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番外編
イベント
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ぎりぎりで梅雨明けした休日は、絵に描いたような晴天だった。
イベント開始一時間前。
体育館横の野外ステージ前には、もう、男達の人だかりができていた。
最前列を陣取っているのは、圭の親衛隊だ。
ほとんどが三年だが、中にOBも混じっている。
圭が出演するイベントには必ずやってきて、盛り上げ役に徹しながらも、プライベートでは話しかけてさえこないという、不思議な集団である。
ステージ両サイドの大きなスピーカーからは、BGMが流れ、特設アイス屋には、涼を求める客が列をなす。
祭りは好きだ。
俺の気分も高まってくる。
予想以上の集客に、ダンス部の中坊達は大慌てだ。
体育館からパイプ椅子を運んでは、芝生の上に並べるが、ちっとも追いつかない。
野外イベは高校生限定だから、中坊たちは裏方だ。
去年の圭も、本番前にちょこまか動いてたんだよな。
思い出すとおかしくなる。今頃はきっと舞台の裏で、手に書いた人を一杯飲み込んでるんだろうけど。
「よお、桔梗。なんでこんなとこにいてんの」
いきなり背中をどつかれて振り返ると、そこには四つ上のダンス部OB、沙緒さんがいた。
「どしたんですか。その格好」
俺はすっとんきょうな声をあげた。
沙緒さんは圭の先輩で、伸の長年の想い人だ。
圭が現れるまで、学園一の人気者はぶっちぎりで沙緒さんだったと聞いている。
俺らの学年にまでファンがいたほどだ。
それが。
真っ金髪な長髪に、ゴールドのぴかぴか光るジャケット。
中のシャツはエンジと黄色の縞模様。
そしてぴったりしたパンツは、蛇柄の混じったパッチワークときてる。
黒髪で清楚な印象の、高校時代からは想像できない。
「俺ってお洒落に興味あんねん。大学に行ったら色んなんやりたくて、バイト代貯めてたんや」
そんないかれた格好で、沙緒さんは、くるっと回ると、嬉しそうに笑った。
うん。笑うとやっぱり可愛い。いつもの沙緒さんだ。
本人が、お洒落、と言い切るだけあって、確かに似合ってるし。
「一人?」
聞かれて頷くと、じゃあ、一緒に見ようや、と、沙緒さんはやっと運ばれてきた椅子に、俺と並んで腰掛けた。
「今日は付き人せんの? お前やったら最前列におると思とったわ」
「そのつもりだったんですけどね、伸ちゃんに、やめとけって」
「は? なんで」
「今回は、その……俺の事、あんまよく思ってないやつもいるから、刺激しないほうがいいって」
「はあん、なるほど」
沙緒さんは、ちらりと最前列の集団に目をやった。
「そやったな。圭が桔梗に落とされたって、ゼミの噂になっとったわ」
「うっそ」
「おめでと。やったな」
伸と同じ祝福の言葉に、俺は鼻の頭をかく。
嬉しいんだけど、気恥ずかしい。
「沙緒さんは? 伸ちゃんと、どうなってんの」
俺はたずねた。
「伸?なんであいつの名前が出てくんの」
きょとんと沙緒さんは俺にたずねる。
「だって、伸ちゃん、沙緒さんめっちゃ好きやもん、いつも言ってますよ。沙緒は俺のもんだって」
「うあっ。あいつそんなん言うてんの?頼むからやめてくれ」
思いがけず、沙緒さんは心底勘弁というように、ぶるりと震えてみせた。
「圭くらい可愛い子やったら別やけど、あんな全身筋肉みたいなやつ、絶対無理。一緒に並ぶんやって、まっぴらや」
「そ、そんなに?」
伸が、どれほど夢中なのか知ってるだけに、気の毒だ。
沙緒さんはぷいと口をとがらせると、
「そうや。なんか会うたびに首がぞわぞわするような台詞ばっか言うてくるし、しかもあいつ、無駄にええ男やろ? コンプレックスでいたたまれなくなるねん。年下のくせに」
