ボクの推しアイドルに会える方法

たっぷりチョコ

文字の大きさ
上 下
8 / 57

「落ち込む日もある」1/2

しおりを挟む

 自転車をこぎながらスマホであずくんとビデオ通話をする。
「本当に握手もサインもしてもらったんだよ! 夢だけど!」
「はぁ?」
 朝から興奮してハイテンションなボクとは違い、あずくんはいたってクール。というより、機嫌が悪い。
 自転車のハンドルバーにスマホホルダーで固定されているスマホにあずくんの仏頂面が映る。

「もぉーあずくんのおかげだよぉ!」
「・・・マジでやるとは思わなかった」
「へ?」
「なんでもない。よかったじゃん、叶って」
「うん!」
 満面の笑みを浮かべると、あずくんが少し照れた。
「でもさ、目が覚めたら書いてもらったはずのサインが消えてるなんて、むなしくない?」
「・・・大丈夫。見えないけどボクの心の中では確かにサインは存在するから!」
「そりゃよかったな。Tシャツちゃんと洗えよ」
 どうでもいい顔で言われた。
「ごめん、朝から」
「今更!」

 あずくんが逆切れしたところで高校に到着する。
「ごめん、もう切るね。朝から電話に出てくれてありがとう」
「・・・スマホに映ってるの、高校?」
「うん、そうだよ」
 駐輪場に自転車を停めながらスマホホルダーからスマホをはずし、周辺の景色をあずくんに見せる。
「・・・アキって都立だっけ?」
「うん、家から通えるから決めたところだけど、わりと居心地いいよ。1年から選択教科が充実してるし、部活も盛んだよ」
「へー」
「あずくんがうちの高校に入学してくれたら楽しそうだなぁ。今日みたいに電話で話すことも、学校に来たら会って話せるよ」
「うざそう・・・」
「はは、そうだね」
 うざいって言われた。やっぱり、朝の電話は迷惑だったかな。次からは気をつけよう。(しょんぼり)
「・・・同じ高校に通えたらって、本当にそう思ってる?」
「え? うん、もちろん! 思ってるよ」
「・・・そもそも僕、横浜だから都立受験できないし。あ、僕も中学着いた。じゃ、そのテンションで教室に入るなよ。アイドル好き全開なんて間違っても引かれるから」
「・・・もちろん、アイドルなんて一切知りません」
「同じく」
 ふたりしてキリッとした目つきでそう言うなりビデオ通話を切った。

 トモセくん、知らないなんて言ってごめん。

 踏み絵を泣く泣く踏む隠れ信者のように、ボクたち隠れオタクは『普通のDK』にコスプレして慎ましく生きるのだ。

 心の中で謝りながら、よし、と気持ちの切り替えをして校舎へと向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...