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第六十一話
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「さて、今日は店じまいだ」
まだ日が高いなかで、俺は閉店の準備を進めていた。
普通だったらこれからが稼ぎ時だけど、別に金儲けが目的じゃないからこういうこともできる。
本当に、遺産さまさまだよ。
そうやって店の掃除をしていると、なんだか後ろから服の裾を引っ張られている感覚がする。
全く心当たりがない俺は首を傾げながら振り向くと、そこには真っ白い女の子が立っていた。
金色の綺麗な髪に、クリクリとした蒼い瞳。
少しおめかしをしたようなフリルの付いたワンピースからは、シミ一つない白い肌が見えていた。
そんな女の子が、俺の服の裾を掴んで引っ張っていた。
「モイ」
「やぁ、久しぶり」
片手を上げて挨拶する女の子に、俺も挨拶を返す。
そうすると、嬉しそうににっこりと笑いながら俺を見上げて来てすごく可愛い。
「にぃに、今日はおしまい?」
そのまま小首を傾げて尋ねてくる女の子に視線を合わせながら、その頭を撫でる。
ちなみに俺の名誉のために言っておくけど、『にぃに』と言うのはこの子が勝手に呼び出したのであって別に呼ばせた訳ではない。
それどころか、俺はこの子の名前さえ知らない。
時々店に来てくれる子で、なぜか俺に懐いてくれているだけだ。
呼び名がないと困るので、とりあえず俺は『モイちゃん』と呼んでいる。
明らかにハーフみたいな見た目だから最初は戸惑ったけど、日本語も通じるし可愛いから今では来てくれるのが密かな楽しみになっている。
だけど、タイミングが悪かった。
今日は、ちょっと予定があるんだ。
「ごめんね、今日はこれから予定があるんだよ」
視線を合わせるようにしゃがみ込みながら、俺は両手を合わせて詫びる。
「そう。残念」
しょぼんとしてしまったモイちゃんを見ているとちょっと心が痛いけど、こればっかりは仕方ない。
「本当にごめんね。……あっ、それじゃあお詫びにこれをあげるよ」
もう一度モイちゃんの頭を撫でて反応を楽しんでいると、良いことを思い付いた。
確かモイちゃんはこのお菓子が好きだったはず……。
棚をゴソゴソと探っていると、すぐに目的の物を見つけることができた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
お菓子を渡すと、モイちゃんがニコッと笑って受け取ってくれた。
その笑顔が可愛過ぎてついクラッとしてしまい、クシャクシャとモイちゃんの髪を撫でまわす。
気持ちが良いのか目を細めてされるがままにされているモイちゃんだったけど、それもしばらくの間だけだった。
撫でるのをやめると、モイちゃんはお菓子を抱えたまま帰るみたいだ。
「モイモイ」
「うん、じゃあね」
小さな手をぶんぶんと振って去っていくモイちゃんを見送っていると、ちょうど見えなくなった辺りで後ろから声を掛けられた。
「こんにちは、お兄さん」
「やぁ、こんにちは」
振り向くとそこには、可愛らしい格好をした杏里ちゃんが立っていた。
まだ日が高いなかで、俺は閉店の準備を進めていた。
普通だったらこれからが稼ぎ時だけど、別に金儲けが目的じゃないからこういうこともできる。
本当に、遺産さまさまだよ。
そうやって店の掃除をしていると、なんだか後ろから服の裾を引っ張られている感覚がする。
全く心当たりがない俺は首を傾げながら振り向くと、そこには真っ白い女の子が立っていた。
金色の綺麗な髪に、クリクリとした蒼い瞳。
少しおめかしをしたようなフリルの付いたワンピースからは、シミ一つない白い肌が見えていた。
そんな女の子が、俺の服の裾を掴んで引っ張っていた。
「モイ」
「やぁ、久しぶり」
片手を上げて挨拶する女の子に、俺も挨拶を返す。
そうすると、嬉しそうににっこりと笑いながら俺を見上げて来てすごく可愛い。
「にぃに、今日はおしまい?」
そのまま小首を傾げて尋ねてくる女の子に視線を合わせながら、その頭を撫でる。
ちなみに俺の名誉のために言っておくけど、『にぃに』と言うのはこの子が勝手に呼び出したのであって別に呼ばせた訳ではない。
それどころか、俺はこの子の名前さえ知らない。
時々店に来てくれる子で、なぜか俺に懐いてくれているだけだ。
呼び名がないと困るので、とりあえず俺は『モイちゃん』と呼んでいる。
明らかにハーフみたいな見た目だから最初は戸惑ったけど、日本語も通じるし可愛いから今では来てくれるのが密かな楽しみになっている。
だけど、タイミングが悪かった。
今日は、ちょっと予定があるんだ。
「ごめんね、今日はこれから予定があるんだよ」
視線を合わせるようにしゃがみ込みながら、俺は両手を合わせて詫びる。
「そう。残念」
しょぼんとしてしまったモイちゃんを見ているとちょっと心が痛いけど、こればっかりは仕方ない。
「本当にごめんね。……あっ、それじゃあお詫びにこれをあげるよ」
もう一度モイちゃんの頭を撫でて反応を楽しんでいると、良いことを思い付いた。
確かモイちゃんはこのお菓子が好きだったはず……。
棚をゴソゴソと探っていると、すぐに目的の物を見つけることができた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
お菓子を渡すと、モイちゃんがニコッと笑って受け取ってくれた。
その笑顔が可愛過ぎてついクラッとしてしまい、クシャクシャとモイちゃんの髪を撫でまわす。
気持ちが良いのか目を細めてされるがままにされているモイちゃんだったけど、それもしばらくの間だけだった。
撫でるのをやめると、モイちゃんはお菓子を抱えたまま帰るみたいだ。
「モイモイ」
「うん、じゃあね」
小さな手をぶんぶんと振って去っていくモイちゃんを見送っていると、ちょうど見えなくなった辺りで後ろから声を掛けられた。
「こんにちは、お兄さん」
「やぁ、こんにちは」
振り向くとそこには、可愛らしい格好をした杏里ちゃんが立っていた。
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