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好きすぎて
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ボクの場合、好きすぎると夢で逢えるらしい。
パチッと目を覚ます。
体は軽い。足はついてないみたいにふわふわする。
服は着ている。風呂から出てきた時に着たいつものTシャツとスェットパンツだ。
ついでに髪も生えてる。焦げ茶色の髪が耳を隠している。
あたりを見回すと、白い。真っ白だ。
足元も白い。どこを見ても白い。何もない空間だ。
あーそっか。ここは夢だ。
ボクはうなずく。
ここ1週間、ほぼ毎日のように見る夢だ。
状況がだんだん呑み込めてきたところで、遠くからうっすら人影がおぼろげに見えてくる。
それは少しずつこっちに近づいてきて、姿が特定できるまでの距離になったところでボクの心臓が跳ね上がる。
「アキ、今日の歌番組観てくれた?」
175センチの彼がボクに向かって爽やかに微笑む。手まで振って。
すごい勢いで見えない矢がボクのハート型の心臓にグサッと刺さる。
あぁ、今夜も尊い!
ボクの推しアイドルが最&高すぎる!!
夢の中なら矢もこのハート型の心臓も形になって見えてもいいくらいだ。
そうすればトモセくんの笑顔がどれだけファンにとって破壊力があるのかわかってもらえるのに。
その場でよろめくボクをトモセくんが慌てて両手をつかんで引き寄せる。
勢いよく推しの胸に飛び込み、165センチの小柄なボクは175センチの身長にすっぽりおさまってしまった。
「う、うわぁぁぁー!!!」
弾けるように離れて地面に頭をついて土下座をする。
「あわわわ、こここんなボクがトモセくんの胸にっっ!! わぁぁー無理無理! ごめんなさいっ!」
ラッキーハプニングすぎて、もう自分でも何を言ってるのか。
クスクスと笑う声に気づき顔を上げると、推しがボクの目の前でしゃがみこんでいた。
「いったん落ち着こう?」
気遣っている笑顔に心がホッとする。
「は・・・はい」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。ここは夢の中なんだからできたりしないかな。
手を差し出され、ボクは当たり前のように丁重に拒否った。
するとトモセくんがその場でゴロンと横になる。
「アキも」と地面をポンポン叩いて誘ってくれる。
あぁ、ファンの皆様、推しの隣に添い寝することをお許しください。
「し、失礼します」
遠慮がちにトモセくんの横に寝転がる。
あぁ、このままボクの命が尽きても構いません。
「毎日のように会ってるのにアキは慣れないね、オレに」
青い声が耳に届く。(尊すぎる)
「慣れるなんて無理無理。無理です」
こうやって横で一緒に寝転がってるだけでも鼻血ものなのに、慣れるって・・・。
「歌番組観てくれた? もしかしてバイトだった?」
推しがボクのバイトを把握していることに感動。両手で顔を覆って、たった今トモセくんが言った言葉を何度も頭の中で数回する。
「聞いてる?」
ボクの肩をツンツン突っつく。(マジ尊い)
「聞いてます」
「・・・全然こっち見ないね?」
「無理です」
「こっち向かない? 会話しずらいよ?」
「無理です」
「チラッとでいいから」
「無理無理無理、無理です」
両手で覆ったまま首を横に振る。
「・・・悲しいな。ファンに冷たくされた」
「えっ! わーごめんなさい!! そんなつもりじゃないんです! トモセくんが隣にいるだけでもしんどいのに顔を合わせるなんてっっ!」
