57 / 125
第五十一話
しおりを挟む
「さぁ、遠慮せずに入って」
「お邪魔しまーす」
箒を片付けた後、俺は二人を唯香の待つ居間へと招き入れた。
居間の中では、すでにくつろぎ切っていた唯香が突然の来客に驚いて固まってしまっていた。
「あ……、初めまして」
いち早く唯香の存在に気が付いた杏里ちゃんの挨拶で、唯香もやっと我に返った。
慌てて起き上る姿は、なんだかちょっと面白い。
「ほら、唯香。ちょっと話があるから座ってくれ」
笑ってしまいそうな顔を押さえて、押し入れを開けて中を探って目当ての物を見つけ出した。
しまいこんであった座布団を人数分用意すると、いち早く適当な位置に座る。
そんな俺に続くように、両隣には美海ちゃんと杏里ちゃんが座った。
そうして、自然と俺たちは唯香と向き合う形になった。
俺や美海ちゃん、杏里ちゃんはなんの話をするか分かっているから落ち着いているけど、何も分からない唯香は落ち着かない様子だ。
そりゃあ、突然知らない女の子二人と会わされて、大事な話があるなんて言われてもそうなってしまうだろう。
「それで、話ってなんなの?」
遂に我慢の限界が来たのか、まだ居心地の悪そうな唯香が俺にすがるような視線を向けてくる。
俺の心の準備がまだだったけど、このまま放置しても仕方ない。
深呼吸をして覚悟を決めると、俺は唯香に向かって思いっきり土下座をした。
「唯香、すまんっ!!」
「えっ!? 突然なにっ!?」
大きな声で謝る俺に合わせて、両隣の美海ちゃんと杏里ちゃんも勢い良く頭を下げる。
状況が理解できない唯香だけが、どうして良いか分からずにアタフタとしている。
「とりあえず、頭を上げてよ。それから、ちゃんと分かるように説明して」
言う通りに頭を上げると、真剣な目で唯香を見つめる。
一瞬身を強張らせて頬を染めた唯香だったけど、すぐにその目も真剣なものに変わった。
隣からは、二人の心配そうな視線が向けられているのが分かる。
大丈夫、安心して。
そう伝えるように二人の手をそっと握ると、安心したのかその手からは少しだけ力が抜けていく。
そうして、お返しと言うように俺の手をギュッと握り返してきた。
よし、言うぞっ。
もう一度気合を入れ直して、俺はすっかり乾いてしまった口を開いた。
「唯香。俺はこの前、いつか必ず本当のことを話すって言ったよな」
「うん」
「だから、ちゃんと言うよ。俺は、この二人と付き合っている」
「は……?」
意味が分からなかったのか、唯香はポカンとした表情で固まっている。
「ちょっと、アニキ。冗談にしても質が悪いよ」
「冗談じゃない。本当のことなんだ」
そう言って俺は今まで俺たちの間に起こったことを、包み隠さずに唯香に伝え始めた。
この話が終わった時、俺たちの関係が変わってしまう確信を抱きながら。
それでも、これは伝えなければいけないんだ……。
「お邪魔しまーす」
箒を片付けた後、俺は二人を唯香の待つ居間へと招き入れた。
居間の中では、すでにくつろぎ切っていた唯香が突然の来客に驚いて固まってしまっていた。
「あ……、初めまして」
いち早く唯香の存在に気が付いた杏里ちゃんの挨拶で、唯香もやっと我に返った。
慌てて起き上る姿は、なんだかちょっと面白い。
「ほら、唯香。ちょっと話があるから座ってくれ」
笑ってしまいそうな顔を押さえて、押し入れを開けて中を探って目当ての物を見つけ出した。
しまいこんであった座布団を人数分用意すると、いち早く適当な位置に座る。
そんな俺に続くように、両隣には美海ちゃんと杏里ちゃんが座った。
そうして、自然と俺たちは唯香と向き合う形になった。
俺や美海ちゃん、杏里ちゃんはなんの話をするか分かっているから落ち着いているけど、何も分からない唯香は落ち着かない様子だ。
そりゃあ、突然知らない女の子二人と会わされて、大事な話があるなんて言われてもそうなってしまうだろう。
「それで、話ってなんなの?」
遂に我慢の限界が来たのか、まだ居心地の悪そうな唯香が俺にすがるような視線を向けてくる。
俺の心の準備がまだだったけど、このまま放置しても仕方ない。
深呼吸をして覚悟を決めると、俺は唯香に向かって思いっきり土下座をした。
「唯香、すまんっ!!」
「えっ!? 突然なにっ!?」
大きな声で謝る俺に合わせて、両隣の美海ちゃんと杏里ちゃんも勢い良く頭を下げる。
状況が理解できない唯香だけが、どうして良いか分からずにアタフタとしている。
「とりあえず、頭を上げてよ。それから、ちゃんと分かるように説明して」
言う通りに頭を上げると、真剣な目で唯香を見つめる。
一瞬身を強張らせて頬を染めた唯香だったけど、すぐにその目も真剣なものに変わった。
隣からは、二人の心配そうな視線が向けられているのが分かる。
大丈夫、安心して。
そう伝えるように二人の手をそっと握ると、安心したのかその手からは少しだけ力が抜けていく。
そうして、お返しと言うように俺の手をギュッと握り返してきた。
よし、言うぞっ。
もう一度気合を入れ直して、俺はすっかり乾いてしまった口を開いた。
「唯香。俺はこの前、いつか必ず本当のことを話すって言ったよな」
「うん」
「だから、ちゃんと言うよ。俺は、この二人と付き合っている」
「は……?」
意味が分からなかったのか、唯香はポカンとした表情で固まっている。
「ちょっと、アニキ。冗談にしても質が悪いよ」
「冗談じゃない。本当のことなんだ」
そう言って俺は今まで俺たちの間に起こったことを、包み隠さずに唯香に伝え始めた。
この話が終わった時、俺たちの関係が変わってしまう確信を抱きながら。
それでも、これは伝えなければいけないんだ……。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる