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1章・なぜ急にこんな事になったのか
🧊1🧊
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高等学校に入学と同時に、私は婚約者と毎日顔を合わせなければならなくなる。
それは私にとっては苦痛────のはずだった。
「おはようカレン。今日も愛らしいな」
「シンザール様……?おはようございます……?」
今日から登校日という事もあり、迎えに来てくださったシンザール様。
しかし、その様子は今までとは打って変わっていた。
「さぁ、行こうカレン」
「あ……はい」
今まででは絶対に有り得なかった朝の挨拶。そして、エスコート。彼は一体どうしてしまったのか。
馬車の中で私は困惑していて、シンザール様が声をかけてくださっている事に気がつかなかった。
「……レン……カレン……?どうかしたのか?」
「えっ!?あっ……!申し訳ありませんっ……」
「謝らなくて良い。具合でも悪いのか?」
そう言いながら私の顔を覗き込むシンザール様。隣に座っているから余計近くて、心がザワザワする。
けれど、その表情には心配、といった感情が丸見えで。少し嬉しくもあった。
昔だったら沈黙のまま移動していただろうから。
「大丈夫ですわ。入学式に緊張しているだけです」
そう言って微笑む。これでシンザール様が安心してくださると良いのだけど。
「そうか……?具合が悪くなったら直ぐに言うんだぞ」
「分かりましたわ」
その瞬間、馬車が止まり学校へ着いた事が分かった。またしてもシンザール様のエスコートで馬車から降りる。
「ありがとうございます。シンザール様」
「あぁ。……その、こんな所でなんだが、シンと呼んでくれないか?」
「シン……様?」
戸惑いながらも口にすれば、シン様、は安心したかのような表情を見せた。これで合ってたようで、私も安心する。
「そうだ。それで良い。行こう、入学式に遅れてしまう」
「はい」
手を繋いだまま歩き出すシン様。あれ、シン様は第3学年だからこっちではないはず……。
「あの……シン様はなぜこちらに?」
「何を言っている。婚約者が席に座るまでエスコートするのが役目だろう」
「え……」
そんな話は聞いた事が無い。しかし、シン様が言うのであればそうなのだろう。と受け入れる事にした。
「カレンの席は……ここか。では、入学式が終わったらまた迎えに来よう」
そう言ってシン様は私の額に口付けをした。
……口付けぇ!?ひ、額とはいえここ公衆の面前ですわよ!?
一言文句を言ってやりたかったが、その姿は既に離れていた為叶わなかった。
「なんなんですの……もう」
呟きながら座る私の顔はきっと誰から見ても真っ赤だった事でしょう。
それは私にとっては苦痛────のはずだった。
「おはようカレン。今日も愛らしいな」
「シンザール様……?おはようございます……?」
今日から登校日という事もあり、迎えに来てくださったシンザール様。
しかし、その様子は今までとは打って変わっていた。
「さぁ、行こうカレン」
「あ……はい」
今まででは絶対に有り得なかった朝の挨拶。そして、エスコート。彼は一体どうしてしまったのか。
馬車の中で私は困惑していて、シンザール様が声をかけてくださっている事に気がつかなかった。
「……レン……カレン……?どうかしたのか?」
「えっ!?あっ……!申し訳ありませんっ……」
「謝らなくて良い。具合でも悪いのか?」
そう言いながら私の顔を覗き込むシンザール様。隣に座っているから余計近くて、心がザワザワする。
けれど、その表情には心配、といった感情が丸見えで。少し嬉しくもあった。
昔だったら沈黙のまま移動していただろうから。
「大丈夫ですわ。入学式に緊張しているだけです」
そう言って微笑む。これでシンザール様が安心してくださると良いのだけど。
「そうか……?具合が悪くなったら直ぐに言うんだぞ」
「分かりましたわ」
その瞬間、馬車が止まり学校へ着いた事が分かった。またしてもシンザール様のエスコートで馬車から降りる。
「ありがとうございます。シンザール様」
「あぁ。……その、こんな所でなんだが、シンと呼んでくれないか?」
「シン……様?」
戸惑いながらも口にすれば、シン様、は安心したかのような表情を見せた。これで合ってたようで、私も安心する。
「そうだ。それで良い。行こう、入学式に遅れてしまう」
「はい」
手を繋いだまま歩き出すシン様。あれ、シン様は第3学年だからこっちではないはず……。
「あの……シン様はなぜこちらに?」
「何を言っている。婚約者が席に座るまでエスコートするのが役目だろう」
「え……」
そんな話は聞いた事が無い。しかし、シン様が言うのであればそうなのだろう。と受け入れる事にした。
「カレンの席は……ここか。では、入学式が終わったらまた迎えに来よう」
そう言ってシン様は私の額に口付けをした。
……口付けぇ!?ひ、額とはいえここ公衆の面前ですわよ!?
一言文句を言ってやりたかったが、その姿は既に離れていた為叶わなかった。
「なんなんですの……もう」
呟きながら座る私の顔はきっと誰から見ても真っ赤だった事でしょう。
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