と言った。
沙緒さんの表情には照れた部分など全く見つけられず、俺には心底嫌がってるようにしか見えない。
伸ちゃん、やばいぞ。
想像以上に、親友の恋は前途多難だ。
「ええ男で思い出したけど、洋介って、俺の同級にいてたやろ? あいつ、NYへ留学したで」
突然、沙緒さんは、俺の一番苦手な男の話題を切り出した。
その噂は、伸から聞いて知っていた。
「期間は一年らしいけど、ほんまにあいつ、帰ってくんのかな。このままあっちに永住しそうな気がすんねん。俺的には」
なんて返事していいかわからず、黙り込む。
どんな言葉を口にしても……白々しくなりそうな気がして。
あんなに圭に執着していたはずの洋介さんなのに、結局俺達に何のリアクションもしかけてこなかった。
電話で別れを告げたと圭は言う。
もし、俺なら。
そんなんで納得などしない。
どんな手を使ってでも奪い返す。そうだ。そうやって、圭を手に入れたのだから。
二度目に抱き合った時、気がついた、圭の体中につけられたキスマーク。
夢中で、抱いてる間は気がつかなかったけれど、そのあと、俺の腕の中で圭は眠ってしまって。
俺のつけたものと、そうでないもの。
二種類の花の跡が残ってるのに気づいてしまったんだ。
全部俺の気のせいかもしれない。
確かめる意志がない以上、信じるしかないもんな。
だけど、俺の中には、いつだってヤツの存在があって、だからその名前を聞いただけで胸がどうしようもなくざわめいてしまうのだ。
その時、スピーカーからの音楽がふいに止んだ。
前列の男達が、一斉に立ち上がる。
「はじまった!」
俺らも、腰掛けたばかりのパイプ椅子からはじかれたように立ち上がった。
「椅子並べた意味ないな」
沙緒さんが笑う。
確かに意味ない。あちこちで椅子の倒れる音がするが、ほとんどの者が直そうともせず、前を凝視している。
突然舞台そでから、黒いメイド服の小柄な少女が現れて、後ろ向きにポーズをとった。 野獣のような歓声が上がる。
女というだけで、盛り上がってしまうのは、男子校の哀しい性なのだろうか。
「どこから調達したんだろ」
呟くと沙緒さんは
「お前、なんも聞いてないんやな。ほれ、よーく、見てみ」
と呆れたように言った。
「へ?」
言われて、首を突き出すと、ブロンドのメイドは、足先でリズムを取り、
「さあ、行くよ。1、2、3……GO!」
と叫んでくるりと正面に向き直った。
男達の遠吠えがでかくなる。
だが、俺も、その子のあまりの可愛さに、一瞬目を奪われた。
きゅっと尖った顎に、アイドルみたいに完璧な笑顔。
頭につけた白い髪飾りがとても似合ってる。
まるで、これって、ほとんど、
「ありゃ、け、圭!」
馬鹿みたいに大口を開けて、俺は叫んだ。
ステージの上で、圭はばちんと大げさにウインクをしてみせる。
客席全体にいきわたるように視線をやって、そして、曲が始まった。
わらわらと両サイドから、カラフルな色のメイド服に身を包んだ男達が現れる。
往年のアイドルの曲に合わせて、内股で踊るダンサーに、観客は大喜びだ。
「圭の女装は、俺がいてた頃からリクエスト多かったんや。本人めっちゃ嫌がってたはずやのに、なんや、一番のってんな」
隣で沙緒さんが解説する。
「圭ちゃ――ん」
声を揃えて叫ぶ親衛隊に、アイドルっぽく、圭は投げキッスを返す。
確かに……のってるかも。
肩幅が狭くて足が細くて白くって、何より可愛くて、まるで本物の女の子だ。
いや、女の子にもこんな可愛い子、めったにいない。
こんなメイドにお世話されたいって、誰もに夢を与えるような可愛らしさ。
「げ、最悪」
隣で再び沙緒さんが呟いた。
視線の先には、ピンクのメイド服に身を包んだ伸がいた。
