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3章 小悪魔ロッキン
トライアングル
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恋人と過ごす初めての誕生日は休日だった。
外でお祝いしようと誘われて、圭は、雑誌に載っていた、有名ホテルの中にあるちょっとリッチなイタリアンの店を指名した。
サッカーの試合が長引いているのだろうか。待ち合わせの時間は過ぎているのに桔梗は現れない。
高級ホテルのソファは、さすがの一級品で、すわり心地が良かったが、自分以外はセレブな大人ばかりで、ばつが悪く、何度も壁の時計に目をやってしまう。
この感じ、前にも経験した事がある。
そう。洋介と行った、フルコースの時だ。
お洒落で、正真正銘な上流階級の洋介につりあうように、精一杯のおめかしをした。
ダボダボのスーツが恥ずかしかったけれど、可愛いといわれて、嬉しかった。
そして、その後、部屋に連れていかれて、服を脱がされ、唇を奪われた。
吐息ごと呑みこむ、激しいキス。生まれて初めての口付けだった。
桔梗は優しい。大好きだ。抱かれていると、幸せで泣きたくなる。その幸せに酔いながら、傷つけた人を思い出す。その人が、自分にくれた、心からの愛を思い出す。
洋介。
お前以外は愛さないと言った。俺の運命はお前が握っているのだとも。
だけど、あれほどの男なら、もうすっかり圭の事など忘れて、美女と、街を闊歩していてもおかしくないと思う。
そうだ。監禁されていた時、洋介が、ハリウッド女優を抱いて、レッドカーペットを歩いている夢を見たっけ。
ふと、圭は、ロビーの中央にある、赤いじゅうたん敷きの階段に目をやった。
豪華客船を思わせる、幅広の階段は、フォーマルな装いの男女で埋め尽くされていた。
ホテルの最上階には教会と披露宴会場があるはずだから、おそらくは、結婚式の参列者なのだろう。
その中に、見知った顔を見つけて、一瞬圭は目をうたがった。
「あ……」
思わず、勢いよくソファから立ち上がる。
黒い、光沢のあるスーツ姿。手には小さな花束を下げ、長身の美女と何事か言葉を交わしながら、ゆっくりと階段を下りてくる。
遠くから見ても、あたりの視線を集めずにいられない、端正な美貌。
片方だけを歪めて笑う、独特な表情。
洋介だった。
圭の周りで、全てのものが、動きを止めた。固まってしまった空間の中で、洋介だけが、子供の頃見た3D映画みたいに、くっきりと浮き上がって見えた。
傍らにいた、かつては先輩だった名も知らない男の人が、圭に気がついて、洋介の肩を叩く。
洋介が、こちらに首をむけ、視線が絡まった。
一瞬浮かんだ、ばつの悪い表情。
だけど、次の瞬間、片手を上げて、
「よう」
にやりと笑って、立ち尽くしている圭に向かって歩いてきた。
「元気だったか」
「うん」
「今日が誕生日だったよな。しかしここは反則だろ。お前達みたいな子供のテリトリーじゃないと思うぜ」
「うん」
「んだよ。うんしか言えないのか」
「…………」
「相変わらず可愛いな」
俯いて、ぽたりと涙を落とした圭の頭を、洋介はくしゃくしゃにかき回した。
何もかもが不思議だった。あんな風に別れてしまった洋介と、ソファに肩を並べて座っているなんて。
一言も自分を責めない、洋介の思いやりが、返って辛かった。
「桔梗は優しくしてくれてるか」
聞かれてこくりと頷くと、
「そうか。それなら、良かった」
優しい声が降ってくる。自分はひどい仕打ちをしたのに。こんなに優しくしてもらう価値なんて全然ないのに……。
もう一粒、続けてざまにもう二粒、涙がこぼれた。
「久しぶりだから、なんか話そうぜ。そうだ。俺、来月からアメリカへ交換留学に行くことになったんだ」
「えっ」
「期限は来年の8月まで。前から希望してたんだけど……丁度良かった。いろんな意味で、もっと大きな人間になれるよう、頑張ってみるよ」
