9 / 57
「落ち込む日もある」2/2
しおりを挟む
「あー最悪だぁ。完全にやらかしたぁ」
ボフッとベッドに倒れこみ、枕に顔をうずめる。
打ちのめされた心のまま、疲労が一気に溢れだし眠りへと落ちていく。
パチッと目を覚ますと、そこは真っ白な夢の中。
慌てて飛び起きると、制服姿のままの自分に気づく。
「うわぁヤバイ! バイトから帰ってきてそのまま寝ちゃったんだ。あーもう、最悪だぁ。制服にシワができるよぉ。直すの大変なんだよなぁ」
しょんぼりしていると、
「アキ?」
「え? ・・・え!」
振り返るとトモセくんがこっちに近づいてくる姿が。
サーッと体の血が一気に引いていくのが夢の中なのにリアルに感じる。
無理。無理無理無理無理ー! 推しに、部活とバイトの汗まみれ&疲れきった顔を見せるなんて!! せめて、風呂くらい入ってから寝ればよかった!(ボクのバカぁ)
風呂・・・? 風呂っっー-!!
風呂に入っていない事実に、自分で言った言葉に気づかされ打ちのめされる。
腕の匂いを嗅ぎながら汗臭ささをチェック。頭もボサボサだ。
バイトで失敗したのが尾を引いてるからって推しに会えることをすっかり忘れて寝ちゃうなんて!
今日はなんでこんなにツイてないんだろう。
白い地面に両手をついて半泣き状態のボクに、トモセくんがボクの前に立ってそのまましゃがみこむ。
「あれ? 今日はなんか雰囲気が違うと思ったら服が違うんだ。それ、制服?」
「・・・身勝手ながら、今日はボクが見えてないということにしてください」
顔をあげることなく、その場でダンゴムシのように体を丸くして存在を消そうと試みる。
「・・・」
くすくすとトモセくんの笑う声に、さすがに無理があったと恥ずかしくなる。(尊い)
「なんかあった?」
トモセくんの優しい青い声に救われる。
「・・・風呂入ってないんです。汗臭いと思うし、パンケーキの匂いも。だから、ボクから離れたほうが・・・」
「んー? 別に臭くないけど?」
「へ?」
顔を上げると、目の前にトモセくんの顔がっ!(近っ!)
大慌てで後ろに下がってトモセくんから距離をとる。
「うわぁぁぁ、無理無理無理! ていうか、本当に汗臭いんで!」
「大丈夫、本当に匂わないから」
ニコッと笑顔を向けるトモセくんに、もう一度腕を嗅いでみると臭くない。どうやらそう思い込んでいただけだったみたいだ。
ここは夢の中。さすがに匂いまではしないらしい。それなら、格好もアニメみたいに同じ服装に統一するとかにしてほしい。
なんで、格好だけ反映するんだろう。
またしょんぼりしていると、
「パンケーキって?」
「えーと、バイト先がパンケーキ専門店なんです。ボク、最初はホール希望だったんですけど、家でも料理するって言ったら調理にまわされて。だから、バイト先ではパンケーキばっかり焼いてるんで、帰る頃には甘い匂いが体に染みついちゃうんです」
「そうなんだ」
「・・・男が甘い匂いさせてるなんて気持ち悪いですよね」
「え? なんで? オレ、パンケーキ好きだから甘い匂いしてたら絶対お腹すきそう」
トモセくんの言葉に、推し活センサーが反応する。
「知ってます!! 一時期ハマって、メンバーで仲のいいジュンくんとパンケーキの食べ歩きしたって某雑誌のインタビューに書いてありました! ボク、それを見て今のバイト先に決めたんです! 働いてたらもしかしてトモセくんが食べに来てくれるかなぁ、なんて・・・そんなことないんですけどね」
しょんぼりしてたのに急にハイテンションでペラペラしゃべるから、トモセくんがびっくりした顔をしている。
「わぁぁ、ごめんなさい」
ヤバイ、やらかしたぁ。
女子に言われたら可愛いですむけど、こんな冴えないDKに言われてもさすがの心の広いトモセくんでもキモイって思うかも。
クスッと笑う、トモセくん。
「よく知ってるね! 確か去年のアイドル特集かなんかの雑誌インタビューだった気がする。ちょうどジュンとパンケーキにハマってて。ジュン、ヤンキー担当やってるけどめちゃくちゃ甘いもの好きなんだよね」
「し、知ってます。朝からチョコレートケーキのフォールをひとりで食べれるんですよね?」
「そう!」
あはははとトモセくんが楽しそうに笑う。(天使降臨ー!!)