鬘まで被っているのに、どこからどう見ても男だ。
全然似合ってないんだけど、あんな格好でウインドきめてしまうのが、伸ちゃんのかっこいいとこだよな。
一曲終わって、圭は、舞台そでに走り、ハンドマイクを持ってステージの中央に立った。
「今日は、若草学園ダンス部の、お披露目パフォーマンスに、ようこそ!」
上気した顔で、言うと、観客席から拍手がまきおこる。
「これから一時間、部員一同一丸となって頑張りますので、楽しんでってください!」
ぺこりと頭を下げる。
舞台上の十数人のメイドたちも、揃って頭を下げた。
「じゃ、次は、ロックダンス!」
伸の掛け声と共に、懐かしいナンバーが流れ始める。
圭の振付けたのが、これだ。
メイド達は一斉に、服を脱ぐ。
マジックテープで後ろだけを留めてたのだろう。メイド服の下からは、あっという間に黄色いおそろいのTシャツが現れた。
観客から落胆の声がもれる。
ったく何期待してんだよ。
ステージの上で、圭は二人組みでロボットのような動きをしていた。
後列に下がっていても、観客の多くは圭を目で追っている。
「お前も、これから大変やな」
前を向いたままで、ぽつりと沙緒さんが呟いた。
「……そうっすね」
なんとなく、思いが伝わって、俺は素直に頷く。
「ありゃ、天性の小悪魔やわ。本人に自覚はないんやろけどな。お前だけの圭ちゃんには、なかなかならんやろな」
「……そうっすね」
もう、そう返事するしかない。
恋人同士になったのに、圭はどことなく危なっかしい。
いつか誰かに取られるんじゃないかって、そうなったら、俺、どうしようって、いつだって不安で、たまらない。
でも、とっくに答えは出てるんだ。
恋って結局、そんなもんじゃん?
平穏なんて、まだまだ来なくたっていい。
だって、俺ら、まだ青春真っ盛りなんだから。
「沙緒――! 好きだ――」
曲の途中で、伸が叫んだ。
とっさに俺は隣を見た。
沙緒さんの額に青筋が立ってる。
このカップルも、平穏からは遠そうだ。
イベント開始一時間前。
体育館横の野外ステージ前には、もう、男達の人だかりができていた。
最前列を陣取っているのは、圭の親衛隊だ。
ほとんどが三年だが、中にOBも混じっている。
圭が出演するイベントには必ずやってきて、盛り上げ役に徹しながらも、プライベートでは話しかけてさえこないという、不思議な集団である。
ステージ両サイドの大きなスピーカーからは、BGMが流れ、特設アイス屋には、涼を求める客が列をなす。
祭りは好きだ。
俺の気分も高まってくる。
予想以上の集客に、ダンス部の中坊達は大慌てだ。
体育館からパイプ椅子を運んでは、芝生の上に並べるが、ちっとも追いつかない。
野外イベは高校生限定だから、中坊たちは裏方だ。
去年の圭も、本番前にちょこまか動いてたんだよな。
思い出すとおかしくなる。今頃はきっと舞台の裏で、手に書いた人を一杯飲み込んでるんだろうけど。
「よお、桔梗。なんでこんなとこにいてんの」
いきなり背中をどつかれて振り返ると、そこには四つ上のダンス部OB、沙緒さんがいた。
「どしたんですか。その格好」
俺はすっとんきょうな声をあげた。
沙緒さんは圭の先輩で、伸の長年の想い人だ。
圭が現れるまで、学園一の人気者はぶっちぎりで沙緒さんだったと聞いている。
俺らの学年にまでファンがいたほどだ。
それが。
真っ金髪な長髪に、ゴールドのぴかぴか光るジャケット。
中のシャツはエンジと黄色の縞模様。
そしてぴったりしたパンツは、蛇柄の混じったパッチワークときてる。
黒髪で清楚な印象の、高校時代からは想像できない。
「俺ってお洒落に興味あんねん。大学に行ったら色んなんやりたくて、バイト代貯めてたんや」
