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「落ち込む日もある」1/2
しおりを挟む自転車をこぎながらスマホであずくんとビデオ通話をする。
「本当に握手もサインもしてもらったんだよ! 夢だけど!」
「はぁ?」
朝から興奮してハイテンションなボクとは違い、あずくんはいたってクール。というより、機嫌が悪い。
自転車のハンドルバーにスマホホルダーで固定されているスマホにあずくんの仏頂面が映る。
「もぉーあずくんのおかげだよぉ!」
「・・・マジでやるとは思わなかった」
「へ?」
「なんでもない。よかったじゃん、叶って」
「うん!」
満面の笑みを浮かべると、あずくんが少し照れた。
「でもさ、目が覚めたら書いてもらったはずのサインが消えてるなんて、むなしくない?」
「・・・大丈夫。見えないけどボクの心の中では確かにサインは存在するから!」
「そりゃよかったな。Tシャツちゃんと洗えよ」
どうでもいい顔で言われた。
「ごめん、朝から」
「今更!」
あずくんが逆切れしたところで高校に到着する。
「ごめん、もう切るね。朝から電話に出てくれてありがとう」
「・・・スマホに映ってるの、高校?」
「うん、そうだよ」
駐輪場に自転車を停めながらスマホホルダーからスマホをはずし、周辺の景色をあずくんに見せる。
「・・・アキって都立だっけ?」
「うん、家から通えるから決めたところだけど、わりと居心地いいよ。1年から選択教科が充実してるし、部活も盛んだよ」
「へー」
「あずくんがうちの高校に入学してくれたら楽しそうだなぁ。今日みたいに電話で話すことも、学校に来たら会って話せるよ」
「うざそう・・・」
「はは、そうだね」
うざいって言われた。やっぱり、朝の電話は迷惑だったかな。次からは気をつけよう。(しょんぼり)
「・・・同じ高校に通えたらって、本当にそう思ってる?」
「え? うん、もちろん! 思ってるよ」
「・・・そもそも僕、横浜だから都立受験できないし。あ、僕も中学着いた。じゃ、そのテンションで教室に入るなよ。アイドル好き全開なんて間違っても引かれるから」
「・・・もちろん、アイドルなんて一切知りません」
「同じく」
ふたりしてキリッとした目つきでそう言うなりビデオ通話を切った。
トモセくん、知らないなんて言ってごめん。
踏み絵を泣く泣く踏む隠れ信者のように、ボクたち隠れオタクは『普通のDK』にコスプレして慎ましく生きるのだ。
心の中で謝りながら、よし、と気持ちの切り替えをして校舎へと向かう。
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