トモセくんはメンバーの中で控えめな方で、バラエティ番組に出てもほとんどしゃべることなく番組が終わる・・・なんてしょっちゅうだ。
省エネアイドルとか草食男子とか呼ばれているから、今ボクの目の前で声を出して笑ってくれるトモセくんは貴重すぎる!
「あの、去年のことまで覚えてるボクってキモくないですか? 男のファンだし」
トモセくんの笑顔が一瞬で消えた。
あーまたやらかしちゃった。今日のボクはどうかしてる。
「キモくないよ。めちゃくちゃ嬉しい。可愛い女の子じゃなくて残念とかいう人もいるかもしれないけど、オレは同性のファンに憧られたり、応援してもらえるって同じ男として認めてもらったみたいで嬉しいし、自信がつく」
「・・・トモセくん」
まっすぐボクの目を見てくれるトモセくんに、じーんと胸が熱くなる。
まるで、ステージから大勢のファンの中からボクを見つけてもらったみたいな。
「ボク・・・今日バイトでミスしちゃって、お客さん怒らせちゃったんです。ダメですよね、失敗するとどんどん悪い方に考えちゃって。過去の嫌なことまで思い出しちゃって・・・」
キモいなんて、トモセくんが思うはずないのに。小6の時に言われた言葉だったのに。
うつむくボクの両手を優しく手にとって、トモセくんが両手で包みこむ。
へ?!!!
「いつも応援してくれてありがとう。去年のことまで、メンバーのことまで覚えててくれてありがとう。アキのおかげでアイドル活動頑張れてる。これからも一緒に頑張ろう」
「・・・と、トモセくん」
二度目の推しのまっすぐな瞳に、ボクのクヨクヨした心がやっと吹っ飛んだ。
贅沢すぎる、ファンサっっっ!!!
ぎゅっとトモセくんの大きくてキレイな手を握り返し、
「が、頑張りまっす!! もう何があってもトモセくんのファンでい続けます!」
わーんと今にも泣きそうなテンションで盛り上がる。
「ご、ごめん。これくらいしか励まし方思いつかなくて」
情けない笑顔を浮かべるトモセくんにキュンキュンしかしないっ!
「一生ついていきまーすっっ!」
「元気、出ました?」
ボクの顔を覗きこみながら、控えめに聞いてくるトモセくんに首が折れるくらい縦に大きく振って頷く。
「よかった」
ホッとした笑顔のトモセくん。
最&高すぎるー!!
ボフッとベッドに倒れこみ、枕に顔をうずめる。
打ちのめされた心のまま、疲労が一気に溢れだし眠りへと落ちていく。
パチッと目を覚ますと、そこは真っ白な夢の中。
慌てて飛び起きると、制服姿のままの自分に気づく。
「うわぁヤバイ! バイトから帰ってきてそのまま寝ちゃったんだ。あーもう、最悪だぁ。制服にシワができるよぉ。直すの大変なんだよなぁ」
しょんぼりしていると、
「アキ?」
「え? ・・・え!」
振り返るとトモセくんがこっちに近づいてくる姿が。
サーッと体の血が一気に引いていくのが夢の中なのにリアルに感じる。
無理。無理無理無理無理ー! 推しに、部活とバイトの汗まみれ&疲れきった顔を見せるなんて!! せめて、風呂くらい入ってから寝ればよかった!(ボクのバカぁ)
風呂・・・? 風呂っっー-!!
風呂に入っていない事実に、自分で言った言葉に気づかされ打ちのめされる。
腕の匂いを嗅ぎながら汗臭ささをチェック。頭もボサボサだ。
バイトで失敗したのが尾を引いてるからって推しに会えることをすっかり忘れて寝ちゃうなんて!
今日はなんでこんなにツイてないんだろう。
白い地面に両手をついて半泣き状態のボクに、トモセくんがボクの前に立ってそのまましゃがみこむ。
「あれ? 今日はなんか雰囲気が違うと思ったら服が違うんだ。それ、制服?」
「・・・身勝手ながら、今日はボクが見えてないということにしてください」
顔をあげることなく、その場でダンゴムシのように体を丸くして存在を消そうと試みる。
「・・・」
くすくすとトモセくんの笑う声に、さすがに無理があったと恥ずかしくなる。(尊い)
「なんかあった?」
トモセくんの優しい青い声に救われる。
「・・・風呂入ってないんです。汗臭いと思うし、パンケーキの匂いも。だから、ボクから離れたほうが・・・」
「んー? 別に臭くないけど?」
「へ?」
顔を上げると、目の前にトモセくんの顔がっ!(近っ!)