そんないかれた格好で、沙緒さんは、くるっと回ると、嬉しそうに笑った。
うん。笑うとやっぱり可愛い。いつもの沙緒さんだ。
本人が、お洒落、と言い切るだけあって、確かに似合ってるし。
「一人?」
聞かれて頷くと、じゃあ、一緒に見ようや、と、沙緒さんはやっと運ばれてきた椅子に、俺と並んで腰掛けた。
「今日は付き人せんの? お前やったら最前列におると思とったわ」
「そのつもりだったんですけどね、伸ちゃんに、やめとけって」
「は? なんで」
「今回は、その……俺の事、あんまよく思ってないやつもいるから、刺激しないほうがいいって」
「はあん、なるほど」
沙緒さんは、ちらりと最前列の集団に目をやった。
「そやったな。圭が桔梗に落とされたって、ゼミの噂になっとったわ」
「うっそ」
「おめでと。やったな」
伸と同じ祝福の言葉に、俺は鼻の頭をかく。
嬉しいんだけど、気恥ずかしい。
「沙緒さんは? 伸ちゃんと、どうなってんの」
俺はたずねた。
「伸?なんであいつの名前が出てくんの」
きょとんと沙緒さんは俺にたずねる。
「だって、伸ちゃん、沙緒さんめっちゃ好きやもん、いつも言ってますよ。沙緒は俺のもんだって」
「うあっ。あいつそんなん言うてんの?頼むからやめてくれ」
思いがけず、沙緒さんは心底勘弁というように、ぶるりと震えてみせた。
「圭くらい可愛い子やったら別やけど、あんな全身筋肉みたいなやつ、絶対無理。一緒に並ぶんやって、まっぴらや」
「そ、そんなに?」
伸が、どれほど夢中なのか知ってるだけに、気の毒だ。
沙緒さんはぷいと口をとがらせると、
「そうや。なんか会うたびに首がぞわぞわするような台詞ばっか言うてくるし、しかもあいつ、無駄にええ男やろ? コンプレックスでいたたまれなくなるねん。年下のくせに」
と言った。
沙緒さんの表情には照れた部分など全く見つけられず、俺には心底嫌がってるようにしか見えない。
伸ちゃん、やばいぞ。
想像以上に、親友の恋は前途多難だ。
「ええ男で思い出したけど、洋介って、俺の同級にいてたやろ? あいつ、NYへ留学したで」
突然、沙緒さんは、俺の一番苦手な男の話題を切り出した。
その噂は、伸から聞いて知っていた。
「期間は一年らしいけど、ほんまにあいつ、帰ってくんのかな。このままあっちに永住しそうな気がすんねん。俺的には」
なんて返事していいかわからず、黙り込む。
どんな言葉を口にしても……白々しくなりそうな気がして。
あんなに圭に執着していたはずの洋介さんなのに、結局俺達に何のリアクションもしかけてこなかった。
電話で別れを告げたと圭は言う。
もし、俺なら。
そんなんで納得などしない。
どんな手を使ってでも奪い返す。そうだ。そうやって、圭を手に入れたのだから。
二度目に抱き合った時、気がついた、圭の体中につけられたキスマーク。
夢中で、抱いてる間は気がつかなかったけれど、そのあと、俺の腕の中で圭は眠ってしまって。
俺のつけたものと、そうでないもの。
二種類の花の跡が残ってるのに気づいてしまったんだ。
全部俺の気のせいかもしれない。
確かめる意志がない以上、信じるしかないもんな。
だけど、俺の中には、いつだってヤツの存在があって、だからその名前を聞いただけで胸がどうしようもなくざわめいてしまうのだ。
その時、スピーカーからの音楽がふいに止んだ。
前列の男達が、一斉に立ち上がる。
「はじまった!」
俺らも、腰掛けたばかりのパイプ椅子からはじかれたように立ち上がった。
「椅子並べた意味ないな」
沙緒さんが笑う。
確かに意味ない。あちこちで椅子の倒れる音がするが、ほとんどの者が直そうともせず、前を凝視している。
突然舞台そでから、黒いメイド服の小柄な少女が現れて、後ろ向きにポーズをとった。 野獣のような歓声が上がる。
