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第27話
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「ちょっと、ドロシー! 勝手に人のことを鑑定しちゃ失礼だって、前から言ってるでしょ!」
まるで悪いことをした子どもを叱る母親みたいな口調で注意するリーリアだったが、そんな彼女の言葉をドロシーは軽く聞き流してしまう。。
「いいじゃない、別に減るものじゃないんだし。それに、彼のスキルってかなり凄いわよ。これほど凄いスキルを持ってる人なんて、世界中を探してもそうそう居ないわ。リーリアってば、いい男を捕まえたわね」
「だから、アキラさんはそういうんじゃないから! そんなことよりほら、早くアキラさんに謝って!」
なんのことだか分からずポカンとしていると、悪びれる様子のないドロシーが微笑みながら俺に視線を向けた。
「ふふ、ごめんなさいね。リーリアが男を連れてくるなんて初めてだったから、ちょっと気になっちゃって。つい君のことを鑑定しちゃった」
「鑑定って……。それって人に使えるものなのか?」
「ええ、もちろん。生き物だって物体であることに変わりはないんだから、使おうと思えばなんにだって使えるわ。冒険者なんかは、モンスター相手によく使ってるって聞くわね」
そう言われれば確かに、漫画やアニメなんかじゃ主人公が敵モンスターに対して使っている印象がある。
物に使うスキルだとばかり思っていたけど、これは考えを改めないといけない。
固定観念を取っ払ったり発想を転換させたりすれば、きっとスキルの使い方は無限に広がっていくのだろう。
どうやらスキルって言うのは、俺が思っていた以上に奥が深いものみたいだ。
感心している俺を微笑ましそうに見つめるドロシーは、さらに言葉を続ける。
「私レベルの鑑定じゃ相手のスキルくらいまでしか分からないけど、君ならその気になれば身長や体重、それどころかスリーサイズまでばっちり分かるんじゃないかしら」
「マジか……」
まさか鑑定に、そんな素敵な使い方があったなんて。
俺が奇妙な感動を覚えていると、隣に立つリーリアはジト目で俺を見つめてくる。
「駄目ですよ。人のそんな部分まで勝手に覗き見るのは、最低ですからね」
「わ、分かってるよ。そもそもやり方も分からないし、やろうとも全然思ってないから。オーダーメイドの防具を作る時とかは、ちょっと便利そうだなって思っただけだから!」
慌てて否定すると、なんだか妙に言い訳っぽくなってしまった。
そんな風に早口で喋る俺を見て、リーリアは呆れたように小さくため息を吐く。
だからやらないって。
さらに否定の言葉を口にしようとすると、それよりも早くドロシーがクスクスと楽しそうに笑う。
「いやぁ、本当に君たちは面白いね。他人の痴話げんかっていうのは、見ていて全然飽きないよ」
「いや、痴話げんかじゃないんだけど……」
冷静にツッコミを入れる俺と、なぜか頬を赤らめて黙り込むリーリア。
いや、ここは否定するところだろ。
このままだと俺とリーリアはそう言う関係だって認めることになるけど、それでもいいのか?
そんな風にリーリアを見ていると、俺の視線に気付いたのか彼女は慌てた様子でわざとらしく話を変えた。
「そんなことよりも、ドロシーに聞きたいことがあったの! ちょっと教えてほしいんだけど」
さすがにわざとらしすぎるんじゃないかと不安になったけど、どうやら一通りリーリアをイジッて満足した様子のドロシーは気にしていない様子だった。
「ふむ、ほかならぬ幼馴染のお願いだ。私に分かることであれば、なんでも教えてあげるよ」
店内に入ってきた時とは違い機嫌の良さそうなドロシーは、にこやかに笑いながら頷く。
「それで、何が聞きたいのかしら? さすがの私でも、恋愛相談は乗れないわよ」
「恋愛のことをドロシーに聞くわけないでしょ」
「その言い方はちょっと酷くない? 少なくとも、リーリアよりは経験豊富だと思うんだけど」
「へぇ、そうなんだ。私の記憶だと、ドロシーが男の子と付き合ったなんて話は聞いたことないわね。あなたのことだからそんな相手が居ればすぐにマウントを取ってくると思うんだけど。もしかして、恥ずかしかったから隠れてこっそりお付き合いしてたのかしら?」
「うっ……。いやまぁ、私は君と違って異性にあまり興味はなかったからね」
「あれ? さっきと言ってることが矛盾してない?」
幼馴染同士の気軽さからか、リーリアたちの話はどんどん本筋から脱線してしまっている。
と言うかリーリアは、さっきまでイジられてた仕返しをしてない?
