおり、9月まではコンサート以外の芸能活動をお休みにしている。ちなみに、配信もお休み。(寂しすぎる)
最初は配信は続けると言ってたけど、受験に集中したいと変更したのは多分ブログ炎上以上のトラブルを避けるため・・・とファンは言ってるけど、実際はわからない。
ちなみにボクの夏休みは去年と一緒。
午前中は部活、午後はバイト、以上。
少し変化があるといえば、3年が引退したからその引継ぎでボクは副部長になった。部長は女子だけどボクより漢らしくて夏休み中に行われる剣道の大会で優勝候補だったりする。
おかげで練習メニューがハードになって毎日筋肉痛だ。
バイト先は短期の新人さんが入ってー・・・と、こんな平凡すぎる夏休みでいいのだろうか。
「配信で会えない分、コンサートがなによりの楽しみだったのに。ボクの日々の励みだったのにぃー」
神様、あんまりだ。
枕に突っ伏して半べそかいてると、あずくんからラインが。
『僕も撃沈。こーなったらコネを使うしかない』
へ? コネ?
それはいわゆる、あずくんのお姉さんのことだろうか。
お姉さんのことをよく思っていないあずくんが、お姉さんにお願いをするとはとうてい思えない。
ラインで聞いてみるけど、返事が返ってこなくなった。
「ダメだー、今年の夏休みは終わったー」
ボスッとスマホをベッドに投げ、そのまま睡魔に負けて寝落ちした。
「うわっ、電気つけたまま寝ちゃった!」
ガバッと起き上がると、そこは自分の部屋じゃなく白い世界の夢の中だった。
「寝ちゃったことには変わりないか」
ふぅとため息をついて立ち上がる。
「アキ」
青い声に呼ばれ、顔を上げるとトモセくんが少し先の方で座っていた。
そうだ!
コンサートで会えないけど、ボクには夢の中でトモセくんに会える!
ぱぁぁと希望の光が心に差し込む。
「珍しいですね。ボクより先にいるなんて」
駆け寄ると、大好きなトモセくんのはずなのに何かがおかしい。
「どうかした? アキ」
「あ、えーと・・・なんていうか」
違和感がなんなのかじっと見つめるボクに、トモセくんが戸惑った笑顔を浮かべる。
昨日は会えなかったから1日ぶりになる。一昨日(おととい)にはなかった違和感とは。
今日のトモセくんはTシャツに短パンと、夏らしい格好だ。ボクと変わらない格好だからアイドルを取れば本当に男子友達だ。
「すみません、ボクの気のせい・・・」
ボクの気のせいだと言いかかけたところで、トモセくんがやたらと髪を撫でつけてることに違和感が。これか?
「あ! トモセくんの髪が!!」
びっくりしすぎて思わず推しに向かって指をさしてしまった。
気づかれたことにトモセくんがバツが悪そうな顔で、
「跳ねてるのわかる? 家にいるからってアイロンしてなくて」
手を放すと、毛先が跳ねた。
よく見ると、いつものストレートヘアーじゃなくて、全体的に毛先が跳ねている。
か、かわいいー!!
柔らかそうな髪が跳ねてて、まるで、軽くパーマをかけてるように見える。
触りたいっ。クシャクシャってしたいっ。
「き、今日は仕事だったんですか? モデルの撮影とか」
「違うよ、この髪型地毛なんだ。ネコっ毛に毛先が跳ねてて・・・。嫌だからいつもアイロンで真っすぐにしてるんだけど、家にいる時は面倒くさいからこのままなんだ」
「もったいない!」
「え?」
「すごく似合ってますよ! 癒し系のトモセくんにぴったり!」
「・・・そう、かな」
「はい!」
戸惑っていたトモセくんの顔が少し照れて、ありがとうと言いながら微笑んでくれた。(尊いっ)
それにしても痛恨のミス。トモセくんの地毛がネコっ毛&くせ毛だったとは。
でも、こうやって夢の中で見れてるわけだから、自分で忘れているだけで情報としては知っているはず。
目が覚めたら久しぶりにトモセくんデータファイルで確認しよう。
8
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
続・聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。
あらすじ
異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる