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第75話
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「なぁ、長瀬。ちょっと聞きたいんだけどさ……」
「なんだよ、小笠原。そもそも、なんでそんなに不機嫌そうなんだ?」
あぁ、またいつもの夢か。
もはや慣れてしまった夢の世界から目が覚めるのを待っていると、いつも通り俺に話しかけてきた晶はなんだかすこぶる機嫌が悪い。
なにか嫌な事でもあったのだろうか。
そう思って尋ね返すと、晶の表情は更に不機嫌に歪んでいく。
「ああ、あったよ。て言うか、現在進行形で嫌な事の真っ最中だ」
「へぇ、そりゃあ大変だな。なにか、俺に手伝える事はないか?」
俺としては親切で言ったセリフだったのだけど、しかし今の状況でこの言葉は禁句だった。
俺の言葉を聞いた瞬間、晶はまるでこの世の終わりを告げる風のような溜息を吐いて膝から崩れ落ちてしまった。
「お前、それマジで言ってんのか……?」
「えっと、そうだけど……」
そのあまりの落胆っぷりに驚きながらも正直に答えると、晶はガバッと顔を上げていきなり机を両手で叩いた。
バンッ、という大きな音に身体を震わせる俺だが、しかしそれよりも更に大きな声で晶が叫ぶ。
「俺を探せって言っただろうがっ!」
「ご、ごめんなさいっ」
今まで見た事のない、晶のマジ切れ。
そのあまりの剣幕に、俺は反射的に頭を下げていた。
それが功を奏したのかは分からないが少し落ち着いた様子の晶は、今度は静かな口調で俺に言い聞かせるように説教を始める。
「いいか、長瀬。俺はずっと待ってたんだぞ」
「はい……」
「あの日から、いつお前が俺を見つけてくれるのか。いつお前とまた馬鹿みたいに騒げるのか。それをずっと心待ちにしてたんだ」
だって、探そうにも手がかりがないんだよ。
そんな反論は、晶の瞳に宿る怒りの前では決して口に出せない。
ただ黙って嵐が過ぎ去るまで待つ姿勢の俺を尻目に、晶は更に怒りの言葉を俺にぶつけてくる。
「あれほど何度も何度も探してくれって頼んでるのに、お前は他の女と呑気にイチャイチャしやがって。人の気も知らないで、本当にお前って奴は……」
「だから、ごめんって。ちゃんと探すから、そんなに怒るなって」
「これが怒らずにいられるかっ!」
何とか宥めようとしても晶の怒りは一向に収まらず、それからも数分にわたってグチグチと文句を言われる。
今までの付き合いでの不平不満から始まり、最終的には「馬鹿、ロクデナシ、エロ魔人」など今時小学生でも言わないようなただの罵倒までされたところで、やっと晶の怒りは一段落したようだ。
それでもまだ怒りは収まっていないのか俺を睨んできているけど、とりあえず黙り込んだ今がチャンスだ。
どうにかしてコイツの怒りを鎮めて、ついでに居場所のヒントも聞きだしてやろう。
そんな魂胆の元で、俺は恐る恐る目の前の親友に声を掛けた。
「なぁ、本当に悪かったって。別にお前の事を忘れてたわけじゃないんだ」
「当たり前だろ。もし忘れてたなんて言ったら、俺はお前を八つ裂きにしてやる」
「表現が怖いって。でもさ、探そうにも俺には何のヒントもないんだぜ」
「ヒント?」
「そうだよ。だって、お前は俺のクラスメイトじゃなくなってるだろ。当然お前の事を知っているはずの中田中だって、お前の事は知らないって言ってるし。そんな状態で、俺はどうやってお前を探せば良いんだよ」
「まぁ、確かにそうかもな。だけど、本気で探せばすぐに見つかるはずだぞ」
「無茶言うなよ。日本だけで、いったい何人の高校生が居ると思ってるんだ。そんな中からお前を探すなんて、砂漠に落とした針を探すような物だろ」
「どうしてそこまで難しく考えるんだよ。……いいか、長瀬。そっちの世界だって、こっちの世界とそんなに変わりはないんだよ」
晶はそう言うけど、しかしこっちとそっちじゃ俺にとっては全く違う世界だ。
なんと言っても、貞操は逆転しているしこっちの世界の俺は女子からモテモテになっている。
これは全く別世界と言っても過言ではないだろう。
「いやいや、そう言う事じゃなくてな。例えば、こっちでお前の身近にいた人間は、そっちでもそれほど遠くない場所にちゃんと存在しているって話だ」
「……つまり、こっちの世界のお前もクラスメイトではないにしても近くにちゃんといるって事か」
「そう言う事だ。まぁ、ヒントはこれくらいにしとこうぜ。後は自力で探せ」
そう言うと、晶の姿はゆっくりと歪んでいく。
どうやら、今日の夢はこれで終わりのようだ。
だんだん消えていく景色を見つめながら、俺は晶の言葉を何度も頭の中で反芻していた。
これだけやれば、目が覚めても忘れる事はないだろう。
そう安心した俺は、ゆっくりと目を閉じて現実に戻るまでの短い時間を待つ事にした。
────
「ふあぁ……。今日も良い天気だなぁ」
窓から差し込んでくる朝日の眩しさに目を細めながら、俺はベッドから上半身を起こしてゆっくりと伸びをする。
そうすると今日見た夢の事を思い出して、ブチ切れ寸前の晶の顔が頭の中にフラッシュバックしてくる。
「これは本腰で探さないと、今度こそアイツになにされるか分からないな。夢の中の出来事とは言え、アイツは怒ると怖いからなるべく怒らせたくないし……」
となると、あまり遊んでいる暇はなさそうだ。
とりあえずアイツが見つかるまで女の子とのエッチはなし……。
いや、ほどほどに控える事にしよう。
そう心に固く誓った俺は、ひとりで納得したように頷きながら立ち上がった。
「なんだよ、小笠原。そもそも、なんでそんなに不機嫌そうなんだ?」
あぁ、またいつもの夢か。
もはや慣れてしまった夢の世界から目が覚めるのを待っていると、いつも通り俺に話しかけてきた晶はなんだかすこぶる機嫌が悪い。
なにか嫌な事でもあったのだろうか。
そう思って尋ね返すと、晶の表情は更に不機嫌に歪んでいく。
「ああ、あったよ。て言うか、現在進行形で嫌な事の真っ最中だ」
「へぇ、そりゃあ大変だな。なにか、俺に手伝える事はないか?」
俺としては親切で言ったセリフだったのだけど、しかし今の状況でこの言葉は禁句だった。
俺の言葉を聞いた瞬間、晶はまるでこの世の終わりを告げる風のような溜息を吐いて膝から崩れ落ちてしまった。
「お前、それマジで言ってんのか……?」
「えっと、そうだけど……」
そのあまりの落胆っぷりに驚きながらも正直に答えると、晶はガバッと顔を上げていきなり机を両手で叩いた。
バンッ、という大きな音に身体を震わせる俺だが、しかしそれよりも更に大きな声で晶が叫ぶ。
「俺を探せって言っただろうがっ!」
「ご、ごめんなさいっ」
今まで見た事のない、晶のマジ切れ。
そのあまりの剣幕に、俺は反射的に頭を下げていた。
それが功を奏したのかは分からないが少し落ち着いた様子の晶は、今度は静かな口調で俺に言い聞かせるように説教を始める。
「いいか、長瀬。俺はずっと待ってたんだぞ」
「はい……」
「あの日から、いつお前が俺を見つけてくれるのか。いつお前とまた馬鹿みたいに騒げるのか。それをずっと心待ちにしてたんだ」
だって、探そうにも手がかりがないんだよ。
そんな反論は、晶の瞳に宿る怒りの前では決して口に出せない。
ただ黙って嵐が過ぎ去るまで待つ姿勢の俺を尻目に、晶は更に怒りの言葉を俺にぶつけてくる。
「あれほど何度も何度も探してくれって頼んでるのに、お前は他の女と呑気にイチャイチャしやがって。人の気も知らないで、本当にお前って奴は……」
「だから、ごめんって。ちゃんと探すから、そんなに怒るなって」
「これが怒らずにいられるかっ!」
何とか宥めようとしても晶の怒りは一向に収まらず、それからも数分にわたってグチグチと文句を言われる。
今までの付き合いでの不平不満から始まり、最終的には「馬鹿、ロクデナシ、エロ魔人」など今時小学生でも言わないようなただの罵倒までされたところで、やっと晶の怒りは一段落したようだ。
それでもまだ怒りは収まっていないのか俺を睨んできているけど、とりあえず黙り込んだ今がチャンスだ。
どうにかしてコイツの怒りを鎮めて、ついでに居場所のヒントも聞きだしてやろう。
そんな魂胆の元で、俺は恐る恐る目の前の親友に声を掛けた。
「なぁ、本当に悪かったって。別にお前の事を忘れてたわけじゃないんだ」
「当たり前だろ。もし忘れてたなんて言ったら、俺はお前を八つ裂きにしてやる」
「表現が怖いって。でもさ、探そうにも俺には何のヒントもないんだぜ」
「ヒント?」
「そうだよ。だって、お前は俺のクラスメイトじゃなくなってるだろ。当然お前の事を知っているはずの中田中だって、お前の事は知らないって言ってるし。そんな状態で、俺はどうやってお前を探せば良いんだよ」
「まぁ、確かにそうかもな。だけど、本気で探せばすぐに見つかるはずだぞ」
「無茶言うなよ。日本だけで、いったい何人の高校生が居ると思ってるんだ。そんな中からお前を探すなんて、砂漠に落とした針を探すような物だろ」
「どうしてそこまで難しく考えるんだよ。……いいか、長瀬。そっちの世界だって、こっちの世界とそんなに変わりはないんだよ」
晶はそう言うけど、しかしこっちとそっちじゃ俺にとっては全く違う世界だ。
なんと言っても、貞操は逆転しているしこっちの世界の俺は女子からモテモテになっている。
これは全く別世界と言っても過言ではないだろう。
「いやいや、そう言う事じゃなくてな。例えば、こっちでお前の身近にいた人間は、そっちでもそれほど遠くない場所にちゃんと存在しているって話だ」
「……つまり、こっちの世界のお前もクラスメイトではないにしても近くにちゃんといるって事か」
「そう言う事だ。まぁ、ヒントはこれくらいにしとこうぜ。後は自力で探せ」
そう言うと、晶の姿はゆっくりと歪んでいく。
どうやら、今日の夢はこれで終わりのようだ。
だんだん消えていく景色を見つめながら、俺は晶の言葉を何度も頭の中で反芻していた。
これだけやれば、目が覚めても忘れる事はないだろう。
そう安心した俺は、ゆっくりと目を閉じて現実に戻るまでの短い時間を待つ事にした。
────
「ふあぁ……。今日も良い天気だなぁ」
窓から差し込んでくる朝日の眩しさに目を細めながら、俺はベッドから上半身を起こしてゆっくりと伸びをする。
そうすると今日見た夢の事を思い出して、ブチ切れ寸前の晶の顔が頭の中にフラッシュバックしてくる。
「これは本腰で探さないと、今度こそアイツになにされるか分からないな。夢の中の出来事とは言え、アイツは怒ると怖いからなるべく怒らせたくないし……」
となると、あまり遊んでいる暇はなさそうだ。
とりあえずアイツが見つかるまで女の子とのエッチはなし……。
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