「ちょっと、そろそろ本題を話さないかな。リーリアも、あまり意地悪なこと言っちゃ駄目だよ」
「あっ、ごめんなさい。つい……」
たまらず俺が口を挟むと、リーリアは俺の存在を思い出したように急に大人しくなる。
「その言い方だと私がいじめられていたみたいで不本意だけど、確かにアキラの言う通りね。ほら、さっさと本題を言いなさい」
ドロシーの方も落ち着いたようで、またさっきまでのように気だるそうな表情で話を促す。
やっと話が続けられることにホッと一息ついた俺は、また話が脱線しないようにとリーリアの代わりに口を開く。
「実は、この店の売れ筋商品を教えてほしいんだ。いったい、どんな物が良く売れるんだ?」
俺の質問を聞いて、ドロシーはポカンとした表情で俺たちを見つめていた。
まるで悪いことをした子どもを叱る母親みたいな口調で注意するリーリアだったが、そんな彼女の言葉をドロシーは軽く聞き流してしまう。。
「いいじゃない、別に減るものじゃないんだし。それに、彼のスキルってかなり凄いわよ。これほど凄いスキルを持ってる人なんて、世界中を探してもそうそう居ないわ。リーリアってば、いい男を捕まえたわね」
「だから、アキラさんはそういうんじゃないから! そんなことよりほら、早くアキラさんに謝って!」
なんのことだか分からずポカンとしていると、悪びれる様子のないドロシーが微笑みながら俺に視線を向けた。
「ふふ、ごめんなさいね。リーリアが男を連れてくるなんて初めてだったから、ちょっと気になっちゃって。つい君のことを鑑定しちゃった」
「鑑定って……。それって人に使えるものなのか?」
「ええ、もちろん。生き物だって物体であることに変わりはないんだから、使おうと思えばなんにだって使えるわ。冒険者なんかは、モンスター相手によく使ってるって聞くわね」
そう言われれば確かに、漫画やアニメなんかじゃ主人公が敵モンスターに対して使っている印象がある。
物に使うスキルだとばかり思っていたけど、これは考えを改めないといけない。
固定観念を取っ払ったり発想を転換させたりすれば、きっとスキルの使い方は無限に広がっていくのだろう。
どうやらスキルって言うのは、俺が思っていた以上に奥が深いものみたいだ。
感心している俺を微笑ましそうに見つめるドロシーは、さらに言葉を続ける。
「私レベルの鑑定じゃ相手のスキルくらいまでしか分からないけど、君ならその気になれば身長や体重、それどころかスリーサイズまでばっちり分かるんじゃないかしら」
「マジか……」
まさか鑑定に、そんな素敵な使い方があったなんて。
俺が奇妙な感動を覚えていると、隣に立つリーリアはジト目で俺を見つめてくる。
「駄目ですよ。人のそんな部分まで勝手に覗き見るのは、最低ですからね」
「わ、分かってるよ。そもそもやり方も分からないし、やろうとも全然思ってないから。オーダーメイドの防具を作る時とかは、ちょっと便利そうだなって思っただけだから!」
慌てて否定すると、なんだか妙に言い訳っぽくなってしまった。
そんな風に早口で喋る俺を見て、リーリアは呆れたように小さくため息を吐く。
だからやらないって。
さらに否定の言葉を口にしようとすると、それよりも早くドロシーがクスクスと楽しそうに笑う。
「いやぁ、本当に君たちは面白いね。他人の痴話げんかっていうのは、見ていて全然飽きないよ」
「いや、痴話げんかじゃないんだけど……」
冷静にツッコミを入れる俺と、なぜか頬を赤らめて黙り込むリーリア。
いや、ここは否定するところだろ。
このままだと俺とリーリアはそう言う関係だって認めることになるけど、それでもいいのか?
そんな風にリーリアを見ていると、俺の視線に気付いたのか彼女は慌てた様子でわざとらしく話を変えた。
「そんなことよりも、ドロシーに聞きたいことがあったの! ちょっと教えてほしいんだけど」
さすがにわざとらしすぎるんじゃないかと不安になったけど、どうやら一通りリーリアをイジッて満足した様子のドロシーは気にしていない様子だった。
「ふむ、ほかならぬ幼馴染のお願いだ。私に分かることであれば、なんでも教えてあげるよ」
店内に入ってきた時とは違い機嫌の良さそうなドロシーは、にこやかに笑いながら頷く。
「それで、何が聞きたいのかしら? さすがの私でも、恋愛相談は乗れないわよ」
「恋愛のことをドロシーに聞くわけないでしょ」
「その言い方はちょっと酷くない? 少なくとも、リーリアよりは経験豊富だと思うんだけど」
「へぇ、そうなんだ。私の記憶だと、ドロシーが男の子と付き合ったなんて話は聞いたことないわね。あなたのことだからそんな相手が居ればすぐにマウントを取ってくると思うんだけど。もしかして、恥ずかしかったから隠れてこっそりお付き合いしてたのかしら?」
「うっ……。いやまぁ、私は君と違って異性にあまり興味はなかったからね」
「あれ? さっきと言ってることが矛盾してない?」
幼馴染同士の気軽さからか、リーリアたちの話はどんどん本筋から脱線してしまっている。
と言うかリーリアは、さっきまでイジられてた仕返しをしてない?
「ちょっと、そろそろ本題を話さないかな。リーリアも、あまり意地悪なこと言っちゃ駄目だよ」
「あっ、ごめんなさい。つい……」
たまらず俺が口を挟むと、リーリアは俺の存在を思い出したように急に大人しくなる。
「その言い方だと私がいじめられていたみたいで不本意だけど、確かにアキラの言う通りね。ほら、さっさと本題を言いなさい」
ドロシーの方も落ち着いたようで、またさっきまでのように気だるそうな表情で話を促す。
やっと話が続けられることにホッと一息ついた俺は、また話が脱線しないようにとリーリアの代わりに口を開く。
「実は、この店の売れ筋商品を教えてほしいんだ。いったい、どんな物が良く売れるんだ?」
俺の質問を聞いて、ドロシーはポカンとした表情で俺たちを見つめていた。
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