92 / 125
第八十五話
しおりを挟む
「さて、散歩にでも行くか」
駄菓子屋が定休日な今日。
俺は現実逃避も兼ねて少し遠くの公園まで散歩に行くことにした。
どうせ家に居ても、エルナちゃんとのことをどうしようか悩むだけだ。
それに、今日は誰も訪ねてくる予定もないしな。
という訳で俺は、いつだったか杏里ちゃんと遊んだ公園にまでやって来ていた。
世間的にも休日だからか、親子連れや子供たちの姿が多い気がする。
そんな中で一人散歩をする俺は、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。
「はぁ、これなら誰かを呼んだらよかったな」
さっきまでエルナちゃんとのことをどう伝えるか悩んでいた癖に、今ではもうみんなと会いたくなってしまっている。
なんとも身勝手な自分に苦笑を浮かべながら、俺は近くのベンチに腰かけて休むことにした。
「ふぅ……」
ベンチに座って一息ついた俺は、周りの人たちを眺める。
親子連れが楽しそうに子どもと遊んでいる姿や、友達同士でサッカーをしている様子など、見ているだけでなんだか心が和んでしまう。
それでも女の子が居るとついそっちに目が行ってしまうのは、ロリコンの悲しい性だろう。
とりあえず不審に思われないような程度で女の子を眺めていると、座っている俺の足元にサッカーボールが転がってきた。
「すいませーんっ!」
なんだか前にもこんなことがあったなと声のする方を見ると、あの時の男の子がこっちに向かって手を振っていた。
そしてその子は、タッタッタッと軽やかな足取りで俺の近くにまで駆け寄ってきた。
「これ、君の?」
「はい。って、この間の」
どうやら男の子の方も俺のことを憶えていたようで、不思議そうな表情を浮かべている。
「今日は、この前の子と一緒じゃないんですか?」
「え? あぁ、うん。今日は一人なんだ。……そう言う君こそ、今日は一人で遊んでるの?」
そう尋ねると、男の子はなんだか悲しそうな表情を浮かべながら俯いてしまった。
もしかしたら、触れてはいけないことだったのかもしれない。
「えっと、ごめんね」
「ううん、大丈夫です。今日はちょっと……」
それっきり、男の子は黙ってしまう。
「えっと、とりあえず座るかい?」
いつまでも向かい合って立っている訳にもいかず、俺はそう言って男の子を促す。
「はい……」
まだ元気のない男の子は、それでも俺に従ってベンチに座った。
そして、俺もその隣に座る。
「えっと、俺は杉原信吾って言うんだ。君の名前は?」
「中澤なかざわ優希ゆうきです」
「優希か。良い名前だね。それで、急に元気がなくなった理由を聞いても良いかな?」
いきなり確信に触れてみると、優希の身体がビクッと震える。
「話したくなかったら、別に構わないよ」
慌ててそう言うと、優希は小さく首を振って俺を見上げてきた。
「ううん、大丈夫。えっと、あのね……」
そうして優希は、俺の質問に訥々と答え始めた。
駄菓子屋が定休日な今日。
俺は現実逃避も兼ねて少し遠くの公園まで散歩に行くことにした。
どうせ家に居ても、エルナちゃんとのことをどうしようか悩むだけだ。
それに、今日は誰も訪ねてくる予定もないしな。
という訳で俺は、いつだったか杏里ちゃんと遊んだ公園にまでやって来ていた。
世間的にも休日だからか、親子連れや子供たちの姿が多い気がする。
そんな中で一人散歩をする俺は、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。
「はぁ、これなら誰かを呼んだらよかったな」
さっきまでエルナちゃんとのことをどう伝えるか悩んでいた癖に、今ではもうみんなと会いたくなってしまっている。
なんとも身勝手な自分に苦笑を浮かべながら、俺は近くのベンチに腰かけて休むことにした。
「ふぅ……」
ベンチに座って一息ついた俺は、周りの人たちを眺める。
親子連れが楽しそうに子どもと遊んでいる姿や、友達同士でサッカーをしている様子など、見ているだけでなんだか心が和んでしまう。
それでも女の子が居るとついそっちに目が行ってしまうのは、ロリコンの悲しい性だろう。
とりあえず不審に思われないような程度で女の子を眺めていると、座っている俺の足元にサッカーボールが転がってきた。
「すいませーんっ!」
なんだか前にもこんなことがあったなと声のする方を見ると、あの時の男の子がこっちに向かって手を振っていた。
そしてその子は、タッタッタッと軽やかな足取りで俺の近くにまで駆け寄ってきた。
「これ、君の?」
「はい。って、この間の」
どうやら男の子の方も俺のことを憶えていたようで、不思議そうな表情を浮かべている。
「今日は、この前の子と一緒じゃないんですか?」
「え? あぁ、うん。今日は一人なんだ。……そう言う君こそ、今日は一人で遊んでるの?」
そう尋ねると、男の子はなんだか悲しそうな表情を浮かべながら俯いてしまった。
もしかしたら、触れてはいけないことだったのかもしれない。
「えっと、ごめんね」
「ううん、大丈夫です。今日はちょっと……」
それっきり、男の子は黙ってしまう。
「えっと、とりあえず座るかい?」
いつまでも向かい合って立っている訳にもいかず、俺はそう言って男の子を促す。
「はい……」
まだ元気のない男の子は、それでも俺に従ってベンチに座った。
そして、俺もその隣に座る。
「えっと、俺は杉原信吾って言うんだ。君の名前は?」
「中澤なかざわ優希ゆうきです」
「優希か。良い名前だね。それで、急に元気がなくなった理由を聞いても良いかな?」
いきなり確信に触れてみると、優希の身体がビクッと震える。
「話したくなかったら、別に構わないよ」
慌ててそう言うと、優希は小さく首を振って俺を見上げてきた。
「ううん、大丈夫。えっと、あのね……」
そうして優希は、俺の質問に訥々と答え始めた。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる