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第19話

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 最近、美希の様子がなんだかおかしい。
 これと言って具体的な証拠みたいなのはないんだけど、ただなんとなく言動に違和感を覚えるのだ。
 いや、この世界に来てからというもの常に美希の言動には違和感を覚えっぱなしなのだけど、しかしここ最近は特におかしい。
 ある日には、いつもの様に俺にツンツンしているくせに、普通に隣へ座ってくる。
 それどころかソファに座る俺に密着するように身体を寄せてきて、その柔らかな感触や体温で思わず勃起してしまいそうになる。
 またある日には、俺が帰宅すると慌てた様子で二階から降りてきて、そのまま俺と目を合わせようともしない。
 そしてそんな時に限って、部屋の中の物の配置が微妙に変わっていたりする。
 さらにその日の夜には、妹の部屋からは微かな艶っぽい声が漏れ聞こえてきたりするのだ。
 ……まぁ、つまりそう言う事だろう。
 勘の良い人ならすでに察しているだろうが、妹はどうやら俺の事を性的な目で見ているらしい。
 それが恋愛感情なのかただの肉欲なのかは分からないけど、しかしそれに気付いたからにはこのまま放っておく手はない。
 あわよくば、超可愛い我が妹とセックスできるかもしれないのだ。
 このチャンスを逃すなんて、それはこの世界への裏切りと言っても過言ではないだろう。
 しかし、だからと言ってすぐに行動に移す事はできない。
 どうしても、妹が俺に性的興味を持っているという確信が欲しい。
 九分九厘その考えに間違いないとは言っても、相手は家族だ。
 どうしても、それが俺に二の足を踏ませてしまう。
 ……臆病者だと笑わば笑え。
 しかし、一度よく考えてみて欲しい。
 家族と言うのは、つまり基本的に毎朝毎晩一日として欠かさずに顔を合わせるもっとも身近な存在だ。
 そんな家族と言う存在に「お前、俺の事好きなの?」なんて聞いて、もし違うと否定されたら。
 それだけならまだしも、完璧に引かれてしまい視線も合わせてくれなくなったら、親に言いつけられたとしたら。
 そんな事になってしまえば、家庭の中に俺の居場所がなくなってしまう。
 まさに、家庭内別居だ。
 意味は少し違うかもしれないが、だいたい同じようなニュアンスだろう。
 ともかくそんな理由で、俺は美希の気持ちについての確信が欲しいのだ。
 ……もし本当に美希が俺の事を好きだったら?
 そんなの、決まっているだろう。
 妹の気持ちに応えてやらないで、いったいどの口がお兄ちゃんを名乗るのか。
 美希が俺の事を好きなのであれば、俺はその気持ちを受け止める。
 そして、精いっぱいの愛情で返してあげるのだ。
 まぁ、俺としても最愛の妹との禁断の愛なんて憧れるし、まさにWin-Winの関係という奴だろう。
 という訳で、俺は罠を張る事にした。
 その前準備は数日前からしている。
「ちょっと、お兄ちゃん。ちゃんと服着てよ」
「着てるじゃん」
「もっと隠してって言ってるの! いくら家だからって、タンクトップに短パンなんて目の毒だよ。しかも、パンツ見えてるし」
「え? 俺のパンツ見たの? エッチィ」
「うっさい! 見せてる方が悪いんでしょ!」
 思いっきりクッションを背中に投げつけられながら、俺はリビングから廊下に避難する。
 と、こういう具合にわざとだらしない恰好をして美希を性的に挑発しているのだ。
 俺にとっては別に何てことない恰好をしていても、美希は面白いように反応してくれる。
 それが原因か、今ではちょっとやり過ぎてしまいそうになる。
 ちなみに、この作戦で気を付けなければいけない事が一つある。
 この世界で貞操観念がゆるくなってしまった美希は、兄から見てもかなり危うい恰好をしている。
 その為に、俺は勃起してしまうのを必死で我慢しなければならないのだ。
 ……素数を数えようが因数分解をしようが、勃起って抑えられないんだね。
 そもそも素数は23くらいまでしか分からないし、因数分解も苦手だ。
 もしかしたらそれが原因なのかもしれないけど、ともかくそれでは抑えられなかった俺は結局クラスのおブスちゃんの顔を思い浮かべて萎えさせるしかなかった。
 その弊害で、目を閉じるだけでおブスちゃんの顔が浮かんできてしまうようになってしまったけど……。
 そんな瞬間股間収縮術を駆使しながら餌を撒き、そして本命の仕掛けを施している。
 未だにかかってくれないが、しかし今日の美希の様子ではそろそろじゃないかと予想している。
 さっきだって、怒っていながらも俺を見る目に少し興奮が滲んでいた気がするし。
「よし、今日はマジで決めるぜ。……お風呂入ってきまーす!」
 あえてリビングに向かってそう宣言すると、俺は一旦部屋に戻って着替えを取ってくる。
 そのまま脱衣所まで行くと一気に服を脱ぎ、そして脱ぎたての下着をわざと洗濯機の端っこに引っかけておく。
 この時、わざとらしくならないのがポイントだ。
 あくまで、偶然引っかかって気付かなかっただけだよって雰囲気を出さなくてはいけない。
 見事にそれをクリアした俺は普通に浴室の中へ入り、身体を濡らしてすぐに外に出る。
 これで俺は、脱衣所の外に出るには身体を拭かなくてはならなくなった。
 後は一言、大きな声を出すだけで良いのだ。
「おーい、美希ー! シャンプーがないんだけどー!」
 そうすると、リビングにまで届いた俺の声に美希からの反応が返ってくる。
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