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<番外編>エルナちゃんの初恋
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私は、自分が嫌いだった。
みんなとは違う白い肌も、金色の髪も、青く透き通ったような瞳も。
全部、全部、嫌いだった。
だって、みんなそれを理由に意地悪をするから。
男の子は毎日のようにそうやってからかってくるし、女の子はなんだか遠巻きに私を見ているみたい。
中にはそんなことなんて関係なく仲良くしてくれる子も居るけど、それでも私は自分のことが好きになれないでいる。
だから、放課後はだいたいいつも一人で街の中を散歩している。
お家の中に居てもつまらないし、こうやって歩いていると新しい発見がいっぱいあって楽しい。
だから、お散歩は大好きだ。
その日も私は、いつもの様にお散歩をしていた。
だけど今日は、いつもは行かないような場所に行こうと思う。
いつもみたいに人気のない所じゃなくて、学校の子たちも多く通っている通学路近くの通りを。
それにも理由がある。
私の数少ないお友達から聞いた話では、そっちの方に駄菓子屋さんがあるらしい。
駄菓子屋さん。
それはとても素敵な響き。
小さい頃、まだフィンランドで暮らしていた時にお母さんアイティが言っていた、とっても素敵な場所。
沢山のお菓子が、そこでは売られているらしい。
日本に来てから一度は行ってみたかった憧れの場所。
だけど、私は肝心のそのお店の場所を知らなかった。
だからお友達からそのお店の話を聞いた時、居ても立っても居られなくなった。
学校帰りのクラスの子たちにチラチラと見られている視線を我慢しながら、私は通りを歩いていく。
少し時間をずらしたのに、まだこんなに人が居るなんて計算違い。
だけどここで諦めて帰ってしまっては、これからも絶対に駄菓子屋さんに行くことは出来ない気がする。
だから、我慢して歩みを進める。
そうやって歩いていくと、あるお店が目に留まった。
そこから、クラスの子たちがお菓子を抱えて出てきていた。
「きっと、あそこ……」
目的地を見つけた私は、その場所に向かって歩を速める。
お店の中に入る時に一瞬だけ躊躇したけど、幸いなことにお店の中はガランとしていて他のお客さんは帰った後みたい。
「さっきの子たちが、最後だったのかな?」
独り言を呟きながらそっとお店の中に入ると、そこには沢山のお菓子。
見たこともないようなお菓子から、他の子が食べていて気になっていたお菓子まで色々なお菓子が所狭しと並べられていた。
「すごい……」
そこはまるで楽園のよう。
お菓子に囲まれた楽園は、私の心を一瞬にして魅了してしまった。
しゃがみ込んで、棚に並べられたお菓子をひとつひとつ眺めていく。
それだけでも何日もかかりそうなのに、私はその行為を止めることができなかった。
そうやって集中していたからだろう。
奥の扉が開く音で、私は驚いて固まってしまった。
「あれ? まだお客さんがいたのか。いらっしゃい」
奥から出てきたのは、一人の男の人。
驚いてしまった私は、男の人に声を掛けられても答えることができない。
「あぁ、安心して。俺はこのお店の者だから」
どうやら私が警戒をしていると勘違いをしたみたいで、男の人は慌ててそう答える。
「ふふっ」
その姿が何だか可笑しくて、私はつい笑ってしまう。
「うわぁ……」
そうすると、今度は男の人が固まってしまう。
「……どう、したの?」
「いや、笑った顔が可愛かったから。えっと、ごめんね」
可愛い?
私が?
そんなこと、家族以外で初めて言われた。
あまりにも言われ慣れていないから、私はどんな表情を浮かべていいか分からない。
「あり、がとう……?」
とりあえずお礼を言うと、今度は男の人が笑った。
「何で疑問形なのかな? まぁ、いいか」
そう言って、男の人は近くにあったお菓子を手に取る。
「はい、コレあげる。お近づきの印だよ」
そう言って差し出されたのは、私が一番気になっていたお菓子。
「いいの?」
「うん。その代わり、また遊びに来てね」
そう言って笑った男の人の笑顔に、私の心臓がドキドキと高鳴る。
「ん」
なぜだか男の人の顔が見れずに、私はぎこちない返事を返すことしかできない。
それでも男の人は、そんな私に呆れることなく頭を撫でてくれた。
暖かくて優しい手つきに身を任せていると、ふと時計が目に入る。
「あっ、もう帰らなきゃ……」
いつもなら、もうお家にいる時間。
そろそろ帰らないと、心配されちゃう。
「また、来てもいい?」
「もちろん」
お店の前まで見送りに来てくれた男の人にそう言うと、またあの笑顔を見せてくれる。
またドキドキしてきた心臓にそっと手を当てながら、私は男の人を見つめて。
「じゃあ、またね。にぃに」
そう言った時の男の人――にぃにの顔は、とっても可笑しかった。
そんなにぃにに手を振りながら、私はお家へと急ぐ。
帰ったら、このドキドキの理由をアイティに聞いてみよう。
きっと、素敵なことだから。
みんなとは違う白い肌も、金色の髪も、青く透き通ったような瞳も。
全部、全部、嫌いだった。
だって、みんなそれを理由に意地悪をするから。
男の子は毎日のようにそうやってからかってくるし、女の子はなんだか遠巻きに私を見ているみたい。
中にはそんなことなんて関係なく仲良くしてくれる子も居るけど、それでも私は自分のことが好きになれないでいる。
だから、放課後はだいたいいつも一人で街の中を散歩している。
お家の中に居てもつまらないし、こうやって歩いていると新しい発見がいっぱいあって楽しい。
だから、お散歩は大好きだ。
その日も私は、いつもの様にお散歩をしていた。
だけど今日は、いつもは行かないような場所に行こうと思う。
いつもみたいに人気のない所じゃなくて、学校の子たちも多く通っている通学路近くの通りを。
それにも理由がある。
私の数少ないお友達から聞いた話では、そっちの方に駄菓子屋さんがあるらしい。
駄菓子屋さん。
それはとても素敵な響き。
小さい頃、まだフィンランドで暮らしていた時にお母さんアイティが言っていた、とっても素敵な場所。
沢山のお菓子が、そこでは売られているらしい。
日本に来てから一度は行ってみたかった憧れの場所。
だけど、私は肝心のそのお店の場所を知らなかった。
だからお友達からそのお店の話を聞いた時、居ても立っても居られなくなった。
学校帰りのクラスの子たちにチラチラと見られている視線を我慢しながら、私は通りを歩いていく。
少し時間をずらしたのに、まだこんなに人が居るなんて計算違い。
だけどここで諦めて帰ってしまっては、これからも絶対に駄菓子屋さんに行くことは出来ない気がする。
だから、我慢して歩みを進める。
そうやって歩いていくと、あるお店が目に留まった。
そこから、クラスの子たちがお菓子を抱えて出てきていた。
「きっと、あそこ……」
目的地を見つけた私は、その場所に向かって歩を速める。
お店の中に入る時に一瞬だけ躊躇したけど、幸いなことにお店の中はガランとしていて他のお客さんは帰った後みたい。
「さっきの子たちが、最後だったのかな?」
独り言を呟きながらそっとお店の中に入ると、そこには沢山のお菓子。
見たこともないようなお菓子から、他の子が食べていて気になっていたお菓子まで色々なお菓子が所狭しと並べられていた。
「すごい……」
そこはまるで楽園のよう。
お菓子に囲まれた楽園は、私の心を一瞬にして魅了してしまった。
しゃがみ込んで、棚に並べられたお菓子をひとつひとつ眺めていく。
それだけでも何日もかかりそうなのに、私はその行為を止めることができなかった。
そうやって集中していたからだろう。
奥の扉が開く音で、私は驚いて固まってしまった。
「あれ? まだお客さんがいたのか。いらっしゃい」
奥から出てきたのは、一人の男の人。
驚いてしまった私は、男の人に声を掛けられても答えることができない。
「あぁ、安心して。俺はこのお店の者だから」
どうやら私が警戒をしていると勘違いをしたみたいで、男の人は慌ててそう答える。
「ふふっ」
その姿が何だか可笑しくて、私はつい笑ってしまう。
「うわぁ……」
そうすると、今度は男の人が固まってしまう。
「……どう、したの?」
「いや、笑った顔が可愛かったから。えっと、ごめんね」
可愛い?
私が?
そんなこと、家族以外で初めて言われた。
あまりにも言われ慣れていないから、私はどんな表情を浮かべていいか分からない。
「あり、がとう……?」
とりあえずお礼を言うと、今度は男の人が笑った。
「何で疑問形なのかな? まぁ、いいか」
そう言って、男の人は近くにあったお菓子を手に取る。
「はい、コレあげる。お近づきの印だよ」
そう言って差し出されたのは、私が一番気になっていたお菓子。
「いいの?」
「うん。その代わり、また遊びに来てね」
そう言って笑った男の人の笑顔に、私の心臓がドキドキと高鳴る。
「ん」
なぜだか男の人の顔が見れずに、私はぎこちない返事を返すことしかできない。
それでも男の人は、そんな私に呆れることなく頭を撫でてくれた。
暖かくて優しい手つきに身を任せていると、ふと時計が目に入る。
「あっ、もう帰らなきゃ……」
いつもなら、もうお家にいる時間。
そろそろ帰らないと、心配されちゃう。
「また、来てもいい?」
「もちろん」
お店の前まで見送りに来てくれた男の人にそう言うと、またあの笑顔を見せてくれる。
またドキドキしてきた心臓にそっと手を当てながら、私は男の人を見つめて。
「じゃあ、またね。にぃに」
そう言った時の男の人――にぃにの顔は、とっても可笑しかった。
そんなにぃにに手を振りながら、私はお家へと急ぐ。
帰ったら、このドキドキの理由をアイティに聞いてみよう。
きっと、素敵なことだから。
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