「…………」
「本当に1年間、お前に会えなくなってしまったな」
最後の台詞は、いかにも淋しげで、圭の胸は再びずきりと痛んだ。
だが、すぐに洋介はいつものようににやりと笑うと、
「と言うわけで、今日が俺と会える最後のチャンスだぜ。何かしときたい事とか、言っておきたい事とかあれば、どんどん受け付けるぜ。桔梗が来る前に、俺ともう一回試してみるのなんて、どうだ」
とからかうように言った。圭はすかさず質問する。
「さっきの人、彼女?」
「は?」
「一緒に階段下りてきた人」
「ああ、あれはゼミの先輩だ。教授の結婚式だったからな。お前の感覚じゃあ、並んで歩いただけで、彼女になるのか」
「だって、お似合いだな、って思ったから」
洋介はほっと、大きなため息をついた。
「まだ一月しかたっていないんだ。俺の好きな人は変らないよ」
2次会へ行くぞー、と幹事らしき人が、ロビー全体に散ってしまった仲間達に集合をかけている。
じゃ、俺、行くから、と洋介は立ち上がった。
「会えると知ってたら、なんかプレゼントでも用意してたのにな」
そう言った後
「そうだ、これやるよ」
手に持っていた小さな花束を差し出す。
受け取った圭を嬉しそうに見つめると、じゃあな、と立ち上がって歩き出そうとした。
「洋介」
立ち上がって、呼び止める。思わずスーツの裾を掴んでいた。
洋介が、びくりと立ち止まる。気がついて、すぐに布から手を離したが、逆に大きな手に掴まれてしまった。
「ご、ごめん、俺」
振り返った顔は怖いほど、真剣で、圭は自分が一体何を言おうとしていたのか、忘れてしまった。
洋介が圭の肩を掴む。
「花束だけじゃあ物足りないよな。俺も同じ気持ちだぜ」
「…………・」
怖くて、つい逃げをうつ華奢な体を洋介はきつく、引き寄せた。
不穏な空気に周囲がざわつく。多分、怖い先輩に脅されている気の弱い少年。そんな風に見られているのだろう。
「追加のプレゼントをやるから、さあ、目を閉じてろよ」
命令されて、ぎゅっと目を閉じる。自分勝手に洋介を振り回して、まとうとう怒らせてしまったのだ。
殴られても、仕方がない。
だけど……。
唇に、冷たい感触がある。
洋介の、薄い唇が重ねられたのだ。
舌先が、圭の上唇をそっと撫でる。
何をされても仕方がないと覚悟していたのに……。
されたのは蕩けるように優しい、優しい、バードキスだった。
周囲のどよめきも、圭の動揺も物ともせず、その後の洋介は潔かった。
あっけなく体を離し、
「ハッピーバースデイ」
と、もう一度、唇に触れるだけのキスをする。それから、
「じゃあな」
と一言だけを残して、掌をひらひらと振りながら、仲間のところへ戻っていった。
幹事が顔を赤くしてせかしている中、余裕綽々の動きで、出口へと向かう後姿を、圭は、縋るように追い続けた。最後に一度だけ、振り向いてくれないかと期待したが、洋介は迷いのない動きで、回転扉へとその長い足を進めていく。大勢の人間を飲み込み、吐き出してきたその扉が、いつものように、大好きな男の体を、飲み込んで、圭の前から連れ去ろうとしていた。
その時。
扉の向こうに、桔梗の姿が見えた。
白い光沢のある素材のスポーツバックを肩にかけて、髪を振り乱して、走ってくる。
出口側は混んでいるが、入り口には人はいない。
まさにかつてのライバルと同じタイミングで滑り込んで、桔梗は荒い息をついていた。
回転扉の対角線上に、圭の愛する男が二人、ほんの一瞬だけ肩を並べて、次の瞬間にはすれ違っていく。
はあはあと息を整えている少年に、一瞬向けられそうになった洋介の視線が、あわやというところで違う方向に逸れた。
回転扉を抜けると、洋介はそっと片手を上げた。
結局最後まで振り向かないまま、洋介は、圭の前から姿を消した。
最後の最後までかっこいい。
洋介らしい、ラストシーンだった。
洋介の姿は視界から消え、目の前に立っているのは、大きな猫のような、汗まみれの少年である。
「ごめん、試合が長引いちゃってさあ、こんなに待たせて、俺って最悪だよな」
よっぽど慌てたのだろう。
着替えたはずのシャツには汗の染みができていた。
自分だけでなく、桔梗も含めて高級ホテルにはそぐわない二人だったのだと、今更ながらに気がつく。
「退屈だったよなあ。30分も待たされたら……って、俺らって、何か注目されてない?凄い視線を感じるんだけど」
桔梗はきょろきょろとあたりを見回した。
客達は、不自然に視線を逸らす。注目を浴びるのは当然だろう。ほんの数分前に、圭はただ立っているだけでも目立つ男と、ラブシーンを演じてしまったのだから。
「気のせい、気のせい」
圭は笑った。
「ほんとごめんな。でも、今夜は思いっきりサービスするから。圭。誕生日おめでとう。自分の誕生日の次に、大事な日だよ」
桔梗は真面目な顔でそう言った。
誕生日という言葉に反応したのか、周囲が再びひそひそとどよめく。
「あれ、お前何もってんの」
桔梗は花束に目をやった。
「ああ、これ、花嫁さんにもらったんだ」
もう、他人になんと思われてもいいや、と圭は必要以上に大きな声で言った。
「ふうん。お前可愛いからなあ。うん。あげたくなる気持ちもわかるかも」
桔梗は納得しているが、客達は呆れたような顔をしている。
もうやけくそだ。
「さあ、もう行こうよ」
桔梗の腕に圭は自分のそれを絡ませる。上目遣いで甘えるように笑いかけてみた。
「そだな、いこっか」
桔梗の綺麗な顔が思いっきり崩れた。
こうして圭と洋介と桔梗のトライアングルストーリーは幕を閉じた。
1年後、洋介がアメリカから帰ってきたときに、波乱があるのか、はたまたないのか、それはその時にならねばわからない。
だけど、きっと1年後も、洋介は相変わらずの俺様で、桔梗はきっと優しくて、圭は今以上の小悪魔っぷりを発揮している事だろう。
最後の最後に一言だけ。
心に鍵を。
これって、案外大事な事。
小悪魔とダンス終わり 番外編に続く
外でお祝いしようと誘われて、圭は、雑誌に載っていた、有名ホテルの中にあるちょっとリッチなイタリアンの店を指名した。
サッカーの試合が長引いているのだろうか。待ち合わせの時間は過ぎているのに桔梗は現れない。
高級ホテルのソファは、さすがの一級品で、すわり心地が良かったが、自分以外はセレブな大人ばかりで、ばつが悪く、何度も壁の時計に目をやってしまう。
この感じ、前にも経験した事がある。
そう。洋介と行った、フルコースの時だ。
お洒落で、正真正銘な上流階級の洋介につりあうように、精一杯のおめかしをした。
ダボダボのスーツが恥ずかしかったけれど、可愛いといわれて、嬉しかった。
そして、その後、部屋に連れていかれて、服を脱がされ、唇を奪われた。
吐息ごと呑みこむ、激しいキス。生まれて初めての口付けだった。
桔梗は優しい。大好きだ。抱かれていると、幸せで泣きたくなる。その幸せに酔いながら、傷つけた人を思い出す。その人が、自分にくれた、心からの愛を思い出す。
洋介。
お前以外は愛さないと言った。俺の運命はお前が握っているのだとも。
だけど、あれほどの男なら、もうすっかり圭の事など忘れて、美女と、街を闊歩していてもおかしくないと思う。
そうだ。監禁されていた時、洋介が、ハリウッド女優を抱いて、レッドカーペットを歩いている夢を見たっけ。
ふと、圭は、ロビーの中央にある、赤いじゅうたん敷きの階段に目をやった。
豪華客船を思わせる、幅広の階段は、フォーマルな装いの男女で埋め尽くされていた。
ホテルの最上階には教会と披露宴会場があるはずだから、おそらくは、結婚式の参列者なのだろう。
その中に、見知った顔を見つけて、一瞬圭は目をうたがった。
「あ……」
思わず、勢いよくソファから立ち上がる。
黒い、光沢のあるスーツ姿。手には小さな花束を下げ、長身の美女と何事か言葉を交わしながら、ゆっくりと階段を下りてくる。
遠くから見ても、あたりの視線を集めずにいられない、端正な美貌。
片方だけを歪めて笑う、独特な表情。
洋介だった。
圭の周りで、全てのものが、動きを止めた。固まってしまった空間の中で、洋介だけが、子供の頃見た3D映画みたいに、くっきりと浮き上がって見えた。
傍らにいた、かつては先輩だった名も知らない男の人が、圭に気がついて、洋介の肩を叩く。
洋介が、こちらに首をむけ、視線が絡まった。
一瞬浮かんだ、ばつの悪い表情。
だけど、次の瞬間、片手を上げて、
「よう」
にやりと笑って、立ち尽くしている圭に向かって歩いてきた。
「元気だったか」
「うん」
「今日が誕生日だったよな。しかしここは反則だろ。お前達みたいな子供のテリトリーじゃないと思うぜ」
「うん」
「んだよ。うんしか言えないのか」
「…………」
「相変わらず可愛いな」
俯いて、ぽたりと涙を落とした圭の頭を、洋介はくしゃくしゃにかき回した。
何もかもが不思議だった。あんな風に別れてしまった洋介と、ソファに肩を並べて座っているなんて。
一言も自分を責めない、洋介の思いやりが、返って辛かった。
「桔梗は優しくしてくれてるか」
聞かれてこくりと頷くと、
「そうか。それなら、良かった」
優しい声が降ってくる。自分はひどい仕打ちをしたのに。こんなに優しくしてもらう価値なんて全然ないのに……。
もう一粒、続けてざまにもう二粒、涙がこぼれた。
「久しぶりだから、なんか話そうぜ。そうだ。俺、来月からアメリカへ交換留学に行くことになったんだ」
「えっ」
「期限は来年の8月まで。前から希望してたんだけど……丁度良かった。いろんな意味で、もっと大きな人間になれるよう、頑張ってみるよ」
「…………」
「本当に1年間、お前に会えなくなってしまったな」
最後の台詞は、いかにも淋しげで、圭の胸は再びずきりと痛んだ。
だが、すぐに洋介はいつものようににやりと笑うと、
「と言うわけで、今日が俺と会える最後のチャンスだぜ。何かしときたい事とか、言っておきたい事とかあれば、どんどん受け付けるぜ。桔梗が来る前に、俺ともう一回試してみるのなんて、どうだ」
とからかうように言った。圭はすかさず質問する。
「さっきの人、彼女?」
「は?」
「一緒に階段下りてきた人」
「ああ、あれはゼミの先輩だ。教授の結婚式だったからな。お前の感覚じゃあ、並んで歩いただけで、彼女になるのか」
「だって、お似合いだな、って思ったから」
洋介はほっと、大きなため息をついた。
「まだ一月しかたっていないんだ。俺の好きな人は変らないよ」
2次会へ行くぞー、と幹事らしき人が、ロビー全体に散ってしまった仲間達に集合をかけている。
じゃ、俺、行くから、と洋介は立ち上がった。
「会えると知ってたら、なんかプレゼントでも用意してたのにな」
そう言った後
「そうだ、これやるよ」
手に持っていた小さな花束を差し出す。
受け取った圭を嬉しそうに見つめると、じゃあな、と立ち上がって歩き出そうとした。
「洋介」
立ち上がって、呼び止める。思わずスーツの裾を掴んでいた。
洋介が、びくりと立ち止まる。気がついて、すぐに布から手を離したが、逆に大きな手に掴まれてしまった。
「ご、ごめん、俺」
振り返った顔は怖いほど、真剣で、圭は自分が一体何を言おうとしていたのか、忘れてしまった。
洋介が圭の肩を掴む。
「花束だけじゃあ物足りないよな。俺も同じ気持ちだぜ」
「…………・」
怖くて、つい逃げをうつ華奢な体を洋介はきつく、引き寄せた。
不穏な空気に周囲がざわつく。多分、怖い先輩に脅されている気の弱い少年。そんな風に見られているのだろう。
「追加のプレゼントをやるから、さあ、目を閉じてろよ」
命令されて、ぎゅっと目を閉じる。自分勝手に洋介を振り回して、まとうとう怒らせてしまったのだ。
殴られても、仕方がない。
だけど……。