慌てて謝りながらトモセくんの方へと向きを変える。
「やっと目が合った」
ニコッと微笑むトモセくん。(尊すぎて死す)
夢とはいえ、贅沢すぎる。一生分の運を今この瞬間に使い果たしてるに違いない。
トモセくんと見つめ合い、添い寝をする。
緊張しすぎて体が接着剤で固定されたように動かない。
トモセくんはすでにボクに慣れているのか、ボクに対しての不信感も警戒心もない自然な表情を見せてくれる。
テレビの中のトモセくんと一緒だ。
違うのは服がきらびやかなかわいい衣装じゃなくて、学校の制服なのか、ワイシャツと緑のチェック柄ズボンだ。(似合ってるから文句なし)
「今日、歌番でやらかしちゃった」
仰向きになったトモセくんが真っ白な天井を眺めながらつぶやくように言った。
きっと落ち込んでるんだろう、その横顔がキレイで尊い。
でも、推しにはいつも笑っていてほしい。
「実はその場面、ファンの中でバズってるんですよ」
「え?! なんで?!」
弾けるようにこっちに向き直るトモセくんにボクの心臓が飛び跳ねる。
恥ずかしくて視線をそらしつつ、
「ジュンくんと被っててかわいいって。イントロのところでダンスしながら隣にいるジュンくんの前に出ちゃって被っちゃったところですよね? あれ、カメラにばっちり映ってましたけど、そのあとジュンくんに謝ってる姿がかわいいーて。ジュンくんのファンもジュンくんのあんまり見れない笑顔見れてラッキーて、SNSでバズってます」
「うわー知らなかった。恥い。でも、やらかしたと思ってたから逆に喜んでもらえて嬉しい」
照れながらトモセくんがはにかむ。(尊い)
「あの! 今日の歌番観ました! トモセくんのキレッキレのダンス、めっちゃかっこよかったです!」
寝ながらガッツポーズをとって推しにありったけの想いをこめる。
緊張するけど、これだけは目をそらして言ったら嘘になっちゃうから、ちゃんと目を合わせて。
「ありがとう、アキ」
ニコッと優しく微笑んでくれる推しに、ボクの心がきゅーっと締め付けられる。
「アキのおかげで元気でた」
「・・・応援してます! ずっとずっと」
ボクの気持ちに応えるようにもう一度優しくニコッと微笑む〝ボクの推しアイドル〟
こんなふうに応援している推しに自分の気持ちを伝えられるなんて、夢みたいだ。
推しに見つめられながら、このままずっと・・・。
耳元でアラームが響く。
パチリと目が覚め、そこは自分の部屋だった。
ーあとがきー
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします。
パチッと目を覚ます。
体は軽い。足はついてないみたいにふわふわする。
服は着ている。風呂から出てきた時に着たいつものTシャツとスェットパンツだ。
ついでに髪も生えてる。焦げ茶色の髪が耳を隠している。
あたりを見回すと、白い。真っ白だ。
足元も白い。どこを見ても白い。何もない空間だ。
あーそっか。ここは夢だ。
ボクはうなずく。
ここ1週間、ほぼ毎日のように見る夢だ。
状況がだんだん呑み込めてきたところで、遠くからうっすら人影がおぼろげに見えてくる。
それは少しずつこっちに近づいてきて、姿が特定できるまでの距離になったところでボクの心臓が跳ね上がる。
「アキ、今日の歌番組観てくれた?」
175センチの彼がボクに向かって爽やかに微笑む。手まで振って。
すごい勢いで見えない矢がボクのハート型の心臓にグサッと刺さる。
あぁ、今夜も尊い!
ボクの推しアイドルが最&高すぎる!!
