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第88話
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あの後、保険医の先生によって強制的に保健室から追い出された俺たちは、朝と同じように並んで家までの道を歩いていた。
すっかり暗くなった住宅街を歩きながら、俺は隣に居る晶へと声を掛ける。
「それで、生徒会長を堕とすためにはまずなにから始めたらいいと思う?」
なにごとも、まずは最初の作戦会議が大切だ。
俺の問いかけに腕を組んで少し悩むような仕草をする晶。
しばらくそうやって黙り込んだ彼女は、やがて難しい表情のまま口を開いた。
「とりあえず、最初から生徒会長と直接やり合うのは止めた方が良いんじゃないか? さっき喋った感じだと、あんまり脈はなさそうだったんだろ?」
「ああ、そうだな。なんて言うか、妙によそよそしい感じがしたんだよ。無理してるって言うか、表面だけ取り繕ってるみたいな……」
あの時はどうしてそんな風に感じたのか分からなかったけど、彼女の噂を聞いた今なら理解できる。
「それもこれも、男嫌いだったからだと考えたらしっくりくるな。男と会話するのが、相当「嫌だったんじゃないか?」
「だとすると、やっぱり生徒会長を直接どうこうするのは難しそうだな。……うーん、どうしたもんか」
またしても晶は思考の海に沈んでしまい、二人の間にしばしの沈黙が訪れる。
しばらくそのまま歩いていると、不意に晶がパッと顔を上げる。
「そうだ! 良いことを思いついたぜ!」
いきなり大きな声でそう叫んだ晶は、俺の顔を覗き込みながらニヤッと笑う。
その笑みからなんとなく嫌な予感を覚える俺を尻目に、彼女は自信満々な表情を浮かべたまま口を開いた。
「生徒会長へ直接が駄目なら、先ずはその外堀から埋めていけばいいんだよ!」
ドヤ顔でそう言い放った晶に、俺は思わず首を傾げる。
「外堀を埋める? 生徒会長の外堀ってなんだよ?」
考え過ぎて、頭がおかしくなってしまったのだろうか。
訳の分からないことを言いだした晶に呆れていると、彼女はチッチッと指を振って答えた。
「生徒会長の外堀って言ったら、他の生徒会役員に決まってるだろ。周りを固めて一気に迫れば、いくら男嫌いな生徒会長だってイチコロだ!」
さも当然のように言う晶だが、はたして本当にうまくいくのだろうか?
「どう考えても、男嫌いが悪化する未来しか見えないんだけど……」
だって、考えてみてほしい。
ある日突然、自分の周りに居る女の子たちが一人の男の手によって堕とされているのだ。
しかもその男と言うのは自分が警戒している男で、そいつに堕とされた女の子たちが徒党を組んで自分も堕とそうと迫ってくるのだ。
そんなの、悪夢以外の何物でもないだろう。
「そこは、ほら。お前の腕の見せ所だって。数多の女を堕としてきた天性のすけこましスキルで、生徒会長をメロメロにしちゃえばすべて解決だ」
「天性のすけこましって、それ普通に悪口だろ……。そんなグダグダな作戦なんて、本当に成功するのか?」
特に最後の方なんて、ほとんど力任せにごり押しって感じだ。
俺の心配をよそに、晶はただ呑気に笑う。
「まぁ、何とかなるだろ。それに、お前にとっても悪い話じゃないと思うぜ」
そこで一度言葉を切った晶は、もったいぶるようにしながらさらに続ける。
「考えてもみろよ。うちの生徒会って、お前好みの女の子ばっかりだと思わないか? この作戦を決行すれば、その子たちをみんな自分のものにできるんだぜ」
そう言われて、俺は記憶にある生徒会役員たちの姿を思い浮かべた。
────
前の世界での生徒会は、まさに高嶺の花的存在の集まりだった。
各学年から選りすぐられた美少女が所属しているそんな生徒会に、一般生徒たちは「もしかして容姿審査でもあるのではないか」とまことしやかに噂されているほどだった。
それくらい、生徒会は美少女ぞろいだったということだ。
生徒会長は言わずもがな。
巨乳おっとり系の副会長に生真面目眼鏡っ娘な会計、元気いっぱい子犬系の書記と一卵性双生児で性格以外そっくりな庶務と広報の二人。
この美少女6人で構成されているのが、我が高校が誇る生徒会執行部である。
なお、なぜ女子ばかりで構成されているのかは学校七不思議のひとつに数えられているとかいないとか噂されているが、真相は全くの不明である。
ともかく、今重要なのはこの6人がいずれも他に劣らない美少女ばかりと言う事実だ。
それはつまり、美醜の価値観も変わっているっぽいこの世界では非モテな女の子6人組と言うことに他ならない。
そして、そんな彼女たちを幸せにできるのは俺を置いて他に居ないだろう。
だとしたら、俺はそんな彼女たちを放っておくことなどできやしない。
生徒会役員を全員攻略するのは、それすなわち彼女たちを救うということと同義だ。
ならば俺は、喜んでその修羅の道を歩もうではないか。
そう、全ては彼女たちの為でもあるのだ!