唇に、冷たい感触がある。
洋介の、薄い唇が重ねられたのだ。
舌先が、圭の上唇をそっと撫でる。
何をされても仕方がないと覚悟していたのに……。
されたのは蕩けるように優しい、優しい、バードキスだった。
周囲のどよめきも、圭の動揺も物ともせず、その後の洋介は潔かった。
あっけなく体を離し、
「ハッピーバースデイ」
と、もう一度、唇に触れるだけのキスをする。それから、
「じゃあな」
と一言だけを残して、掌をひらひらと振りながら、仲間のところへ戻っていった。
幹事が顔を赤くしてせかしている中、余裕綽々の動きで、出口へと向かう後姿を、圭は、縋るように追い続けた。最後に一度だけ、振り向いてくれないかと期待したが、洋介は迷いのない動きで、回転扉へとその長い足を進めていく。大勢の人間を飲み込み、吐き出してきたその扉が、いつものように、大好きな男の体を、飲み込んで、圭の前から連れ去ろうとしていた。
その時。
扉の向こうに、桔梗の姿が見えた。
白い光沢のある素材のスポーツバックを肩にかけて、髪を振り乱して、走ってくる。
出口側は混んでいるが、入り口には人はいない。
まさにかつてのライバルと同じタイミングで滑り込んで、桔梗は荒い息をついていた。
回転扉の対角線上に、圭の愛する男が二人、ほんの一瞬だけ肩を並べて、次の瞬間にはすれ違っていく。
はあはあと息を整えている少年に、一瞬向けられそうになった洋介の視線が、あわやというところで違う方向に逸れた。
回転扉を抜けると、洋介はそっと片手を上げた。
結局最後まで振り向かないまま、洋介は、圭の前から姿を消した。
最後の最後までかっこいい。
洋介らしい、ラストシーンだった。
洋介の姿は視界から消え、目の前に立っているのは、大きな猫のような、汗まみれの少年である。
「ごめん、試合が長引いちゃってさあ、こんなに待たせて、俺って最悪だよな」
よっぽど慌てたのだろう。
着替えたはずのシャツには汗の染みができていた。
自分だけでなく、桔梗も含めて高級ホテルにはそぐわない二人だったのだと、今更ながらに気がつく。
「退屈だったよなあ。30分も待たされたら……って、俺らって、何か注目されてない?凄い視線を感じるんだけど」
桔梗はきょろきょろとあたりを見回した。
客達は、不自然に視線を逸らす。注目を浴びるのは当然だろう。ほんの数分前に、圭はただ立っているだけでも目立つ男と、ラブシーンを演じてしまったのだから。
「気のせい、気のせい」
圭は笑った。
「ほんとごめんな。でも、今夜は思いっきりサービスするから。圭。誕生日おめでとう。自分の誕生日の次に、大事な日だよ」
桔梗は真面目な顔でそう言った。
誕生日という言葉に反応したのか、周囲が再びひそひそとどよめく。
「あれ、お前何もってんの」
桔梗は花束に目をやった。
「ああ、これ、花嫁さんにもらったんだ」
もう、他人になんと思われてもいいや、と圭は必要以上に大きな声で言った。
「ふうん。お前可愛いからなあ。うん。あげたくなる気持ちもわかるかも」
桔梗は納得しているが、客達は呆れたような顔をしている。
もうやけくそだ。
「さあ、もう行こうよ」
桔梗の腕に圭は自分のそれを絡ませる。上目遣いで甘えるように笑いかけてみた。
「そだな、いこっか」
桔梗の綺麗な顔が思いっきり崩れた。
こうして圭と洋介と桔梗のトライアングルストーリーは幕を閉じた。
1年後、洋介がアメリカから帰ってきたときに、波乱があるのか、はたまたないのか、それはその時にならねばわからない。
だけど、きっと1年後も、洋介は相変わらずの俺様で、桔梗はきっと優しくて、圭は今以上の小悪魔っぷりを発揮している事だろう。
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心に鍵を。
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