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<番外編>優希の友情
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「お前とは、もう遊ばない」
いつもの様にみんなの居る公園に行くと、突然ボクに向かって和也君が言い放った。
その言葉に、他のみんなもウンウンと頷いて同意している。
「なんで? なんで遊んでくれないの?」
「なんでもっ! もう、いいだろ」
「よくないよっ!」
納得がいかないボクが詰め寄って尋ねても、和也君は聞く耳を持ってくれない。
それどころか、更に頑なな態度でボクのことを拒絶してくる。
「ともかく、お前とはもう遊ばないからついてくんなよっ! もしついてきたら、絶交だからな!」
そう言われて、ボクの動きはピタッと止まる。
遊んでくれないのは嫌だけど、絶交されるのはもっと嫌だ。
ボクの動きが止まったことで、それを了承の合図だと思ったんだろう。
和也君は他のみんなを連れてそのまま公園を出て行ってしまった。
後に残されたのは、ボクとサッカーボールだけ。
ポツンと残されたボクたちは、寂しそうにただ立っていた。
「良いよ、もう……。一人でも普通に遊べるもんね」
いつまでそうしていただろうか?
すっかり見えなくなった和也君たちを振り切るように視線を外したボクは、地面に転がったままのサッカーボールをポンッと蹴り上げる。
そのまま胸でトラップしてリフティングを始めると、ボールはポンポンと小気味良い音を立てながら跳ねまわる。
「ほら、リフティングだったら一人でもできるし、ボクって結構上手いんだよ」
喋っても、誰も返事をしてくれない。
そのことに悲しくなったボクは、気付いたらリフティングを失敗してしまった。
「あっ、待って……」
コロコロと転がっていったボールを追いかけると、それはベンチに座るお兄さんの近くで止まった。
「すいませーんっ!」
大きな声を上げるとそのお兄さんはこっちを向いて、その顔に見覚えがあることに気が付いた。
前にも一度、ボールを取ってくれた人だ。
どうやらお兄さんも覚えていたみたい。
「今日は、この前の子と一緒じゃないんですか?」
「え? あぁ、うん。今日は一人なんだ。……そう言う君こそ、今日は一人で遊んでるの?」
ボクが声を掛けると、お兄さんは急に核心を突く質問を投げかけてくる。
突然のことにボクが暗い表情を浮かべると、お兄さんはすっかり焦ってしまったようだ。
それでもボクは、気が付くとお兄さんに促されるままにベンチに座っていた。
「なんだか最近、みんなの様子がおかしいんだ」
そして、お兄さんに向かってさっきまでのことを全部話していた。
────
あの後、ボクの話を黙って聞いてくれたお兄さんは優しく慰めてくれて、それからボクと一緒に遊んでくれた。
大好きなサッカーをしているとさっきまでの哀しい気持ちが消えていくようで楽しかったけど、そのうちになんだか空が暗くなってきた。
「なんだか雨が降りそうだな」
お兄さんがそう呟いた途端に、空からは大粒の雨が降り始めた。
「わわっ、降ってきた。どうしよう、お兄さん」
「とりあえず雨宿りしよう」
お兄さんと一緒に屋根のある場所にまで避難すると、その時にはもう二人ともびしょ濡れになっていた。
「急に降ってきたな。優希は大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でもびしょびしょだよ」
パタパタと服を払うと、そこからは水しぶきが絶え間なく飛び散る。
このままじゃ、風邪を引いちゃうかも。
そう思ったのはお兄さんも一緒だったみたい。
「優希の家って、ここから近いのか?」
「ううん。あっちの川を渡ってちょっと行った所」
「そっか……。じゃあ、俺の家に行こうか」
「えっ?」
「ほら。早く服を乾かさないと、風邪引いちゃうかもしれないからさ」
突然の提案に驚いたけど、だけど風邪を引くのは嫌だ。
相変わらず雨は降り続いているけど、さっきまでよりは弱まっている。
「今がチャンスだ。行くよ」
「あっ、待ってよ!」
突然走り出したお兄さんを追いかけるように、ボクも雨の中を走っていく。
そうするとなんだか楽しくなってきて、お家に着いた時にはボクはすっかりはしゃいでしまった。
だって、兄ちゃんのお家は最近噂の駄菓子屋さんだったんだもん。
一度、来てみたかったんだよね。
そうやってはしゃいでいると、急に身体に寒気が走ってきた。
「……くしゅんっ」
くしゃみをすると、兄ちゃんはとても心配そうな表情になった。
そして、優しそうな微笑みを浮かべてくれた。
「すっかり身体が冷えちゃったし、風呂に入ろうか」
「ホントっ!? やった!」
ボク、お風呂って大好きなんだよね。
「あっ、でも着替えがないよ」
「大丈夫。乾燥機にかければすぐ乾くさ」
「じゃあ大丈夫だね。おっふろ、おっふろー」
はしゃぎながらお家の奥に向かうと、なんだか兄ちゃんはがっかりしているみたいだった。
そう言う顔をしてる兄ちゃんは、なんだか嫌だな。
良く分からないけど、心の中がモヤモヤとしてくる。
どうにかして励まそうと考えると、頭にピンッと名案が浮かんだ。
「ねぇ、兄ちゃん。一緒に入ろうよ」
満面の笑みを浮かべて、ボクは兄ちゃんを誘ってみた。
いつもの様にみんなの居る公園に行くと、突然ボクに向かって和也君が言い放った。
その言葉に、他のみんなもウンウンと頷いて同意している。
「なんで? なんで遊んでくれないの?」
「なんでもっ! もう、いいだろ」
「よくないよっ!」
納得がいかないボクが詰め寄って尋ねても、和也君は聞く耳を持ってくれない。
それどころか、更に頑なな態度でボクのことを拒絶してくる。
「ともかく、お前とはもう遊ばないからついてくんなよっ! もしついてきたら、絶交だからな!」
そう言われて、ボクの動きはピタッと止まる。
遊んでくれないのは嫌だけど、絶交されるのはもっと嫌だ。
ボクの動きが止まったことで、それを了承の合図だと思ったんだろう。
和也君は他のみんなを連れてそのまま公園を出て行ってしまった。
後に残されたのは、ボクとサッカーボールだけ。
ポツンと残されたボクたちは、寂しそうにただ立っていた。
「良いよ、もう……。一人でも普通に遊べるもんね」
いつまでそうしていただろうか?
すっかり見えなくなった和也君たちを振り切るように視線を外したボクは、地面に転がったままのサッカーボールをポンッと蹴り上げる。
そのまま胸でトラップしてリフティングを始めると、ボールはポンポンと小気味良い音を立てながら跳ねまわる。
「ほら、リフティングだったら一人でもできるし、ボクって結構上手いんだよ」
喋っても、誰も返事をしてくれない。
そのことに悲しくなったボクは、気付いたらリフティングを失敗してしまった。
「あっ、待って……」
コロコロと転がっていったボールを追いかけると、それはベンチに座るお兄さんの近くで止まった。
「すいませーんっ!」
大きな声を上げるとそのお兄さんはこっちを向いて、その顔に見覚えがあることに気が付いた。
前にも一度、ボールを取ってくれた人だ。
どうやらお兄さんも覚えていたみたい。
「今日は、この前の子と一緒じゃないんですか?」
「え? あぁ、うん。今日は一人なんだ。……そう言う君こそ、今日は一人で遊んでるの?」
ボクが声を掛けると、お兄さんは急に核心を突く質問を投げかけてくる。
突然のことにボクが暗い表情を浮かべると、お兄さんはすっかり焦ってしまったようだ。
それでもボクは、気が付くとお兄さんに促されるままにベンチに座っていた。
「なんだか最近、みんなの様子がおかしいんだ」
そして、お兄さんに向かってさっきまでのことを全部話していた。
────
あの後、ボクの話を黙って聞いてくれたお兄さんは優しく慰めてくれて、それからボクと一緒に遊んでくれた。
大好きなサッカーをしているとさっきまでの哀しい気持ちが消えていくようで楽しかったけど、そのうちになんだか空が暗くなってきた。
「なんだか雨が降りそうだな」
お兄さんがそう呟いた途端に、空からは大粒の雨が降り始めた。
「わわっ、降ってきた。どうしよう、お兄さん」
「とりあえず雨宿りしよう」
お兄さんと一緒に屋根のある場所にまで避難すると、その時にはもう二人ともびしょ濡れになっていた。
「急に降ってきたな。優希は大丈夫か?」
「うん、大丈夫。でもびしょびしょだよ」
パタパタと服を払うと、そこからは水しぶきが絶え間なく飛び散る。
このままじゃ、風邪を引いちゃうかも。
そう思ったのはお兄さんも一緒だったみたい。
「優希の家って、ここから近いのか?」
「ううん。あっちの川を渡ってちょっと行った所」
「そっか……。じゃあ、俺の家に行こうか」
「えっ?」
「ほら。早く服を乾かさないと、風邪引いちゃうかもしれないからさ」
突然の提案に驚いたけど、だけど風邪を引くのは嫌だ。
相変わらず雨は降り続いているけど、さっきまでよりは弱まっている。
「今がチャンスだ。行くよ」
「あっ、待ってよ!」
突然走り出したお兄さんを追いかけるように、ボクも雨の中を走っていく。
そうするとなんだか楽しくなってきて、お家に着いた時にはボクはすっかりはしゃいでしまった。
だって、兄ちゃんのお家は最近噂の駄菓子屋さんだったんだもん。
一度、来てみたかったんだよね。
そうやってはしゃいでいると、急に身体に寒気が走ってきた。
「……くしゅんっ」
くしゃみをすると、兄ちゃんはとても心配そうな表情になった。
そして、優しそうな微笑みを浮かべてくれた。
「すっかり身体が冷えちゃったし、風呂に入ろうか」
「ホントっ!? やった!」
ボク、お風呂って大好きなんだよね。
「あっ、でも着替えがないよ」
「大丈夫。乾燥機にかければすぐ乾くさ」
「じゃあ大丈夫だね。おっふろ、おっふろー」
はしゃぎながらお家の奥に向かうと、なんだか兄ちゃんはがっかりしているみたいだった。
そう言う顔をしてる兄ちゃんは、なんだか嫌だな。
良く分からないけど、心の中がモヤモヤとしてくる。
どうにかして励まそうと考えると、頭にピンッと名案が浮かんだ。
「ねぇ、兄ちゃん。一緒に入ろうよ」
満面の笑みを浮かべて、ボクは兄ちゃんを誘ってみた。
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