「なんて言ってるけど、本当はお前が美少女たちとイチャイチャしたいだけだろ。ほんと、分かりやすい奴だよ、お前は……」
「やかましい。そもそも焚きつけたのはお前の方だろ。言い出しっぺには、ちゃんと責任を持って協力してもらうからな」
「分かってるって。オレが協力するんだから、大船に乗ったつもりでいるといいさ」
自信満々に頷いて、その控えめな胸を叩く晶。
そんな彼女に若干の不安を覚えながらも、ここまで来たら後には引けない。
「よし! それじゃいっちょ頑張るとしますか。生徒会完全攻略作戦、決行だ!」
「おー!」
自らを鼓舞するように、俺たちは気合のこもった掛け声を上げるのだった。
すっかり暗くなった住宅街を歩きながら、俺は隣に居る晶へと声を掛ける。
「それで、生徒会長を堕とすためにはまずなにから始めたらいいと思う?」
なにごとも、まずは最初の作戦会議が大切だ。
俺の問いかけに腕を組んで少し悩むような仕草をする晶。
しばらくそうやって黙り込んだ彼女は、やがて難しい表情のまま口を開いた。
「とりあえず、最初から生徒会長と直接やり合うのは止めた方が良いんじゃないか? さっき喋った感じだと、あんまり脈はなさそうだったんだろ?」
「ああ、そうだな。なんて言うか、妙によそよそしい感じがしたんだよ。無理してるって言うか、表面だけ取り繕ってるみたいな……」
あの時はどうしてそんな風に感じたのか分からなかったけど、彼女の噂を聞いた今なら理解できる。
「それもこれも、男嫌いだったからだと考えたらしっくりくるな。男と会話するのが、相当「嫌だったんじゃないか?」
「だとすると、やっぱり生徒会長を直接どうこうするのは難しそうだな。……うーん、どうしたもんか」
またしても晶は思考の海に沈んでしまい、二人の間にしばしの沈黙が訪れる。
しばらくそのまま歩いていると、不意に晶がパッと顔を上げる。
「そうだ! 良いことを思いついたぜ!」
いきなり大きな声でそう叫んだ晶は、俺の顔を覗き込みながらニヤッと笑う。
その笑みからなんとなく嫌な予感を覚える俺を尻目に、彼女は自信満々な表情を浮かべたまま口を開いた。
「生徒会長へ直接が駄目なら、先ずはその外堀から埋めていけばいいんだよ!」
ドヤ顔でそう言い放った晶に、俺は思わず首を傾げる。
「外堀を埋める? 生徒会長の外堀ってなんだよ?」
考え過ぎて、頭がおかしくなってしまったのだろうか。
訳の分からないことを言いだした晶に呆れていると、彼女はチッチッと指を振って答えた。
「生徒会長の外堀って言ったら、他の生徒会役員に決まってるだろ。周りを固めて一気に迫れば、いくら男嫌いな生徒会長だってイチコロだ!」
さも当然のように言う晶だが、はたして本当にうまくいくのだろうか?
「どう考えても、男嫌いが悪化する未来しか見えないんだけど……」
だって、考えてみてほしい。
ある日突然、自分の周りに居る女の子たちが一人の男の手によって堕とされているのだ。
しかもその男と言うのは自分が警戒している男で、そいつに堕とされた女の子たちが徒党を組んで自分も堕とそうと迫ってくるのだ。
そんなの、悪夢以外の何物でもないだろう。
「そこは、ほら。お前の腕の見せ所だって。数多の女を堕としてきた天性のすけこましスキルで、生徒会長をメロメロにしちゃえばすべて解決だ」
「天性のすけこましって、それ普通に悪口だろ……。そんなグダグダな作戦なんて、本当に成功するのか?」
特に最後の方なんて、ほとんど力任せにごり押しって感じだ。
俺の心配をよそに、晶はただ呑気に笑う。
「まぁ、何とかなるだろ。それに、お前にとっても悪い話じゃないと思うぜ」
そこで一度言葉を切った晶は、もったいぶるようにしながらさらに続ける。
「考えてもみろよ。うちの生徒会って、お前好みの女の子ばっかりだと思わないか? この作戦を決行すれば、その子たちをみんな自分のものにできるんだぜ」
そう言われて、俺は記憶にある生徒会役員たちの姿を思い浮かべた。
────
前の世界での生徒会は、まさに高嶺の花的存在の集まりだった。
各学年から選りすぐられた美少女が所属しているそんな生徒会に、一般生徒たちは「もしかして容姿審査でもあるのではないか」とまことしやかに噂されているほどだった。
それくらい、生徒会は美少女ぞろいだったということだ。
生徒会長は言わずもがな。
巨乳おっとり系の副会長に生真面目眼鏡っ娘な会計、元気いっぱい子犬系の書記と一卵性双生児で性格以外そっくりな庶務と広報の二人。
この美少女6人で構成されているのが、我が高校が誇る生徒会執行部である。
なお、なぜ女子ばかりで構成されているのかは学校七不思議のひとつに数えられているとかいないとか噂されているが、真相は全くの不明である。
ともかく、今重要なのはこの6人がいずれも他に劣らない美少女ばかりと言う事実だ。
それはつまり、美醜の価値観も変わっているっぽいこの世界では非モテな女の子6人組と言うことに他ならない。
そして、そんな彼女たちを幸せにできるのは俺を置いて他に居ないだろう。
だとしたら、俺はそんな彼女たちを放っておくことなどできやしない。
生徒会役員を全員攻略するのは、それすなわち彼女たちを救うということと同義だ。
ならば俺は、喜んでその修羅の道を歩もうではないか。
そう、全ては彼女たちの為でもあるのだ!
「なんて言ってるけど、本当はお前が美少女たちとイチャイチャしたいだけだろ。ほんと、分かりやすい奴だよ、お前は……」
「やかましい。そもそも焚きつけたのはお前の方だろ。言い出しっぺには、ちゃんと責任を持って協力してもらうからな」
「分かってるって。オレが協力するんだから、大船に乗ったつもりでいるといいさ」
自信満々に頷いて、その控えめな胸を叩く晶。
そんな彼女に若干の不安を覚えながらも、ここまで来たら後には引けない。
「よし! それじゃいっちょ頑張るとしますか。生徒会完全攻略作戦、決行だ!」
「おー!」
自らを鼓舞するように、俺たちは気合のこもった掛け声を上げるのだった。
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