駄菓子屋継いだらロリハーレム

樋川カイト

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番外編 杏里ちゃんの決意

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 お兄さんに背中を押されて、私は美海ちゃんと言う女の子と二人で居間に入れられてしまった。

 この子とお兄さんの関係は良く分からないけど、とっても仲が良さそうだ。

 だけど顔が似てないし、とても兄弟のようではなかった。

 むしろ、もっと親密な関係……。

 もしかしたら、お兄さんの恋人なのかもしれない。

 そう考えてみると、さっきのお兄さんの焦った態度の謎も解ける気がする。

 つまり私は、恋人との時間に突然やって来た浮気相手ってことになってしまう。

 ドラマや漫画でしか見た事のない状況だけど、まさか自分がそうなってしまうなんて。

 えっと、こういうのを間男って言うんだっけ?

 なんだか、違う気がする……。



 考えれば考えるほど訳が分からなくなってしまって、自然と何も喋らないで俯き加減になってしまった。

 私の悪い癖。

 自分でも、時々嫌になる。

 思考がどんどん負のスパイラルに入っていこうとしていると、ふと隣から視線を感じた。

 そっと顔を向けると、美海ちゃんと目が合ってしまった。

 私、何かおかしなことしちゃったかな?

「どうしたの?」

「な、なんでもないよっ」

 努めて普通を装ってみたけど、美海ちゃんの反応はちょっとおかしい。

 やっぱり、なにかやっちゃったかも。

「……そう」



 内心で焦ってしまった私は、そっけない返事しか返せなかった。

(ああ、やっちゃった……)

 それっきり、私たちの間には気まずい沈黙が走る。

 何か話題を探さなきゃとは思っても、プチパニックに陥っている頭では良いアイディアなんて思い浮かばない。

 そうこうしている内に、隣の美海ちゃんがキョロキョロと辺りを見回し始めてしまった。

 きっと、私と居ることに飽きちゃったんだ。

 そりゃあ、私みたいな愚図でのろまと一緒に居ても、楽しくなんてないよね。

 暗く沈んだ顔で隣の美海ちゃんを盗み見ると、なんだか顔がちょっと赤いような気がした。

 体調悪いのかな?

 心配になってしばらく観察していると、やがて美海ちゃんの様子が更におかしくなっていく。

「うあぁ……」

 突然美海ちゃんの口から聞こえてきた声に、私は思わず驚いてしまった。

「あ、ごめんね」

「ううん、大丈夫」



 なんとかそう答えたけど、内心ではずっとドキドキしていた。

 うぅ。

 お兄さん、早く来て……。

 そんな願いも虚しくお兄さんが来る気配はなくて、かわりに美海ちゃんに声をかけられた。

「そうだ。お兄ちゃんのお部屋を探検してみようよ」

「えぇ? 良いのかな……?」

 突然の提案に、私は思わず普通に問い返してしまう。

「大丈夫だよ。ほら、お兄ちゃんが来る前に早く」

 だけど美海ちゃんは優しく私の手を引いてくれて、なんだか心が暖かくなった。

 でも、お兄さんのお部屋を物色して、本当に良いのかな?

 もしかしたら、見られたくない物とかあるんじゃ……。

 男の人の見られたくない物って、エッチな本とか?



 それを見つけた時のことを考えて顔が赤くなるけど、興味もあって強く美海ちゃんを止められない。

 その間にも、美海ちゃんはどんどん物色を進めていく。

 やがて一通り探し終えても、特になにも見つからなかった。

 さすがに、これ以上は駄目だよね。

「ねぇ、もう止めようよ」

「まだまだ。今度は引出しだよ」

 美海ちゃんの袖を引いて止めようとしても、止められなかった。

 そのままの勢いで美海ちゃんの開けた引出しの中には、紛れもなくあの時の私のパンツだった。





 ────

 今、私の目の前には美海ちゃんが居る。

 そして、隣ではお兄さんが正座を続けていた。

 目の前の美海ちゃんは驚いた表情を浮かべていて、私とお兄さんを交互に見続けている。

 美海ちゃんが驚くのも無理はない。

 だって、私はお兄さんの浮気相手なんだから。

 パンツのことでお兄さんが責められているのを見ていられなくて、咄嗟に全部を話してしまった。

 私には、この方法しか思いつかなかったんだ。

 この後どうなるかは、だいたい予想ができる。

 怒り出すか、泣き出すか、だ。

 私はどんな罵倒だって受け止めるし、美海ちゃんが泣いてしまったらもっと心を込めて謝るつもりだ。

 そんな程度で許してもらえるとは思っていないし、そんなつもりだってない。

 ただ、私は罰が欲しかったのかもしれない。



 悪いことをしたら叱られる、それは大切なルールだから。

 目をギュッと閉じてその瞬間を待っていると、頭の中にはいろいろな思いが浮かんでくる。

 大好きなお兄さんのことや、今日できた大切なお友達のこと。

 せっかく仲良くなったのに、こんなにすぐに離れなくちゃならないなんて……。

 悲しいけど、これもきっと罰なんだろう。

 美海ちゃんは、私にどんな言葉を浴びせるんだろうか……?

 だけど美海ちゃんは、まだ事態が呑み込めていないのかなにも言わない。

 だから、私は自分から喋ることにした。

「あの、ごめんね。私、お兄さんに美海ちゃんみたいな彼女さんが居るなんて知らなかったから。悪いのは、全部私なの……。だから、お兄さんを怒らないであげて」

 私の言葉に、美海ちゃんが少しだけ反応してくれた。

 やっぱり、私はここに居るべきじゃないな。

 大好きなお兄さんと美海ちゃんの為にも、私は消えるべきなんだ。

「お兄さんも、ごめんなさい。私、もうここには来ませんから、美海ちゃんと仲直りして、ください」

 今度はお兄さんの方を向いて、小さくそう言った。



 隣で正座していたお兄さんは、辛そうな表情を浮かべながらもなにも言えないみたい。

 大丈夫、お兄さんのせいじゃないよ。

 私が、悪い子だっただけだから。

 ゆっくりと立ち上がって、二人に背中を見せて歩き始める。

「待って!!」

 その時、私の背中に声がかけられた。

 振り向くと、美海ちゃんが私に向かってなにかを言っているのが見えた。

「そんなの駄目だよ。杏里ちゃんが一人で我慢するなんて、そんなの不公平だよ!」

 その言葉の意味が分からなくて、私はポカンと間抜けな顔をしてしまう。



 それはお兄さんも一緒だったみたいで、私と同じような顔をしていた。

「でも、だったらどうすれば……」

 だけど、お兄さんはやっぱり大人だ。

 なにも言えない私に代わって、美海ちゃんに真意を尋ねてくれた。

 美海ちゃんもそんな質問が飛んでくることは分かっていたみたいで、ドヤ顔でこう答えてくれた。

「簡単だよ。二人とも、お兄ちゃんの彼女になれば良いんだよ」

 その時の衝撃と喜びを、私はきっと一生忘れないだろう。
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