夢の中なら矢もこのハート型の心臓も形になって見えてもいいくらいだ。
そうすればトモセくんの笑顔がどれだけファンにとって破壊力があるのかわかってもらえるのに。
その場でよろめくボクをトモセくんが慌てて両手をつかんで引き寄せる。
勢いよく推しの胸に飛び込み、165センチの小柄なボクは175センチの身長にすっぽりおさまってしまった。
「う、うわぁぁぁー!!!」
弾けるように離れて地面に頭をついて土下座をする。
「あわわわ、こここんなボクがトモセくんの胸にっっ!! わぁぁー無理無理! ごめんなさいっ!」
ラッキーハプニングすぎて、もう自分でも何を言ってるのか。
クスクスと笑う声に気づき顔を上げると、推しがボクの目の前でしゃがみこんでいた。
「いったん落ち着こう?」
気遣っている笑顔に心がホッとする。
「は・・・はい」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。ここは夢の中なんだからできたりしないかな。
手を差し出され、ボクは当たり前のように丁重に拒否った。
するとトモセくんがその場でゴロンと横になる。
「アキも」と地面をポンポン叩いて誘ってくれる。
あぁ、ファンの皆様、推しの隣に添い寝することをお許しください。
「し、失礼します」
遠慮がちにトモセくんの横に寝転がる。
あぁ、このままボクの命が尽きても構いません。
「毎日のように会ってるのにアキは慣れないね、オレに」
青い声が耳に届く。(尊すぎる)
「慣れるなんて無理無理。無理です」
こうやって横で一緒に寝転がってるだけでも鼻血ものなのに、慣れるって・・・。
「歌番組観てくれた? もしかしてバイトだった?」
推しがボクのバイトを把握していることに感動。両手で顔を覆って、たった今トモセくんが言った言葉を何度も頭の中で数回する。
「聞いてる?」
ボクの肩をツンツン突っつく。(マジ尊い)
「聞いてます」
「・・・全然こっち見ないね?」
「無理です」
「こっち向かない? 会話しずらいよ?」
「無理です」
「チラッとでいいから」
「無理無理無理、無理です」
両手で覆ったまま首を横に振る。
「・・・悲しいな。ファンに冷たくされた」
「えっ! わーごめんなさい!! そんなつもりじゃないんです! トモセくんが隣にいるだけでもしんどいのに顔を合わせるなんてっっ!」
慌てて謝りながらトモセくんの方へと向きを変える。
「やっと目が合った」
ニコッと微笑むトモセくん。(尊すぎて死す)
夢とはいえ、贅沢すぎる。一生分の運を今この瞬間に使い果たしてるに違いない。
トモセくんと見つめ合い、添い寝をする。
緊張しすぎて体が接着剤で固定されたように動かない。
トモセくんはすでにボクに慣れているのか、ボクに対しての不信感も警戒心もない自然な表情を見せてくれる。
テレビの中のトモセくんと一緒だ。
違うのは服がきらびやかなかわいい衣装じゃなくて、学校の制服なのか、ワイシャツと緑のチェック柄ズボンだ。(似合ってるから文句なし)
「今日、歌番でやらかしちゃった」
仰向きになったトモセくんが真っ白な天井を眺めながらつぶやくように言った。
きっと落ち込んでるんだろう、その横顔がキレイで尊い。
でも、推しにはいつも笑っていてほしい。
「実はその場面、ファンの中でバズってるんですよ」
「え?! なんで?!」
弾けるようにこっちに向き直るトモセくんにボクの心臓が飛び跳ねる。
恥ずかしくて視線をそらしつつ、
「ジュンくんと被っててかわいいって。イントロのところでダンスしながら隣にいるジュンくんの前に出ちゃって被っちゃったところですよね? あれ、カメラにばっちり映ってましたけど、そのあとジュンくんに謝ってる姿がかわいいーて。ジュンくんのファンもジュンくんのあんまり見れない笑顔見れてラッキーて、SNSでバズってます」
「うわー知らなかった。恥い。でも、やらかしたと思ってたから逆に喜んでもらえて嬉しい」
照れながらトモセくんがはにかむ。(尊い)
「あの! 今日の歌番観ました! トモセくんのキレッキレのダンス、めっちゃかっこよかったです!」
寝ながらガッツポーズをとって推しにありったけの想いをこめる。
緊張するけど、これだけは目をそらして言ったら嘘になっちゃうから、ちゃんと目を合わせて。
「ありがとう、アキ」
ニコッと優しく微笑んでくれる推しに、ボクの心がきゅーっと締め付けられる。
「アキのおかげで元気でた」
「・・・応援してます! ずっとずっと」
ボクの気持ちに応えるようにもう一度優しくニコッと微笑む〝ボクの推しアイドル〟
こんなふうに応援している推しに自分の気持ちを伝えられるなんて、夢みたいだ。
推しに見つめられながら、このままずっと・・・。
耳元でアラームが響く。
パチリと目が覚め、そこは自分の部屋だった。
ーあとがきー
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします。
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