女というだけで、盛り上がってしまうのは、男子校の哀しい性なのだろうか。
「どこから調達したんだろ」
呟くと沙緒さんは
「お前、なんも聞いてないんやな。ほれ、よーく、見てみ」
と呆れたように言った。
「へ?」
言われて、首を突き出すと、ブロンドのメイドは、足先でリズムを取り、
「さあ、行くよ。1、2、3……GO!」
と叫んでくるりと正面に向き直った。
男達の遠吠えがでかくなる。
だが、俺も、その子のあまりの可愛さに、一瞬目を奪われた。
きゅっと尖った顎に、アイドルみたいに完璧な笑顔。
頭につけた白い髪飾りがとても似合ってる。
まるで、これって、ほとんど、
「ありゃ、け、圭!」
馬鹿みたいに大口を開けて、俺は叫んだ。
ステージの上で、圭はばちんと大げさにウインクをしてみせる。
客席全体にいきわたるように視線をやって、そして、曲が始まった。
わらわらと両サイドから、カラフルな色のメイド服に身を包んだ男達が現れる。
往年のアイドルの曲に合わせて、内股で踊るダンサーに、観客は大喜びだ。
「圭の女装は、俺がいてた頃からリクエスト多かったんや。本人めっちゃ嫌がってたはずやのに、なんや、一番のってんな」
隣で沙緒さんが解説する。
「圭ちゃ――ん」
声を揃えて叫ぶ親衛隊に、アイドルっぽく、圭は投げキッスを返す。
確かに……のってるかも。
肩幅が狭くて足が細くて白くって、何より可愛くて、まるで本物の女の子だ。
いや、女の子にもこんな可愛い子、めったにいない。
こんなメイドにお世話されたいって、誰もに夢を与えるような可愛らしさ。
「げ、最悪」
隣で再び沙緒さんが呟いた。
視線の先には、ピンクのメイド服に身を包んだ伸がいた。
鬘まで被っているのに、どこからどう見ても男だ。
全然似合ってないんだけど、あんな格好でウインドきめてしまうのが、伸ちゃんのかっこいいとこだよな。
一曲終わって、圭は、舞台そでに走り、ハンドマイクを持ってステージの中央に立った。
「今日は、若草学園ダンス部の、お披露目パフォーマンスに、ようこそ!」
上気した顔で、言うと、観客席から拍手がまきおこる。
「これから一時間、部員一同一丸となって頑張りますので、楽しんでってください!」
ぺこりと頭を下げる。
舞台上の十数人のメイドたちも、揃って頭を下げた。
「じゃ、次は、ロックダンス!」
伸の掛け声と共に、懐かしいナンバーが流れ始める。
圭の振付けたのが、これだ。
メイド達は一斉に、服を脱ぐ。
マジックテープで後ろだけを留めてたのだろう。メイド服の下からは、あっという間に黄色いおそろいのTシャツが現れた。
観客から落胆の声がもれる。
ったく何期待してんだよ。
ステージの上で、圭は二人組みでロボットのような動きをしていた。
後列に下がっていても、観客の多くは圭を目で追っている。
「お前も、これから大変やな」
前を向いたままで、ぽつりと沙緒さんが呟いた。
「……そうっすね」
なんとなく、思いが伝わって、俺は素直に頷く。
「ありゃ、天性の小悪魔やわ。本人に自覚はないんやろけどな。お前だけの圭ちゃんには、なかなかならんやろな」
「……そうっすね」
もう、そう返事するしかない。
恋人同士になったのに、圭はどことなく危なっかしい。
いつか誰かに取られるんじゃないかって、そうなったら、俺、どうしようって、いつだって不安で、たまらない。
でも、とっくに答えは出てるんだ。
恋って結局、そんなもんじゃん?
平穏なんて、まだまだ来なくたっていい。
だって、俺ら、まだ青春真っ盛りなんだから。
「沙緒――! 好きだ――」
曲の途中で、伸が叫んだ。
とっさに俺は隣を見た。
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