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ニート、新たなモンスターを作る

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 また、失敗か?
 俺の脳裏には破裂する巨大スライムの末路が映ったが、実際にはそうはならなかった。
 突然スライムの身体がグシャッと溶けると、それは徐々に人の上半身のように形作っていく。
 そしてそこには、巨大な泥人形が立っていた。
「よし、成功だ」
 思わずガッツポーズをしてしまう。
 まさか、こんな簡単な方法でマッドゴーレムを作り出せるなんて。
 一時間以上あれこれと試行錯誤していたにもかかわらずできなかった事がミリィの一言で成功したんだから、褒めてやらないとな。
 そう思ってミリィに手招きすると、不思議そうな表情で近づいてきた彼女の頭に手を乗せる。
 そうやってしばらく彼女の頭を撫で回していると、方々から不満の声が上がった。
「ちょっと、ハヤトさん。私たちは褒めてくれないんですか?」
「そうよ。私だって、ちゃんとアドバイスしてあげたのにぃ」
 そんなことを言われても、残念ながら俺の腕は二本しかない。
「順番だ。ちょっと待ってろ」
 不満そうな表情を浮かべる彼女たちにん位が笑いを浮かべながら、俺は開いている手をリゼルの方へ伸ばす。
 そのまま俺の肩の上に載っているリゼルを撫でると、彼女は満足げに表情を緩ませた。
 ミリィの頭は狼耳がモフモフしていて気持ち良いし、リゼルはサイズ的に全身を触っているようで色々と柔らかい。
 なんだか、両方とも癖になってしまいそうだ。
 ひとしきり二人を堪能した後、お預けを喰らっていたアイシャが俺に駆け寄ってくる。
「ほらっ、次は私ね」
「分かってるって」
 屈んで頭を差し出してくるアイシャに苦笑いを浮かべながら、その頭を両手で優しく撫でる。
「ん…、気持ち良い……」
 どうやら頭を撫でられるのが好きみたいで、アイシャは少し艶っぽい吐息を漏らした。
 そのまましばらく撫でていると、俺の頭に悪戯心が芽生える。
 頭を撫でている手をゆっくりと下に持っていくと、そのまま耳の先端を軽く撫でる。
「ひゃんっ!?」
 思いのほか可愛い声を上げて、アイシャはサッと俺から飛び退いてしまった。
「もうっ、旦那さまっ! 悪戯したらメッ!」
 そのまま、まるで子供を叱るような口調で怒られてしまった。
 とは言え、頬を膨らませて指を突きつけるアイシャを見ていると、なんだかこれも悪くないような気がしてくる。
「ハヤトさん、まさかマゾに目覚めて……」
「そんな訳あるか」
 リゼルに冷たく突っ込むと、なぜかミリィが少ししょんぼりとしている気がする。
 いや、なんでだよ。
 気にはなったが、聞いても碌な事にならない気がする。
 と、そうやって遊んでいるうちに二体目のマッドゴーレムが生まれていた。
 とりあえず、今日はこれで良いか。
 あんまり多くても仕方ないし、スライムの数もだいぶ少なくなってきた。
 かなり使ったから、また増えるまでは大事にしていこう。
「それじゃあ、今日はこれで終わりですか?」
「いや、あとちょっと試したい事がある」
 スマホを取り出してスキル管理を選び、『流体操作』スキルを覚える。
 なんでも、液体なら大抵の物を操れるスキルらしい。
 同じポイントで『全属性魔法・初級』も覚えられたが、使いこなせそうにないので今回はパス。
 そもそもアイシャが居る以上、どうしても劣化版みたいになってしまうしな。
 それならいっそ、ひとつの事に特化した方が良いだろう。
 ともかく、覚えたばかりの流体操作を目の前のスライムに使ってみた。
 そうすると、思った通りスライムの形がグニャグニャと歪んでは戻る。
 やっぱりスライムも、液体に含まれるらしい。
 適当なスライムを凝縮すると、手のひらサイズにまで小さくなる。
 ついでに氷みたいになったが触ってみても冷たくなかったので、五匹ほどポケットの中に入れておく事にした。
 いざと言う時に、盾か囮にくらいはなるだろう。
「これで終わり?」
「あとはこの部屋の中だけでも、俺もみんなと一緒に戦えるようにするだけだ」
 いい加減飽きてきたのかアイシャが俺を見つめてくるが、これだけはやっておかないと。
 再びスマホを取り出して、俺にだけ発動するように部屋中に転移トラップを仕掛けておく。
 これで、この部屋の中限定で俺は好きなように移動できる。
 試しに何度かやってみて確信を得た俺は、満足して大きく頷いた。
「よし、今日は良く働いたしこれで終了だ。解散」
 並んだスライムとトレーニングをしているゴブリンをダンジョン中に散らせると、俺も自分の部屋へと帰った。
 もちろん三人も一緒に帰ったが、突然転移させたからかみんな驚いた顔をしている。
「ちょっと、移動するならそう言ってくださいよ!」
「びっくりしたです」
「ああ、すまん」
 部屋に帰ってくるとドッと疲れが込み上げてきて、俺は適当に謝りながらベッドに横になる。
 そうすると眠気が襲ってきて、もうまぶたが空けていられない。
「ただいま。って、皆も帰って来てたのね。……主様、寝てるの?」
 意識が途切れる瞬間、扉の開く音と共にネールのそんな声が聞こえてきた気がする。
 そんな声を子守唄に、俺の意識はついに微睡みの向こうへと消えていった。
 結論、早起きはするもんじゃない。
 夕方近くまで寝てしまった俺は、心の中にそう刻み込むのだった。
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