大慌てで後ろに下がってトモセくんから距離をとる。
「うわぁぁぁ、無理無理無理! ていうか、本当に汗臭いんで!」
「大丈夫、本当に匂わないから」
ニコッと笑顔を向けるトモセくんに、もう一度腕を嗅いでみると臭くない。どうやらそう思い込んでいただけだったみたいだ。
ここは夢の中。さすがに匂いまではしないらしい。それなら、格好もアニメみたいに同じ服装に統一するとかにしてほしい。
なんで、格好だけ反映するんだろう。
またしょんぼりしていると、
「パンケーキって?」
「えーと、バイト先がパンケーキ専門店なんです。ボク、最初はホール希望だったんですけど、家でも料理するって言ったら調理にまわされて。だから、バイト先ではパンケーキばっかり焼いてるんで、帰る頃には甘い匂いが体に染みついちゃうんです」
「そうなんだ」
「・・・男が甘い匂いさせてるなんて気持ち悪いですよね」
「え? なんで? オレ、パンケーキ好きだから甘い匂いしてたら絶対お腹すきそう」
トモセくんの言葉に、推し活センサーが反応する。
「知ってます!! 一時期ハマって、メンバーで仲のいいジュンくんとパンケーキの食べ歩きしたって某雑誌のインタビューに書いてありました! ボク、それを見て今のバイト先に決めたんです! 働いてたらもしかしてトモセくんが食べに来てくれるかなぁ、なんて・・・そんなことないんですけどね」
しょんぼりしてたのに急にハイテンションでペラペラしゃべるから、トモセくんがびっくりした顔をしている。
「わぁぁ、ごめんなさい」
ヤバイ、やらかしたぁ。
女子に言われたら可愛いですむけど、こんな冴えないDKに言われてもさすがの心の広いトモセくんでもキモイって思うかも。
クスッと笑う、トモセくん。
「よく知ってるね! 確か去年のアイドル特集かなんかの雑誌インタビューだった気がする。ちょうどジュンとパンケーキにハマってて。ジュン、ヤンキー担当やってるけどめちゃくちゃ甘いもの好きなんだよね」
「し、知ってます。朝からチョコレートケーキのフォールをひとりで食べれるんですよね?」
「そう!」
あはははとトモセくんが楽しそうに笑う。(天使降臨ー!!)
トモセくんはメンバーの中で控えめな方で、バラエティ番組に出てもほとんどしゃべることなく番組が終わる・・・なんてしょっちゅうだ。
省エネアイドルとか草食男子とか呼ばれているから、今ボクの目の前で声を出して笑ってくれるトモセくんは貴重すぎる!
「あの、去年のことまで覚えてるボクってキモくないですか? 男のファンだし」
トモセくんの笑顔が一瞬で消えた。
あーまたやらかしちゃった。今日のボクはどうかしてる。
「キモくないよ。めちゃくちゃ嬉しい。可愛い女の子じゃなくて残念とかいう人もいるかもしれないけど、オレは同性のファンに憧られたり、応援してもらえるって同じ男として認めてもらったみたいで嬉しいし、自信がつく」
「・・・トモセくん」
まっすぐボクの目を見てくれるトモセくんに、じーんと胸が熱くなる。
まるで、ステージから大勢のファンの中からボクを見つけてもらったみたいな。
「ボク・・・今日バイトでミスしちゃって、お客さん怒らせちゃったんです。ダメですよね、失敗するとどんどん悪い方に考えちゃって。過去の嫌なことまで思い出しちゃって・・・」
キモいなんて、トモセくんが思うはずないのに。小6の時に言われた言葉だったのに。
うつむくボクの両手を優しく手にとって、トモセくんが両手で包みこむ。
へ?!!!
「いつも応援してくれてありがとう。去年のことまで、メンバーのことまで覚えててくれてありがとう。アキのおかげでアイドル活動頑張れてる。これからも一緒に頑張ろう」
「・・・と、トモセくん」
二度目の推しのまっすぐな瞳に、ボクのクヨクヨした心がやっと吹っ飛んだ。
贅沢すぎる、ファンサっっっ!!!
ぎゅっとトモセくんの大きくてキレイな手を握り返し、
「が、頑張りまっす!! もう何があってもトモセくんのファンでい続けます!」
わーんと今にも泣きそうなテンションで盛り上がる。
「ご、ごめん。これくらいしか励まし方思いつかなくて」
情けない笑顔を浮かべるトモセくんにキュンキュンしかしないっ!
「一生ついていきまーすっっ!」
「元気、出ました?」
ボクの顔を覗きこみながら、控えめに聞いてくるトモセくんに首が折れるくらい縦に大きく振って頷く。
「よかった」
ホッとした笑顔のトモセくん。
最&高すぎるー!!
8
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
バズる間取り
福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。
自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき……
すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる